大朝日岳は標高1870m。高くはないが北の豪雪地帯なので、稜線は北アルプスの3000mと変わらないお花畑だ。登山客が少ないのもうれしい。ただし稜線の小屋はすべて避難小屋なので、寝袋、マット、食料、コンロなどを担がねばならない。水場は稜線中にいくつもあって困らない。中でも「銀玉水」はぼくが今まで飲んだ中でいちばん美味い水だ。山体は大きく、鉱泉から山頂までは、一般的な鳥原山コースで約7h30かかる。金山沢、鳥原山、小朝日岳と、大きな上り下りを越えて行かなければならない。
最短の中ツル尾根コースで約6h。こちらは二俣で沢と離れてからは、ひたすらの急登だ。このコースには昔、恐怖の吊り橋が三つあった。上下二本の太いワイヤーを細いワイヤーでジグザグに繋いだだけのもの。上のワイヤーを上から押さえるように上体の体重を掛けて下のワイヤーをそろそろ歩く…のだが、体重を掛けそこなうとオーバーハング状態になる。今はないそうだ。
稜線に登ってしまえばなだらかな大展望の、花咲き乱れる道なので、3,4日分の食料を背負う体力があれば、北の大鳥池から以東岳を経て朝日鉱泉まで縦走するのが最も楽しい。
大朝日小屋付近では、ブロッケン現象がしばしばみられる。ぼくも、光背をまとった仏様を見たことがある。じつはそれは霧に映った自分自身なのだ。
人は誰でも、ふだん気が付かないだけで、本当は光背を背負っているのだ。
姉崎さん夫妻については、このブログで何度か書いている。18/03/13「朝日(新聞ではなく)」、19/01/11「くりばやし」、19/03/01「野中の自然教室」など。また、彼は数々の美しい樹木写真集と、「はるにれ」「ふたごの木」などの名作の写真絵本を出している。今住んでいる家については、「姉崎一馬の新自然教室」という著書に詳しい。これと、「姉崎一馬の自然教室」は、彼らの長年にわたる、子供たちとの自然体験の記録だ。自然の中での生活を通して、小さな命をいつくしむことを一緒に学んでゆく、感動的な記録だ。
西沢信雄さんも、「朝日連峰山だより」「ブナの森から都会が見える」「ブナの森通信」などの著書がある。自然の好きな人たち、山が好きな人たち、ただし、百名山のピークハントを目指すのでなくじっくり自然を楽しむ人たちに、ぜひお勧めしたい本だ。
上から、①鉱泉のテラスから見る大朝日岳、②ブナ林の黄葉、③頭殿山頂、遠くは雲の中の大朝日、小朝日、鳥原、④吊り橋、⑤鳥原の尾根から見た頭殿山
私も縦走は憧れますけど、たとえ30年前でも吊橋が苦手だから無理でしょうね。
縦走ではなくても雨の中をよく歩かれましたね。
次回は神様に雨のプレゼントはお預けにしていただけると良いですね。