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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『日本の歴史をよみなおす』 網野善彦

2007年03月27日 | 歴史


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歴史に興味のある人もない人も、春休みにぜひ読んでもらいたい一冊です。

中学生だとちょっと難しいかな。テストのためだけの脈絡のない年号暗記ほどつまらないものはないと思いますが、その逆で、歴史をこれほど生き生きとしたものとして解説してくれる先生は少ないでしょう。

教科書の歴史を否定する、といっては言いすぎですが、いわゆる根拠のない通説とか、誤った思い込みなどを徹底的にはがしてくれるという感じでしょうか。専門的な分厚い本もありますが、本書は若者向けに語り口調で書かれています。


日本人はどこから来たのか、なぜ我が国の名前は “日本” なのか、天皇はどうやって生まれてきたのかなどなど、そもそも論とでもいうようなところから歴史を語っているのが良いですね。


本書では14世紀が日本の歴史のターニングポイントだという認識を元に、その頃の出来事が現代に与えた影響などを中心に考察します。中世は封建制の時代で、徐々に武士の力が皇族や貴族を凌駕するようになるころです。

その中で、“聖なるもの” と “俗なもの” の従来のバランスが崩れていき、文字や貨幣の普及が急速に進んでいきます。同時にそれまで聖俗の「聖」の部分に属していたはずの職能民たちが蔑視の対象となっていく、つまり「えた・」が発生するプロセスを分かりやすく様々な角度から論証しています。非常に興味深い指摘です。


以前ご紹介した『日本史の一級史料(山本博文)』を読みますと、自分で古文書を読んだりして、史料を研究できたら、どんなに楽しいだろうと思いましたが、本書でも 「一遍聖絵」 という絵を史料として、これまでの研究内容とは異なった新鮮な視点を提供しています。

氏は日本史の中でも中世が専門だそうですが、そのあたりの分析や、解説は独壇場、歴史は“科学”だと感じることができると思います。まだまだ日本の歴史には研究が不足している部分、従ってまだ解明されていないところがたくさんあるとしています。


残念ながら、2004年に亡くなっていますが、歴史研究に大きな足跡を残したのではないでしょうか。一方で、政治的な発言も目に付き、私も主張が “偏っているのではないか” と、一時期は敬遠していましたが、本書はおもしろい一冊です。


目次は以下の通りです。

第1章 文字について
第2章 貨幣と商業・金融
第3章 畏怖と賎視
第4章 女性をめぐって
第5章 天皇と「日本」の国号


P.S. 実は本書の続編があって、それもいつかご紹介しようと思っていましたが、本書とその続編を一緒にして文庫化したものが発売されていました。今気付きました。下の表紙のものです。2冊分ですから、こちらの方が良いかもしれませんね。 (409P:1260円です) 

ですから、ついでに続編の目次も紹介しておきましょう。本書は両方、入っているということでしょう。


第1章 日本の社会は農業社会か
第2章 海からみた日本列島
第3章 荘園・公領の世界
第4章 悪党・海賊と商人・金融業者
第5章 日本の社会を考えなおす

 


日本の歴史をよみなおす (全)

筑摩書房

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『日本の歴史をよみなおす』 網野善彦
筑摩書房:237P:1260円