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今日の筆洗

2016年11月21日 | Weblog

 脚本家、倉本聰さんによる北海道を舞台にした作品には駅がしばしば描かれる。このドラマの第一話もそうだ。<布部駅ホーム 列車がすべりこむ。ホームにおり立つ五郎、純、蛍。三人、階段のほうへ歩く>。代表作の「北の国から」。布部駅には、<北の国此処(ここ)に始(はじま)る>という倉本さん直筆の看板がある▼布部駅のある、根室線富良野-新得間も廃線の検討対象に挙がった。JR北海道は深刻な経営状態を踏まえ、同社単独では維持困難な十路線十三線区を公表した▼対象は同社運行在来線の約五割。今後、沿線自治体と協議していくが、中には悲しい別れも避けられぬ駅もあろう▼あのドラマの第三話にこんな場面がある。布部駅から東京へ帰る純少年(吉岡秀隆さん)を一人の老人(大滝秀治さん)が見送る。こんな昔話をする▼入植した仲間が次々とこの地を去った。「仲間が四軒いっしょに離農してな。わし、やっぱり送りに来たもンだ」「そんとき心ん中で正直何を考えていたかいおうか」…。「お前ら、いいか。敗(ま)けて逃げるンだぞ」「逃げ出して行くンじゃ」「そのことだけはようおぼえとけ」▼北海道に限らぬ。JR他社も地方に赤字路線を抱える。過疎化や少子化。結局、止める手だてが見つからない。そして廃線か。「敗けて逃げるンだぞ」。あの言葉が、日本という社会全体に向けられている気がする。