本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『岳物語』『岳物語(続)』 椎名誠

2008年07月11日 | エッセイ


岳物語.jpg



夏休みが近付いてきましたね。私立の中にはすでにテスト休みに入ったところがあるでしょう。ということで、生徒諸君に休みの間にぜひ読んでもらいたいような本をなるべく取り上げてみましょう。

今回は椎名誠氏の私小説と呼ばれる 『岳物語』 とその続編です。“岳” は椎名氏の長男の名前で、そのものズバリ、椎名氏が息子とのエピソードなどを紹介しながら、その親の思いを綴ったエッセーです。

かなり前に出版されたものですが、いまだにいろいろなところの推薦図書にも挙げられていますし、中学入試にも出されますね。


中学生くらいになると、「親が、うざい!」 などと、日々思いながら生活している人もきっとたくさんいるでしょうが、そういう人にも読んでもらいたい一冊。逆に親御さんが読んでも、参考になる点が多々ありそうです。

椎名氏自身の生い立ちにも触れているのですが、今の時代の感覚からすれば、激動の幼年・少年時代を過ごされたようです。


椎名親子は本気でプロレスごっこをしたり、釣りの勝負をしたり、子どもとしてというより、表面的には一人の男として扱っている印象です。

仕事がら、長期間に渡って自宅をあける椎名氏ですが、その旅から帰った父を、息子は年齢とともに違う迎え方をします。その様子で父は子の成長を感じ、「私は静かにうれしかった」 と語ります。

教育論というような大上段に構えたものではなく、親が読めば、忘れかけた子ども時代の感性を思い出すでしょうし、生徒諸君が読めば、親が何を考えているのか、わかるかもしれない。そんな一冊でしょうか。


ここで描かれている岳君。すっかり成長して、ボクサー、かつ写真家だそうです。やっぱりサラリーマンにはならないんですね(笑)。



P.S.椎名氏の著作は随分前の “あやしい探検隊” のシリーズもおもしろいですね。



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岳物語 (集英社文庫)
椎名 誠
集英社

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あやしい探検隊焚火発見伝 (小学館文庫)
椎名 誠,林 政明
小学館

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『がんばらない』 鎌田實

2007年07月26日 | エッセイ

 

がんばらない.jpg


おはようございます!

しばらくご無沙汰でした。お越しいただいた方、本当にすみません。久しぶりですが、すばらしい一冊をご紹介しますのでお許しを…。


著者の鎌田氏は若い頃にあえて長野の田舎にある赤字経営の病院に赴任したり、何年間もチェルノブイリに出かけたりする使命感あふれる医師です。看護学校の校長であり病院長になった今も、たゆまず理想の病院、医療を目指し邁進している人物。

時々、ラジオなどに出演されてお話を聞きますが、本当におだやかな話しっぷりで、きっと、病院で診てもらう患者さんも安心してすべてを委ねられる、そんな気にさせるような人柄だと感じます。

以前ご紹介しました 『医者 井戸を掘る』 の中村哲氏の “とにかく生きておれ、病気はあとで治す” という言葉も、アフガニスタンで奮闘する医師の現状を伝える印象深いものですが、本書の言葉も心にしみます。

書名 “がんばらない” はその病院内の壁に掲げられていることばです。


理想の病院とは?そう考え始めると簡単そうでなかなか答えが難しい。たいていの人は人生の終盤において、病院、そして、医師をはじめとするスタッフに、一時的にせよ自分の命を預けなければならないわけです。

ですから、この質問は自分の最期はどうありたいかという問いかけと等しいものになりますから易しくはないのです。

氏によれば、自分の病院に “がんばらない” と掲げていることについて、 “我々医者、看護婦ががんばりますから患者さんは自分のままでいて下さい”という意味だそうです。

本書の中で氏は理想の医療とは何かということを問いかけるため、身の回りの様々なストーリー(実話)を紹介しています。

患者と家族、医者、看護婦、そして病院、どの話も理想的な生き方、そして望ましい最期を描いていますし涙を禁じえないものばかりです。といっても、それらのストーリーに暗さはなく、鎌田氏の筆によって、おもしろおかしいエピソードが挿入され、幸福感、明るさに包まれています。


目次は以下のようなものです。


命を支えるということ

患者が来ない病院

ぼくが田舎医者になった理由

チェルノブイリへ

がんばらない

医療が変わる

あなたはあなたのままでいい


読者の年齢に関係なく読めます。さわやかな読後感を味わえる書物であると同時に、“自分や家族の通っている病院は?お医者さんは?”などと考えさせられてしまいます。

つまり、必然的に現代医療の問題点を浮き彫りにします。教育の対象が学力だけではないのと同様に、医療の対象は肉体や臓器だけではなく、患者の心だということを痛感させられます。医療分野へ進学を考えている生徒に限らず、ひとりでも多くの方に読んでいただきたいと思う一冊です。



P.S. タイミングが悪く、夏期講習会でみんなが頑張っている時に、この書名はどうかと気付いたのですが、感動的な一冊ですので…。

生徒諸君はもちろん精一杯 “がんばる” んですよ!






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P.S. 前回記事から久しぶりのUPになってしまいました。この間もご訪問いただいた方々、本当にありがとうございます。夏期講習はまだまだ続きますが、何とか時々はUPいたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


がんばらない
鎌田 實
集英社

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『おはなしおはなし』 河合隼雄

2007年07月20日 | エッセイ


おはなしおはなし.jpg


本書の著者、元文化庁長官で、臨床心理学者の河合隼雄さんが亡くなられたそうです。巨星堕つ、本当に残念です。謹んでご冥福をお祈りします。

実にたくさんの著作があり、どれほど多くの人の心を癒したことでしょう。河合氏の本を読んで、心理学を志そうと決意した若者も多いと聞きます。

今、アマゾンで “河合隼雄” の名前で検索したら、なんと410件!(41冊でも多いと思うのですが…)。小学生にもわかるような本から心理学の専門書までありますね。

私が読んでいるのはせいぜい10冊程度ですが、書籍という形以外でも、氏の書いた文をいろいろなところで目にしています。おそらくみなさんもそうではないでしょうか。


著作の多さも信じられないほどですが、活動も多岐に渡っており、「日本ウソツキクラブ会長」 なんていう肩書きまでご自分で作られています。また、心理療法の “箱庭療法” を完成・普及させたのも河合氏だそうですね。


