すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

八ケ岳(赤岳)

2021-07-24 10:18:03 | 山歩き

 茅野の駅に降りてバスの切符売り場で呆然とした。「コロナ禍で平日の運転は取りやめています」と(7月20日のことです)。そんなあ…
 この頃いくつか読んでいる戦前・戦後の山の記録などでは、みんな駅から歩いているのだが、この歳では無理だ。それだけで疲れて、舗装で足を痛めてしまう。
 家を出るときに、予備にと思って一万円を財布に加えておいてよかった。今回は登山口まで往復タクシーの大名旅行になってしまった。片道6千円ちょっと。 割り勘する相客がいれば良かったのだが、行き帰りとも、登山客はぼく一人だった。梅雨が明けたし、ワクチンも打ったのにね。
 美濃戸口で身支度を整え、歩きはじめる。けっこう涼しい。ここは歩き慣れた道だ。林道歩きだが、ほとんど人に会わないショートカットがいっぱいあって楽しい。前回来たのは3年前だ。その時は南沢を登ったが、今日は北沢を行く。北沢の方が少し林道歩きが長いが、そのあとの沢沿いの道が好きだ。南沢は暑くてつらい。
 堰堤を越えて登山道に入る。梅雨明け直後で水量が多く、水音が大きく気持ち良い。柔らかな色の葉を広げたダケカンバの林の中だ。林床はスギゴケなどのコケ類が美しい。苔の美しいのも、八ヶ岳の魅力だ。
 鉄の橋や木の橋を何度も渡る。中間地点あたりの橋の上から、谷の奥に横岳の大同心の特異な岩峰が見える。「帰りのバスの時間を気にしなくても良いのだから、横岳の縦走も…」とちょっと思ったのだが、いまのぼくの体力では、無謀というものだろう。すでにこのなだらかな道でバテている。
 針葉樹林帯に入ると、前方の木の間越しに黄色や青色が見える。赤岳鉱泉のテント場だ。テントもいつもに比べてだいぶ少ない。鉱泉の前に出て一気に展望が開けて、正面に横岳のギザギザの稜線が、右手に赤岳が聳える。今日はもう少し歩いて行者小屋泊だ。途中、中山乗越の展望台に寄る。ここからの眺めは圧倒的だ。知らずにここを飛ばしてしまう登山客が多いらしいのだが、まことにもったいない。
 行者小屋に着き、ふんだんにでている冷たい美味い水を飲み、さらに生ビールまで注文する。胃腸が弱いので医者に冷たい飲み物は禁じられているのだが、これはもう欲望に勝てない。汗をかいたTシャツの背中を西日で乾かしながら、東の岩壁を眺めながら飲むビールは最高!(後で小屋に入ってからお腹が痛くて参った。)
 今夜の宿泊はわずか4人。夕食はチーズ入りハンバーグとウインナポトフ。お腹を気にしながらちょっとだけ食べた(明日の体力が心配だが)。山自慢など食後のおしゃべりをすることも無く、淋しい宿泊だ。でも、行者小屋は構造上、他の客と雑魚寝ではなく間仕切りがあって広くて、落ち着いて寝ることのできる良い小屋だ。山小屋で寝付けないことの多いぼくにはまことにありがたい。
 夜、外に出てみたが、十一日の月が明るく、ここは東と南に稜線が高いので星を見るには向かず、早々に寝た。(続く)

コメント
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