離陸に失敗したチャーター機は空港のフェンスを越え、住宅に衝突し、大破する。乗っていたのはイングランドのサッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドの選手ら。1958年の航空機事故「ミュンヘンの悲劇」である。主力選手を含め大勢の人が犠牲となった▼サッカー元イングランド代表の名選手ボビー・チャールトンさんが亡くなった。86歳。ワールドカップに1958年大会から4大会連続で出場し、66年大会で英国に初優勝をもたらした立役者である。オールドファンは規律を重んじるプレーと華麗なシュートをご記憶だろう▼「ミュンヘンの悲劇」を生き残った方でもある。ともにプレーし、笑い合った仲間を奪われてしまった。大きな精神的打撃を受けた▼どう立ち上がったか。著書によると「責任感」という。事故直後、目を覚ますと2人の同僚選手が危険も顧みず、救助活動に当たっていた。勇気ある光景が教えとなったそうだ。自分のことは脇に置き、チームをどう立て直すか、責任を持とう。その決意が傷ついた心を立ち直らせた▼福島の「Jヴィレッジ」の名付け親となるなど日本サッカーの恩人でもある。慈善活動に熱心で紛争地から地雷を撤去する運動にも取り組んだ▼サッカーを教えたのは母親だそうだ。お母さん、サッカーの腕前に加え、人のためを思った息子の生き方をほめているだろう。
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