本書は朝日新聞に毎週掲載されていた氏のコラムをまとめたものです。中学生でも読めるほど平易な言葉をあえて使っていますが、内容はどこまでも深く掘り下げることができるような気がします。

一つ一つの話は短いので気軽に読めますし、目次を見て興味のあるところだけ読むこともできます。でも、きっと最後は全部読みたくなる、そんな一冊だと思います。“人”には “おはなし” がどれほど重要かを教えてくれます。 そして河合氏こそ、まさに、おはなしの達人だと確信させられます。


目次は以下のようなものです。

明恵三題
うちの話
主人公
男と女
ただ座っていること
自己実現
サンタクロース
白鳥のお話
マージャン
ガムラン音楽
大和魂
おくればせ
安部公房さんの思い出
神話を語る
がんとクロッパー先生
魔法のまど〔ほか〕


河合氏は、代表作のひとつ、『昔話と日本人の心』で大佛次郎賞を取っています。私も大変感動した一冊ですが、しかし、以前ご紹介した小谷野敦氏の 『バカのための読書術』 の中で、小谷野氏がその本を “学問的意味のない思いつき” として、読んではいけない本リストに入れているのを見て、びっくりしたのを思い出します。


また、一年以上前にこのブログで取り上げた、個人的に忘れられない一冊が、私が10年ほど前に入院したおりに読んだ、『心理療法個人授業』 です。

南伸坊さんを生徒役に、河合氏が心理学(療法)について、専門的なことをわかりやすく解説したものです。医学部や心理学関係に進学を希望している生徒にぜひ読んでもらいたいと思う内容です。


本書でも『心理療法個人授業』でも読んで感じるのは、その底知れぬ知識や教養の高さと、わかりやすさ、プラス、優しいユーモアのセンスです。河合氏の跡を継ぐような方がたくさんいて欲しいと願うばかりです。




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おはなし おはなし
河合 隼雄
朝日新聞社

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『空からやってきた魚』 アーサー・ビナード

2007年06月27日 | エッセイ


空からやってきた魚.jpg


著者のアーサー・ビナード氏をご存知でしょうか。アメリカ人の詩人なのですが、日本語での詩集、『釣り上げては』 で、なんと中原中也賞を受賞してしまうほど、日本語になじんでいる方です。

この方、イタリア語も短期間遊学しただけでマスターしているそうですし、日本語にいたっては大学で、卒論を書く際にはじめて触れ、その日本語に魅惑されてから始めた日本語学習です。言葉の天才でしょうね。


本書はエッセーです。こういう言い方はどうかと思いますが、読み終わって、本書そのものというより、この作者がおもしろいと感じました。やっぱり天才詩人は目の付け所が違うというか…、変わっているというか…、何でもないものに眼を向けますし、そこからいろいろなことを夢想したり、自由に論じたりします。

“好奇心旺盛” という言葉から想像するレベルを越えているのではないでしょうか。死に装束を着てみたり、真夜中の池袋へ行ったり、アメリカでは嫌われものの銀杏や虫が気になってしまったり、とにかく神出鬼没、縦横無尽に頭も体も動く印象です。


アメリカでの思い出なども書かれていて、著者が幼いころから言葉に非常に敏感であったことを感じさせますが、言葉だけでなく、ありとあらゆるものに関心を示しています。



1章
 初めての唄(なに人になるか;初めての唄 ほか)

2章
 空からやってきた魚(団子虫の落下傘;ビーバーと愉快な仲間たち ほか)

3章
 地球湯めぐり(いま何どきだい?;地球湯めぐり ほか)

4章
 若きサンタの悩み(共和国の蛙に忠誠を誓う;林檎や無花果、アダムの臍 ほか)

5章
 骨の持ち方(忘れる先生;アライグマと狸 ほか)


書名の『空からやってきた魚』は、日本に来た自分を例えたものです。


本書の中で、時々筆者の作った“歌”、川柳のような短歌のようなものが書かれています。例えば…

   新聞の勧誘くれば日本語の 二の字も知らぬガイジンとなる ” 

と、これは笑えるものですが、

  “ 川の瀬に捨てられし古き自転車を 隠すがごとく落花群がる ” 


というのもあります。全編ユーモアの精神を失わず、アメリカ人が見た日本の魅力やカルチャーショックを受けたところが淡々と、時におもしろく書かれています。
 
本書を私が読んだきっかけは、NHKラジオで本書が朗読されていたのをおもしろく聞いたからでしたが、今、調べて見ますと、新しいエッセイ集 『日本語ぽこりぽこり』 というのがすでに出版されていました。

私は未読ですが、こちらの目次は


1 海を挟んでつれション

2 メロンの立場

3 夜行バスに浮かぶ

4 鼾感謝祭

5 ターキーに注意

6 おまけのミシシッピ


となっており、言葉中心に40のエピソードが紹介されているそうです。おそらく内容は似ていると、勝手に想像しますので、まことに無責任ですが(笑) こちらもいいかなという感じがいたします。

 

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空からやってきた魚

草思社

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日本語ぽこりぽこり

小学館

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『63歳・東京外語大3年 老学生の日記』 坂本武信

2007年06月26日 | エッセイ


63歳・東京外語大3年 老学生の日記.jpg

 

筆者は1943年生まれですが、現役の大学生。慶応大学卒業後、保険会社に36年間勤めますが、急性心筋梗塞で生死をさまよったのを機会に、定年前に退職します。これから第二の人生をどう過ごそうかという時に、妻に言われたのは… “家にいないで!濡れ落ち葉はお断り!” す・すごい。本書の表紙は落ち葉でしょうか(笑)。

さぁどうしたものかと、特に深く思案することも無く、ネットで見つけた東京外国語大学の社会人入試を受けて合格。これまたまったくの偶然にポーランド語を選択し、自分の子どもよりはるかに年下の生徒、あるいは自分より若い先生との学生生活を始めます。


まぁ、ここまでの事情を読んだだけでも、どんなエピソードが出てくるんだろうと期待できると思いませんか。18・19歳が20人ほどいるクラスに、60を越える老学生が一人、教室に同じ身分で座っているわけです。

実際に読んでみますと、期待を裏切らないおもしろい話がいくつも披露されています。大学に入った以上はコンパもあるし、学園祭やテストや夏休みだってごく普通にあるわけですから、エピソードには事欠きませんよね。


