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『なぜ勉強するのか』 鈴木光司

2007年03月13日 | 教育関連書籍


なぜ勉強するのか.jpg


本を読んでいてうれしくなるというのは、そんなにありませんが、本書はそういう一冊でした。きっと、今の仕事をしている限り、これからも読むだろうなぁと思います。

何がうれしいのかというと…、著名な筆者に対し、まことにまことに僭越ではありますが、“常々自分が言いたいと感じていたことを論理的に説明してくれた” という感覚です。


なぜ勉強するのか、どこまで勉強するのか、どうして本を読まなければならないのかというのはいつの時代も多くの子供がいだく疑問でしょうが、基本的な読み書きや計算ならともかく、どう見ても将来使いそうもない微分や積分、難解な英文法、歴史の年号や哲学をどうして学ぶのかと聞かれたら、何と答えるでしょうか。


筆者のまとめ的な答えはこうです。“知識を取り入れながら、理解力、想像力、表現力を高める” ため。

これだけでは抽象的過ぎて 「はぁ、それで…」 となるのですが、それは人間のあらゆる活動の基礎というよりすべてかもしれませんね。そのあたりを分かりやすい例をあげながら、説明します。現在の教育の問題が社会に及ぼす影響を実感できました。

一見役に立たないように見える教養のようなものが、どれほど自分や社会、あるいは国家や世界にとって重要かをわかりやすく説明してくれます。氏は氷山のたとえを使っていますが、表に出ているものだけを見て感情で判断しては誤る。戦争さえ引き起こしかねないと主張します。


“UFOはいるのか”という論争なら、科学的に現在の物理や化学を駆使すれば、確率から言っても “いない”となります。日本軍の特攻隊という戦法は、効果を論理的に考えると、作戦としては非効率であったと結論付けざるを得ないという調子です。


ベストセラー『国家の品格』を書いた、藤原正彦氏は、エリートは学問だけでなく、絵画や音楽などの芸術も含め、役に立ちそうにないことをたくさんして欲しいという意見でした。

鈴木氏は、ライブドアの堀江氏やニセメールを取り上げ、大混乱を招いた民主党の永田元議員は東大卒であっても、教養のなさ、科学的態度の欠如で失敗を招いたと指摘し、なるべく多くの人たちが幅広い教養を身に付けることによって、社会が感情だけに流されて誤った判断をすることを防いでくれるという考えです。


狩猟民族に比べて、農耕民族の子孫である我々日本人は欧米に比べて残念ながらこの点が弱い。カミュの『異邦人』の例を挙げ、太陽のせいで殺人をおかしてしまうことだってあり得る。不条理だと片付けるのではなく、子供が親や育つ環境を選べない、思考や行動がかなり環境によって制限を受けることの自覚を促します。


特に哲学のような学問は、日本では思想とか宗教っぽくとらえられてしまいますが、以前、『はじめて考えるときのように(野矢茂樹)』 や 『幸福論(バートランド・ラッセル)』を取り上げた時にも指摘しましたが、西洋では哲学は世の中を知るための科学的なものですね。


何でも理詰めで考えていく姿勢で、考えるためには高い知識や教養と呼ばれるものがどうしても必要になってくるということです。いかにゆとり教育が的外れか再認識しました。

そして、子供にはどう説明するかもう一つの問題として出てきますが、教師の役割は非常に大きいわけです。共同体のために、教師の給料を増やせという主張は、残念ながら…(笑)。すでに充分でしょう、別の方法を考えましょうというのが私の意見ですが。

また、競争に勝つ、負けるからというのではなく、社会を良くするために勉強するのだと教えようという意見です。競争よりも協力するために学問や表現力を鍛えるという感じでしょうか。

筆者が“主夫” であり、日本社会における父性の否定、男女の役割分担など、社会が進歩し続けるという点は、左翼的思想に聞こえます。


私は、“リング” も “らせん” など他の著作は読んでおりませんし、映画も見ておりませんので、政治的な立場はわかりません。薄い一冊ですから、まだまだ聞きたいところもあるのですが、勉強をなぜするのか、あるいはさせるのかという点、日本において論理が決定的に欠落しているという点において大賛成です。


非常に興味深い、読み直したいと感じる一冊でした。



なぜ勉強するのか?

