ちかごろどうも
ぼくの記憶はかなりあいまいになっているようで
君とこの丘を歩いたのを
こんなにありありと思い出すのに
そんなはずはないよな とも思うのは
記憶違いだろうか?
それともあれは
いつか知らぬ前の世のこと
だったろうか?
あの時はたしか春まだ浅く
タンポポが咲き始めだったが
今はもう半分以上が綿毛になって
ヒメオドリコソウに押されている
実れなかったサクランボの赤ちゃんが
ベンチに無数に散っている
生垣にカラタチが美しい
あのとき君は大病のあとで
ぼくたちはゆっくりゆっくり
君の体調を気遣いながら
歩いたつもりだったが
君はじつはこんな感じだったのだな
今日はぼくが病み上がりで
息切れやめまいと相談しながら
ゆっくりゆっくり歩く
今はかたわらにいない君に
話しかけながら