本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『大江戸生活体験事情』 石川英輔、田中優子

2007年03月31日 | 歴史


大江戸生活体験事情.jpg


東京都の知事選が近付いてきましたね。一週間後です。こじ付けで恐縮ですが(笑)、東京といえば江戸。江戸時代の生活を実験したおもしろい本を取り上げます。春休みに実験できそうなものもあります。


明治維新以来、欧米に追いつけということで、日本が近代化を急いだという歴史の大きな流れがあるためか、不当に江戸時代が遅れた文明しか持たなかったかのように言われることに、著者のお二人は異議を唱えます。


実際、当時の国民全体の教育水準は、寺子屋のおかげで世界最高レベルの識字率を誇りましたし、同じ考えを持つ童門冬二氏の 『和魂和才』 を読みましても、産業の近代化こそされていませんが、学問レベルはかなりの水準だったと感じます。


本書は江戸時代について多くの本を著している二人の先生が、これまでの集大成ということでしょうか、二年間に渡って実際に江戸時代にあったものを体験してみようということで、その体験エッセイになっています。


ほんの150年ほど前は、電気もなく、マッチもなく、今の時計もなく、ペンや鉛筆もないわけです。そういう生活とはいったいどういうものかを実験してみようという企画です。どんなことをやったのか、目次を紹介しましょう。


知識はエネルギー
時刻がうみだすエネルギー
天体の動きで生きる快適さ
昔のこよみによる生活
旧暦を楽しく使う法
火打ち石で火をつける
火打ち石の体験
行灯の暮らし
行灯でものを見ると
書くこととその道具〔ほか〕



計算によれば、江戸時代は現在のなんと100分の1のエネルギーで生活をしていたそうです。そう聞くと何となく原始時代を想像してしまうのですが、そんなことは全くなく、非常に知恵を働かせた節約社会が江戸にはあったということが分かります。 


火打ち石って使ったことありますか。行灯(あんどん)、当時の時計、こよみ、着物、履物、筆などを作ったり、使ったりして、その良さを強調するわけです。


なぜ勉強するのか』の中で、鈴木光司氏も述べているように、現代人の生活がきものやちょんまげでなくなったのは、洋服や靴の方が快適に過ごせるからに他ならないと思うのですが、そんなことを言ったらお二人に怒られそうです(笑)。


まぁ、確かに何もかも、あまりにも効率優先の世の中になってしまったので、下駄の良さや他の日本文化の伝統と歴史の知識を伝えていくことは、大変意義深いことだと思います。しかも今になって環境問題などを考えるヒントも与えてくれるかもしれません。


現代社会を、“便利さのために、空気や水を汚染し、国民が花粉症だらけで自殺者が多い世界” だととらえてしまうと、はるか江戸時代に郷愁を感じることも無理からぬことですね。しかも思いのほか便利そうなもの、快適そうなものがありました。


江戸好きのお二人は他の本で江戸のすばらしさ(現代文明の愚かしさも)を力説している時とは違って、単に楽しそうで、私も一つくらい実験してみたくなりました。もし生徒で興味を持つ人がいたら、チャレンジしてみて下さい。


人々の知恵こそが大きなエネルギーであるということがよく分かりました。


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大江戸生活体験事情

講談社

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『大江戸生活体験事情』石川英輔、田中優子
講談社:304P:560円

 


春の草花

2007年03月31日 | Pictures





 昨日は春期講習会の谷間。塾に通っていた、元高校3年生や元浪人生たちが集まってくれて、お好み焼きやさんでの合格パーティーでした!


先々週の中3生とのボーリング大会といい、昨日のパーティーといい、まぁ、まぁ、まぁ、受験が終わった連中は、よくしゃべるし、とにかくものすごく食べる!毎年のことながら実に頼もしいです。


本当は、たくさん撮ったにこにこした写真をアップしたいのですが、肖像権やらプライバシーやらありますから、とりあえずやめて…、

またまた、春の植物です。みんな名前が言えるかな?


(家族が帰省して写してきたものです。ご笑覧ください)

 

 


01.jpg

 

 

つくし.jpg

 

花ブルー.jpg

 

花赤.jpg

 

 

たんぽぽ.jpg


 

 


さぁ、今日から春期講習後半!

 

来年も暖かい春が迎えられるように、みんな、がんばるぞ!

 

 



 

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『蛇の石(スネークストーン) 秘密の谷』バーリー・ドハティ著 中川千尋 訳(アンモナイトの谷:改題)

2007年03月30日 | 児童文学・ライトノベル・子供向け


ヨの石(スネークストーン)秘密の谷.jpg

 
これも小学校高学年以上の生徒たちに、春休みにぜひ読んでもらいたい一冊です。以前ご紹介した 『ミラクル(辻仁成)』も忘れられない名作だと思いますが、本書もそれに劣らないすばらしい作品です。どちらも、母親をさがすお話しです。


たった一人での母親さがしの冒険ですが、『アルケミスト』のように魔法も奇跡も出てきませんし、太陽や風もしゃべりませんので、全然、売れてはいませんが(笑)、じっくり読んで、深く感動できるのではないかと思います。



ストーリーを紹介します。■~■



主人公のジェームスは15歳の少年で、飛び込みの選手。将来オリンピックも狙えるかというほどの有望な人材です。父親はその鬼コーチですが、普段は父母ともに優しい家庭です。


ただ、ジェームスは養子であり、両親はそのことをオープンに話してきました。それで幸せに暮らしていましたが、ある日の飛び込みの練習中に、父親が想像を絶する厳しい指示を出し、そのせいでジェームスの仲間に事故が起こります。


その時は激しく父を憎み、それをきっかけに親子にわずかな溝ができてしまい、どうしてもジェームズは自分の本当の親、自分の出生に関して知りたくなってしまうのです。

ついに両親をごまかして、飛び込みの合宿に行く途中、自分で本当の親を捜す旅に出かけてしまいます。生みの母が書いた、“サミー(ジェームスの元の名)をお願い” の紙辺と、自分がもらわれた時に身に付けていたアンモナイトを手がかりに。


そこからは、ちょっとした探偵なみの推理力と、思い切りのよい行動力で先の見えない冒険にいどみます。途中で知り合った人が力になってくれるなどして、とうとう産みの母に再会します。

最後、アンモナイトを見たお母さんは、それと悟り、
『幸せなの?サミー』 と聞き、それに頷くと『よかった』 と答えて、家族の方へ歩いていきます。

その後、ジェームスは家にもどり、元の生活の中で飛び込み選手として活躍します。




少年や少女が、成長する過程でどうしても、これまでの自分や家族の枠を超えて何かを知りたいと思う時期が訪れます。親子であるがゆえに、教えにくいことや、聞きにくいこともあるでしょう。

親のかわりに、塾の講師に聞いて、ことが足りれば良いのですが、どうせ親と裏でつながってるし(笑)、で、結局は 『勉強しろ!』 と言われることは目に見えていますから、本でも読もうと。


そして本では得られないものを得るために、本に書いてあることを自分の目で見てみたい、あるいは好きな本を書いた人の境地に近付こうと思って、きっと少年たちは旅に出るのでしょう。


