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『アフリカの瞳』帚木蓬生

2010年06月13日 | 小説

        
                      


南アフリカでのサッカーワールドカップが開幕しました。オリンピック以上の視聴者がいるといわれる、世界最大のスポーツ祭典。本当に待ちに待っていた大会ですが、肝心の日本チームの前評判が著しく低い!

本田でも大久保でも松井でも良いので、点を取って欲しい。がんばってもらいたいところです。


初のアフリカ開催ですし、
アパルトヘイトという言葉自体を知らない生徒が当教室でも増えているなぁと感じている昨今、これは歴史的に大変意義深いことで、いろいろと知る絶好の機会だと思いますが、なんだか治安の悪さばかりが報道されています。

特に南アフリカの象徴的存在である、
ネルソンマンデラ氏の開会式への登場がかなわなかったことが非常に残念です。しかも身内の悲劇的な事故ということで。

試合中ずっと聞こえてくる、あの
ブブゼラという伝統楽器。とんでもなくうるさく、きっと現場にいる相手チームには大迷惑なのでしょう。

が、本書を読んでみると、あの音は、テレビで見ている限り、応援というより黒人の怒りの声にも聞こえてきます。




以下は以前(2006年)、本書を紹介した内容です。


■■■■■

ある国際的な調査で、日本は世界中でかなり、どころか最も信頼されている国だと示されました。確か小泉首相も国会で『日本は国際社会から孤立している』というような批判に反論し、このデータに言及していました。

英語ですがこちらをご覧下さい。
http://www.worldpublicopinion.org/pipa/articles/home_page/168.php?nid=

同じデータを、子どもにも分かるように簡略化してありますが、うちの塾のメルマガでも『世界に良い影響を与えている国』のデータとして取り上げています。
http://tokkun.net/merumaga0602.htm

そこで、ひょっとしたら、こんな小説が現実であれば、そうなるだろうな、という一冊です。アフリカ諸国の深刻な問題の一つがエイズ、鳥インフルエンザなどです。小泉首相の演説でも、対策の援助が盛り込まれています。

日本でも10代でのHIV感染が増えていると、報道されていましたが、アフリカには国民の1割がエイズにかかり、毎日200人の赤ん坊がHIVに感染して生まれてくるという国があります。原因は国民のHIV感染に対する無知と、薬の不足なのです。

本書では南アフリカに一人の日本人医師、作田が住み、現地人の女性と結婚、人々を救うためにHIVと戦います。大統領が『アフリカンルネッサンス!アパルトヘイトさえはねのけた力を持っているのだ、その力を再び結集すれば…』と繰り返し、絶叫するも、国家の惨状は覆いようもない。

感染に気が付かず、分かっても病院に行けず、薬が手に入らない。若者が、妊婦が、赤ん坊が次々に亡くなっていきます。 戦う相手は病気だけではありません。この状況に援助の手をさしのべるどころか、それにつけこみ巨利を得ようとする外国資本。自国の利益になることにしか援助をしない。

WTOはコピー治療薬の製造を認めない。それさえあればどれだけ多くの命が救われるか知っているのに、です。そこら辺の記述に迫力があるのは、筆者自身が医師だからではないでしょうか。

さらに、それに協力することで富と権力を手に入れようとする、地元の政治家や実力者。民衆をなだめるために、ニセの薬まで効能を偽り出回り始めます。それを暴こうとする、主人公とその協力者たちは、手を変え品を変えながらの妨害にあい、命さえ狙われます。

正義感と貧しい人々の協力を頼りに必死に戦う日本人医師と、危険を顧みず彼についてくる人々の純粋な姿に感動します。後半は涙なしでは読めない一冊です。

本書の最後に出てくる、タイトルにつながる詩をご紹介します。

アフリカには瞳がある
大きなどこまでも深い瞳だ
瞳はもう涙を流さない
涙は何年も前に涸れてしまった
涙のない瞳でアフリカは見つめる
大地の緑を 
大空の先を

人類の未来を

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アフリカの瞳

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『アフリカの瞳』帚木蓬生
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『金閣寺』 三島由紀夫

2010年03月19日 | 小説


金閣寺.jpg


朝日新聞に 「百年読書会」 という企画があります。作家の重松清氏がナビゲーター役になって、読者からの感想文などを紹介してくれます。太宰治の 「斜陽」 から始まり、月に一冊のペースで名作を取り上げます。

ネットでも読めますし、楽しみにしていましたが、3月が最後だそうです。残念!そして、そこで取り上げられているのが、本書です。

これも一度取り上げた記事ですが、よろしければ、お読み下さい。

□□□□

南大門 (崇礼門) という韓国の国宝1号が放火によって消失、崩壊するという事件が起きました。ソウルのシンボルであり、歴史的にも日本とつながりがある建造物だそうですから、それがなくなってしまうというの大変残念なことです。


そういえば、以前にアフガニスタンのバーミヤン遺跡がタリバンによって破壊されたという報道もありましたね。変わり果ててしまった映像を見て、唖然としたものです。特定の政治勢力や宗教を越えた、人類共通というか世界遺産的な価値があると思うだけに悔やまれます。

南大門は韓国最古の木造建築。朝鮮王朝時代に建てられたという国を代表する文化財だそうですから、日本でいえば、金閣寺や法隆寺が放火であっという間になくなってしまうというようなことでしょうか。その衝撃は計り知れないほどでしょう。