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『なぜ勉強するのか』鈴木光司
ソフトバンク新書:170P:735円

 

 

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14 コメント

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興味深いですね (bucky)
2007-03-13 12:15:39
私も鈴木氏の本も映画も見ていませんが、VIVAさんの感想を読ませて頂いた限りでは、かなり納得のいく話のようです。
”社会を良くするために勉強する”ナルホドです。
昨日もIKEAのことなんて知ってどうする(拙ブログの話ですが)、とトイレで(?)自問自答しつつ、まあ、「IKEAに行ったとき、より楽しいしな」と勝手に解釈したばかりなので、「そう、本を読むのも社会のため??」と、これからもあまりためにならないかも知れない??読書を続けることが出来そうです。
あっ、勝手なことを書いてしまいました。とりあえず読んでみます。
Unknown (milesta)
2007-03-13 12:31:18
高校生くらいまでは「読み書きができればいいのに何で・・・」と思っていました。だけど大学の授業は知識があればあるほど面白い。あ~もっと勉強しておくんだったと思いましたね。
そして社会人や母親になったら、自分でいろいろなことを考えて判断しなくちゃいけない。ここでも基礎的な知識や思考力がものを言うんですよね。
だからこの年になってもまだまだ勉強しなければならないことがたくさんあります。あ~学生時代にもっと勉強しておくんだった。
・・・とタイムマシンに乗って昔の自分に言いに行きたい。(笑)
buckyさん (VIVA)
2007-03-13 14:16:11
勉強は、理解力、想像力、表現力を高めるためのトレーニングのようなものだそうですから。そのあとに細かな知識を忘れてしまっても構わないとも書かれていました。

本を読んで、IKEAの歴史や仕組みを“理解”し
どうしてそうなったか、トイレで(笑)“想像”し
それをブログで“表現”したわけですね。勉強そのものであります。
milestaさん (VIVA)
2007-03-13 14:21:55
あ~、やっぱりそうですか。本書でも本当の勉強、つまり教養を身に付けるのは大学に入ってからだろうというようなことにも触れていましたね。

本当に何歳になっても親に意見を求めることもありますし、世界史の教科書を見たりすることも多いです。古文・漢文が読めたらさらにおもしろいだろうなとも感じます。タイムマシン欲しいです(笑)。
Unknown (あーりー)
2007-03-13 19:13:18
僕も昔は、なんでこんなに勉強しなくちゃならないんだろう…と感じたのを思い出しました。
あのときはたしか、脳みそを鍛えるため、とか何だかんだ理由をつけて割り切って受験勉強などをしていた覚えがあります。
そうでもしないとやってられませんでした。
(´∇`;)
「リング」や「らせん」の鈴木光司さんがこういう本を書かれていたんですね。
「社会を良くするために」 (ysbee)
2007-03-13 19:29:15
VIVAさん、いつもそうですが、
特に今日の記事は最初の行から最後まで、
そうだよ、そうなんだよ!とうなずき通しでした。
(スミマセン、男言葉で……相変わらずですが)

特にこの一行
「競争に勝つ、負けるからというのではなく、
 社会を良くするために勉強するのだ。」

ここのところ、80ポイントの蛍光色で響き渡ってほしい一節です。

もともと「勝ち組・負け組」という言葉がぞっとするほど嫌いで、
スポーツ以外の場面では
敗者がいる限り、地球は幸せにはなれない。

というのが大袈裟なようですが、わたしの持論なので
勝ち負けと競争するのではなく、
先に立つ者が後から来る者に手をさしのべ、一緒に頂上を目指すのが、
人間としての「この世の歩き方」だと思うのですよ。