冒険や旅を終えて自分が知ったことを、どういうわけか成長した子どもは心にそっとしまっておく。きっと、こういう時から、自分と自分の親を客観的に見られるようになるのだと思います。

非常にすがすがしい一冊です。自分の子が反抗期だと感じている親御さん、お子さんに薦めてみたらいかがでしょうか。

蛇の石(スネークストーン)秘密の谷

新潮社

詳  細


 

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『蛇の石(スネークストーン) 秘密の谷』バーリー・ドハティ著 中川千尋 訳
新潮社:219P:499円

 

 


『だから、あなたも生きぬいて (So Can You) 』 大平光代 (英語版:ブレナンジョン訳)

2007年03月29日 | 英語関連書籍


だからあなたも生き抜いて.jpg      So Can You.jpg



今日は医師国家試験の合格発表だったのですね。突然、かつての教え子が “合格しました” と教室に報告に来てくれました。そのお兄さんも、弟も通塾していましたし、もう中学生時代から見ていた生徒ですから、『あいつがドクターかよ~』 と、しばし感慨にふけりました。

昔から、心優しい少年だったので、わたしの方から、『医学部はどうでしょう。医者にしましょう』 とお母さん、そして本人に勧めた経緯があるので、今日のにこにこした顔を見て、本当にうれしかった。よかった~。

その彼が出た、その国公立大学の医学部の中で、同時に合格した仲間で最年長は50歳!だそうです。私のその教え子は現役合格ですから24歳。年が倍以上の同級生がいるなんてすごいですね。いろんな人生があるもんです。


さて、こうして塾や学校から巣立っていく人たちがいれば、当然、新しく入ってくる人もいるわけです。新学年の新学期がいよいよ近付いてきましたが、子どもたちは、誰と一緒のクラスになって、どんな先生が担任になるのか、わくわく、ドキドキでしょう。

でも生徒諸君!もし、思い通りにならなくても気にしない、気にしない。先生たちもお父さんやお母さんたちも、み~んな経験していることだけど、必ず新しい知り合いの中からよい友達ができる。(年が倍の人はいないだろうけどね(笑)…)


それに楽しいことも、つまらないこともあるのが学校で、楽しいだけなら遊園地。人を見かけだけで判断しちゃダメ。生意気そうな態度をしていても気が小さいやつ、怖そうな顔をしていても優しい先生、そういう人はいっぱいいるんだからね。

新学期、気持ちよくスタートするためには、前向きに前向きに!


さぁ、子どもたちに感動と勇気を与えてくれる一冊です。

いじめに関する本はこのブログでも、


遺書』  『ナイフ(重松清)』  『信さん(辻内智貴)』 

『オレ様化する子どもたち(諏訪哲二)
』 『みんなのなやみ(重松清)』 

『教室の悪魔(山脇由紀子)』



などを取り上げました。それぞれに書き方はいろいろですが、みな良書で考えさせられるものばかりです。


今日ご紹介する、『だから、あなたも生きぬいて』 も、非常に心に残る一冊で、帯にあるように大ベストセラーですから、ご存知の方も多いでしょう。中学生以上にはぜひ読んでもらいたい一冊です。

そして、その英語版 『So Can You 』 (直訳すれば、“あなただってできる” という励ましになるでしょうか)、があることを高校生諸君にも知ってもらいたくて、一緒に取り上げました。読みやすい英語だと思いますから、ぜひチャレンジして下さい。英語で感動できたら大きな自信になる!


いじめが原因で自殺未遂、通りすがりの人に助けられ一命は取りとめるも、中卒のまま、やがて極道の妻となり刺青まで彫ってしまいますが、一念発起して猛勉強、最難関の司法試験に一発合格という経歴を持つ大平氏。

異色の弁護士、というだけでは表現が足りないほどの超異色。まさに “奇跡の弁護士” とでも呼びたいようなキャリアです。私はもう何年も前に、テレビのドキュメンタリー番組で大平氏を知ったのですが、番組の最後に、ぱっと服を脱いで背中の刺青を見せたのですが、今でもその姿を鮮明に覚えています。強烈でした。


本当に些細なことから強烈なイジメに遭い転落していった思春期。中学生が割腹自殺を図るなどとは、他では聞いたことがありません。非行に走り、完全な人間不信に陥り、どこまでも落ちていきながらも、それでも、“誰かに真剣に叱ってもらいたかった” と告白します。


そんな時、再会したある人物の懸命の説得で立ち直っていくわけですが、その姿が実に感動的です。一人の人間が併せ持つ弱さと強さを凄い迫力で伝えます。いじめに見られる人間の残酷さと同時に、他人のために尽くす愛情も。


そして、読んでいくと、大平氏に起こったことは、“奇跡” ではなく、あなたもできる(So Can You) というメッセージになっているわけです。

少々のつらいこと、きっと誰にでもあるでしょう。そんな時はこの本を思い出して、ふんばってくれたらいいな。そう思います。

 

だから、あなたも生きぬいて

講談社

詳細

英文版 だから、あなたも生きぬいて

講談社インターナショナル

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P.S. 本書とは関係ありませんが、大平氏、最近まで、大阪市の助役をされていましたが、よく事情は知りませんが、また議員らに“いじめ”られていた印象で辞任。何かに利用され、都合が悪くなって放り出された感じがして、非常に苦々しく思いました。

まだ40台前半の大平氏、弁護士の方と再婚されたそうですが、人生後半に向けてさらなる活躍を祈らざるを得ません。

 



『だから、あなたも生きぬいて (So Can You) 』大平光代著 英語版:ブレナンジョン訳
講談社: 291P(英語版229P):579円(英語版756円)

 

 


『ガリレオ工房の科学遊び(PART1.2)』 滝川洋二

2007年03月29日 | 中学受験関連【算数・国語参考書など】


ガリレオ工房の科学あそび1.jpg     ガリレオ工房2.jpg



春休みですから、生徒たちには、普段なかなかできないような実験や読書をしたり、自然に触れてくれると良いのですが、残念ながら夏休み、冬休みと決定的に違うのは、会社はお休みにならないということ。

学校は休みでも、お父さん、お母さんはいつものように仕事があって、ゆっくり一緒に勉強を見たり、遊んだり、旅行に出かけるようなことは期待できませんよね。我が家もそうです。はい。

まぁ、中学生くらいになれば良いのでしょうが、小学生だとちょっとさびしい。だからといって、その時間がテレビやゲームに行ってしまうのはもったいないです。そこで、ちょっとした工夫で楽しめる科学の遊びの本をご紹介しておきましょう。


本書の実験の特徴は、簡単にできるという点です。PART1には、70ほどの実験がありますが、そこで用意するものは、例えば、コップと水だけ、紙とせっけんだけ、といった具合です。

つまり、小学校の低学年でもお母さんに手伝ってもらわずにできそうな実験ばかりがならんでいます。子どもにはマンガで実験のやり方をわかりやすく説明し、大人用には、実験の意味や解説など詳しく説明が載っています。実験はたくさんありますから、できそうなものから選んでやれば楽しめると思います。


一つ例を挙げますと…

 
 ■ 
実験 ■


コップに水を入れます。

はがき一枚でふたをして手で押えたまま水が出ないようにひっくり返します。

そして、はがきを押えている手をそっとどけると、水は…?



