(手前みそのようで、恐縮ですが…、) 本当に力のある塾講師のみなさんはいろいろと良い本を知っているもんなんですね。だから会話も深くておもしろいし、たとえもユニークで、生徒に人気があるんでしょうね。今回もいろいろな先生から紹介してもらいました!
いや~、毎月この特集になれば良いのになどと考えております。こうしてまとめて並べるのも壮観で良いのですが、実際に自分で一冊ずつ読んで紹介したいところですね。年末年始、読む本がいくつか見つかりました。
気になる本が並んでいると思います。では、どうぞ!
【ダメな議論】 飯田泰之 著 (ちくま新書 714円)
最近で一番心に残った、というか脳を揺さぶられた感じの1冊です。本書は分析的思考の重要性を説くものですが、「ダメな議論をあぶり出す手法を提示していること」と、「具体例として時事問題におけるありがちな議論を取り上げていること」が特徴です。
例えば、「近年、少年による凶悪犯罪は増加しており、道徳教育の見直しが必要とされる」という主旨の文を読んだときに違和感があるでしょうか。ないようであれば、きっと本書に揺さぶられます。
他にも「ダメな若者論」「食料安保論」 「バブル悪玉論」 「良いデフレ論」等々、まだまだたくさんの「何となく常識になっている論説」の何がダメかを論証しています。自分だけの秘密にしておきたいくらいの1冊と言ったら褒め過ぎでしょうか。
【ラ・ロシュフコー箴言集】 ラ・ロシュフコー 著(岩波書店 789円)
フランス・モラリスト文学の最高傑作・・・というと、やたら堅苦しい感じがするけれど、実は単なる「名(迷?)言集」。ほんの1,2行の言葉ばかりが集められた、誰でも読める本です。ただ、そこに集められた言葉は、よく言えば素晴らしい人生の警句、悪く言えば単なるひねくれ者の戯れ言です。
「人が他人を褒めるのは、そのことで自分が得をしようとしているときである」「切れ者らしく見せようという色気が邪魔をして、切れ者になれないことがよくある。」・・・うーん、耳が痛い。真面目な本もよいですが、たまにはこういうちょっと意地悪な言葉に浸ってみるのもいかがでしょうか?
【帝都物語】 荒俣弘 著 (角川文庫 735円)
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今でもファンの多い伝奇小説です。学生時代、新刊が出るたびに徹夜でむさぼり読みました。内容を一言で言うと、帝都(東京のことです)を破壊しようとする魔神、加藤保憲とそれを阻止しようとする人々との闘いを描いた話です。
長編のため話題は様々な方面に及んでいます。この本にはまると、歴史と荒俣が作り出した架空の世界が混同してきます。読み終わると次の巻が読みたくなる麻薬のような本です。時間がある時には荒俣ワールドにどっぷり浸かってください。
【ぼくは勉強ができない】 山田詠美 著 (新潮社 420円)
私の思い出の一冊と言えば断然これです。高校2年生のころ初めて読んで衝撃を受けた覚えがあります。「常識」に従わず、他人の敷いたレールを歩かない・・・そういうカッコイイ生き方よりも、むしろそうしたことと引き換えに背負う孤独の方が印象的でした。
もちろん主人公時田秀美には、強い母、包容力のある祖父、そして大人の彼女がいましたが、本当のところでは一人で戦っている姿があって惹かれた覚えがあります。思春期に出会えてよかった一冊です。
『算数・数学が得意になる本』 芳沢光雄 著 (講談社現代新書 720円)
本のタイトルを見て「そんなことはあり得ない!」という人も多いと思います。算数、数学が苦手という人は多いと思います。そういった人は必ずどこかでわからなくなったという経験があるはずです。例えば「分数の計算」 「証明問題」 「確率」で先生が何を言っているかわからなくなった経験はありませんか。講師としても 「どうやって理解させるか」という事が難しい単元というものがあります。
この本にはそういった算数・数学でつまずきやすい所の解説が書かれています。ただの解説ではなく教科書やゆとり教育の功罪にまでつっこんで書かれているので、つまずきの原因が的確にわかると思います。この本は、子育て中の保護者や教員、中学生以上の学生が読者の対象となっています。
「角錐の体積はなぜ角柱に1/3をかければよいのか」という質問は答えるのに窮してしまったことはありませんか?この本には微積分を使わずに視覚で理解出来る方法が書かれています。それは「大根とナイフを使って・・・」、その先はこの本の中に書かれています。
『峰雲へ』 阿部夏丸 著 (小学館 1785円)
今はもう都会では味わうことが出来ない遊びがあります。本書は川を舞台に少年たちのみずみずしい感性や行動力が思い切り描かれています。入試にもよく出題される本ですが、大人が読んでも心に響く内容です。読後は満足感でいっぱいになりました。
【碁を打つ女】 シャン・サ 著 (早川書房 1995円)
舞台は昭和初期の満州国、日本人将校と中国人少女の物語。二人が数ページずつ、交互に自分の人生を語る形で、二つの物語が展開します。どちらも、引き込まれるストーリーですが、やっと二人が出会うのは物語後半の碁会所。
過酷な現実、激しい動乱、微妙な心理を、抑揚を押えた文体で描きます。ほとんど無言で対局を繰り返していただけの二人が、満州の状況が風雲急を告げる中で互いを頼らざるを得なくなり、衝撃的なエンディングへとつながります。ため息が出るようなすばらしい小説でした。
筆者はフランス在住の中国人ですが、まるで日本人の筆によるかのような天皇の描き方、そして、兵士のはかなさは万国共通でしょう。『上海ベイビー』が話題になる時代はすでに終わり、頑迷な中国にも新しい世代が出てきていると感じました。
以上です。
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