本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『ミラクル』 辻仁成・著 望月通陽・絵

2006年08月31日 | 児童文学・ライトノベル・子供向け
 

もう一冊、小中学生向けに、すばらしい物語をご紹介して締めくくりましょう。

主人公アルの母親は、アルを産んだ時に亡くなってしまいます。アルの父親シド自身もそれを受け入れられず、アルには“ママは仕事で世界中を回っている” とウソをついてしまいます。そして“雪が降れば「ママ」は帰ってくるんだ”と。

「ママ」を知らないアルは、ジャズピアニストのシドといつも旅をしています。実は、シドは雪の降らない南の地方をめざしているのですが、アルはきっと「ママ」がどこかにいると信じながら、父に付いてゆきます。

そんなアルをあたたかく見守るシドですが、アルの成長とともに、自らのウソに苦しみ、生活も徐々にすさんだものになってしまいます。酒びたりになり、演奏もうまくいかず、もがきます。

ある日、アルは知り合った女の子に、“あなたのお母さんは死んでいて、お父さんはうそをついているんだ” と言われて、父親シドを問い詰めますが、それでも、シドは自分を信じるようにさとします。父の言葉に安心したアルですが…、

翌日の朝、クリスマスの日、朝起きると、その地方に30年ぶりに雪が降っているではありませんか。ママが戻ってくるとはしゃぐアル。八方ふさがりのシド。いったい最後に「ミラクル」奇跡は起こるのでしょうか。

旅を続けながら、絶対に「ママ」 に会えると信じてやまないアルの心の純粋さ、アルを大きな愛で包み込むシドや、アルの “見えない友人”の姿に感動します。

「奇跡とは目に見えるものではなく、心の内部に降る雪のようなものであるかもしれない。それはやがて積もり、春の訪れとともに溶けていく」 すばらしいエンディングを読んだあとに続くこの言葉こそ、本書のメッセージだと気付かされます。

ページごとに挿入されるイラストも、先の不安を暗示しているようだったり、喜び、悲しみを表現しているようだったり、不思議な雰囲気をかもし出し、ストーリーにぴったりだと感じました。

忘れてしまいがちな大切な何かをきっと思い出させてくれる静かな感動のファンタジー。子どもより、むしろ大人に読んでもらいたいなぁと感じる作品です。



http://tokkun.net/jump.htm 



ミラクル

新潮社

詳   細

『ミラクル』辻仁成著
新潮文庫:169P:380円


■■ さぁ、明日から9月、2学期または後期です。■■
いよいよ読書の秋です! (このブログは年中読書ですが(笑))。気合を入れて、良書をさがしておきます。お読みいただきありがとうございました。ブログランキングです。よろしければ、夏の終わりの クリック、お願い致します → にほんブログ村 本ブログへ   


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『ぼくらはみんな生きている』 坪倉優介

2006年08月31日 | ノンフィクション
 

記憶喪失というのは、時々、テレビドラマや小説で取り上げられますが、みなさんのまわりにそういう方がおられるでしょうか。生徒の中には、単語をいつまでも覚えず、ついつい 『おいおい記憶喪失か?!』 なんて叱っちゃいますが、本物の記憶喪失は想像を絶しています。

本書は事故で記憶喪失になってしまった18歳の若者と、その母親の手記です。現実とドラマではかなり違うようです。


バイクで交通事故に遭った筆者が、一命は取りとめたものの、記憶喪失になってしまいます。意識はしっかりとして、会話もぎこちなくできるのですが、友人、恋人、自分の名前、家族すら忘れてしまいます。

それどころか、もっと生理的な、食べること、寝ること、トイレに行くというようなことすら、理解できなくなってしまい、まるで人生をゼロからやり直すかの様子です。そこから家族と本人の想像を絶する苦闘が始まります。本人よりもむしろ母親の手記に心打たれました。(分量としては少ないのですが)

事故などで、体に障害が残ってしまうのも痛々しいのですが、記憶を奪われてしまうというのも同様に残酷です。自分の愛する子どもが自分を他人のような目で見たら、いったいどう感じるのでしょうか。

いかにして記憶を取り戻すのか、記憶喪失と戦いながらも、何とか大学に復学をはたし、最後は立派に染物職人として自立するという、12年間を描き、前向きなエンディングではあるのですが、本当にこんなことがあるのかという驚きの一冊でした。

本人、家族の言葉、姿を通して人間の成長の過程が改めて確かめられます。私が読んだのは単行本で、2001年に出され、現在は文庫本になっておりますが、私はその後の筆者の様子も知りたいですし、母親の手記をまとめたものが、いつか出版されて欲しいとも思います。


子供が読んでも大人が読んでも興味を引かれる内容だと思います。そして、やはりどこまでも、人間というのは社会的な動物であり、社会や家族によって、生かしてもらっているんだな、とか、人間は記憶によって生きているんだなということを痛感しました。



http://tokkun.net/jump.htm 

ぼくらはみんな生きている―18歳ですべての記憶を失くした青年の手記

幻冬舎

このアイテムの詳細を見る


『僕らはみんな生きている』 坪倉優介
幻冬社:229P:520円(文庫) 