やってみてください。びっくりすると思うのですが…。大事なはがきを使わないでくださいよ。いらないはがき、あるでしょう、塾からのDMとか(笑)。それぞれの目次を紹介しておきます。


PART 1

 パパはミラクル
 ママはミラクル
 サラリーマンもミラクル
 学校でもミラクル
 リサイクルなミラクル
 アウトドアでミラクル
 自然とお話しミラクル
 ちょっとハリキリミラクル


PART 2


1章 科学のモノづくりで頭を活性化
2章 科学であそぶと賢くなる!?
3章 科学のバトルで熱くなれ!
4章 科学実験のリターンマッチ
5章 あやしい?科学なコレクター
6章 科学で中身を見たくなる
7章 小さなビッグプロジェクト・サイエンスあそび
8章 もっと工夫の科学あそび



子どもたちに、科学を身近に感じてもらおうと、楽しい実験を紹介した本はたくさんありますが、共通した難点は、実験の準備が面倒だということではありませんか。何か薬品を使うとなるともちろんですが、ちょうど良い大きさのダンボールがないとか、はりがねやセロテープが足りない、などなどと。


当教室でも、学校の勉強以外に、理科の実験をやることで生徒に興味を持ってもらいたいと思っていますが、準備は普段の授業以上に時間も神経も使わなければいけません。失敗できませんからね。


でも本書なら、最小限で大丈夫でしょう。


ガリレオ工房は他にも多くの実験の本を出版しており、今回は簡単にできる小学校低学年用のものを取り上げましたが、より高度なものもあります。興味のある方はご覧になって下さい。

 ⇒ ガリレオ工房HP

 

ガリレオ工房の科学あそび〈PART1〉家族そろって楽しめる新ワザ70選

実教出版

詳細

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おかげさまで、上がってきました。ありがとうございます。

今日は講習会前期最終日、あとから頑張ってもう一つUPするつもりです。

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『ガリレオ工房の科学遊び(PART1.2)』滝川洋二著
実教出版:各997円

 




 


『虚飾のメディア- 小説巨大テレビ局 』北岳登

2007年03月28日 | 小説
 

虚飾のメディア.jpg



「発掘!あるある大事典II」 の捏造問題で、民放連が関西テレビを除名処分にするそうですね。行政介入を阻止したいためとはいえ、かなり厳しい処分ということで、経営的には大打撃を受けるようです。まぁ、当然ですね。


また日本テレビが 「NEWSリアルタイム」 という番組で “パトカー囲み集団挑発・憤激!群馬県警VS暴走族” のド派手なタイトルで特集した報道をめぐり、スタッフがその少年らに事前に撮影予定を伝えて暴走を誘発した疑いがある、とも報道されました。こういう事件も何度かありました。うんざりです。


年度末をむかえて、今、テレビ番組の再編の時期ですが、これを機に反省し番組の質が上がるなどとは、とても期待できません。以前は、授業で生徒たちに 『○○という番組が参考になる』 というようなことを言っていましたが、今ではほとんどありません。


私は本当にテレビを見なくなりました。おそらく、ニュースステーションなどが10時ちょうどではなく、9時54?分に始めたり、必ず他の番組が始まる11時くらいに巨人戦の結果を流し始めた頃からでしょうか(笑)。なんかそういうのに付き合うのがバカバカしくなっちゃったんですね。そんなことないですか?


スポーツ中継にアイドルが出てきて試合の前に歌を歌ったり、何度も何度も同じシーンを繰り返し見せ、絶叫する大げさな盛り上げ方、“このあとすぐ” って言っておきながら、ずっと待たせる視聴者をバカにした態度、ウケを狙って目立とうとする政治家…、挙げればきりがないくらいですね。


それらはみな、番組を良くする工夫ではなくて、視聴率をあげるための工作ばかり。誠実さのカケラも感じさせません。

テレビCM崩壊』 というマーケティングの本が売れましたが、確かにここ数年の巨人戦のナイターの視聴率の落ち方などが象徴的で、視聴者全体が昔と大きく変わってきて、テレビに飽きてきているのかもしれません。


さてこの小説の舞台はテレビ局。テレビ業界にとって視聴率がどのようなものか、よくわかります。

筆者は全国紙の記者から民放テレビ局のプロデューサーをしたあと出家をし、現在は僧侶だそうです。やっぱ、懺悔(仏教では、さんげ)しなきゃならないのでしょうか(笑)。いや、ホント、まともな人間ならイヤになるはずだと思います。


主人公は “関東テレビ” の看板プロデューサーです。社内抗争や外部プロダクションとの癒着などの問題があり落ち目になっていた、あるニュース番組のてこ入れのためにその担当になります。

この会社のトップは “アベツネ” といいます。日本テレビじゃないですか(笑)。“広告代理店の電王 (電通でしょ) が官公庁、大手民間企業に張り巡らしたネットワークの威力は絶大で、テレビ番組のスポンサーを入れ替えるのは意のまま、番組生殺与奪権を握っている”、 のだそうです。


また “裏番組の『ステーション・ニュース』の鵜目広志が年収2億円、隣で下手なニュース読みしている渡野辺真里が年収8千万円” 。これもどこか他で聞いたことがあります。もっと高かったような気が…。

他にもいろいろと暴露的要素がちりばめられ、これらはどうも業界の真実のようで、へ~、と思いながら、おもしろく読みました。

主人公の打つ手が当たり、番組の評判が上がり始めた時に、視聴率操作の疑惑が発覚します。後はお楽しみ。


ダイヤモンド経済小説大賞の佳作を受賞した作品で、確かにおもしろくて一気に読めるのですが、本音をいうと、もっと劇的な展開や複雑なストーリーが欲しかったですね。あるいは逆にまじめに批判した新書のようなものを書いて欲しかった。いずれにしろ、次を期待したい著者なんですが…。

ダイヤモンド社のサイトで、最初の10ページほど読むことができます。興味のある方はご覧下さい。

 ⇒ 『虚飾のメディア- 小説巨大テレビ局 』北岳登 (立ち読み)



視聴率を上げることが至上命令だというのは、予想通りなんですが、だからといって広告代理店や親会社の新聞社とのつながりなど、あまりにも巨大な組織、莫大なお金が関係しており、とてもひとりのプロデューサーで何とかなる問題じゃないんですね。

テレビ局間の視聴率争いは熾烈ですが、結局新規参入のない世界ですから、やりたい放題なんでしょうね。ギャオやWOWOWが民放テレビ局と同じように見られるようになれば、かなりのインパクトになると思うのですが…。オウム事件報道で、“TBSは死んだ” と筑紫哲也氏は言い切っていましたが、どこか変わったのでしょうか。


昔は特定の娯楽番組の子どもに対する悪影響を心配したものですが、ニュースや情報番組まで、ここまで質が落ちたり、ウソの情報をたれ流されたのでは、子どもだけでなく、視聴者全体の知的レベルに影響が出るはずです。

虚飾のメディア

ダイヤモンド社

詳細
テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0

翔泳社

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『虚飾のメディア- 小説巨大テレビ局』北岳登
ダイヤモンド社:252P:1680円

 

 


『日本の歴史をよみなおす』 網野善彦

2007年03月27日 | 歴史


日本の歴史をよみなおす.jpg

 

