岩屑の上に立って息を継ぐ
行く手の遥かな高みに岩壁がそそり立つ
山頂はあの上だ
登山道は岩壁を避けて
左右に雪渓の上を続いているが
あの壁を登って行く人もいるのだ
左手の鞍部の手前の
小さな点は
小屋を同時に出た若いパーティーだ
とてもぼくにはついて行けない
まあ良い
一歩一歩を味わいながら
ゆっくり登るのも
老いの山の楽しみだ
足元で轟音が響く
雪渓の末端が
融けて谷底に崩れ落ちたのだ
疲れた腰を伸ばして
反り返るように見上げると
空が吸い込まれそうに深い
あの岩壁の上から
あの空に向かって飛び立てたら
どんなにか良いだろうにな