そもそも大学でポーランド語を専攻しようとする学生がどういうタイプの人なんでしょうね。英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、ロシア語、スペイン語くらいまでは何となくわかりますが…。私のような凡人には想像のつかないような人々がいるのではないかということも興味をそそられた原因かもしれません。

筆者の場合は、単に一番最初に入試で面接ができたのがポーランド語学科の教授だったというだけで、ポーランド語を選択し入学してしまうのです。

これに象徴されるような、筆者のこだわりのない姿勢。風の吹くまま、気の向くままという開き直った態度というか、悟りでも開いているかのような自然な生き方はきっと周囲の人からも好感を持って迎えられたのではないでしょうか。次々と起こる年齢ギャップゆえの “事件” なども楽しみながら、軽々と受け入れている印象です。

目次は以下のようになっています。



大学生活(退職そして大学へ;現役学生になる;若い仲間達)

わがポーランド(初めてのポーランド語学研修;再びポーランドへ;余談;三たびポーランドへ)

老学生の目(賞味期限;よ~く考えると;妻と娘と)


“団塊世代に贈る、脱会社・脱女房宣言!” なんて宣伝文句が書かれていますが、世代を超えておもしろい一冊です。

筆者は保険会社のサラリーマンだったわけですから、もちろん文筆家ではなく素人のはずですが、まぁ、才能があるのでしょうね。ユーモアを交え読みやすく、読者に不快な思いをまったくさせないような文章に感心しました。


筆者のおかげでポーランド学科の同級生たちの大学生活がどれだけ豊かなものになったでしょうか。未知のものに直面すれば、普通の大人は興味より不安の方が大きいと思うのですが、筆者の場合はむしろ好んで未知との遭遇、偶然を求めているかのようです。

結局、縁もゆかりもなかったポーランドに三度も行き、そこでも持ち前の自然体と好奇心で、多くのおもしろい、時に感動的な経験をします。確かに失敗談もあるのですが、それをユーモアたっぷりに受け流し、良い経験をさせてもらった、勉強になったと喜んでいる姿勢に心惹かれます。


読み始めた当初は、リタイアするとこんなにも人は自由に生きられるのかと思ったのですが、やはりそれ以上に筆者の上で述べたような性格がそれを可能にしているのだと感じました。

団塊世代どころか、高校生諸君にもぜひ読んでもらいたいエッセイです。勉強の違った意味が感じ取れる人もいるでしょうし、大学が単に就職準備のためのサラリーマン養成所だけではないことがわかると思います。


こうして楽しんで勉強している姿は非常にすがすがしく、私にもし二度目の大学生生活があれば、きっとうまくやれそうだ、そんな気にさせてくれました。

 

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63歳・東京外語大3年 老学生の日記

産経新聞出版

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『漫録おやじ日本を叱る』 井尻千男

2007年06月20日 | エッセイ

 
漫録おやじ日本をカる.jpg

 
本書の著者、井尻千男氏をご存知でしょうか。日本経済新聞の文化面のコラムを25年も担当していた名コラムニストです。

私は、最初、それに気付かず、ある討論会を収録した別の本を読んでいたときに、その中で、居並ぶ大物達の中でも、氏の際立った論理に惹かれて、どんな人だろうと、その著作を探して読んだのが本書です。

その討論会のような特定のテーマを掘り下げて論ずる、というたぐいの本ではなく、氏が雑誌に書いているコラムを集めたものでした。体系的、学問的に、ある問題を扱ったものではなかったのですが、内容は期待通りあるいはそれ以上におもしろく読めました。


本書の表紙のイラストや名前だけでは気付かなかったのですが、いろいろ見ている間に、あっ、時々テレビに出ているあの人じゃんと知った次第です。なんと『新しい歴史教科書を作る会』の顧問だそうです。

 

井尻千男.jpg



私はいつも10冊以上、読みかけの本があり、あちらの本こちらの本と寄り道をしながら一冊を読むことが多いのですが、本書は途中でやめられず一日で読みきってしまいました。話題は日本文化を中心に硬軟さまざまです。


コラムの中の話題としては、

「鳩山由紀夫氏の言語能力」、「新聞の『検閲』をご存知か」、「少年法守って国滅ぶ」、などなどです。少し前の話題ですが、本質は変わっていないと感じます。


目次は

1 平らに成りてのっぺらぼう

2 からっぽの日本

3 馬鹿騒ぎして闇深し

4 気儘な政治家たち

5 苛烈な世界のウラオモテ

となっています。

他にも、井尻氏の著作を読みたかったのですが新しいものは少ないようで残念です。それはさておき、この本、題名がよくないと思いませんか(笑)。週刊新潮のコラムの題名から来ているようですが…。せっかく優れた内容が、これではどこかのおやじさんがあれこれ愚痴をいっているだけのような印象を与えてしまうような気がするんですが…。


そういえば、以前ご紹介した、サザエさんのお父さん磯野波平さんで知られる声優、永井一郎さんの著書も 『バカモン!波平、ニッポンを叱る』 でしたね。こちらはサザエさんの中でいつもカツオくんを叱っているのでOKでしょうが、“漫録おやじ” では、若者は題名を見ただけで興味を失うのではないかと…もったいない。両方とも新潮社でしたね。偶然でしょうか。


それはともかく、波平さんこと、永井一郎氏の著作も味のある内容で良いのですが、本書はそれ以上にお薦めしたい一冊です。何か日本がヘンだと思われる方にはぜひお読みいただきたいと感じます。



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漫録おやじ日本を叱る

新潮社

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バカモン!波平、ニッポンを叱る

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『昨日のように今日があり』 千宗室

2007年05月23日 | エッセイ


昨日のように今日があり.jpg


ある大学入試の英文で、 「“ tea ceremony ”(茶道) という言葉ほど、イギリス人(外国人一般も) にわかりにくいものはない」 という意味のものがありました。

なぜならば、イギリスでは、“teaティー” は日常を表す代表的な言葉で、お茶を飲むのはごくありふれた習慣。一方で、“ceremony:セレモニー” という単語は、逆に非日常の代表格のような、お葬式とか結婚式など、厳粛で堅苦しい機会にしか使わない単語。その両極端がくっつくというのが意味不明だというわけです。なるほど…。