歴史に興味のある人もない人も、春休みにぜひ読んでもらいたい一冊です。

中学生だとちょっと難しいかな。テストのためだけの脈絡のない年号暗記ほどつまらないものはないと思いますが、その逆で、歴史をこれほど生き生きとしたものとして解説してくれる先生は少ないでしょう。

教科書の歴史を否定する、といっては言いすぎですが、いわゆる根拠のない通説とか、誤った思い込みなどを徹底的にはがしてくれるという感じでしょうか。専門的な分厚い本もありますが、本書は若者向けに語り口調で書かれています。


日本人はどこから来たのか、なぜ我が国の名前は “日本” なのか、天皇はどうやって生まれてきたのかなどなど、そもそも論とでもいうようなところから歴史を語っているのが良いですね。


本書では14世紀が日本の歴史のターニングポイントだという認識を元に、その頃の出来事が現代に与えた影響などを中心に考察します。中世は封建制の時代で、徐々に武士の力が皇族や貴族を凌駕するようになるころです。

その中で、“聖なるもの” と “俗なもの” の従来のバランスが崩れていき、文字や貨幣の普及が急速に進んでいきます。同時にそれまで聖俗の「聖」の部分に属していたはずの職能民たちが蔑視の対象となっていく、つまり「えた・」が発生するプロセスを分かりやすく様々な角度から論証しています。非常に興味深い指摘です。


以前ご紹介した『日本史の一級史料(山本博文)』を読みますと、自分で古文書を読んだりして、史料を研究できたら、どんなに楽しいだろうと思いましたが、本書でも 「一遍聖絵」 という絵を史料として、これまでの研究内容とは異なった新鮮な視点を提供しています。

氏は日本史の中でも中世が専門だそうですが、そのあたりの分析や、解説は独壇場、歴史は“科学”だと感じることができると思います。まだまだ日本の歴史には研究が不足している部分、従ってまだ解明されていないところがたくさんあるとしています。


残念ながら、2004年に亡くなっていますが、歴史研究に大きな足跡を残したのではないでしょうか。一方で、政治的な発言も目に付き、私も主張が “偏っているのではないか” と、一時期は敬遠していましたが、本書はおもしろい一冊です。


目次は以下の通りです。

第1章 文字について
第2章 貨幣と商業・金融
第3章 畏怖と賎視
第4章 女性をめぐって
第5章 天皇と「日本」の国号


P.S. 実は本書の続編があって、それもいつかご紹介しようと思っていましたが、本書とその続編を一緒にして文庫化したものが発売されていました。今気付きました。下の表紙のものです。2冊分ですから、こちらの方が良いかもしれませんね。 (409P:1260円です) 

ですから、ついでに続編の目次も紹介しておきましょう。本書は両方、入っているということでしょう。


第1章 日本の社会は農業社会か
第2章 海からみた日本列島
第3章 荘園・公領の世界
第4章 悪党・海賊と商人・金融業者
第5章 日本の社会を考えなおす

 


日本の歴史をよみなおす (全)

筑摩書房

詳   細

 

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『日本の歴史をよみなおす』 網野善彦
筑摩書房:237P:1260円



『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』 佐藤勝彦

2007年03月26日 | 科学
 

宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった.jpg


能登半島沖の地震、死亡者まで出てしまいましたね。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

東京都知事選のある候補は、私なら一週間前に予知できると語ったそうですが…。事実なら、ふざけてます。

大規模な地震が起きるたびに思い出すのが、以前ご紹介した『歴史の方程式』です。副題が“科学は大事件を予知できるか”です。最新の物理学の知見を利用して、地震や戦争なども含めた予知などを扱うのですが、阪神大震災の話から始まっている興味深い一冊ですので、よろしければレビューをご覧下さい。


 ⇒  『歴史の方程式』 マークブキャナン(著) 水谷淳(訳)




さて、同じ物理でも、宇宙に関する本です。

ここのところ、宗教・宇宙・神 などを扱った小説などを取り上げました。小説に出てくる宇宙、神が創造した宇宙はどこまでも文字通り “神秘的” ですが、逆に科学的に宇宙を扱った一冊です。帯にもストレートに “神秘のベールにつつまれた宇宙の謎を解明する!” とあります。大変読みやすい良い本です。


科学の進歩は人々の生活を便利にしただけでなく、その考えにも大きな影響を与えました。以前ご紹介した 『人はなぜ夜空を見上げるのか』 に詳しいのですが、コペルニクスガリレオの例に見られるように、科学は教会(宗教)と対立しましたね。

聖書の教えに反しているということですが、当時、科学は神の存在を否定する方向に働いたのでしょう。その時代からさらに現代の物理学では宇宙や地球をどう捉えているのか、それを解説した一冊です。


著者の佐藤勝彦氏自身が世界的な物理学者ですが、素人にも分かるように、平易な言葉で宇宙について述べています。高校生でも一般社会人でも、勉強として、あるいは教養として楽しく読めると思います。


数式はほとんど出てきません。アインシュタインの何がいったいすごいのか、ホーキングはなぜ注目を集めているのかということを教えてくれます。


以前、別の物理学者が、宇宙の創世についてはほぼ解明しつつあると書いているのを読みました。その時は本当だろうか、と疑っていましたが、本書を読むと、なるほどアインシュタインにも解けなかった、最初の “神の一撃” つまり宇宙誕生問題もいよいよ説明されつつあるのだなという気がしてきました。


ダーウィンが進化論を広めた結果、人間は神様が作ったわけではなくなってしまい、宇宙の誕生も科学的に説明されてしまうと、神様の居場所がますますせまくなっちゃっう気がします(笑)。


これから高校に入る人、中学生にはちょっと難しいかもしれませんが、地球がどうやってできたのかを解明しようという人がいる。そんなことを聞いたら読んでみたくなりませんかね。


目次です。

第1章 宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった

第2章
 アインシュタインは宇宙をいちばん知りたかった

第3章
 マザー・ユニバースからチャイルド・ユニバースへ

第4章
 ホーキングとビレンケン―「無」からの宇宙創生論

第5章
 宇宙論は観測の時代に突入した





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宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった

PHP研究所

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『脱グローバリズム宣言 パクスアメリカーナを越えて』 Rボワイエ 榊原英資 佐々木かをり他

2007年03月25日 | 政治・経済・外交


脱グローバリズム宣言.jpg


今日から 当教室 では、春期講習です。新受験生諸君!がんばろう!


