愛知生まれの漫画家、棚園正一さんは40代。小、中学校時代は不登校で自分は「普通の子」でないと悩んだ▼心の支えは少年ジャンプに載る鳥山明さんの漫画『ドラゴンボール』。家で独りキャラクターの絵を描き、自分の漫画作品もかき始めた▼母が鳥山さんの小学校時代の同級生で、人を介して中1の時に会えた。学校に行かなくても漫画家になれるかと聞いたら「行かなくてもなれるけど、行った方が学校の話とかをかけて便利かも」と言われ、その程度のことかと楽になった。普通であることへの呪縛を解く言葉だったらしい▼鳥山さんが亡くなった。愛知が生んだ人気漫画家の作品は世界で愛された。思えば、出世作『Dr.スランプ』も「普通」と縁遠い世界だった▼人型ロボットのアラレちゃんが騒動を起こす舞台のペンギン村は人間も、しゃべる動物も、怪獣も共存する。宇宙から地球征服に来て失敗したニコチャン大王にも居場所がある、ゆるい空間。ウンチの形のうんちくんもいた。ハチャメチャさに夢中になり、ひとときでも夢中になれたから救われた。そんな子はどれほどいただろう▼以前に地元の清須市立図書館が広報紙にインタビューを掲載した。「ペンギン村のモデルは清須説」をただすと、答えは「モデルなんて存在しません。あんな変な村、あるわけないですもんね」。本当は、どこかにある気もする。
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