本書は茶道裏千家十六代家元、千宗室さんのエッセイです。裏千家では家元になると、みな千宗室と名乗るそうですね。何と言っても、あの千利休から続く伝統の名家ですし、筆者の妻はあの三笠宮崇仁親王の次女・容子(まさこ)内親王(千容子)ということですから、私などは近付きがたい(笑)。

私の妻は裏千家の“茶名”という免状を持っていますが、私は茶道を全く知りません。それでも本書を取り上げたのは、その一部が、NHKラジオ、私の本棚で朗読されていたのを聞き、おもしろそうだと思ったからです。お茶を、見よう見まねでいただいたことは何度もありますが、どういうものなのか興味を持って読みました。


書名“昨日のように~” というのは、歴史の重み、数え切れないほどの昨日に背中を押されて自分は今日を生きているのだという感謝の気持ちが込められているようです。目次をご覧になれば、わかるように歳時記と言える書き方で、さまざまなものを考察します。


以下が目次です。


一月(年渡り;初釜式 ほか)

二月(侘び・寂び;豊かな兆し ほか)

三月(百千鳥;お酒の話 ほか)

四月(桜の下に集う;伝統と革新)

五月(柏餅の御利益;鰹の極楽 ほか)

六月(心のアスファルト・B>G雨の慎み ほか)

七月(天、紘がる;SF大好き ほか)

八月(夏休み;葉の露 ほか)

九月(絵画の気配;心の身仕度 ほか)

十月(祭りの色合い;献茶式に思う ほか)

十一月(茶人の正月;次季の実り ほか)

十二月(惜別の時;私の書斎 ほか)


こうして繰り返される季節の変化や昔から受け継がれる茶道の行事に投影しながら、自分の人生や日本文化を語ります。

本書の最初に紹介されている禅語が 『漁夫生涯竹一竿』 というもの。茶室の掛け軸によくある言葉だそうです。これが 『山僧活計茶三畝』 に続き、“修行している僧侶には三畝ほどの茶畑。漁師にはお気に入りの釣竿一本さえあれば、心豊かに暮らせるのだ” という教えだそうです。

続けて筆者は、『人生とは日々、多くの欲望や不平不満を、さながら重ね着をするようにまとい続ける “緩慢なる自殺行為” であるとも言える。しかし、その中で自分の分際というものを冷静に見つめる確かな目を持てれば、とりあえず今不要なものははぎ捨てることができるのではないだろうか』 と述べています。


千宗室氏の生きる心構えでしょうか。えらく哲学的ですが、話が固いのは前書きだけでした(笑)。酒も飲めば、食事の好みもあれこれ述べたり、お茶の話が常に中心ですが、いろいろの話題、考え方を自由に語っておられます。

自分がつい犯してしまったような失敗などもまじえているのですが、いつも冷静な自分に戻してくれるのが、季節だったり、その季節にあるお茶の行事だったりするんですね。

想像以上に気さくな感じで非常に好感を持ちました。茶道もおもしろそうだ、習ってみたいなと(笑)感じました。


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昨日のように今日があり

講談社

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『午睡のあとで』 【豊穣なる書物の世界】 松本道介

2007年04月30日 | エッセイ


午睡のあとで.jpg


“昼寝”って本当は体に(頭にも)良いそうですが、怠け者の代名詞みたいにも言われますよね。“三食昼寝付き” なんてよく聞きますが…、あこがれませんか(笑)。


ゴールデンウィーク、何も高級リゾート地のビーチじゃなくても良いから、のんびり寝転がって好きな本でも読んでいたい、と思ったりしますね。しませんか(笑)。


本書の筆者は1935年生まれ、中央大学文学部の教授で、本書は、“熊本日日新聞” に連載された随筆集ですが、書名が表わすように、午睡のあとのふんわりした雰囲気で書かれています。

あとがきによると本を読みながら午睡、午睡の合間に読書という生活にあこがれてきたそうです。やっぱり(笑)。そういう時の読書に求めているのは束の間のタイムスリップだと。そうかもしれませんね。


というわけで、エッセイなのですが、そのほとんどが本を題材にしており、書評集というとちょっとイメージが違うのですが、なかなかおもいろい一冊です。


例えば、「カフカと荷風」 というところでは…、カフカの『 変身 』を取り上げて、まとめると以下のようなことです。



ドイツ文学を教えている立場上、退潮著しいドイツ文学でカフカのみが20世紀ベストテンの小説に選ばれたりするのは、ありがたい気がするし、『変身』 は生徒必読だけれども、“おもしろいから読め” とはどうしても言えない。

カフカを読んだあとは口直しに
永井荷風を読むように薦めたりする。突飛な組み合わせのようだが、両方とも成功した実業家の父がいて、それに疎まれた息子で、孤独な人生を送っているし、同年代であり、荷風は5年もフランス、アメリカにいた。

近代人としての意識もあっただろうから、似たような物を書いても良さそうだけど、読後感はまったく違う。『変身』をおもしろく読める人というのはその人自身が不幸かもしれない、



などと勝手なことをおっしゃっております(笑)。つまり、書評というより話のタネ(ネタ)にしているのですね。他にも、このブログで取り上げたものでは、夏目漱石の『こころ』 『三四郎』、 また『大江戸シリーズ』 そしてカミュの『異邦人』などについて。

老子平家物語、などの古典から、千と千尋の神隠しイチローインタビュー武田邦彦というようなものまでたくさんの本が取り上げられています。


帯にもあるように豊穣なる書物の世界が、ゆっくりとしたリズムで語られています。本を読んで感じたことが、同じだと思ったものもあり、そのことも親しみがわいた一因でしょう。また、本書の中から気になって読んでみたものも数冊あります。

一つのコラムがたった2ページで、最初は寝る前に2,3個ずつコラムを読んでいましたが、半分くらいからは続きが読みたくて一気に読んでしまいました。その優しい語り口の中にも、日本や日本の教育に対する危機感もにじみ出ています。


以前にご紹介した 『この言葉』 も、本書に似た形で、すばらしい一冊でした。こういった、書物を紹介しながら自分の人生をかみ締めるように、本音でポツリポツリと語るような一冊は、繰り返し読みたくなります。


休日に読む最適の一冊ではないかと思っています(笑)。



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午睡のあとで

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この言葉!―生き方を考える50話

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白いカラス


『大衆食堂の人々』 呉智英

2007年02月25日 | エッセイ

 