さて…

日本にいるとどうしても海外のニュースはアメリカ・アジアが中心で、ヨーロッパ諸国の特に経済に関するものは非常に少ないですね。今日は欧州統合の基盤となったローマ条約が調印されてから50周年にあたります。


EU加盟27カ国、域内人口約5億人(アメリカの人口3億人)にも膨れ上がり、域内のGDPはアメリカと同レベルで、通貨のユーロは強くなっています。昨日・今日は50周年を祝い、その首脳がベルリンに一堂に会し盛大な式典が催されるそうです。


 ⇒ 駐日欧州委員会代表部


ただ、やはりここでも宗教の問題などが出てきます。政教分離とはいうものの、いろいろの国をキリスト教の価値観で統一を強めるのか、トルコなどの加盟を認め、さらに市場規模を拡大させるのかなどで意見が割れているようですね。

暗礁に乗り上げた欧州憲法批准作業が象徴するように、またイラク戦争の対応が国によって分かれたように、ここからの舵取りは本当に難しいだろうと思います。


それでも、環境・エネルギー問題などでEU市場の種種の基準を統一したり、強力な独占禁止法を背景に、米大手企業の合併を阻んだ例もあるそうで、「EU基準」が世界を動かす局面が増えていきそうです。


本書は、そんなヨーロッパ社会と日本がこれから先、どういう方向を目指すべきかというシンポジウムが元になって出来上がっているものです。2002年に出されました。

著者はRボワイエ(フランス経済学者)、オブユールヨーゲンゼン(デンマーク元農相)、ケネスカーチス(カナダ政治学者)、クリスチャンソテール(フランス元大蔵大臣)、モレノブルトルディ(イタリア経済学者)、榊原英資佐々木かをり青木昌彦藤本隆宏 他数名の経済学者です。

本書の原題(フランス語)を直訳すると 『世界化と諸調整ーアメリカ的特殊性に直面したヨーロッパと日本』 となるそうです。


全体的な主張をまとめると…

ITなどの進化もあり、情報を瞬時に共有することによって、国家間の依存関係は確かに深まったものの、それがある一つの形に収斂していくのではなく、その事態に対処する方法はむしろ個性化、多様化している” というような感じでしょうか。


すでに経済だけでなくさまざまフィールドで用いられる「グローバリズム」という言葉ですが、怪しげな解説、アメリカイズムとの混同、普遍的なものととらえてしまう過ちが見られると一様に指摘します。

著者たちはそのことに対してそれぞれの立場から警告を発しています。歴史のない国(アメリカ)でできたモデルが様々な長い歴史を持つヨーロッパ、日本でそれほど簡単に根を下ろすはずはないし、これまでのモデルも同様であったと。


世界にはアメリカ型の金融資本主義だけではなく、様々な資本主義があり、実際にアメリカ以外では金融資本主義ではない資本主義が成功しているとして、いくつかのモデルを紹介します。大前健一氏などが主張している「グローバリゼイションによって国民国家の行動能力は解体される」という見込みは、的外れであるという訳です。


既にアメリカ型金融資本主義は貧富の差の拡大など、馬脚を現しているのであり、それに気付かずにグローバリズムをとらえてしまうと、とんでもない過ちを犯すと主張しています。


専門用語もいくつか出てきて少々難解ですが、知らず知らず私自身アメリカの学者の意見ばかりを受け入れてきたことに気付かされ、驚き、反省しました。


指摘されれば当然のことなのですが、既に日本と同じような問題に直面し、それを克服しつつあるヨーロッパ人の持つ冷静な意見に耳を傾けない手はないかなと感じた次第です。

もう一つ、現在のEUを見ていて、アジアではとてもこのような市場統合は難しそうだということです。トルコ加盟の件を見ても分かりますが、やはりある程度共通の政治経済などの社会制度、価値観、あるいは宗教がなければ無理かなと思います。




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『脱グローバリズム宣言』 パクスアメリカーナを越えて』 Rボワイエ 榊原英資 佐々木かをり他
藤原書店:262P:2520円

 

脱グローバリズム宣言―パクス・アメリカーナを超えて

藤原書店

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『星のアカバール』 オグ・マンディーノ バディ・ケイ(著) 牧野・M・美枝(訳)

2007年03月24日 | 児童文学・ライトノベル・子供向け


星のアカバール.jpg


アルケミスト』 では、錬金術師に導かれる主人公が、身近にあるものをすべて捨ててでも、夢だけは捨てず、ピラミッドにある宝物を追い続けることで、奇跡を起こすという物語でした。賢者の石 をあきらめずに求め続ける人も描かれます。

同じく、奇跡を起こす、“あきらめないで信じることで、望みがかなう” ということを示す小説であっても、逆に “賢者の石など無いのだ!” と、主人公を叱りつける一冊をご紹介しましょう。おもしろいですね。


オグ・マンディーノは10年ほど前に亡くなりましたが、『十二番目の天使』『この世で一番の奇跡』や『史上最強の商人』などの作品が、世界中で何百万部も売れた作家です。

ご紹介する本は『アルケミスト』以上に宗教が色濃く出ていて、やはり日本では苦手な人もいるでしょう。ただそれを割り引いても夢のある一冊だと思います。


本書の舞台はフィンランドのラップランド。いきなりですが、そうです、サンタクロースが住んでいると言われているところですね。この極寒の地に生まれた一人の才気煥発な少年トゥロが主人公です。


ストーリーを紹介します。■~■




両親と妹の4人で幸せな生活を送っていた少年トゥロの家族に、ある日突然、信じられない不幸が降りかかります。トナカイの扱いに失敗したトゥロを助けようとして、父親が命を落としてしまうのです。

一家を支えるために働き続けた母親も、過労のためか突然死亡してしまい、運命が一気に暗転します。残された兄妹二人だけで人の世話にならずに生きていこうと決めたのですが、その冬は猛烈な嵐が村を襲います。トゥロたちだけでなく、村中が食糧不足、燃料不足に見舞われ、パニックに陥ります。

絶望的な状況下、トゥロは自分が上げた凧で星をつかめるという、夢で見たことを信じて、なけなしの金をはたき、あるだけの糸を買い込み、嵐の中、凧を高く高く上げます。なんとその夢は実現し、アカバールという名の星がトゥロのところの木に降りてきて二人は友人になります。奇跡が起こったのです。

何万年も生きてきた星のアカバールは、トゥロに人間の物質主義などのおろかさを説きます。賢者の石に象徴されるような、一攫千金を求める人間のおろかさを指摘します。そしてどうすれば地球が救われるのかをトゥロに教える、君は選ばれた人間なんだとほのめかします。

村は昼間でも日の昇ることのない冬の北極圏付近、アカバールの放つ光と熱があれば、村は救われるというので村中が大騒ぎ。案の定、そのアカバールを自分のところへ置いて欲しい人たちの奪い合いが始まります。

やっと話しが付いて、アカバールを移動させる際に、作業がうまくいかず、アカバールを木から転落させてしまい、メッセージを言えないままその場で絶命させてしまいます。

たった一つの希望を失った村の重鎮たちは、トゥロに凧を使ってもう一つ星をつかまえてくれと懇願します。人々のために再び、トゥロは命がけで、奇跡にいどみ、アカバールの友人の星ヤーナを同じ木に降ろすことに成功。

ヤーナはアカバールから聞かされてきたメッセージをトゥロに伝えたあと、村のどこにでも自分は行くというのですが、冷静さを取り戻した村では、奪い合いはおきず、トゥロと一緒に時間を過ごします。

やがてヤーナが空に戻る日になって、もう一度凧を上げるのですが、なんとトゥロはヤーナと一緒に空へ消えてしまい、自らも星になろうとします。一人残された妹ですが、その後は幸せに暮らします。






つまり、この本では、賢者の石を夢見ることは富や名声だけを追い求める行為として批判されるわけですね。自然の法則に反したら人間は必ず滅亡するという強いメッセージが込められています。


