
小生の年代だと「総括」に好感を持つ人は少ないかもしれない。暗く痛ましい記憶がある。しかしながらヘキサ・スフェリコンの総括ともなれば暗く痛ましい記憶はありえない。苦楽忌々しく混在している記憶だけなのだった。それでも総括してみる気になったのは要は暇だから・・・。高齢者の一日は長く一年は早いのだった。
オロイドやスヘリコン制作で総括などする気にならないのは改良の余地など無いシンプルさによる。単純明快で楽しめる幾何回転体だった。それに引き換えヘキサ・スフェリコンは底なしだ。つまり「楽しさも中くらいなりおらが作」てなもんや三度笠。

最初に作ってみたのは基盤式ではなくひし形の中子を挟み固定する中子式だった。この方式だとひとつの中子に4枚の半円を接着することから精度が出なかった。結局は中子式を廃して基盤式で成功した。この当時は円盤がホームセンターなどでコースターなどとして販売されていることを知らず木工旋盤もなかったから糸のこ盤で円盤を切り抜き外周はヤスリで手仕上げした。基盤には小ビスで止めてある。

面倒だから製作せず、数年経って試みたのは手間暇を減らし制作を簡単にしたいと思案の結果が円柱材を二分割して張り合わせる密着型だ。確かに簡単にできたのはいいけれどヒノキ材のため重さがある。初めは慣性力が運動エネルギーの増大に寄与すると踏んだのだったが急激な進路変換するヘキサ・スフェリコンならではの方向転換点でスリップして精力消耗で頓挫してしまった。
それだから「軽くすれば・・・」の発想になったのだった。桐材やヤナギ材で試してガッテン!

円柱材から円筒材にしての試作品。円筒の高さに勘違いがあり幅を狭くしてしまって接着強度は実用性があったけれど転がりが悪かった。そのうえ接着面が狭い2カ所と言うことから接着面が平面上に固定できたかどうか不安定で転がり品質を安定させての量産には不向きだろう。
これを試作した段階では確かにそう思えた。しかし補助具(治具)を使用することでいとも簡単に必要な精度で組めることが出来、その意味では魅力的なデザインになった。

今まで作った結果を鑑みて最初の基盤式と円筒式を合体させたのがこの試作品だ。正六角形の基盤は製図そのものでもあり、これに固定すれば幅の間違いも発見しやすく、またそれぞれが平面上に歪みなく固定できるメリットがある。基盤は高価なアクリル樹脂でなく安い下敷きを使った。強度が足らない軟弱に思えたのだが円筒の切断面を全て覆い接着する関係で位置も精度固定も強度もクリアー出来た。
結果的には、どのタイプも条件さえ整えればスムーズに転がってくれたのだが、円筒を作る手間が馬鹿にならない。ペットボトルや樹脂製の瓶などを応用すれば制作は容易かもしれない。まあ、自分で楽しむ範囲だけれど。
そんなてんやわんやでも大満足の作業を終えたのだったが最後に大どんでん返しが待っていた。まあ「犬も歩けば棒に当たる」のか「晴天の霹靂」なのか、恐らく両方に違いない。
幾何回転体に塗装を施したことは無かったが「汚れが付かないように,表面硬化もさせたいし…」と、今回軟材の桐と柳を使った事でえごま油を塗装に使った結果、これが裏目に出た。表面の摩擦力が減って滑りで消耗し転がり難くなってしまったのである。重量を重くしてしまった事と同じに観える。いやはやヘキサ・スフェリコンとは奥が深いものよのう越後屋…。ハイ、もうヘキヘキさ。