大衆食堂 呉智英.jpg


ブログを通して大先輩から、ベストフレンドまでたくさんの知り合いができましたが、兄貴分という感じがぴったりなのが雨さん。AMラジオと読書を愛する武道家であり、ワンボックスカー1台の運送業。


その雨さんが去年の11月ごろ、メールで、“これを読めよ” と教えてくれたのが、柄谷行人と呉智英の著作です。柄谷の方は『終焉をめぐって』、そして呉智英は本書を読みましたが、『終焉をめぐって』は私の頭では、一度読んだだけでは整理できませんから本書から(笑)。


勉強不足で恥ずかしいのですが、時々、呉智英という“字面”はいろんなところで見ていたものの、これほどの大物だとは知りませんでした。浅羽通明宮崎哲弥小谷野敦までも呉智英氏に心酔しているようですね。


さらに最近は、いじめに関して、


被害者が自ら死を選ぶなんてバカなことがあるか。死ぬべきは加害者の方だ。いじめられている諸君、自殺するぐらいなら復讐せよ。死刑にはならないぞ。少年法が君たちを守ってくれるから


と発言し問題になりました。正直、私もこれを読んだ時、驚きました。たとえそれが“真理”であったとしても、いじめっ子を殺してやろうと考える子どもは、そもそも自殺しないでしょうから。ですから、これはいじめられっ子に対するメッセージというより、実は諸制度に対する皮肉じゃないかと…。


本書は、こういう調子で歯に衣着せることなく、“大衆食堂” という場所に集う人々を観察したり、逆に進歩的知識人とかアイドルなどの有名人を遠慮なく揶揄しています。非常に痛快でした。

また、動物について、子どもについて、女性について、本屋について、あらゆる身の回りのものを題材に、ずば抜けた観察力と独特の切り口で俎上に乗せてしまいます。まるで言葉の料理人ですね。


哲学や文学・歴史を背景にした深い教養がところどころうかがわれますし、全編を貫いてユーモアもたっぷりで、声を出して笑う場面がいくつもあります。上品な内容ではありませんが、単なるブラックユーモアでもなく、実におもしろいエッセーです。


最後の章、『学問のすすめ』だけはまじめに(笑)書いているのですが、ここは考えさせられます。俗受けする美談を語ることによって、知識の詰め込みを批判する勢力を徹底して嫌悪しています。

確か、小谷野氏も何かの著作で、知的怠惰は罪であるというようなことまで、言い切っていたように記憶しています。

一見物分りの良さそうなリベラリズムは、無知のサタンだとまで言っています。受験勉強が地獄だとして、だから何なのだ。受験生は東大をめざせなどなど、それぞれに興味深い指摘が続きます。


そして、吉本隆明について、“進歩的知識人批判を一貫しておこなったこと”において、後世に名を残す思想家と、高く評価しています。おもしろいのは上で取り上げた柄谷氏は逆で、吉本氏に関して、“大衆からの孤立感” を理由に立場を変えたことを批判しています。“知”と呼ばれるようなものはそもそも“大衆”から遊離しているからこそ、知なのだというわけですね。


知とか大衆とか教養とか知識人とか、そういったことを考えるためのヒントがいっぱいありますし、単にゲラゲラ笑いながら読み進めることもできる貴重な一冊でした。


雨アニキの雨ニッキ(笑)。ぜひ訪れてみて下さい。


     ⇒ 『雨日

 

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大衆食堂の人々

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『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉

2007年02月17日 | エッセイ

 

 

 

頑張ってるから悩むねん。.gif


やっと発売になりました。


日本有数の進学校、灘高。その高3生の英語担当教師、キムタツこと、木村達哉先生のエッセイです。昨日、アマゾンから届き、即、一気読みでした。


私は、つい先日の記事で、今年のセンター試験前、受験生に贈る最後の一冊として、バートランド・ラッセルの 『幸福論』 を選びました。長年の私の愛読書で、ものすごいパワーと知恵にあふれた珠玉の名作だと思ってそうしましたが、本書を読んで、まず最初に思い浮かんだ感想が、

 
“あっ、これは、キムタツの幸福論 だ” というものです。



“夢ってなんだろう?”

“どうして前向きに生きることができないのか?”

“自分は変えられるのか?本当の自分って?”

“教育とは?”

“お金とか家族の意味は?”




こういう、根本的なことが気になってしまう、感性の鋭い若い人に読んでもらいたい一冊です。若くなくても、訳知り顔にものを言う、私のような大人たち(笑)、そういう人にも大変刺激的でした。(生徒が親に薦めるのに良いかも!)


さて、拙ブログを継続的にご覧頂いている方は、私がキムタツ先生とお付き合いがあることはご存知だと思います。そのきっかけは、私がキムタツ先生の最初のご著書 『センター試験英語リスニング合格の法則』 をどちらかと言うと、やや“批判的”にレビューしてしまったことです。それこそ訳知り顔に…。

 
それに対していただいた、先生じきじきの真摯なコメントに驚きました。どうして拙文が先生の目にとまったのか、その当時、まだ、ブログランキングにも参加していませんし、ブログをはじめた当初で、きっと一日のアクセスもわずか50くらいの時の記事ですから、偶然と言う他ありません。



 → 『センター試験英語リスニング合格の法則



まぁ仮に、こんな記事を見つけたとしても、無視して何の差支えもないのですが…。


最近でこそ、拙ブログでとりあげたご著者自身がメールを下さることが結構あるのですが、私が批判的に書いたものに対しては、こう言っては申し訳ないのですが、本や英語の不備に対して、読者、多くは受験生には関係のない、言い訳が多いのです。


やれ、忙しかっただの、出版社の不手際だの…と。その点でも、キムタツ先生のコメントは際立っていました。取り上げたことに対する感謝の意が表明されているのですから。


その後、続けて、


センター試験英語リスニング合格の法則(実践編)

東大英語リスニング

東大英語リーディング

東大英語ライティング&グラマー



を次々と出され、それぞれにレビューを書きましたが、これまた驚くことに、普通、“売れた”後に、出されるものは大抵、派手な宣伝とは裏腹に、手抜きが目立ったり、繰り返しの主張や英文が多くなるものですが、キムタツ先生の場合は逆。どんどん内容が濃くなっている印象です。