P.S. 記憶喪失にあこがれることはありませんか? 人は誰でも、忘れてしまいたい記憶もたくさんあるでしょうが、記憶を選別することはできませんね。そういう記憶を持って生きていくのもまた人間らしいんですね。


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記事一覧・アップデート

2006年08月30日 | 一覧 【LIST】


塾講師にとりまして、最大のイベント夏期講習、そして生徒たちの夏休みも、今日、または明日でいよいよ終わりになりますので、区切りをつける意味で、記事のLISTをアップデートしました。よろしければご覧下さい。

以前も申しましたが、WEB上のエクセルですので、普通のものと機能がやや異なるそうです。コピーアンドペーストで、自分のエクセルに落とせば良いのだそうです。

■■■  本を読もう!!VIVA読書!LIST 【記事一覧  ■■■

●● お礼 ●●

ブログランキングも 【本ブログ】 では、(今は、絶体絶命のピンチですが(笑)、)  ずっと長い間、1位をみなさまに取らせていただきましたし、【人気ブログランキング】 では、最高3位まで (今は5位くらい) 押し上げていただきました。ありがとうございました。心より感謝しております。

夏休み中も休まずやろうと決意し、何とかやり通せましたのは、そうした、読んでいただいている方々のランキングでの応援や、頂戴したコメントが大きな力になったからに他なりません。


始めた頃からすれば、信じられないことですが、素人の読書記録に、いつの間にやら、一日1000クリックを超えるほど、多くの方にご覧いただくようになり、やりがいが生まれ、ありがたい反面、プレッシャーも相当なもので(笑)、日々、投稿のボタンを押すのは緊張の一瞬です。バカなことは書けないなと…。(でも書いてますが…)

また、非常に残念なことですが、必然的に乱暴なコメントや嫌がらせのようなもの、無関係のTBも相当増えました。いやになって休もうと思ったこともありましたが、それでも、こうした交流がさらに深まり、また新しい方との出会いによって、いろいろなことが学べるのではないかと思いますと、、自然と翌日には良い本はないかなと探しております(笑)。


いつも、あるいは、たまにでもコメント下さる方、またコメントせずとも、記事を継続的に読んでいただいている方、本当に本当にありがとうございます。ストックがまだ少しありますので、これまで同様、お付き合いいただければ幸いです。


どうぞ、これからもよろしくお願い申し上げます。
 

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『日本人らしさの構造』 芳賀綏

2006年08月30日 | 教養


全部、覚えてしまいたいし、国語でも社会でも英語でも授業に役立ちそうなものばかりでした。

言語文化論講義と、大学の授業みたいで、ちょっと難しそうな副題が付いていますが、『文化とはそんなに難しいものじゃない』 という考えを紹介し、日本人の特徴を浮き彫りにします。


これまで私が見聞きしたことのあるいろんな、日本人の特徴、エピソードなどが、ほとんど紹介されて、大変役立つ一冊です。興味のある高校生なら十分読めるでしょう。

そもそも人間における言語や文化とは何だろうという、考察から始まります。もちろん言語と文化は不可分ですから、日本語のキーワードでまずは日本文化の姿を探ります。キーワードとなるのは他の文化にあって日本語にないもの、または日本文化にあって他にないものですね。


その指摘は、どんな本でもよくなされますが、本書では例示が非常に奥深く、おもしろいのです。実に数多くの、古典や名著と呼ばれる作品を引用します。ここでも英語文化圏と異なることはもちろんですが、“儒教的発想をする東アジア圏” と、時に文化的にも地政学的にも一くくりにされる韓国、中国との大きな文化的差異が示されます。

この指摘は、ハンチントンの『文明の衝突』 でも明確にされていますね。本書ではさらに、ひょっとしたら“日本と西洋” の差異よりも、“日本と中国(韓国)” の差異の方が大きいのではないかとすら、ほのめかします。

そこまでをまとめる言葉として、筆者は、日本は『凹型文化』 だとします。


“自然との調和・一体化というのが日本人の自然観、宇宙観であり、他律・他人志向の処世を好み、非分析的で成り行き本位の思考方法を持ち、謙遜・自己修養の道徳感覚で、ささやか・陰影・風流という美意識を持つ。 ”  


それが日本人の精神空間なのだということです。さらに続けて、宗教文化や法律、政治にかかわる言語に焦点を当てたり、文法を分析したり、自動詞が多いことを指摘。

例えば 『この電車は全車両禁煙車となっております』 『食堂はあちらになっております』 など、自分たちがそうしているのに、まるで自然現象のような言い方です。(ちょっとわかりにくいかな) その上、慣用句や名付けに見られる特色を考察します。

男子の名前に、誠・正義・孝行などの道徳意識、女子の名に、弥生・小春・小百合など自然に優しいもの。料理やお菓子には、月見・春雨・卯の花・うぐいす餅・さくら餅など。電車は、こだま・やまびこ・しおさい・あさぎり・銀河…。

きりがないのでやめますが、相撲部屋、お酒の名付け、などまで話は及び、海外の『ベートーベン号』という電車や『ケネディー空港』など、人の名を冠したものがほとんどないことも指摘します。


最後には高文化、いわゆる文芸作品についても日本的なるものを紹介、分析します。まだまだ、本当は、ここでご紹介したいことがいっぱい詰まっている一冊で、最初から最後まで本当に興味の尽きない話題で、趣味で読んでおくだけではもったいないくらいでした。(“もったいない” という言葉も日本人的ですね)


