猿芝居素知らぬ振りであの始末喉元過ぎてこの始末
言う猿は真実一炉すらもなし安心安全案心暗全
炉は小槌邪淫のごとき御執心目先の欲で死の灰列島
松黑し梢に見ゆる排気塔クレーン動けば作業を知りぬ
作業員繭作りたるお蚕の群れにも見えし廃炉作業は
黙々と名前表示で作業する国は見ぬふりピンハネ労働
積算を抜かれて量る被ばく量抜かれ続ける賃金手当
放射能塗布された地に三度目の春は来れど我ら春来ず
放射能浴びつ目出度く卒業を我ら迎えどあの人如何に
塵は塵灰は灰でも放射能人道廃し塵山の里
いずこにか春兆すかな長き冬冬来るまま春遠きまま
為すべきの話題にも無しまつりごと我ら仮設の卒業も無し
溶融炉一年先も読めぬのに十万年のゴミ管理だえ
炉は破れ父祖の地追われ里は春人声無くてウリ坊群れる
安全も復興除染も飾り物血税いずこ人財枯渇
フクシマの復興よりも復古かな住血吸虫新年永田
三陸も三界さえも取り結ぶ三鉄三年耐望始発
鐘太鼓大漁旗振り迎えたる一番電車里に鮮やか
人も去り町並み消えし過疎の地に三鉄開通希望の布石
復興の絆運べり諸人も北に降りやす南に降りやす
「母恋吹雪」
矢野 亮・作詩/林 伊佐緒・作曲、編曲
酔ってくだまく 父さの声を
逃げて飛び出しゃ 吹雪の夜道
つらい気持ちは わかっちゃいるが
俺らばかりに あゝ なぜあたる
こんな時には 母さが恋し
なんで俺らを 残して死んだ
呼んでみたって ちぎれて消える
星のかけらも あゝ 見えぬ空
わたつみも今は過ち悔やむとも時は戻らず人も戻らず
頭らの胸に罪過は無かりけり求むは財貨あれは他人事
下々は未だ生業四苦八苦今勘定の地位ある人は
山桜待ちて眺めた故郷の溢れる春は早や追憶の域
「おさげと花と地蔵さんと」
東條寿三郎・作詩/細川潤一・作曲、編曲
指をまるめて のぞいたら
黙ってみんな 泣いていた
日暮れの空の その向こう
さようなら
呼べば遠くで さようなら
おさげと 花と 地蔵さんと
あれから三年 もう三月
変わらず今も あのままで
そら見て立って いるのやら
さようなら
耳を済ませば さようなら
おさげと 花と 地蔵さんと
雪の原賑わい消えし里の跡雪消え去れば賑わう線量
白銀の更地我が里現世の色即是空寂寂となり
綿帽子かぶり静かに地蔵尊雪の浄土に白き浪見ゆ
大雪や隠し切れない傷跡を白布で覆うはや三回忌
山の雪恵みとなりて春還る我らも何時か我が故郷へ
風花に霞む建屋の空遠く聞こえたるよな風に泣く声
海はよう汚染引き受け潮騒は今日も明日も打ち返すのみ
月明かり程の灯りも見えざりし破壊の里の先も見えざり
汚染水漏れた漏れない言うまえに多重防護を備えぬ不思議
月見ればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里
月やらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして 在原業平
思いわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり 道因法師
ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき 藤原清輔朝臣