IMF国際通貨基金の想定では、2018年のアメリカ経済には、翳りが生じるようだ。これは、大事な見立てである。
リーマンショック以来、アメリカ経済は、一時的な異常な後退からの回復、このリバウンドを「好況」への反転と解釈するから、今は好況にあると信じられてきた。そこに、異常な願望が加わり、トランプ政権による経済政策への期待が加わり、期待感が異常に虚飾され、膨らんできた。ところが、ここへきてトランプ政権は、現象であり、経済構造の地道な改善にはつながらない、という見方が、識者の大半を占めるようになった。期待されるのは、公共需要である。しかし、新たな公共需要を喚起する政策が実行の途につかず、政治的な混乱が加速している。
このトランプ政権とタッグを組んだ安倍政権も、賞味期限切れから、消費期限切れへと進んでいる。もし、東京都知事選挙で大敗するならば、政局に発展しかねない状況にある。一方、憶測や偏見から論じられやすい習近平政権は、政敵になりやすい李克強に金融不安の責めを負わせ、大衆人気を背景に着実に政策を推進している。北朝鮮の暴走を好機に、アメリカ、日本からの圧力を跳ね返し、いよいよ安定軌道に乗りつつある。中国は、アメリカ政治に対しては、在米の華人社会の存在感(寧波幇)を活用し、影響力を行使している。トランプの台湾重視は、一夜にして瓦解した。さらに、重要なのは、中共中央の日本政界への揺さぶりの巧みさである。新華社通信の情報網、各地の配置された領事、そして、日本における省別の同郷団体、いずれもが小さな渦であるが、安倍政権の足元を1日、1日と掘り崩している。こうした複雑な世界情勢のなかで、安倍小グループの頭脳の弱さが露呈し、第一次安倍政権の末期に似てきた。
安倍外交のトランプ抱きつき戦略は、彼の支持者に対しても、有効ポイントを挙げられない状況となった。それが、アメリカの景気の構造的な天井の壁からくる諸要因が、安倍政権への期待感を日々に剥落させている原因である。他方で、安倍政権が別の政権に後退したからと言って、アメリカ発の要因は、全く除去されない。中国もIMFの主要加盟国となり、極端な景気の落ち込みはない。対米、対中、いずれも相手国の内部での「日僑」の政治・経済力が無力であるから、これから、日本は確実に第4位以下へと確実に転落する。それは、戦前、戦後、ともに同じ内向き志向の人が主流の社会に起因しているためである。TOEFLの受験者の少なさは、見事に他者理解の能力放棄の構造要因を象徴している。日本の民主主義は、国際感覚に乏しい内向きの人に権力を与える仕組みである。