オグマンディーノ自身、まもなく大学入学という時、これまで作家になることを薦めていた母親がなんと昼食をつくっている最中、急死してしまい、大学進学、そして作家への夢を同時に失うという経験をしています。トゥロとイメージがダブります。

軍隊時代にためたお金で、アパートを借り、作家に挑むも挫折。故郷に戻って、セールスの仕事に就き、結婚、娘が誕生しますが、借金でどうにもならず、アルコール中毒に。妻子は去り、仕事、家をも失っています。

そして『アルケミスト』の著者パウロ コエーリョと同じく、彼も放浪します。安酒を買う金のために、どんな仕事でもやりました。ついにはあまりのみじめさに自殺が脳裏をよぎるのですが、ある朝気づいた時には図書館の前にたっていたそうです。

そこで、成功哲学の本(自己啓発の類でしょうか) を読み始め、これを境に、マンディーノの人生は変わり始めるんですね。本書でも父親が息子のトゥロにふんだんに本を与えるシーンがあります。

マンディーノはある本に感化されて、その著者の会社に入ってからは再び猛烈に働き、次々と成功をおさめます。ついには世界的な作家になるわけですから、自分の人生が並の小説以上に劇的なわけで、まさに奇跡を体現しています。


アカバールは、キリスト教の教えを明確にトゥロ(人類)に伝えるために地球に来たことが分かります。地球上の一人ひとりにみな、一つずつ星が見守っているというメッセージ、人のために尽くした人間は、死んでも星になれるのだという勇気をたたえています。

きっと、どん底だと感じている人々を勇気付けてくれると思います。興味のある方はぜひ。


星のアカバール

ダイヤモンド社

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『星のアカバール』オグ・マンディーノ バディ・ケイ著 牧野・M・美枝訳
ダイヤモンド社:197P:1365円


『アルケミストー夢を旅した少年』パウロ コエーリョ著 山川紘矢,山川亜希子訳

2007年03月23日 | 児童文学・ライトノベル・子供向け


アルケミスト.jpg



“アルケミスト” とは “錬金術師”のこと。大人気の “鋼の錬金術師” は知っていても、本書を知らない、またハリーポッターの “賢者の石” は読んでいても、こちらは読んでいないという人はぜひ。

本書はブラジル人作家が1988年に書いたベストセラーの翻訳で、すでに世界20カ国以上で読まれている名作、古典とさえ呼べますね。ご存知の方も多いでしょう。

今日、都内の小学校の卒業式です。卒業生に贈る一冊で、春休みに読んでもらいたいですね。

一応…

“錬金術” というのは、簡単に言えば、安物の金属を高価な金や銀などに変えてしまう方法のことで、“賢者の石” というのは、それを可能にするために絶対に必要な材料、難しい言葉だと触媒(しょくばい)のようなものです。


昔の錬金術の話しなど欲張り者たちの夢物語、などとあなどることなかれ。現代化学の基礎のほとんどがこの錬金術の研究から生まれているのです。ヨーロッパを中心に世界中の多くの人がその夢を見てくれたおかげで、現代の進歩した科学ができたというわけです。

あのニュートンまでも錬金術を相当に研究したそうですよ。(Wikipedia)

錬金術師.jpg


さて、物語では一人の羊飼いの少年が、こつこつと貯めたお金を手に、エジプトのピラミッドにある宝物を求めて旅に出ます。

その旅の途中で出会ういろいろな苦難。素直な世間知らずの少年はだまされます。おどされます。なぐられます。盗まれます。殺されそうになって我を失います。挫折しそうになって、羊たちの元に帰りたくなるのですが、それでも夢をあきらめない少年を支えたものは何なのか・・・。

題名からも想像できるように、奥義を極めている錬金術師が大きな役割を果たします。“賢者の石” と “不老不死の薬” をどこまでも求める人々と、逆に疲れてすっかり安定を求める人々、厳しい砂漠や太陽や風の自然条件との交わりのなかで、もがき、成長する姿が印象的です。


命がけで賢者の石を競って探す中で、化学が発達したように、きっと不老不死の薬を追い求めた傲慢な人たちのおかげで現代の医療もあるはずです。人間は単純といえば単純、不思議といえば不思議な存在ですね(笑)。


こういった話は、日本の小説よりも頻繁に “神” や “魂” “運命” といった宗教的なことばが出てきますし、それがストーリーに大きく影響しますので、読みにくい、理解しにくいと感じる生徒もいるだろうと、最初は紹介するのをためらっていたのですが、アマゾンで見たらびっくり。

100以上のレビューがあって、多くが賞賛しているではないですか。杞憂だったとわかりました。ただし、ただしです、“大人が読め”という内容も多かった(笑)。


なるほど、その通りで、夢をあきらめているのは子どもより大人。

いつも書籍の売り上げランキングなどで、ビジネス書や自己啓発書がすごく売れていて驚くのですが、その意味するところは、やはり日本の大人たちが、あきらめそうになりながら、この少年のように懸命に夢に向かって努力しているということだと思います。大人を励ます一冊でもあるわけです。

という訳で、私ももう一度はじめから読んでみますと、一度目は大して気に留めなかったセリフの中に、自己啓発書などでも見られるような “至言” が多く散りばめられていてうなりました。


すでに人生を悟っている、錬金術師に導かれながら、人との出会いと別れを繰り返しつつ、危機を乗り越え目的地に近付いていく夢と勇気の物語です。

小学校卒業のみんな (大人の我々も) 夢に向かってスタート!

アルケミスト―夢を旅した少年

角川書店

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鋼の錬金術師 (11)

スクウェア・エニックス

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『アルケミストー夢を旅した少年』パウロ コエーリョ著 山川紘矢,山川亜希子訳
角川書店:199P:580円




『多聴多読マガジン 2007年春号』 

2007年03月22日 | 英語リスニング


多聴多読.jpg


とてもおもしろい本を紹介しましょう。季刊の英語リスニングの雑誌ですが、待望の春号が出ました。こういうコンセプトの雑誌はあまりないでしょう。小学生レベルから、歴史やイラク戦争を論じるものまで、いろいろな英語の情報が詰まっています。


例えば受験英語の弊害としてよく言われるのが、読解はできても会話ができないというものです(今は全体としてはウソなんですけどね)。そこでこの春号では、まず大学受験などで蓄えた知識と実用のギャップを埋めようというところから始まります。


どうやるかといえば、小学生が読むようなストーリーから日常語を身に付けてしまおうという発想です。で、この物語自体がなかなかおもしろい。徐々にレベルアップをして、ノンフィクションや大学入試でも扱われそうなレベルのストーリー、ニュース英語まで含まれています。


つまり絵本レベルから英字新聞レベルまでありますから、この雑誌だけで何かをマスターさせようというのではなく、自習においても、こういうやり方でやって下さい、他に同様の物語なり、他の英書はこんなものがありますよと紹介してくれています。

リスニング学習の目的がはっきりしている方は、紹介されているものへ進むのももちろん良いのですが、本書だけでも充分楽しめます。


多聴多読というだけあって、かなりの量があるのですが、その中にはシャドーイングの練習や、スピーキングの練習用の題材も含まれています。大学受験にはスピーキングはありませんので、私は英検の二次対策の指導しかしたことがありませんが、ここに書かれているアドバイスはなかなか有効だと思います。


