今日から 当教室 では、春期講習です。新受験生諸君!がんばろう!
さて…
日本にいるとどうしても海外のニュースはアメリカ・アジアが中心で、ヨーロッパ諸国の特に経済に関するものは非常に少ないですね。今日は欧州統合の基盤となったローマ条約が調印されてから50周年にあたります。
EU加盟27カ国、域内人口約5億人(アメリカの人口3億人)にも膨れ上がり、域内のGDPはアメリカと同レベルで、通貨のユーロは強くなっています。昨日・今日は50周年を祝い、その首脳がベルリンに一堂に会し盛大な式典が催されるそうです。
⇒ 『駐日欧州委員会代表部』
ただ、やはりここでも宗教の問題などが出てきます。政教分離とはいうものの、いろいろの国をキリスト教の価値観で統一を強めるのか、トルコなどの加盟を認め、さらに市場規模を拡大させるのかなどで意見が割れているようですね。
暗礁に乗り上げた欧州憲法批准作業が象徴するように、またイラク戦争の対応が国によって分かれたように、ここからの舵取りは本当に難しいだろうと思います。
それでも、環境・エネルギー問題などでEU市場の種種の基準を統一したり、強力な独占禁止法を背景に、米大手企業の合併を阻んだ例もあるそうで、「EU基準」が世界を動かす局面が増えていきそうです。
本書は、そんなヨーロッパ社会と日本がこれから先、どういう方向を目指すべきかというシンポジウムが元になって出来上がっているものです。2002年に出されました。
著者はRボワイエ(フランス経済学者)、オブユールヨーゲンゼン(デンマーク元農相)、ケネスカーチス(カナダ政治学者)、クリスチャンソテール(フランス元大蔵大臣)、モレノブルトルディ(イタリア経済学者)、榊原英資、佐々木かをり、青木昌彦、藤本隆宏 他数名の経済学者です。
本書の原題(フランス語)を直訳すると 『世界化と諸調整ーアメリカ的特殊性に直面したヨーロッパと日本』 となるそうです。
全体的な主張をまとめると…
“ITなどの進化もあり、情報を瞬時に共有することによって、国家間の依存関係は確かに深まったものの、それがある一つの形に収斂していくのではなく、その事態に対処する方法はむしろ個性化、多様化している” というような感じでしょうか。
すでに経済だけでなくさまざまフィールドで用いられる「グローバリズム」という言葉ですが、怪しげな解説、アメリカイズムとの混同、普遍的なものととらえてしまう過ちが見られると一様に指摘します。
著者たちはそのことに対してそれぞれの立場から警告を発しています。歴史のない国(アメリカ)でできたモデルが様々な長い歴史を持つヨーロッパ、日本でそれほど簡単に根を下ろすはずはないし、これまでのモデルも同様であったと。
世界にはアメリカ型の金融資本主義だけではなく、様々な資本主義があり、実際にアメリカ以外では金融資本主義ではない資本主義が成功しているとして、いくつかのモデルを紹介します。大前健一氏などが主張している「グローバリゼイションによって国民国家の行動能力は解体される」という見込みは、的外れであるという訳です。
既にアメリカ型金融資本主義は貧富の差の拡大など、馬脚を現しているのであり、それに気付かずにグローバリズムをとらえてしまうと、とんでもない過ちを犯すと主張しています。
専門用語もいくつか出てきて少々難解ですが、知らず知らず私自身アメリカの学者の意見ばかりを受け入れてきたことに気付かされ、驚き、反省しました。
指摘されれば当然のことなのですが、既に日本と同じような問題に直面し、それを克服しつつあるヨーロッパ人の持つ冷静な意見に耳を傾けない手はないかなと感じた次第です。
もう一つ、現在のEUを見ていて、アジアではとてもこのような市場統合は難しそうだということです。トルコ加盟の件を見ても分かりますが、やはりある程度共通の政治経済などの社会制度、価値観、あるいは宗教がなければ無理かなと思います。
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