特に近著のライティング&グラマーは出色で、東大受験生だけでなく、多くの生徒に使ってもらいたい一冊です。いや、ほんとに。お世辞でもなんでもなく。ブログから一円の利益もありませんので(笑)。



また、こうしたネット上のやり取りの中で、“今度ぜひ一杯やりましょう” というのはどこでもあいさつ代わりですが、キムタツ先生は、実際に忙しい時期にもかかわらず、東大特講の前日に上京された折、私にわざわざ電話をいただき、実現しました。



→ 『Enjoyed ourselves



本書で繰り返し強調されている、“アンテナをはり、行動する” というのを確かに実行されていますね。ただ、アンテナの感度が良すぎて、私のようなものまで、そのアンテナに引っかかるので、どうかとも思いますが…(笑)。


また、思いがけず、灘高の未履修問題の発覚したその当日、私は、木村先生が出版物の打ち合わせ中(本書かな?) にもかかわらず、 “先生のフェアプレー精神を信じたい。すぐに、ブログで事実を公表して、お詫びのメッセージを出していただきたい”とメールをし、数回やりとりをさせていただきました。  


下手な対処をすれば、キムタツ先生のブログが炎上するリスクもありますが、先生は翌日すぐ、履修漏れの事実の公表と、自らの認識不足に関し、真摯なお詫びの記事をブログに出して下さいました。



→ 『履修漏れに関して(お詫び)』(キムタツのリスニング日記)



受験業界や教員の世界に無縁の方にとっては、単なるお詫び記事ですが、私にとっては、信じがたいほど、けた外れに勇気ある行動です。長くなるのでやめますが…。キムタツは本物だと、私が一番感動した記事なんです。


週刊誌も新聞、テレビ局も、さらに、きっこのブログまでも、遠慮なく、灘高や、その教師を批判しますが、まったくの事実誤認があります、きっと今だに。そのあたりは当教室、伊藤先生がきちんとした記事を書いてくれました。




 伊藤先生のブログ→『代々木の個別学習塾講師が想う、あれこれ




渋谷で二度目にお会いした時、私がその不公平に憤慨しながら、そのことについて話し合いました。先生は身に降りかかった批判や不利益を、まるで次のことに向けたエネルギーに換えてしまうかのようなポジティブな態度でしたが、その真意、考え方が本書を読んで理解できました。


人間、木村達哉がこれまで経験した多くの挫折。病気や受験での失敗、さらに父親の事業の失敗など…、筆舌に尽くしがたい苦労を経て、また読書を通じて、身に付けた人生観なんですね。


人生、泣き笑い、演歌じゃないけど(こんなこと書くと、叱られる!)、本当にそういう一冊で、私も読んで泣き、笑いましたね。



この世に生まれた以上、がんばらなあかん、生徒たちの役に立ちたい





それを再認識させられた一冊です。受験に関わるすべての人に読んでもらいたいなぁと思います。






P.S. 本書の印税は大部分ユニセフに寄付されるそうですよ。また、たまたま昨日は先生の43回目の誕生日だそうです。おめでとうございます。ますますのご活躍、祈念しております。
 



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『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉
ベネッセコーポレーション:208P:1260円





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『沈船検死』 曽野綾子

2006年12月22日 | エッセイ

 

沈船検死 曽野綾子.jpg


作家、三浦朱門氏の妻であり、自身も旺盛に活動されている曽野綾子氏の著作です。

新聞などに載る氏の発言を “元気のいい人だな” という程度の気持ちで読んでいたのですが、どういうわけか著作を読む機会を持っていませんでした。かつては自民党大会にゲストとして呼ばれ、大勢の議員に向かって、


政治家になられる、ということは、自己の利益や権勢のために働くことではなく、人々のために自ら選んで死ぬ準備があると言えることでありましょう。それができないようなら、すぐにも私のように、卑怯者でも嘘つきでもどうにか勤まる職業に転職されることをお勧めいたします


とやりました。テレビのニュースでそれを見た時の驚きは今でも思い出せます。 また小泉内閣が誕生してしばらくした時、話題になった首相のメールマガジン、(らいおんはーと)では、小泉首相に対し

 
いまだに小泉総理の演説にも国民の心に深く残ったものがない」 と直言しました。



さらに、「ボランティアの強制」 などを主張したり、ペルー元大統領フジモリ氏を自宅にかくまったりして話題になり、そういう断片的な知識しか持たずに本書を読んだのですが、さまざまな発言や行動の真意が分かりました。すべてがキリスト教に基づく信念で活動をしているのですね。


困っている人がいれば、南アフリカであろうが、インドであろうが、パレスチナであろうが、砂漠、僻地、難民収容所にどんどんわけいって、自身で危険を冒して活動をする。とても優しく、同時に厳しい人でした。


自分だけの平和主義、言葉だけの民主主義、偽善的なマスコミを徹底して嫌悪します。非常に強烈なインパクトがあり、さまざまな事がらについて独自の観点が示されます。

ノーベル賞作家の大江健三郎氏が、“沖縄ノート”の中で書いた、沖縄戦における集団自決の話し。戦争の悲惨さを表わす代表的な事件として歴史教科書にまで載ってしまいましたが、曽野氏は自分で何度も沖縄へ足を運び、徹底的に調査をします。


その中で、集団自決に関わる証言が次々否定され、当の大江氏はまったく現地取材を行っていないことを知り愕然とし、告発します。現在は裁判にもなっているそうです。

もし曽野氏が正しいのであれば、私にとって “平和と知性のシンボル” “日本文学の誇り” であった大江氏でしたが、彼がペンという暴力で罪のない人々のリンチをしているということになってしまうわけです。


そういえば、曽野氏はアメリカのイラク統治に関しても早くから “失敗”を予言していました。理由は 『アメリカ政府はアラブのことを知らないから』。ご自分で行動してきた人ならではの判断でしょう。


とにかくどんな権力に対しても、媚びることをしない、命を危険にさらしてまで行動をする。単なる作家やジャーナリストの範疇を越えて、 “サムライ” とでも呼びたくなるような女性だと知りました。


