東京都の知事選が近付いてきましたね。一週間後です。こじ付けで恐縮ですが(笑)、東京といえば江戸。江戸時代の生活を実験したおもしろい本を取り上げます。春休みに実験できそうなものもあります。
明治維新以来、欧米に追いつけということで、日本が近代化を急いだという歴史の大きな流れがあるためか、不当に江戸時代が遅れた文明しか持たなかったかのように言われることに、著者のお二人は異議を唱えます。
実際、当時の国民全体の教育水準は、寺子屋のおかげで世界最高レベルの識字率を誇りましたし、同じ考えを持つ童門冬二氏の 『和魂和才』 を読みましても、産業の近代化こそされていませんが、学問レベルはかなりの水準だったと感じます。
本書は江戸時代について多くの本を著している二人の先生が、これまでの集大成ということでしょうか、二年間に渡って実際に江戸時代にあったものを体験してみようということで、その体験エッセイになっています。
ほんの150年ほど前は、電気もなく、マッチもなく、今の時計もなく、ペンや鉛筆もないわけです。そういう生活とはいったいどういうものかを実験してみようという企画です。どんなことをやったのか、目次を紹介しましょう。
知識はエネルギー
時刻がうみだすエネルギー
天体の動きで生きる快適さ
昔のこよみによる生活
旧暦を楽しく使う法
火打ち石で火をつける
火打ち石の体験
行灯の暮らし
行灯でものを見ると
書くこととその道具〔ほか〕
計算によれば、江戸時代は現在のなんと100分の1のエネルギーで生活をしていたそうです。そう聞くと何となく原始時代を想像してしまうのですが、そんなことは全くなく、非常に知恵を働かせた節約社会が江戸にはあったということが分かります。
火打ち石って使ったことありますか。行灯(あんどん)、当時の時計、こよみ、着物、履物、筆などを作ったり、使ったりして、その良さを強調するわけです。
『なぜ勉強するのか』の中で、鈴木光司氏も述べているように、現代人の生活がきものやちょんまげでなくなったのは、洋服や靴の方が快適に過ごせるからに他ならないと思うのですが、そんなことを言ったらお二人に怒られそうです(笑)。
まぁ、確かに何もかも、あまりにも効率優先の世の中になってしまったので、下駄の良さや他の日本文化の伝統と歴史の知識を伝えていくことは、大変意義深いことだと思います。しかも今になって環境問題などを考えるヒントも与えてくれるかもしれません。
現代社会を、“便利さのために、空気や水を汚染し、国民が花粉症だらけで自殺者が多い世界” だととらえてしまうと、はるか江戸時代に郷愁を感じることも無理からぬことですね。しかも思いのほか便利そうなもの、快適そうなものがありました。
江戸好きのお二人は他の本で江戸のすばらしさ(現代文明の愚かしさも)を力説している時とは違って、単に楽しそうで、私も一つくらい実験してみたくなりました。もし生徒で興味を持つ人がいたら、チャレンジしてみて下さい。
人々の知恵こそが大きなエネルギーであるということがよく分かりました。
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