また、TOEIC対策として、本書では新形式のテストを利用し、チャンクで聞き取るという練習コーナーもあります。全体の中で一番力を入れてページを割いているのはシャドーイングの解説でしょうか。勉強になります。


このようにレベルが易から難まであるだけでなく、アメリカ英語、イギリス英語もあります。スピードも速いものから遅いもの、内容もインタビューから物語やTOEIC問題タイプやノンフィクションなどなど、とにかく内容が盛りだくさんで、大学受験の英語とか、TOEICなどというように的を絞ったものではありません。

ですから試験対策のテキストを探している方には他のものが良いのでしょうが、英語全体を見渡せるようで、私は大変気に入っています。


先日コメントいただいた、フランさんのような方は一度、手にとって自分の英語の弱点とか、リスニングの問題点などをさぐってみたらどうでしょう。そのきっかけを与えてくれそうです。そしてそこから他へ進んで行ければ最高ですね。


多聴多読マガジン 2007年 04月号 [雑誌]

コスモピア

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『多聴多読マガジン 2007年春号』 
コスモピア:195P:1380円

 


『NEWS DIGEST The Japan Times(ニュースダイジェスト ジャパンタイムズ)』

2007年03月21日 | 英語関連書籍


News Digest The Japan Times.jpg


時事英語学習用の雑誌で、現在創刊から第4号まで出ています。

時事英語の教材として英字新聞、ジャパンタイムズを取ったことのある人なら分かると思いますが、隅々まで読みたいのですが、やはり英語力以前の問題としてボリュームが多すぎて難しいですね。デイリーヨミウリの方ならまだ何とかなるのですが、それでも何ヶ月にも渡って継続するのは相当な努力が必要です。

大学入試でも英字新聞から出題されることが多いので、私もよく見るのですが、長さと話題の点で、なかなか適するものを見つけられません。


新聞を取らずとも、ネット上に時事英語の教材になりそうな素材はあふれていますが、ネットの利用方法は知っていても、ネットで英語力を高めたという話は私の身辺では、まだ少ないですね。ipod などの普及でいずれ変わるかもしれませんが…。やはりできればこうしてCD付きの書籍の形の方が慣れていて使いやすいと思います。


本書はそういう方には最適でしょう。ジャパンタイムズに掲載された記事の中から20本が選ばれています。CDにその記事と簡単な聞き取りテストが入っています。作り方というか編集は非常にわかりやすい方法を採用していますから、使い手の工夫次第でいろいろ応用できると思います。


まずCDに録音された英文記事が左ページに書かれています。右ページにはそれに対して、読んで答える Reading Comprehension と、CDを聞いて答える Listening Comprehension の小テストが3題ずつ付いています。同じページ下にVocabulary があって、全部で7~8の語句解説が載っています。

ページをめくると、左に全訳と事件の背景説明、右側に小テストの解説と Keywordが一つ取り上げられています。一つの記事に対して4ページずつで構成しているわけです。


英字新聞の記事ですから、簡単ではありませんが、早稲田・慶応・上智レベルの私立上位校で、時事の話題が扱われる大学の受験生は夏休みくらいに一つチャレンジしてみると良いでしょう。

ただし語句解説は的を射ているので、学習者には助かるのですが、中レベルの学力の受験生にとっては、その数が少ないので、聞き取ることが難しい上に、そのあとスクリプトを見て、さらに自分で辞書を引く覚悟が必要です。

ですから、そのレベルなら、リスニングはさておき、リーディングのテキストになります。が、すべての話題が時事ですから、ある程度の知識がない場合は、使用は控えた方が良さそうです。他にもたくさん良い教材はありますから。


リスニング教材として使うのか、リーディングとして使うのかを考えて購入されることをお薦めします。また、生徒よりも、塾や学校の先生がさらに内容を厳選して生徒に読ませるには非常に使いやすいと思います。長さが一定で、話題が豊富ですから。私はまずリーディングのテキストとして読ませようと思っています。


CDは繰り返しがまったくありませんが、70分というボリュームです。TOEICで700点以上を目指す方の練習用というのがピッタリでしょうか。


どんな記事が載っているのか、以下に、目次を紹介しておきます。

1. 太陽系の定義を変更

2. 麻原四女が新たな後見人を希望

3. 誘拐された少女、両親になじめず

4. 盗まれたムンクの名画、発見か

5. 差別に苦しむアメリカのイスラム教徒

6. コカ・コーラの工場、カブールで稼動

7. 最後のネアンデルタール人は予想以上に新しかった

8. 次期首相は靖国に行くなと、米議員らが警告

9. レバノンにおけるイスラエルのクラスター爆弾は言語道断

10. 政変の舞台から姿を消すクーデター

11. カリフォルニア州、地球温暖化に関与したとして有力自動車会社を提訴

12. 馬の死にニューヨーク市民が講義

13. 米国の「対テロ戦争」での戦死者、9・11の犠牲者を上回る

14. 小児性愛者、奈良女児殺害で絞首刑

15. モナ・リザは二児の母だった

16. 「マイクロクレジット」のユヌスにノーベル平和賞

17. 国連安保理、北朝鮮制裁を決議

18. アメリカの人口、静かに3億を突破

19. 死刑判決で宗派間の亀裂深まる

20. 中絶をめぐる住民投票の敗北で、宗教右派は失望




興味のある方はジャパンタイムズのHPでCDを試聴できます。

 ⇒ http://bookclub.japantimes.co.jp/act/Detail.do?id=1235

The Japan Times NEWS DIGEST〈3〉

ジャパンタイムズ

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■ 本書は相互リンクの福禄太郎さんが教えて下さいました。■

太郎さんよく勉強されるんですよ。ぜひ訪れてみて下さい。(残念ながら、楽天広場からしかコメントやTBはできませんが…)

  太郎さんのブログ ⇒ 福禄太郎の書評と時事評論 



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『NEWS DIGEST The Japan Times(ニュースダイジェスト ジャパンタイムズ)』
ジャパンタイムズ:96P:1050円

 

 


『英文法をこわす - 感覚による再構築』 大西泰斗

2007年03月20日 | 英語関連書籍


英文法をこわす.jpg


大西先生の英語の授業は、私も大好きでいつもNHKのテレビ番組を録画して、繰り返し見たものです。一貫して、学校文法に頼らず、感覚で (あてずっぽうというのではなく) ネイティブのハートにせまるためのヒントを探っている印象です。


おそらくその道はとほうもなく険しいはずです。

たとえば、本書の帯に “theは「一つに決まる」 ときに使われる” と書いてありますね。ネイティブの the の感覚はそれだというのですが、今、辞書で the を引けば定冠詞(形容詞)として、あるいは副詞として合計20ほどの意味、用法に分類されています。中には30以上になる辞書もあります。


もちろんネイティブはその用法を分類暗記して使っているのではなく、自然に出てくるわけですが、その感覚を何とか学習者に伝えたいという熱意ですね。もちろん「一つに決まる」というだけでは、伝わりませんので、図を使ったり、さまざまな説明を加えます。

