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今日の筆洗

2018年12月16日 | Weblog

 漫画家の東海林さだおさんが魚のサバを激励するエッセーを書いている。煮付けて良し、焼いて良しのサバだが、大衆魚の中でも気の毒な立場なのだという▼同じ大衆魚でもサンマは佐藤春夫の詩「秋刀魚の歌」のおかげで格上扱いされる。イワシには「通や料理人に好まれるところがある」。ところがサバには売りがない。サバはサンマやイワシに「オレたち大衆同士だよな」と思っているのだが、当のサンマやイワシは「同じ大衆でもちょっと違う大衆なんだかんな」と見下しているというからひどい。しかたなくサバは定食屋さんや「缶詰界」という世界で生きていくことを決意した…。ショージ君独特の分析である▼サバが胸を張っている。その年の世相を象徴する料理や食品を選定する「今年の一皿」。二〇一八年はサバが選ばれた▼今年の漢字は「災」だったが、サバの受賞もこれと関係がある。災害が相次ぎ、防災意識の高まりによって今年、サバ缶の良さがあらためて注目されたそうだ▼必須脂肪酸を多く含み、健康効果も期待できるというサバ本来の実力も再評価され、今回の受賞となった。そういえばサバ缶が人気で品薄になる現象もあった▼実力はありながら、目立たなかった歌手が苦労を重ね、つかんだ栄冠。おごることも高級化の道も選ばず、いつまでも、大衆の食卓にあることを長年のファンは切に願う。

 

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今日の筆洗

2018年12月16日 | Weblog

 吸血鬼ドラキュラの弱点はニンニクと十字架だったが、東欧アルバニアに伝わる、女の吸血鬼の弱点はちょっと変わっている。豚の骨で作った十字架と血に浸した銀貨だそうだ。この吸血鬼、名をシュトライガという▼伝説によると蛾(が)や蠅(はえ)に変身して村人の血を吸う。生まれついての吸血鬼ではない。子どもをなくして邪悪な心を持つようになったと聞けば、気の毒な身の上でもある。ルーマニアではストリゴイ。英語名はストライガである▼アフリカの人々を苦しめる雑草にその名がついているのはトウモロコシなどの作物に寄生し、養分や水分を奪い、枯らしてしまうためだろう。憎き吸血鬼もこれまでか。名古屋大学の研究チームがこのほどストライガ退治の新薬開発に成功したという▼写真で見れば、ピンク色の花がなかなか愛らしいが、除草剤も効かぬ強敵。アフリカを中心に年間一兆円規模の被害をもたらしている▼開発した新薬は吸血鬼をあざむくのだそうだ。ストライガは寄生する作物がないとやがて枯死する。新薬の効果で作物がないのに発芽を促し、四日程度で枯れさせる▼新薬が安価なこともアフリカの人々をほっとさせるだろう。一グラム四十円程度で製造でき、その量があれば一ヘクタールほどの面積に効果がある。吸血鬼を撃退し、アフリカの食糧問題に力を貸す日本発の十字架と銀貨。効果を早くアフリカで見たい。

 
 

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