生徒ばかりではなく、講師はもちろん、一般の方にも広くお薦めしたい一冊でした。

日本人らしさの構造―言語文化論講義

大修館書店

詳  細

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『日本人らしさの構造』 芳賀綏
大修館書店:315P:2100円


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『 ユウキ 』 伊藤遊 

2006年08月29日 | 児童文学・ライトノベル・子供向け
 
夏休み中にぜひ紹介したいなぁ、と思っていた一冊ですので、今日はもう一つ取り上げます。私立中学の入試にも何度か出題された作品で、子どもの成長、友情を描いた非常にすばらしい物語です。

(そういえば、早稲田実業のエースも“ゆうき” くんでしたね。“ハンカチ王子”なんて、ちょっとマスコミが騒ぎ過ぎで、高校生には気の毒だと思うのですが…)

本書の書名 “ユウキ” は主人公の名前ではありません。主人公はケイタ。彼の小学校に来る転校生が “ユウキ” です。しかも3人。

一人目の『祐基』 とは、カードゲーム、次の 『悠樹』 とはミニ四駆、そして、変わり者で、なじめなかった三人目の『勇毅』 でしたが、彼とも、結局サッカーを通じてそれぞれケイタのかけがえのない親友となります。

ところが、ここの小学校は、転勤族の多いところで、いずれのユウキも転校をしてしまいます。彼らはさまざまな思い出や、言葉を残して、その町を、学校を去ってしまいます。せっかく友だちになっても…。幼いケイタには納得しがたい、理不尽さが残ります。

そして、いよいよ迎えた、6年生の四月、ケイタのクラスに、また2人の転校生が…。

構成が見事です。だれるところも冗長なエピソードもありません。小学生高学年用となっていますが、おそらく大人も子どもも感動できる作品で、さわやかな読後感がいいですね。子どもたちにとって、読書感想文がとっても書きやすい一冊でもあると思います。ぜひ読んでね。



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ユウキ

福音館書店

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『 ユウキ 』 伊藤遊
福音館書店:204P:1365円



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『愛のひだりがわ』 筒井康隆

2006年08月29日 | 小説
  

本書が発売された当時、筒井氏の久しぶりの作品で、非常におもしろいというので読んでみました。評判どおりで、大変印象深い一冊でした。


愛というのは、犬に手をかまれ、左手が不自由になってしまった主人公の小学生。母を亡くしたあと、かつて自分たちを捨てた父を探しに、愛犬のデンを自分の左側に連れて旅に出ます。その途中、次々と彼女らを襲う予想外の事態。

登場人物がすべて個性豊かですし、出くわす一つ一つの出来事は、スリリングで、物語に引き込まれます。幽霊が出てきたり、犬と会話したりしながら、それを切り抜けていくのですが、非現実的なところで、読者に違和感を持たせるどころか、応援して読ませてしまうのは、やはり、筒井氏の力でしょうね。すばらしいです。

物語は、どんどん意外な展開へ進むのですが、いろいろの事件を通して愛が成長していく姿がしっかり描かれていて、中学生の子供にも大人にも読んで欲しい作品です。

これまでの氏の最高傑作だと、絶賛している人も多いようです。やはり子どもは(大人も)冒険しないと成長しないよな~、なんて考えながら読みました。


それにしても、他の作家の作品でも、小説で描かれている日本の未来がとてもすさんでいるのが気になります。ストーリーを劇的にするためにそうしているのか、あるいは鋭い感性を持った作家たちには、この国の将来は明るく描けないのでしょうか。

それはともかく、大いにお薦めできる一冊です。


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愛のひだりがわ

岩波書店

詳  細


愛のひだりがわ

新潮社

詳  細

『愛のひだりがわ』 筒井康隆
岩波書店:295P:1890円(文庫本も出ています)



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『免疫学問答』 阿保徹、無能唱元

2006年08月28日 | 科学
  
私は、今から8年くらい前、胃潰瘍(正確には十二指腸)で手術、入院の経験 があります。医者から、原因は“ストレス” と言われ、“へぇ~、ストレスってやつは、胃に穴をあけちゃうんだ” と身をもってストレスの恐ろしさを思い知ったわけです。

入院中から、それ以降も、ストレスや免疫というものに関して、非常に興味を持ち、いろいろと本を読みましたが、その中で最も印象深かったものの中の一冊が本書です。


医師である阿保徹氏と、僧侶の無能唱元氏、お二人とも数多くの書籍を出しておられますが、本書では、“免疫” や“ストレス” について、阿保氏が“しろうと”の無能さんに教える、あるいは疑問に応えるという形の対談です。

アトピーや他のアレルギー、胃潰瘍、さらにガンやリュウマチまで、すべてストレスが引き金となっており、阿保氏は、治療に当たっては対症療法をやめて原因療法を推進すべきだという主張をします。基本的には、日本の医療は薬に頼りすぎで、それが治癒を妨げているというような考え方です。

例えば放射線治療をほどこしてガン細胞を攻撃できますが、それは同時に免疫力を著しく弱めてしまうため、阿保氏はそれに関しては西洋医学に反対です。ただ、すぐに効果の現れる対症療法(西洋医学)を望む患者が多いのも事実です。


