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トロルお爺の”Satoyaman”林住記

生物生産緑地にて里山栗栄太が記す尻まくりワールド戯作帳

**五年霧中

2016-03-11 | 大震災
     櫛の歯の欠けゆく如し仮設屋で希望を絞る明日朝のため

     目覚むるは結露のしずく顔に落つ窓の霜花暁に染む

     未だこぬ桜前線今日も待ち五回目の春花色は見ず

     名残り雪白一色に痕染めてさて何色に我ら築かん

     根を下ろし孫の代にはこの土地も木々豊かなる郷となるべく

*爺婆の一日は長く一年は短い

2016-02-11 | 大震災
       郷追われ流浪の仮設化石の身

       未決囚ごとき五年の仮住まい

       核家族家族拡散核により

       風花に吹かれて立てり石囲い

       雪時雨忍また忍のさざれ石

*温故知新

2016-01-11 | 大震災
 わたつみ浪で歌う結露も凍る夜やなみだ
       櫓の声波をうつて腸氷る夜やなみだ   芭蕉

 死にもせず仮設の果てよ申の年
       しにもせぬ旅寝の果てよ秋の暮     芭蕉

 仮設ゆえ幾つも追われまた初日
       鶯のいくつも捨て初音かな       櫓玄

 古里と忘るる雪の原続く
       降るをさへわするる雪のしづかさよ   素檗

 行春や生者瞑目浪の音
       行春や選者をうらむ歌の主       蕪村

*浪の記憶

2015-12-11 | 大震災
         引き波に板子すらなく浮き沈み

         没し聞く泡も器物も阿鼻の声

         町燃ゆる沖のわが身は闇の果て

         沈すれば泡音奏でるレクイエム
 
         浪の先木霊と紛うさようなら

*夢の跡

2015-11-11 | 大震災
         雪時雨未だ立ち寄る自宅痕

         離れた手指は記憶すあの手先
   
         悔やみつつ安らぎ願う鉛空

         去る人も来る人もおる子守柿

         四季は空くうの四季色もみじ照る

**原子炉

2015-10-11 | 大震災
 高き屋に昇る日の丸かきろいに原子の釜戸にぎわい始む
     高き屋に登りて見れば煙立つ民のかまどはにぎはひにけり     仁徳天皇
  
 稼働せば溜まるものとは知りながら今使いたい孫子への付け
     明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな  藤原道信

 瓦解炉に風は吹きしく秋の浜固着の出来ぬ塵ぞ散りける
     白露に風の吹きしく秋の野は貫きとめぬ玉ぞ散りける         文屋朝康

 原子炉の張り裂け崩れ瓦解なる三炉の沖に出でし月かも
     天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも      阿倍仲麻呂

 大丈夫と思えた我ら自らの砂城の上で汚染拭はむ
     丈夫と思へるわれや水茎の水城の上に涙拭はむ           大伴旅人

**悲願・悲観・彼岸

2015-09-11 | 大震災
 汚染水ニュースは聞けぬこの頃のタンクご無事におられますかの

 もみじ葉を映す水面の奥底の朽ち葉に積るセシュウム粒子

 爺なれば数値などより帰宅して祖霊の土地で無念の往生

 復興は絵空事なり高線量生活視点無き除染策

 天高く彼岸なれども悲願さえ此岸に居ては悲観なるなり

*果てなき上り坂

2015-08-11 | 大震災
       子を持たぬ決めて定職廃炉員

       積算は増えて手当は減るばかり

       自死もあり憤死もありの汚染地図

       成人し定年までは廃炉員

       贖罪の思い仏も鎮まらぬ

       この日から稼働するのか南無阿弥陀

**除染は踊る

2015-07-11 | 大震災
 凍土壁良くも悪くも泥縄の泥船浮かす狸とむじな

 ALPSや山越えられぬもどかしさ装備とっかえ言い訳ひっかえ

 汚染区の洗浄よりは洗脳で白塗りするが経費削減

 相乗りて除染に喰いつく芸達者あの手この手でピンハネ経営

**沈黙の郷

2015-06-11 | 大震災
     あるじ居ぬ家に戻りしつばくろの雛鳥の数寂しかりけり

     新緑の丘陵満たすさえずりを聞く人も無き郷は寂寂

     人住めぬ郷に溢れる草虫の昼キリギリス夜は万唱

     肉として出せぬベコ等を活かす道国は殺せの不都合と見ゆ

     ベコ等は吾が子だめんこい子活かすよ一条地獄の光なれば

**田作りに立てば…

2015-05-11 | 大震災
 忘れない記念の桜ポツポツと花を着けたり供養の白花

 代掻きの田毎の山は笑えども植える早苗のコメは捨て米
 
 忘れ得ぬ街の賑わい雲の果て今は盛り土のああ土饅頭

 震災は永久に終わらぬ被災民集落限界桜満開

**しばれる身

2015-04-11 | 大震災
 身ひとつ船と覚えて浮かせれば里は紅蓮に沖は漆黒
 山々の形おぼろに雪は降る瓦解の町に白布掛けたり
 日も暮れて薪となりし町並みは雪降る空に炎吹き上ぐ
 この郷の津々浦々を覆い行く雪は天より怒涛沖より
 冬過ぎて春来れどもこの日ゆえ心は戻る厳しき冬に
 浪は来る雪の降る中逃げる身の足は進めど気は後ろ髪

**今月今夜

2015-03-11 | 大震災
 送り火と見紛うばかり浪の上乗って去りゆく別れの声は
 照らしても雪の降る先しんとして届かぬ闇に声すらもなし
 冷たさは感じぬこの身にじみ出た頬の一筋温かりけり
 喉切れよ声のかぎりと叫んでも全て押しゆく得体なきやつ
 カチカチと時刻みゆく我が顎を止める術なき呑まれゆく里
 てんでんこ南無阿弥陀仏と唱えつつ委ねたこの身浪のまにまに

*廃屋の春

2015-02-11 | 大震災
         イノブタは先住民の態度なり
         ウリ坊の跋扈する家花を置く
         骨牛の牛舎に走る大鼠
         初詣牛舎のむくろ神酒捧ぐ
         鎮魂の再起復興向こう岸

*新たな年

2015-01-11 | 大震災
        賢治の詩思い出しつつ除夜の鐘
        仮住まい未だ離散で年は明く
        初春やあの日に勝る処理地なり
        故郷は茫々となり雪の下
        粉雪も灰に思えし初やしろ