「母を探し求めて/メェイとなく母のない仔山羊(こやぎ)/それがあわれだと/鼻をつまみ 母山羊の声を真似(まね)て/メェイとないてみせた母さん−その声をいま真似て涙ぐむわたし」。詩人、サトウハチロー「母を探し求めて」。母山羊の声色を使う「母さん」がユーモラスで心やさしい。「母の日」である▼「母さん」が仔山羊を慰めようと声をまねたのはやはり仔山羊にわが子を重ねて思ったからだろうと想像する。もし母である自分がいなくなったら。仔山羊の寂しさが「母さん」には分かったはずだ。やさしさの「おすそわけ」と呼びたくなる▼昨年、国内の出生数は八十万人をついに切った。子どもが減るということは母親になる人、父親になる人が減るということだろう▼子に対する親の愛情量を数値化することはできないが、その量を明るい赤い色で示せるならば、子が減っている以上、日本列島は心細いピンク色になっているのだろう▼ピンク色の国ではあの「母さん」のように、よその子にもわが子を思う、やさしさの「おすそわけ」もあまり期待できないか。同時にお母さんの気苦労もお父さんの事情も理解されにくい社会かもしれない。経験がないと、子育ての大変さを理解するのはなかなか難しかろう▼少子化と「少・母親」化。どうも殺伐とした時代を想像してしまう。心細く「メェイ」と鳴くしかないのだろうか。
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