二度童ともなれば朝から災の河原の砂礫掘りを続けるのは病む無し、致し片なし、ではなく痛し肩ありなのだがこの日、ようやくほぼ完成したと言って良い段階にまで達したのだから祝着至極この上もない。つらつら眺めつつ「エンジンポンプによる強制排砂」をどう行おうかと思案投げ首していた時に重大な過失に気が付いてしまい愕然としたのだった。「これでは強制排砂が行えない・・・」のである。
一番のネックは水位なのだ。取水堰が埋もれる前は取水升上端面は堰のオーバーフロー部と同じだから取水升内の送水管口まではほぼ30cmあまり、作業をするのに肘上付近まで袖まくりすれば行えたのである。ところがどっこいところは水中、現在の水位は更に上がって取水堰上端面を隠す高さで35cm上積みされている。つまり送水管口は水面下65cm下にあるから腕が届かない。これでは送水チューブを送水管内に送り込みが出来ないのだった。L型継手やT型継手に延長パイプを取り付け差し込み出来れば強制注入可能だけれど、その際も水面下65cmにある送水管端末に差し込む事が必須である。頭部まで没しての作業は断じて不可能なのであった。従前のように手入れを可能にするには現状の排水路を30cm掘り下げねばならない。流路の長さは約10mあって30cm掘り下げるには上端部開口幅は現状の2倍が必要なのだ。更に付帯作業として水傾斜を維持するのに流路の距離は5m以上も延ばさねばならない。これではもう眩暈がする作業量で続けては行いたくはない。
だもんでエンジンポンプによる強制排砂は不可能と判明し、では升内の泥浚いはどうかと言えば柄杓を使えば可能になるが直接金網笊で掬うより状態が判明し難い、とまあ、気も心も折れるような場面バッカリになってしまった。残るは排砂バルブによる排砂であるけれど管路が下降している範囲ならまだしも経路の半分を占める後半部の上昇管路の排砂までは出来ないのだ。ただ一つだけプラスの要因は水位が上昇した事で送水圧が高くなったはずである。現行の高低差は3mだったのが3,65mとなりほぼ1.2倍に相当する。これは吐水量測定値が1.2倍になる可能性を秘めているだろう。排砂作業が済んで今までの最大吐水量の1.2倍が得られるとすると30ℓ/分の皮算用が成立する。現実値としては無理だろうが今までの最大値が平常値になる可能性はあるだろう。試みの測定では24ℓ/分で驚いた。
さて、この日の作業は各段の枠内に玉石を敷き詰める事と流路を取水升へ戻す事だったが、どれも細かい事を別にすればほぼ合格と言える。残る作業は上流部の河床安定化工事なのだが、もう急がなくても良い状況が成ったから気分は楽である。まあ、作業は河原を削って流路を平らかにしつつ越流しないように誘導堤を設えねばならないので身体的には負担だけれど気分的にはストレスフリーに近い。帰宅に先立って作業場所をしみじみ眺めてみれば我ながら老骨に鞭打ち、ん十肩に鍼を打って湿布も懐炉も貼りつつ、膝には保温サポーターを装着し就寝前は薬湯で温めてとまあ、我ながらよくやったものだのう。写真手前の砂礫の山を見れば自分でも驚いてしまう量なのであった。