本書の主張は、かなり大胆です。

「酢は体に悪い」
「たばこは体に良い」
「ガンの転移は直る前兆だ」
「潰瘍はピロリ菌が原因ではない」

など、びっくりするような意見がならびます。これだけ見ますと、怪しげな宗教ではないかと疑うのも無理はないのですが、阿保氏自身は、数多くの新しい発見をして世界を驚かせ、外国の専門誌に英語で論文を発表して注目を集めている先進的な研究者です。

もちろん本書には、なぜそう言えるのかを、専門用語抜きで、分かりやすく説明してくれます。長くなりますので、ご紹介できませんが、“酢”の話しなどは非常に印象深いものでした。

このブログを読んでいただいている人の中には、暑い夏、季節の変わり目に、体調がすぐれなかったり、実際に病気の方もおられるかもしれません。私はもちろん本書を気に入っておりますが、まったくの素人ですし、健康に関わることですから、安易に“お薦め” とは申せません。

ただ、なかなか症状が改善されない方は、一読されてはいかがでしょう。どこか参考になる指摘があるのではないかと思います。


免疫学問答―心とからだをつなぐ「原因療法」のすすめ

河出書房新社

詳細


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『免疫学問答』阿保徹、無能唱元
河出書房新社:190P:1365円



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  本当に、2位の“半分”に届きました。ありがとうございます。

『 暗号解読 』 サイモン・シン

2006年08月27日 | 科学

I love you.” というメッセージを “ a→b b→c c→d” と次のアルファベットにして暗号化し、書き換えますと
  ↓ ↓ ↓
jmpwfzpv”  となります。

この暗号をどう解読すればよいのでしょう。

実はこれが、暗号の初歩の初歩で、アルファベット一つ一つの使用頻度を分析することから、簡単に見破ることができます。本書ではそこから始めて最新の量子力学まで話が及びます。 

ロゼッタストーンに描かれた紀元前の絶滅した絵文字の解読法や、戦争中の無線傍受した内容の暗号分析方法などの丁寧な解説書であり、それを発明した天才たちを描いたドラマでもあります。

これまでの暗号の歴史が国家の盛衰に著しい影響を与え、現在の企業の生命線を握っていることまでも、よくわかります。

“なるほど!” “すごい!”の連続で、確かに暗号は解読できるんだ、と確信させてくれるでしょう。決して、気軽な本ではないのですが、興味のある方には、知的好奇心に充分応えてくれる一冊です。特に数学好きの人なら感心しきりでしょう。


億、兆どころか京、さらにその上の位の数の候補からどのように正しい“かぎ” をつかみ取るか、あるいは隠しとおすのか。 情報戦の凄まじさ、数学の不思議さがよく分かります。『 フェルマーの最終定理 』 も同様ですが、サイモン・シンの著作は、科学の本でありながら、歴史、ミステリーであり、壮大なドラマです。 


ちなみに、本書が書かれた時点では、暗号作成側が解読側よりも勝っており、最新の技術ではたった一つの暗号化されたメッセージを解くのに地球上の全パソコン2億6千万台をいっせいに使っても宇宙の年齢の1200万倍かかるそうです。すごいスケールの話になっていますね。


生徒諸君!数学や物理、さらに歴史を勉強する醍醐味はこんなところにもあるんですよ。


暗号は、ネット社会のキーワードですし、日米開戦時にも決定的な役割を果たしています。一般市民が知らないところで、ものすごいエネルギーが暗号作成、解読に注がれていることに驚きます。★5つレベルのお薦めです。



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暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

新潮社

詳  細

『暗号解読』サイモン・シン
新潮社:509P:2730円



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  追撃の1冊ですが…。せめて2位の半分へ(トホホ…)

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『一人の父親は百人の教師に勝る』フィリップ チェスターフィールド

2006年08月26日 | 教育関連書籍
  

『1774年、今から200年以上も前に書かれた名著です。本書の原題は『Letters To His Son(息子への手紙)』 ですが、この邦題はいかがでしょうか、そのままでいいと思うのですが…』

と、実は3年前に当教室のメルマガの書籍紹介で、本書を取り上げました。今、改めて、確認してみると、何と、邦題が 『わが息子よ、君はどう生きるか』 に変わっていました!そちらはノーベル賞学者の小柴先生が推薦されております。

チェスターフィールド2


もしご覧いただけるなら、こちらの方が入手しやすいでしょう。こんなことあるんだな~と思っておりましたら、そもそも『わが息子~』の方が元だそうで、もう一度元に戻したということらしいです。ホントにややこしいし、題だけ変えて売ろうということをよくやるのでしょうか。なんかセコい、という気がしますが。

それはともかく、
300年前のイギリスは、訳者の竹内均氏によれば
『重商主義の時代で、裕福な市民や近代的な地主を基盤として議会制度を確立し、外国との条約を結ばず戦争をせず、大国フランスとの協調を第一とし、こうして浮いた金のことごとくを経済発展に注いだ』状況ですが、これフランスをアメリカに変えると日本の状況に似ていないでしょうか。

