林道は崩れた沢で途切れ
崖を下ってまた昇ると
山陰にその続きらしきもの
屋根の落ち柱の倒れた廃屋と
放棄された畑の跡
荒れた植林を抜けると
陽だまりにタチツボスミレの群落
気の早いモミジイチゴの花が
一株だけ白くうつむいて咲き
その先からつづら折りの山道
一尺ほどの高さの
苔むした馬頭観音の後ろに
朽ちかけた黒い道しるべ
でもその指し示す方向には
すでに別れ道の痕跡もなく
ためらいながらなおも辿ると
くたびれ切ったころに
水場!
崖に突き刺した樋から流れる水は
冷たく甘く
夢中で飲み 顔を洗う
炭俵なんか担いだ昔の人も
ここでひと息ついて腰を伸ばしたのだろうな
・・・だがさっきから道のずっと先に
ずいぶん前に追い抜いて行ったカップルの
若草色と青のザックが
ちらちら見えるのはなぜだろう?
あの二人ならもう疾うに
峠を越えて向う側に下っているはずだのに
あの曲がり角にそれらしきものが見える
目を凝らせば消えるのに
次の曲がり角にまた現れる
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