読んでいて英語講師である私は非常に勉強になり、授業で活かせそうなところも多々あるのですが、さらにそれを生徒に伝えるのはかなり厳しいですね。

一つ例をあげますと、固有名詞に the が付く特殊なものとして、新聞や、~一家、川、などがどの文法書にも載っています。通常、“覚えなさい” と用例を分類して教えるのですが、それを批判します。

大西氏は、分類して暗記するのではなく、ネイティブの心の大元にあるその the の感覚を何とか説明しようとするわけです。その考え自体はすばらしいと思います。


例えば新聞のタイムズ紙は 「The Times」 と the が付きますが、雑誌であるタイムは 「Time」 と言います。

ややこしいですね。大西氏の説明を抜粋してみましょう。なぜ新聞に the が付くのかという点です。


この疑問については、雑誌名には the が採用されることはあまりないという事実を考慮すればカタがつくだろう。 the は雑誌には荷が重いのだ。「1つに決まる」 には 「誰もがそれとわかる」 「際立っている」 という語感が付随する。日々創刊され、読者層も限られている雑誌にとって、そうした光り輝く王冠は大仰に過ぎるのだ。名称につく the はこうした実体と名称の間の微妙な駆け引きの上に成り立っている。


カタがつきましたか(笑)?私はこの主張に大変興味があって、実は賛成なのですが、この説明を生徒が納得してくれるとはとても思えないのです。まぁ、わかりにくいところで、しかも一部の抜粋ですから余計複雑に思えるでしょうが…。他はいくつも良い説明があるのですが、やはりイメージを伝えるというのは大変です。


目次は以下の通りですが、難しそうでしょ(笑)。

序章 回帰―機械から感覚へ、規則からイメージへ

第1章
 遍在―感覚は英語を覆う

第2章
 無機質―感覚の通わぬ世界

第3章
 虚構―日本語訳・規則・用法分類の絶望

第4章
 イメージの構築


という訳で、私にとっては、非常に勉強になる尊敬すべき大西氏で、著作もいくつも読んでいますが、生徒には薦められないでいます。大西氏もご自分がやろうとしていることが非常な難題であることを承知していますが、学校文法からの脱却を何としてもやり遂げるという強い覚悟がうかがえます。


第4章序文

あらゆる現象に血の通った感覚は介在する。それをイメージとして汲み取り、手渡す。その単純な動作はあらゆる作業に優先されなければならない。ここに至るまで私の主張してきたことは、ただそれだけのことだ。


とあります。圧巻なのは、その感覚で読み取った英文解釈の例として、最後に、バートランドラッセルの著作から、ある一節を引用し、解説しています。すばらしいです。


というわけで、生徒より英語の先生や、時間的に余裕のある方にお薦めしたい一冊です。つまり学校文法の批判を理解するためには、学校文法を熟知していなければならないわけです。そのレベルに達している生徒は少ないと思いますので、講師が読んで活かせる部分を活かしていくのが最良の本書の利用法だと考えます。

 

英文法をこわす―感覚による再構築

日本放送出版協会

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『英文法をこわす- 感覚による再構築』大西泰斗
日本放送出版協会:231P:966円

 

 


『入試頻出 構文とイディオム』 中尾孝司 (“英頻”との比較など)

2007年03月20日 | 大学受験【英語】参考書など


文とイディオム.jpg



本書は私が長年授業で使っている、大学受験用の英語構文・イディオム集です。どういうわけか、あまり売れていないようですが(笑)、類書の中では際立って使いやすい一冊で、多くの高校生に薦めたいテキストです。


載っている構文・イディオムの数は全部で800。当教室の高校生(2年生以上)には全員本書を渡し、暗記テストを実施しています。また私の授業では、浪人生まで含め、必ず本書を持参させ、“この構文は○○番に出ているから、確認するように”、とよく指示をします。(何番に何があるか暗記してしまうほど使い込んでいます)


すべて覚えきった段階でかなり英語の成績は安定します。もちろんいくらすばらしいテキストでも、最後までやらせるにはそれなりの工夫は欠かせません。生徒というのは“ブランド”に弱いので、無名テキストの良さを伝えるのは至難の技ですからね。


残念なところは、構文・文法のテキストとはいえ、見出し語や入試問題の改定がされていない点です。細かな部分で解説に加筆はされていますが、それだけでなく、口語表現と呼ばれるものを追加されれば、さらに良くなると思っています。


本書の最大の特徴は、前半の構文部分では、不定詞・比較などの文法分野別、次に結果・譲歩・程度など意味別に配置され、非常に詳しい説明がほどこされている点で、類書にはまず見当たりません。後半のイディオム部分では同意表現などをまとめてくれているのが大助かりです。すべて左ページに入試問題、右には解説という形です。


似たようなものに “英頻(えいひん)” と呼ばれる、大御所、受験英語の神様、伊藤和夫先生の書かれた 『英文法頻出問題演習』 という有名なものが駿台文庫から出ていますが、良い例文や問題が載っていても、解説が荒く、とても英語が苦手な生徒には薦められません。文法嫌いになってしまいそうですし、何を覚えたら良いのかわかりにくいと感じます。


また同じく、英頻といえば、今やこちらを指すぐらい、学校にも浸透し広く使われているのが、桐原書店の 『即戦ゼミ3 大学入試英語頻出問題総演習』 です。しかしこれも解説が淡白で、一通り終えた人が総復習するのには最適でしょうが、これから学ぼうという人には、やはりとても薦められません。私にはどうして多くの高校でこれが推薦されるのか実に不可解です。


本書なら、生徒一人でもある程度は進められます。実は現在は旺文社から出ていますが、かつては別の出版社が出していましたが、倒産して版権が移ったのでしょう。当時、大旺文社から継続して提供されると聞いてホッとしたものです。(ガーンと値上げしてしまいましたが)


構文・イディオムのセクションのあとに、それらを使った短い英文解釈問題(和訳)が付いていますが、これも独習をする人はぜひチャレンジしてもらいたいです。最後が例によって、バートランド・ラッセルの『幸福論』 からの抜粋(笑)ですが、そこまでできるようになればかなりの実力です。


その英文解釈は全部で50題ありますが、そこのセクションだけで、以前ご紹介した 『ポレポレ英文読解プロセス50- 代々木ゼミ方式(西きょうじ)』 の練習量に相当するのではないでしょうか。かなり難しいです。


私の授業では本書に載っていない構文や同意(反意)表現を、追加でさらに本書に書き込ませ、万全を期しています。入試英語は年々、少しずつ変わっており、気が抜けませんから。


また、800ある項目の問題文の全訳が別冊の小冊子で付くようになりましたので、それを利用すれば、上位の大学受験生では、英作文でどの構文を使うかという練習にもなります。


英頻などと異なり、本書には発音などの問題はないこと、会話調の表現、いわゆる口語表現が少ないという点は考慮に入れるべきですが、長く使っていることもあって愛着もあり(笑)、個人的には“受験生のバイブル” と呼んでも差し支えないくらいの一冊だと思っています。



P.S.
 アマゾンで見ますと表紙が別のものもいまだに出まわっているようです。下のようなものですが、内容は同じです。

文とイディオム.jpg

英語問題総合演習―入試頻出項目202

旺文社

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『入試頻出 構文とイディオム』 中尾孝司
旺文社:272P:1260円