国会議員でもあるチェスターフィールドが、息子に対し、豊かさの中で、努力を怠らず、人格を磨き、どう教養を身に付けるのかというアドバイスをします。礼儀から、学問、読書、友人、健康、身なり、振る舞い、様々な分野に及びます。暖かく、そして厳しい指摘が続きます。

以下のような一節で始まります。

『怠慢-これについて君に言っておきたいことがある。私の愛情は、君も知っての通り、やわな母親の愛情とは違う。私は、子供の欠点から目をそらすようなことはしない。その反対だ。欠点があれば、それを目ざとく見つける。それが、親としての私の義務であり、特権であると思っているからだ。

一方、その指摘された点を改めようと努めるのが、息子としての君の義務であり、権利であると思うのだが、どうだろう。(後略)』 

“紳士の教科書” と呼ばれているそうですが、なぜ、こんなに長期に渡って、世界中で読み続けられるのでしょうか。フリーター、ニートなど、いかにも現代特有の社会現象だと、とらえがちですが、昔から、いったん豊かになったあとの社会で、人がどう生きるかという難しさがあったのではないでしょうか。

“衣食足りて礼節を知る”とも言われますが、衣食はあまり、平和で低成長の社会が長く続くと、皮肉なことに、若者は刺激を求めて、社会に反抗するでしょうし、大人はその対処に迷うのでしょう。本書にその時代の答えを求める人々が、昔からいたのだと思います。

日本のお父さんたちは、自分の子どもに、こんなにストレートに話をしたり、手紙を書いたりすることは苦手でしょうが、参考になる、目からうろこが落ちるといったアドバイスが多く含まれていると思います。

“紳士の教科書” というより、“お父さんの参考書” と言った方が良いかもしれません。
一人の父親は百人の教師に勝る!―親にしかできない人生教育 この絶対不可欠なこと

三笠書房

詳 細


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『一人の父親は百人の教師に勝る』フィリップ チェスターフィールド
三笠書房:234P:1575円
『 わが息子よ、君はどう生きるか 』フィリップ チェスターフィールド
三笠書房:236P:1575円


■■ 生きにくい時代であろうと、なかろうと、お父さんにかかる期待は大! ■■
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 まずは3位キープかな。


『絵本からうまれたおいしいレシピ』 きむらかよ

2006年08月25日 | 絵本
  
夏休み中にぜひブログに載せようと、決めていたのに、完全に失念しておりました。時々コメントをいただける、絵本や料理を紹介していらっしゃる、Elleさん はじめ、いくつかのブログで、薦めておられました。ご存じの方も多いでしょう。

“絵本や小説、童話に出てくるお菓子や料理を、実際に作ってみよう” ということで、そのレシピです。実にすばらしい企画、発想だと思います。私はケーキやお菓子類は作ったことがありませんので、レシピの良し悪しや、そのレベルについては分かりませんが、こんな楽しい本はめったにないでしょう。


どんな子どもでも、“ももたろうのきびだんご作ろう!” と呼びかければ “やったー!”となりそうですが、いかがでしょうか。

確かに、私のような、まったくのしろうとが、ムリして作ってしまって、子どもに『 まず~い 』 とか言われ、かえって絵本の夢を壊してしまうリスク(笑)もあるでしょうが、お菓子作りの経験のある方なら、きっとそんなに難しくないですよね? 違いますかね?

仮にそうだとしても、楽しくて良いじゃないですか。絵本に出てくるお菓子を作ってくれるお母さんなんて、とても素敵だと思います。塾の生徒でも、たま~に手作りのケーキやクッキーなどを持って来てくれることがありますが、やはりとてもうれしいものです。さらに、もっとたま~~~にですが、お母さまがそうしてくださることもあって、どれほど感激するか。

バレンタインデーには、手作りのチョコやケーキをよくもらいますが…、←うそ!ちょっと見栄が入りました。はるか昔にあったかな?程度です(笑)が、やはり特別のうれしさがありますね。

ちょっと形がくずれていたりすると、余計にいとおしくなったりするわけです。『がんばったんだ~』と。こうなると、“ヘタでもいい” ではなく、“ヘタな方がいい” と(笑)。もちろん、おいしくできれば、子どもには、絵本とお菓子とダブルで暖かい気持ちになるでしょう。

こんな自由研究する子がいたら、学校の先生も感心しきりでしょうし、しかも、本書は、子どもだけでなく、親も楽しめる一冊で、見ているだけでも十分気分が明るくなる、大型本です。


出てくるものを、いくつかご紹介しておきます。

【 ぐりとぐら 】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ 黄色くて大きなカステラ ★
【 トラのバターのパンケーキ 】・・・・・・ ★ パンケーキ ★(ちびくろさんぼ)
【 バムとケロの日曜日 】・・・・・・・・・・ ★ ドーナツ ★
【 ももたろう 】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ きびだんご ★
【 赤毛のアン 】・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ レモンパイ・タフィー ★
【 若草物語 】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ ブラマンジェ ★
【 モモ 】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ ホットチョコレート ★
【 ハイジ 】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ ハイジの黒パン・白パン ★
【 ふしぎのくにのアリス 】・・・・・・・・・・・★ イギリスパン・サンドイッチ・スコーン ★
【 3びきのくま 】・・・・・・・・・・・・・・・・・ ★ キャベツのスープ ★

などなどです。


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e mook『絵本からうまれたおいしいレシピ ~絵本とお菓子の幸せな関係~』