こういう本を真っ正面から書いてくださった著者、
そしてまた、それをきっちりと読んで
熱いメッセージを書いてくださったVIVAさんに、
ステーキでもおごりたい!(突如、還俗)
あーりーさん (VIVA)
2007-03-13 19:59:14
こんばんは、あーりーさんは、らせんなど読まれたんですか。映画は世界的なヒットだったんですよね。本書から入ったボクは、逆に今からちょっと見てみたいなと思い始めました。
ysbeeさん (VIVA)
2007-03-13 20:03:48
こちらこそ、毎回、丁寧かつ新鮮情報を入れたコメントをいただき、牛一頭お届けしたいくらいです。

それはともかく本書は本当に読み直す価値がある一冊だと思います。とりあえず大きい字にしておきました(笑)。美的センスゼロの上、色弱ですので(笑)、お許しを…。
鈴木光司さん (me-mi)
2007-03-25 14:21:03
はじめまして。つい数日前、したの子の高校受験とうえの子の大学受験を終えたばかりの親です。

こちら(goo)が本サイトなのですね?fc2のほうにトラックバックさせていただきました。

鈴木光司さんは大好きな作家さんのひとりです。
作品を読む限りでは左翼的思想は見受けられないように感じましたが、どうなんでしょうね?機会があれば読んでいただいて、その感想も書いていただければ嬉しいです。

うちの子たち(特に兄)はこれからが本当の勉強だと思います。ああでも、大学に入ってからの勉強は当然自分が興味あることを選んだのだから、きっと進んで学んでくれる。そう思ってます。
me-miさん (VIVA)
2007-03-25 18:22:30
はじめまして、よくお越し下さいました。そうなんです。こちらが本サイトです(笑)。コメント頂戴しありがとうございます。

そうですね。大学から、勉強というより、学問という感じの別の世界が開かれるという気がします。me-miさんは鈴木氏のファンでしょうから、大学生のお子さんに本書を薦められてはどうでしょう。きっと大いに啓発されると思いますよ。

どうぞこれからも時々お付き合い下さい。
はじめまして (jun)
2007-05-10 15:32:34
おじゃまします。
私は鈴木さんの大ファンです。
一番のおすすめは楽園です。
小説を読んであんなに面白いと思ったのは後にも先にもこの作品が一番です。
まぁ人それぞれツボがあるとおもいますが、リング、らせんシリーズが面白いと思った方なら楽しめると思います。

鈴木さんの作品に統一されて流れているテーマは、個人的には、男の意志、父親の意志の強さの大切さではないかと個人的に思っています。

私は鈴木さんの作品を読んで、いままで自分の中でひっかっていたモノがはっきりしたような気がします。

是非興味がありましたら、鈴木氏の他の作品も読んでみてください。
junさん (VIVA)
2007-05-10 17:58:14
こんにちは、そうですか、楽園ですね。今、見てみたら、モンゴル、アリゾナとか書いてありました。まったく想像が付きません。

おもしろそうですね。

本書では、論理の重要性をかなり強調しておられましたが、そういう方が書くファンタジーノベルなんて、ますます想像が付きません。

ええ、いつとは申せませんが、必ず何冊か読みます。

丁寧なコメントありがとうございます。
またきました。 (jun)
2007-05-11 13:18:57
リング、らせん等の作品を映画やドラマだけで知っている方は、小説の方が48倍面白いです。

「なぜ勉強するのか?」を読んだ方なら分かると思いますが、鈴木氏は理論的な思考をする方です。

ですので、こういう方の書いたファンタジーやホラーは、あるはずの無い現象でも、あり得るのではないか!と思わせる説得力とリアリティーがあります。

リングを小説で読んだ時は衝撃でした。
私から見れば正に天才です。
もし私が一生かけて小説家を目指してもこんな面白い作品は書けないと痛感させられました。

そのときから鈴木氏に興味を持ち、色々作品をよみましたが、私の中では「楽園」を超えるモノはありません。

ですが、人によってはなんとも思わない方もいるようです。(笑)

是非読んで見て下さい。
ちなみに私は、おもしろすぎて寝るのも忘れて1日でよんでしまいました。
junさん (VIVA)
2007-05-11 16:00:26
何度でもお越し下さい!

そこまで…、楽園、ますます興味津々です。

何とも思わなかったらどうしよう(笑)。いずれにしろ再チェックしておきます。

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