富山マネジメント・アカデミーは、TOEIC800点講座を寄付するなど、富山大学の教学・研究の支援を行っている。それで、2018年4月に発足する新学部を紹介するパンフを大学の事務局から戴いた。評価は、AAA級である。まず、理工系の学部であることだ。中村は、文系は思想性が強いので、全て私学に移行するべきだ、格物致知の理系のみ国立でやるべきだとの持論がある。この度、文系学部が譲り、減資【学生定員削減】に踏み切り、待望の学部が、いよいよ学生募集に踏み切ることになった。
パンフを精査すると、富山学が上手く練られていて、感心した。ただし、歴史学者から言わせると、富山に「都市デザイン学部」が誕生した歴史意義は、当事者にも理解されていないので、ここで補足しておきたい。
第一に、アジア全域において、農業社会から工業化社会への緩やかな移行が行われた、そのなかで、地域のシステムが完全な農業社会であった富山【越中国】が、3世紀かけて、世界の最先端の都市化された地域へと大きく進化した最先端の事例にあたる。日本で、あるいはアジアで、最先端の地方創成に成功しつつある都市化の新しい姿がある。どうか、富山にきて、富山に学んでください。
富山県は、自動車交通と鉄道の発達と再建により、県全体が一日通勤圏として一体化できる交通システムを持ち、国際的な通関業務のできる空港と海港が機能している。さらに、県民一人あたりの総所得【企業が得た所得と個人所得の総和】が全国5位である。4位までは、太平洋ベルト地帯の広域都市圏であるから、純粋な農業社会から工業化された「都市としての富山県」に成長した唯一の事例である。これは、同規模の農業地域圏全体が都市化した事例としては、アジアの最先端に当たる。シンガポール、香港は、イギリス資本の投下、台北は大陸資本の投下というような外からの資本投下を基礎としているが、富山は雪解け水を活用した水力発電が都市化のための資本の蓄積と循環を可能にした。
第二に、富山の都市化は、東京や大阪などの道筋をたどるのか?ここが大事なポイントである。自然との共生システムに依拠する、つまり、森林を大事に育てることで、都市生活の利便性と、豊かな自然のありのままの公園とに囲まれた人類理想の、自然に包まれた都市生活という夢に近づきつつある。あとは、この新たな国際都市にふさわしい人材の育成である。この富山のよさを誰もが英語で説明できる、そういう人材育成が大きな課題である。TOEIC570点以上の社会人が、土曜日、富山大学で学んでいる姿は、その未来を暗示している。