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今日の筆洗

2017年04月04日 | Weblog

 <目黒なる筍(たけのこ)飯も昔かな>。高浜虚子の句だが、なぜ東京の目黒なのかと不思議に思う方もいるだろう。とりわけ若い人はそうか▼その名を聞けば、高級住宅地やおしゃれなお店を連想する現在のかの地だが、昭和のはじめまではタケノコの名産地だった。江戸野菜で現在もよく知られるのは練馬大根、千住葱(ねぎ)、小松菜あたりだが、目黒のタケノコもそれに負けぬほど名を売っていた。目黒の名物はサンマではなく、タケノコだったのか▼美食家の北大路魯山人は「目黒の筍など名ばかりで何の旨(うま)味もない」と書いているが、一般的には太く、柔らかいと評判だったそうだ。<昔かな>の東京のタケノコを食べてみたくなる▼目黒産の大半は孟宗竹だったと聞く。名は中国の「二十四孝」の一人、孟宗からきている。病弱な母親がタケノコを食べたいと訴えるが、季節は冬。孟宗は雪を掘り続けるが見つかるはずがない。すると天が心打たれたのか、雪は消え、地中からタケノコが顔を出したという、あの伝説である▼そのタケノコ。この春はずいぶんと値が高い。有数の生産地、福岡県で低温が続いたのが原因というから天が味方しなかったようである▼料理をする同僚に聞くとスーパーでは一本千円近いというから驚く。手を出しにくいが、しばらくすれば出荷量も増えるそうで孟宗の母上にはもう少しだけ待っていただくとする。