沈船検死

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沖縄ノート

岩波書店

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沈船検死―夜明けの新聞の匂い

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『ニセモノ師たち』 中島誠之助

2006年12月04日 | エッセイ


ニセモノ師たち.jpg


テレビ東京の 『開運!なんでも鑑定団』、ご存知ですよね。おもしろい番組で、わたしは時々、日曜日に再放送されているのを見るだけですが、ついつい最後まで見てしまいます。どうしてあれに引きつけられるかわかりませんが、そろそろ長寿番組と言っても良いくらいでしょうか。今、見てみたら10年以上続いているんですね。


実は、かつて当教室 に通っていた生徒の家が、古美術商を営んでおられ、お話をうかがう機会があったのですが、やはり、番組はテレビ用にかなり着色された編集になっていて、現実の取引の世界とは違うとおっしゃっておられました。そりゃそうかもしれませんね。ただし、おもしろいそうです(笑)。


本書はその出演者の一人、中島誠之助氏が書かれたものです。 「いい仕事~」でおなじみでしょう。プロの骨董屋とはどういうものか、ぞっとする世界を垣間見ることができます。


“なんでも鑑定団 ”や CMに人の良さそうな表情で出演している筆者ですが、現在にいたるまでの “だまし、だまされ” の記録を読むと、とんでもない “裏世界” をくぐりぬけてきた人物なんだとわかります。


日本国内だけでなく、国境をまたいだ詐欺師がいますし、命がけのだましなど、生産性の全くない骨董のプロの世界で起こることは異様です。新しい商品が開発されるわけではありませんから、すでに存在しているものを、限られた世界で動かしながら、利益を得ていくのですから普通の経営とはだいぶ違います。


だまされて、贋作をつかんでしまったら、それをだまして他へ回したくなる気持ちもわかります。ババ抜きですよね。


非常に人間くさいドラマが溢れていました。本書を読んで、あの軽い雰囲気の中島先生に対する見方が変わりました。興味のある方はどうぞ。気軽に読めておもしろいと思います。

 



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『地下経済-この国を動かしている本当のカネの流れ』 宮崎学

2006年11月30日 | エッセイ


地下経済 宮崎学.jpg


さまざまな談合や不動産に関わる問題、また薬物や不正入国、密輸出入の事件、いわゆる、裏社会と呼ばれる世界が関わっているだろうということは間違いないと思うのですが、それがどの程度、表の社会に食い込んでいるのか、あるいは、それによってどれほど、現実の経済や政治に影響を与えているのでしょう。

少なくとも、私のような塾講師という仕事には、表面上、まったくその影響はありませんが、『東京アンダーワールド(ロバートホワイティング)』、などを読みますと、例えば、不動産などでつながっていても不思議ではないという気がします。


著者は、グリコ森永事件で キツネ目の男ではないかと疑われた宮崎学氏です。あの時は話題になりましたが、それ以降、時おり、マスコミに登場する程度でしたね。ところが、最近になって、ラスプーチン、『国家の罠』 などを書いた、あの佐藤優氏との関係で著作まで出しており(近々、UPします)、興味を持って本書を読みました。

佐藤氏は、日本の政界、官界の権力構造などを知っているだけでなく、ロシアの裏の裏まで知り尽くしている印象です。


読んでみますと、本書は、高校生にも充分読めるわかりやすい内容です。ただし、地下経済を高校生に教えるというのも変な話しですし、夢を抱く若者には、積極的に薦められる本だとは思いませんが…。

おもしろくて、どんどん読めるのですが、論理的に説明しているのではなく、やや乱暴で、断定調で書かれていますので、全部を真に受けてもらっては困るかなと…(大人の世の中、すべてが腐敗していると思ってしまう)。

まったく知らなかったのですが、宮崎氏はヤクザの組長の息子として生まれ、裏の世界にも詳しく、自分自身がわいろを渡した政治家や、起こした事件などについても、警察や検察の動きを紹介しています。鈴木宗男氏や自身の逮捕を、国策捜査だと指摘した佐藤氏とこのあたりは共通した認識があるのでしょう。


学生運動や裏の活動で警察ににらまれたりした経験から、この日本の置かれた、地下経済が支配するという状況を憂い、読者にも被害者シンドロームに陥ることなく、なんだったら加害者になるくらいの意気込みで生きて抜いて欲しいそうです(笑)。

そんなぁ~。これでは身も蓋もありません。 


おや?と思ったのは、中坊公平氏に対する指摘です。

中坊氏は住専回収機構の社長に就任した瞬間、それまでの「国民の側」から「国家の側」に寝返ったというわけです。その理屈がいまだにわかりません。国民の税金を取り返そうとしている、正義感に燃えるヒーローだと思っておりましたから。


本書を書いた時点では、あの中坊氏を批判するのは、タブーといっても良いくらい、中坊氏は(神格化といえば大げさですが) 庶民、または正義の味方だと思われていたはずです。NHKでも特番が組まれたり、民主党の党首候補にしようという動きまであったと記憶しています。

ところが宮崎氏は 「わたしに中坊批判をやめさせるのは、フセインに写経をさせるより難しいのだ」 とまで、憎悪むき出しで書いています。本書を読んでも詳しい事情はわかりませんでしたが、中坊氏は、しばらく前、検察の取調べを受けて弁護士を辞めましたよね。いつか真相は明らかになるのでしょうか。


こんな調子で歯切れがよく読みやすくておもしろいのですが、ではどういう社会が良いのか、そこが描かれていないのが悔やまれます。




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地下経済―この国を動かしている本当のカネの流れ

青春出版社

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『地下経済-この国を動かしている本当のカネの流れ』 宮崎学
青春出版社:199P:700円



P.S. 当教室(中川校) の生徒諸君、ご父母のみなさま、また、ご心配頂いた方々へ。

昨日、
伊藤先生と一緒に、Pochi 先生の見舞いに行ってまいりました。数年前に私が入院したのと同じ、かつての国立病院でした。(私も、Pochi先生も世田谷区在住です) みなさまにご迷惑、ご心配をおかけしたことを心から悔やみ、大変恐縮しておりました。現在は、大変元気で、早く復帰したいという様子でした。容態に心配がなくなったので、看護師さんや、先生のお子さんもあまり相手にしてくれないそうです(笑)。ただし、検査に時間がかかるとのことで、復帰の時期はまだ決まっておりません。その間、またご迷惑をおかけすることになるかと思いますが、最善を尽くしますので、なにとぞ、ご理解を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

また、本来ならば、コメントなどを入れていただいたブロガーのみなさんの方へ出向いてお礼を申し上げたいのですが、なかなかそれができずにおります。これまであまり親しくやり取りをしていないような方からも、VIVA、Pochi ガンバレと励ましのメールまで頂戴しておりますのに、本当に申し訳ございません。お許し下さい。


『子どもはぜんぜん、悪くない。』佐藤弘道 (NHK おかあさんといっしょ)

2006年11月23日 | エッセイ
 

子どもはぜんぜん、悪くない。.jpg


NHKの『おかあさんといっしょ』に出演されていた、体操の“ひろみちお兄さん”をご存知でしょうか?

