川岸の小道を
二人黙って歩いた
川はゆるやかに曲がりながら
両側の山並みの間を
広い谷になって下る
幾つもの橋を越え
何時間も歩いた
何か話すと
君がいなくなってしまうような
気がして
わずかな田んぼに
穂になる前の
明るい稲が育ち
口に出しにくい
言葉もあった
クルミの並木
繁り放題のクズの土手
萎れたマツヨイグサ
まるで影のような君
本当に隣にいるのか
時々 前方に遠く高く
まだ雪のわずかに残る山
何時の間にか日が傾いて
夕風が起こり
君が立ち止まる気配がした
急いで振り向くと
君はもういなかった
ひとつだけ 勇気を出して
訊けばよかった
ぼくを許してくれるか と