宝島社

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『絵本からうまれたおいしいレシピ』 きむらかよ
宝島社:79P:1365円



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  壁の前で立ち尽くしております。

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『中国暴発』 中嶋嶺雄 古森義久

2006年08月24日 | 外国関連
  
いきなり『中国とはなんなのか』 と始まっています。大規模な経済発展の真っ最中の中国ですが、やはり一党独裁の体制ですから、国内で何が起こっているのか、分かりにくいですね。

ひとつには、日本の新聞が『中国の実態を書かない』 と強く批判します。どういうわけだか、マスコミにも政治家にも中国を刺激してはいけないと信ずるグループがいて、それが日本人の中国観をゆがめていると指摘します。

ビジネスマンが愛読する日本経済新聞、かつてはエリート層が読むといわれた朝日新聞、この大マスコミ2社は、中国の人民日報と業務提携しているというではありませんか。

実態はわかりませんが、提携というのですから、中国政府の意見を伝えることには役立っても、都合の悪い記事が書きにくくなることは当然でしょう。確かに、アメリカなどが盛んに取り上げる、中国国内の人権問題などは、日本では大きく取り上げられていない気がします。

お二人の意見では、中国の経済は、これまで日本や他のアジア諸国のような発展段階を踏むとは考えられないそうです。安い賃金は貧しいからというよりも、政府の政策で安く押さえつけているからで、その不満はかなり中国を不安定な状況に追い込むと。

地方で、また貧富の格差の問題で、遠からず暴動が起こるとか、不良債権が顕在化するなどの指摘は、マスコミなどで時々目にします。このブログでも、これまでも数冊、中国関連の書籍 を含めて、外国を扱ったものを紹介しましたが、本書が一番、中国に批判的かつ悲観的です。


軍事にしてもこの時代に異常な軍拡路線をとり続けているのは、(アメリカさえ何とかなれば) 本気で台湾を取りに出るつもりだとも指摘しています。北京オリンピックか台湾かの二者択一を迫られれば、中国は台湾を取ると…。う~ん、どうでしょう。

私自身は、そう言われても、まだ、他の国と違って、全体像がイメージできない気がします(勉強不足なんですが…)。アジアカップサッカーの時の反日ぶりに驚き、デモの投石に驚き、それを謝らないという態度にさらに驚き、反国家分裂法に驚き、潜水艦に驚きという程度の理解度です。

確か、石原慎太郎だったと思いますが、『中国の歴史、文化には敬意を払うが、今の共産党政権はダメだ』 というようなことを言っていました。私も中国文化には大変な敬意と興味を持っていますが、日本に対する今の中国の態度は、やはり属国に対するそれむき出しのように見えて、正直、好きになれません。実は個人的にはすばらしい中国人を知っておりますので、現在の険悪な両国関係は残念です。


日中の経済は順調だと報道されますが、この尊大な隣人と政治的にどう付き合うか、本書を読んで、ますます難しいと実感します。


http://tokkun.net/jump.htm



『中国暴発』 中嶋嶺雄 古森義久
中国暴発―なぜ日本のマスコミは真実を伝えないのか

ビジネス社

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ビジネス社:198P:1565円



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 わ~ すごい、今この瞬間、わずか10点差(1クリック差)で、3位です! (^_^)v。 感謝・感謝。でも2位の“ハムリンさん”は、私の倍!以上の得点。1位の“お玉おばさん”は、さらにその倍!!すごいですね。 これからどうしましょ? かわいくないとダメですから、“ビバりん”、とか “おビバおじさん” とでもしてみますか。あるいは、キムタツ先生にあやかって、ビバタツ とか? 

あは、ちょっとはしゃぎ過ぎですね(^_^;)。どうせ一時のことだと思いますので(笑)お許し下さい。

本当にありがとうございました。これからも生徒、ご父母の役に立てるよう、精進いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
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『治安崩壊』 北芝健

2006年08月23日 | エッセイ
  
警察など公務員の不祥事は後を絶ちませんし、外国人の犯罪も、かなり乱暴、残虐なものが目立ちます。おやじ狩り、などというのも嫌な言葉です。本書は、元 “武闘派” 刑事の過激エッセーです。

現状の警察や、治安の悪化、法律や裁判制度に業を煮やしている筆者が、ストレートに語ります。読者には犯罪に巻き込まれないよう、実際の犯罪がどれほど悪意に満ちていて、一般人の身近にあふれていることを認識するよう呼びかけます。

以前にUPしました 『 ニートって言うな 』 の記事の中で、少年犯罪は特別増えているわけではないことを示しました。それと矛盾するかのような記述もあり、ちょっと過激すぎるかなと思いまして、ご紹介を迷ったのですが、本書には

『 世田谷一家4人惨殺事件の真相として、筆者が聞いているのは、ある宗教団体が寄付を断られたために、外国人を使って見せしめに殺した。 』 などという大胆な指摘が入っているため、また、塾生たちには、注意を促すためにUPしました。本書は、福録太郎さん に教えていただきました。

筆者自身は、実にまっすぐな性格で、悪を倒すのが無上の喜びで、ケガなど厭いませんし、これまでの、命がけの捜査も紹介されています。それで、武闘派と呼んだのですが、同時に英語を操り、論文も書く知性派でもあります。


夏休みには、少年少女の非行の問題が必ず取り上げられます。本書を読むと、ちょっとした火遊びが、とんでもない事件につながってしまう可能性があることがわかります。実際の事件を挙げ、注意を促し、対策を呼びかけます。

また、たとえば私は、メールアドレスを公開していることもあり、一日およそ400くらいのメールが来ますが、その9割くらいは迷惑メール、さらにその9割がおそらく出会い系というのでしょうか、男女交際の誘いです。(いらないってば!)

