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トロルお爺の”Satoyaman”林住記

生物生産緑地にて里山栗栄太が記す尻まくりワールド戯作帳

**復興遠し

2013-11-11 | 大震災

 名月の光届かぬ埋もれ屋の影黒うして踵返す日

 父祖の地は除染進まず潮騒も汚染隠して名月の下

 山の幸セシュウムキノコと成り生えて海幸溢れ船船溜まり

 規制線立てば我が町秋の日に紅葉燃やして目の前遠く

 集落の人は散り散り戻り来ぬ数えてみれば限界集落


*秋景色

2013-10-11 | 大震災

             蒔く人もいぬに秋桜そよぐ里

             残月の白き人無き町の秋

             おどろしく葛花繚乱住めぬ街

             凄惨を隠し七草原となり

             けものみち縦横とあり父祖の畑


**一核生禁

2013-09-11 | 大震災

 地下に壁汚染防げぬバカの壁水位上がりてつぎ液状化      溶労 猛

 木も草も七十五年は生えないの被爆地よりも厄災永し       美来栄誤

 七重八重防護尽くさぬ嘘吹きは実のひとつだになさず危うし    嫌冥震脳

 成る様に成るさと被爆今日の日も昨日と同じ明日も同じ      浸日一炉

 取り敢えずやっつけ仕事で蓋をする未必の故意じゃ泥縄式じゃ  跡死末


**送り火

2013-08-11 | 大震災

 塵散らす聞かまほしき故郷の今見て帰る人ひとり無理

       散り散らす聞かまほしきふるさとの花見て帰る人もあはなむ     伊勢

 たづねつる里は葛葉にうづもれて谷田にイノブタ一声ぞする

       たづねつる宿は霞にうづもれて谷の鶯一声ぞする           藤原範水

 住むことも出来ぬ故郷秋の夜は帰る光のさびしかりけれ

       住む人もなき山里の秋の夜は月の光もさびしかりけれ        藤原範水

 音もせぬ家を立ち出でながむればいづこも同じ人無き家屋

       さびしさに宿を立ち出でながむればいづこも同じ秋の夕暮れ    良暹 


**迎え火

2013-07-11 | 大震災

 ざざ漏れの国の岩屋は心さびて荒れたみちのく見れば悲しも

        さざなみの国つ御神の心さびて荒れたる京見れば悲しも        高市古人

 ま草生ゆ荒れ野になれど黄葉の過ぎにし家族形見とぞ来し

        ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し      柿本人麻呂

 憂きこと想い辛かり借り金で泣きつつ仮設秋の夜な夜な

        憂きことを思ひつらねてかりがねの鳴きこそ渡れ秋のよなよな    凡河内躬恒

 未だ帰ぬ人もありけるみちのくは誰も行けずに住めぬ場所あり

        まだ知らぬ人もありける東路に我も行きてぞ住むべかりける     藤原実朝


**波状段波

2013-06-11 | 大震災

 ひんがしに浪起ち襲う知りえてもかほどの事と誰が知るらん

 あがらえぬ地の営みに我が日々は波の間に間に没し消え去り

 たちまちに浪に呑まれて失えど失い続く民も彼方此方

 復旧も出来ず復興いつの日か永田茫々霞むや堰も

 嘆きより嘆き道にぞ入り出れぬ君子よ示せ故郷への道


**春はあけぼの

2013-05-11 | 大震災

 元通り夢想はしないこれからは新たに築く赤子の一歩

 戻りたい戻れない地と覚悟して自分で決めたもう戻らない

 出口なく地域のすべて仮置き場仮の住まいに身を置く仮世

 子のために親のためにと生き別れ生きていてこそまた来る朝


**汚染の連鎖

2013-04-11 | 大震災

  捨て場無く子々孫々に災禍為す十万年も核汚染物

  生は危機冥府魔道へひた走る始末もならぬ核生起物

  陰陽師呼びたし核の生起物生身焼かれる子孫に巣喰う

  一基でも炉心暴露となりうれば避難の連鎖で列島無人


**序章いつまで…

2013-03-11 | 大震災

  ふたとせを経ても故郷影もなき破壊の跡に芽吹くは野草

  入りたき仮設さえすら届かねば今は異郷で山並み眺む

  彼岸会に会えたき事もかなわずに越えがたきかなこの規制線

  はや二年難民同様仮住まい戻る術なく戻れる地無し

  葬列も無く不明者は壇を出で無縁で還る悠久大地


*一時帰宅

2013-02-11 | 大震災

               西方と思えど沖は雪の奥

               もしやかと浜の貝片そっと撫で

               捜索の泥地凍みれば仰ぐ

               イノブタは我が世我が家は我独り

               手のひらに時計の砂は落ちるまま


**去年今年

2013-01-11 | 大震災

  年越しを重ね仮設に留め置かれ更地雪原ビジョンの如し

  復興も看板のみで年越せば今や仮設のホームレスなり

  慈善慈悲頼りに明けたふたとせは無策無能を思い知る道

  半世紀政局騒動一筋のその一手間を欲しき下々


**絶望千里

2012-12-11 | 大震災

  今生は愛別離苦の世と知るも怨憎会苦ぞあの日の被曝

  断ち切られ一日千秋めぐり打つ寄るべ無きなり胸のさざなみ

  四苦をを受け八苦を知りて仮住まい浮世とはいえうたかたの日々

  大震災絶望千里のみちのくも希望は萌えるささやかな春


**更地の雪

2012-11-11 | 大震災

  風花の舞えば去来すあの一夜凍えた我等消えゆく温み

  初雪や渚に落ちて波の中波よ届けよ故郷の雪

  栗駒の深層崩壊山肌を雪は蔽いて手当てのごとく

  岩手山雪の冠陽に映えて印となりて来ぬ人を呼べ

  夏草は折れるがままに枯れ立ちぬあの日思わる更地の故郷


**わび住い

2012-10-11 | 大震災

  仮住い浮世なればと胸に言う孤独の孤立仮設で独り

  寄り合いの日々はあの日の彼方なり今はすべなく独りの八十路

  爺の身は酒を入れずに何とする終の棲家の仮設で独酒

  喰う寝るの独房の日々晩年を仮設におれば茶友夢見る


**独り立つ浜

2012-09-11 | 大震災

   復興は前人未到の事なれど老いのわが身は彼岸へ野菊

   前の浜前途洋洋後ろ盾前途多難もここに幸在る

   あの時に絆奪われ抜け殻も絆によりて今ここに起つ

   風呂上り仮設を出でて沖見ればさそり座すでに西に傾く

   防護服住むは適わぬ故郷のパンドラの箱あの森の先