私が高校生たちに薦める小説の中で、自分もとっても気に入っている一冊です。ディケンズやオーウェル同様の名文家で、英語が得意な生徒には本書の話をしたり、原書を見せたりしています。
カズオイシグロは日本生まれのイギリス育ちですが、今やイギリスを代表する大作家であり、その地位を築かせたのがこの小説だと言われています。
名家の「執事」(高校生には“執事”というのが死語ですね)の目を通して、失われつつある伝統的イギリスを語ります。非常に格調高い言葉で書かれており、逆に言えば堅いのですが、読み進めるうちに、英国調の婉曲的な表現が心地よくなるから不思議です。
原書の方も、しばらくの時間辛抱して手に取ってみますと、きっと自分の受験英語はなかなか“高級な読み物”に役立つようにできているのだなと実感できると思います。『読めた!』という、できれば物語と自分の英語力、二重の感動を味わってもらいたいのです。
上流階級の屋敷で催される、歴史に影響を与えるような様々な会議、打ち合わせ、それを取り仕切る執事の姿をイギリス人気質を見せる形で描かれています。そしてその執事は、屋敷がアメリカ人の主人に代わったところで、旅に出ます。その後のストーリーもすばらしい。
是非お読み下さい。
日の名残り早川書房詳細 |
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『日の名残り』カズオイシグロ
早川epi文庫:365p:756円