これに面白半分で手を出すのは、男であれ女であれ、実に危険。暴力団などの資金源になっていて、これも悲惨な事例をいくつか挙げます。

さらに、私は車で通勤していますが、マンションに着いて家に入るまで、

1.地下駐車場のチェーンを降ろし、
2.中にある、シャッターを上げ、
3.車を移動式の駐車場に止め、
4.エレベーターホールへ入り、
5.家のドアを開けます。

何を申し上げたいかというと、マンションから自宅に入るまでに、5つのカギまたは、リモコンが必要なのです。(車のキーを入れれば6つ)どれ一つ欠けても家に入れません。いくら都会生活の防犯のためとはいえ、実に面倒で、引っ越したいくらいに思っていましたが、本書を読むと、う~ん仕方ないのかなと思わざるをえません。

もちろんオートロックですが、それでもつい、ひと月ほど前、少女をつけてきた“不審者が侵入した” と、注意をよびかける張り紙がマンションにあったほどですから。

不安をあおってしまう側面もありますが、学習塾は夜が遅いので、心配です。生徒やご父母には、十分通塾時の安全を意識していただきたいと思います。犯罪に巻き込まれないための有用な知識、万一巻き込まれた時の対処法など、知っておいて損のないものばかりです。

犯人がつけ狙うのは、常に“弱者” です。


http://tokkun.net/jump.htm 



『治安崩壊』 北芝健
河出書房新社:228P:1575円


■■ 日本好きの外国人の中には、その理由の第一に“治安の良さ” を挙げる人も多いのですが、皮肉なことに、外国人による犯罪も目に付きます。一般市民も十分注意が必要ですが、何と言っても、頼れる警察を復活させ、堂々と“世界一安全な国”と言えるようにしてもらいたいです。お読みいただきありがとうございます。できましたら、クリックをお願いいたします。 ■■

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治安崩壊──凶悪犯罪社会を生き抜くために知るべきこと

河出書房新社

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『 変身 』 フランツ・カフカ

2006年08月22日 | 小説

『 人はなぜ物語(小説)を作るのか 』 というテーマの英文(上智大学の入試問題)を授業で解説しましたが、その英文中で、“カフカ”の言葉を引用していました。何となく、聞いたことがある気もしますが…、それを訳しますと

『 本というものは、私たちの心の中にある、凍りついた海を打ち砕く斧(おの)でなければならない 』 という感じでしょうか。
  ("A book must be the axe for the frozen sea inside us.")

何となく、良いなぁ~と思い、例によって生徒たちに、カフカを知っているかと尋ねると、いずれも “No” でした。漱石の『 こころ 』 のところでも申しましたように、やはり文学作品、それも古典となると読む人は少ないですね。

カフカの死後、すでに80年ほど、経っていますし、本書が出版されたのはもう100年近く前のことですが、いまだに世界中で読まれ、実際こうして、日本の入試問題にも言葉が引用されるほどなんですね。特に本書『変身』 には、なんとも不思議な魅力があります。


『 ある朝、目がさめてみると、グレゴール・ザムザは一匹の巨大な虫に変身していた 』 という衝撃的な内容で始まります。

“なんだ、なんだ、ずいぶん気味悪いなぁ~。”となりますよね。でもおもしろい。親はザムザを追い出そうとし、会社の上司には見つかってしまう。唯一の理解者である妹が、“エサ”をくれていたのですが…。


バカバカしいと一笑にふすこともありですね。何といっても“不条理文学” です。ありえない話です。しかしなぜ世界中で読まれ続けるのでしょうか、そこを生徒には考えて欲しいですね。

これほどの名作になりますと、アマゾンにも、解釈をめぐっていろいろなレビューがありますし、ウィキペディア には詳しいあらすじ、解説までついています。虫に変身する前の自分が、家族や社会とどうかかわっていて、どのような思いを抱いていたのか、虫になった理由を哲学的に探っていくととても面白く読める作品です。


ちなみに青空文庫で探してみたら、『変身』 は無かったのですが、『 処刑の話 』 がありました。



■■ まだ、読書感想文の宿題をやっていない生徒諸君へ 夏休みあと10日!■■ 

世界的名作で、たった120ページしかなく、ストーリーは分かりやすく、解釈は自由にできる。しかも参考になるレビューはネット上にあふれています。こんなお買い得商品ないでしょう(笑)。すぐに宿題やっちゃいましょう。ただし、ウィキペディア写すのはダメ!