けんたろうにいさんや、あゆみおねえさんの方の印象が強く(何といってもダンゴ3兄弟!)、私にとっては、影が薄かったのですが、お母さんたちのアイドルだったそうです。 我が家には、ちびっ子が一人、10年前のちびっ子もおりますので、かなり長い間、見ていることになります。


本書はそのひろみちおにいさんのエッセーです。番組を引退し、実に失礼ながら、まるで、歳をとったアイドルの写真集のようで、タイトルもちょっと~、とかなり買うのをためらったのですが、何といっても10年以上のお付き合い(笑)。ですから記念に読んでみました。


当然ですが、大学を出て10年以上たてば、お兄さんも、おじさんの域に入ってきます。佐藤氏も現在は、38歳。番組に出続けている間に、結婚をし、子どもを持ちます。自分も変わりましたが、やはり子どもが変わってきたことに気が付きます。

ただし、タイトルからも想像できるように、彼の目には今も昔も子どもは楽しいこと、歌や体操が大好き。12年間の番組での定点観測から、やはりお母さんが変わってきたのだと確信しているようです。

もちろんお母さんたちを変えてしまう世間の情勢があります。 佐藤氏は新宿の焼き鳥屋さんの息子だそうですから、大都会の変化の激しさを目の当たりにしているのでしょう。学校の先生について、子育て環境の変化についても語り、やっぱり大人がもっとがんばらないと!と主張します。


バクテンをして、大きなジェスチャーで、笑顔をふりまいている姿からはちょっと想像できない、熱いハートを持っている方でした。一つの仕事を10年以上しっかりとやり抜く、やはりそういう方には、何か勉強になるものがありますね。


買って良かった、当たりの一冊! 小さいお子さんをお持ちの方、あるいは先生方にも、ぜひお薦めします。



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子どもはぜんぜん、悪くない。

講談社

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『子どもはぜんぜん、悪くない。』佐藤弘道 (NHK おかあさんといっしょ)
講談社:125P:1000円


『若きサムライのために』 三島由紀夫

2006年11月21日 | エッセイ
 

若きサムライのために.jpg


192◎年生まれの若輩 ”とおっしゃる tani先輩は 『三島由紀夫全集、全35巻』を、保証人を付けてまでして購入されたそうです。好きなんですねとコメントしたら、違うそうです(笑)。

ご覧下さい。→  tani先輩のブログ 『狸便乱亭ノート


本書の解説で、福田和也氏は、『 石原慎太郎氏とか、江藤淳氏といった自分よりかなり年上の文学者の方たちと、三島由紀夫の話をするたびに、いつも違和感を覚える。違和感という表現は不正確かもしれない。むしろ、陳腐な云い方かもしれないが、「断絶」と云った方がいいだろう。』 と述べています。


“今の我々にとって、三島は「切腹した作家」であり、世代によってこれほど一人の人間に対して感じ方の異なる作家はいない” という内容です。福田氏は昭和35年(1960年)生まれです。わたしはその更にその数年下。そして三島は1925年生まれで、今なら80歳くらいですね。


私も恥ずかしながら、大学生くらいまで、三島由紀夫といえば、自衛隊に殴りこんで割腹自殺をした変わり者くらいにしか思っていなかったので、あまり小説を読む気にならなかったのですが、本書はエッセー集で、表紙にもひかれて読んでみました。


“紹介文の一節です”

平和ボケと現状肯定に寝そべる世相を軽蔑し、ニセ文化人の「お茶漬けナショナリズム」を罵り、死を賭す覚悟なき学生運動にゆれる学園を「動物園」と皮肉る、挑発と警世の書。

ただし、全編がこのような激しい内容ではありません。非常に知的に哲学的に「人間性」というものに迫ります。その上で、若い読者を想定しているためか、あえて分かりやすい例をあげたり、げきを飛ばそうと、過激な言葉を用いたりしている印象を受けました。

また、猪木正道氏、後の総理大臣となる、福田赳夫氏(大蔵省で一緒にいたそうです!)、さらに、福田忸存氏との対話もあり、読みやすい一冊です。


もう一ヶ所引用しましょう。

(自民党政治を批判して)日本という国は、そうした青年の死の衝動を充足させるものを、全く与えていないんだ。青年にだけじゃない。市民にも与えていない。緑の芝生に赤いお屋根、マイホームのために人間は死なんよ。人間は目に見えるもののためには死なない。人間ってもっとスピリチュアル(精神的)なものだ。


先日、取り上げた、『美と共同体と東大闘争(三島由紀夫VS東大全共闘)』 は、観念的、抽象的すぎる異様な討論で、全共闘の学生は天皇陛下に対し、“醜いじじい” などと語っていたりして、衝撃的であるのと同時に、理解不能だと感じました。


その時の映像 (YouTube) をぜひご覧になっていただきたいのですが、同じ年に出されたこの本で、三島は東大を、“動物園” だと感じていたことを知りました。



とにもかくにも、三島由紀夫は20年以上にわたって、マスコミの寵児であったそうです。私はそれを知らぬ世代ですが、時間さえあれば、(保証人さえいれば) 全集を購入してでも研究してみたい人物の一人です。




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若きサムライのために

文藝春秋

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美と共同体と東大闘争

角川書店

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P.S. 
さて、それをするには、どうしてもその時代背景を知りたいし、時代を知っている方のお話をうかがいたいのですが、私の父でも、まだ若い(1936年生)。実は、これまた、tani先輩の別宅で、名文 『心に残る思い出や本について』  を見つけてしまいました。

ぜひぜひ、その時代をお読み下さい。感動しました。

  tani先輩の別宅 → 『 PETITES NOUVELLES 』。





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 『若きサムライのために』 三島由紀夫
文藝春秋:276P:500円