ついでですから、もう一冊のお買い得。ジョージ・オーウェルの『 動物農場 』。これも世界的名作で、とても短く、読みやすく、アニメにもなっているらしい。独裁政治がテーマなので、高校生向き。北朝鮮や日本の右傾化に絡ませて書くのもよし。ただし、アニメ見ただけで書くのもダメ!(笑)


『 変身 』フランツ・カフカ
新潮文庫:121P:340円
変身

新潮社

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『審判は見た!』 織田淳太郎

2006年08月21日 | 新書教養
   

甲子園の決勝戦はすごかったですね。このことが書きたくて、予定変更です(笑)。

最近は特に野球を見ることが少なくなっていましたが、決勝は本当に釘付けでした。“死闘” という表現がぴったりの試合内容で、高校野球のおもしろさを堪能しました。

元野球部員としては、サッカーに押される一方の野球界が、今年は王ジャパンが優勝し、甲子園決勝で、こんなすばらしい試合があったことで、ぐっと盛り上ってくれることを期待します。あとはプロ野球。あのこわいナベツネさんが、引退して、新しい強い巨人が出てくれば、人気回復するのでしょうかね。

さて、『家政婦は見た!』のようで書名が軽く、普通ならあまり手に取らないものですが、織田氏の以前の著作 『 コーチ論 』 を読んで、非常におもしろく、好印象を持っていましたので読んでみました。

確かに『 審判“論” 』 と言えるほど論理的な主張や理想が述べられている訳ではないのですが、『 コーチ論 』 同様、丁寧な取材を通した、人間味あふれる一冊でした。

暴露的要素もいくつか含まれており、読んでいても飽きませんし、テレビを通してしか野球を見ていない我々には、決して気付かない選手と審判の駆け引きなどの部分は、興味のある方にはお薦めできます。

日本選手が大リーグで活躍するようになったおかげで、大リーグの審判にもこれまで以上に注目が集まってきました。本書でもアメリカの審判制度をところどころ紹介されており、取り入れるべきところもよくわかりました。

選手同様やはりトップクラスの審判は相手が舌を巻くような技術、思慮を持ち、鍛錬を怠らない人間であると感じます。正直、『 コーチ論 』 ほどではありませんが、気軽に読みたい方にお薦めです。

と書いてから…。

ところが、最近、日本のプロ野球もひどいミスジャッジがあるようですね。本書に恥じぬよう、日本の審判のみなさん、がんばって下さい。


審判は見た!

新潮社

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『審判は見た!』 織田淳太郎
新潮社:207P:714円


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  3位より上は、目の前にそびえ立つ、エベレストのようです。はい。4位です。たぶん。

『史実を歩く』 吉村昭

2006年08月20日 | 新書教養

吉村氏の著作は読んだことがなかったのですが、先日、氏がお亡くなりになった折、よくおじゃまする、

HIRO。さんtani先輩milestaさん  のブログ。みなさん、吉村氏逝去に言及されているではありませんか。


実は、“あっ出遅れた。きっとおもしろいだろう。” と思い、早速、その著作、数冊を購入し、最初に手にしたのが本書です。


さて、実際に読んでみますと、いきなり、期待以上に大変興味深い一冊でした。ついついやめられずに、一日で読んでしまいました。


最初の『「破獄」の史実調査』から、引き込まれるように読みました。どんな厳重な警備体制を敷かれた刑務所からでも、必ず逃げてしまう、伝説の脱獄犯を扱った作品、『破獄』 執筆の裏話です。おもしろい上に、じ~んと来る良い話でした。

また、ちょうど昨日ご紹介した、真島節朗先生の 『 「浪士」石油を掘る 』 で、幕末のいきいきした歴史を読んだ直後で、どうしてこんな小説が書けるのかと、驚嘆していたわけです。

そこに実にタイムリーに本書に当たりましたので、桜田門外ノ変生麦事件 ほか、その時期の資料を、小説家がどのように、入手、分析し、自分の味付けでそれを料理し、ストーリーを作るかということがよく分かり、しばし興奮がおさまりませんでした。


司馬遼太郎氏が一冊本を書くのに、トラック一杯分の資料を読むと聞いたことがあります。仮に、誇張が入っているとしても、吉村氏も、司馬氏同様、少なくともそれに匹敵するくらいの、時間と情熱をかけなければ、満足のいく歴史小説は書けないということでしょうね。

資料によって、記述に矛盾が生じた時など、その溝を埋める作業は、作家の全想像力、集中力を注ぎ込むものなのだと良く分かりました。歴史作家の原稿に“締め切り”があるというのは酷だ、とすら感じます。

また、十分に調査をしたり、取材に走り回ったりすることができるだけの、生活や家庭がなければ、歴史作家というのは、とても選択できる職業ではありませんね。特に吉村氏は細部にこだわる作家だそうですから、よけいそうなのでしょう。

吉村昭氏、初体験、初心者の私が言うのもおこがましいのですが、歴史小説に興味のある方にはぜひお薦めしたい一冊です。本書に出会うことができましたのも、上に挙げましたような諸先達のおかげです。ありがとうございました。

私は“吉村昭中級者”めざして、地道にがんばります。


史実を歩く

文藝春秋

詳 細


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『史実を歩く』 吉村昭
文藝春秋:214P:714円



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 過去最高4位にしていただきました。ですが、何と3位は私の倍近くでございます。
ふ~。どうすりゃいいんでしょう。キムタツ先生に相談です(笑)。

  1位にしていただきました。本当にありがとうございます。

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