実際に日本でも1950年に、国宝の金閣寺が見習いの僧侶によって放火、焼失しており、それを題材にした小説が本書。言わずと知れた名作ですが、今回の事件で取り上げたいと思いました。

 (金閣寺放火事件


かなり以前に、ある国語の先生から「描写、組立が完璧」 と薦められて読んだ本書ですが、確かに私も圧倒されました。実際に起きた事件をどの程度取材しているのかはわかりませんが、哲学的な論理で見事に 「ゆがんだ心」 を表現しています。 


それにしてもこの豊かな言葉はどこから出てくるのでしょうか。三島由紀夫はノーベル賞候補にも挙がったという世界レベルの作家ですから、枯れることのない表現力があるのは当然でしょうが、読んでいてため息が出るほどでした。

心理描写だけでなく、金閣寺が迫ってくるのか、金閣に対して迫るのか、緊迫した言葉の連続と、緻密な文章が印象的でした。 


実際には読んでいる途中、「ここまで書かれると、饒舌すぎるのではないか」、平たく言えば、くどいのではないかとも感じましたが、最後に付いている解説を読んで納得しました。こう書いてありました。


「文章の厳しい節度が、何より主人公にたいする作者の批判であると同時に、主人公の肉体が、作者の豊穣すぎる言語映像に、適切な制約として働き、これをつねに或る貧寒と惨めさを伴う現実に止めていることを、読者は自然に感得します」 

私は自然に感得できなくて、ちょっと残念(笑)。なるほどなぁ~と…。


連続放火魔逮捕などという事件の折に、“火を見て興奮した” という供述が出されますが、確かに、火というものは人間を穏やかならぬ心境にさせるのでしょうね。


 


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今日の金閣寺ライブ映像です。

金閣寺ライブ.jpg

金閣寺ライブ


 P.S. 実は、数年前のクリスマスイブの夜10時ごろ、自宅マンションの隣の部屋で火事が発生。警報機が鳴り続け、マンションの住人は部屋から飛び出し、近所の人々が集まり、消防車が何台も駆けつけるという大騒ぎがありました。

その時、たまたま翌日からの冬期講習に備えて早く寝ていた私は、妻に「大変、起きて、火事よ火事!」 と言われ、隣の家のお子さんの 「火事です。誰か助けて下さい」 という繰り返し叫ぶ大声に起こされ、寝ぼけたまま消火器を持ってお隣に上がりこみ、キッチンで燃えていた鍋やフライパンを消火した経験があります。消防署から感謝状までいただいたんですよ。

実際には、大きな火事にならずに済んだのですが、いまだにその時の炎と、立ち込める煙の向こうで点滅していたクリスマスツリーを忘れられません。その時は夢中でしたが、あとで考えると “怖かった…”。


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金閣寺
三島 由紀夫
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『穴』 『HOLES』 ルイス・サッカー(著) 幸田敦子(訳)

2010年03月09日 | 小説

  
穴.jpg     



これも学校が休みの間にぜひ読んで欲しいなと思う一冊です。高校生諸君はがんばって英語版に挑戦して下さいね。


邦訳が出される前に私が読んだのは、きっと10年近く前になると思うのですが、テレビか新聞かで、当時、アメリカの児童文学として大絶賛されていると聞いて、また 『HOLES (穴)』 という妙な書名が気になって取り寄せてみました。

自分で楽しむというより、“英語の授業で一部でも使えないかな” と思って読み始めたのですが、大人の私も夢中になって読んでしまいました。


主人公のスタンリーは無実の罪で少年院のようなところに入れられます。少年の更生施設ですが、果てしなく広がる荒地で、炎天下、来る日も来る日もショベルを握って穴掘りをさせられます。

そもそも無実のスタンリーですが、その施設では罪を犯して入ってきた、くせものだらけの先輩少年たちに新入りいじめにあったりします。そこの所長や監守たちも決して少年たちを甘やかさず、立っていられなくなるほど、ひたすら穴を掘らせるのです。


ところがその作業はどうやら、更生のためということを装ってはいるものの、大人たちのある事情がからんでいることに気付きます。

友達もいなかったスタンレーですが、やがて同じ班の少年ゼロに字の読み書きなどを教えることによって、徐々に心が通い始めます。互いを助けあったり、自分の思いを語ったりすることのできる友情が生まれます。

そのゼロがあることをきっかけに、監守をショベルでなぐってしまいそのまま逃走してしまいます。そしてゼロのことを放っておけないスタンレーも翌日に…。


そんなストーリーですが、それまでも、さまざまなエピソードや人々の背景が語られ、二人の決死の逃亡のあとも予想の付かない展開、息を呑むようなできごとが続いてどんでん返し、一気に読んでしまいます。

全米図書賞など多くの賞も取っているそうです。最後まで読めば忘れられない一冊になるのではないかと思います。実際に 当教室 の生徒たちの中で何人かが読み、彼らの感想もすべて好意的なものでした。お薦めします。



P.S. そういえば、以前ご紹介した 『英語耳』 の著者、松澤氏も本書を強く推薦しておられました。CDやDVDにもなっているそうですから、それを英語学習に使おうということですね。 (『英語耳』はお薦めですが、同じ松澤氏の 『セ耳』 は???ですが。)


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穴 HOLES
ルイス・ サッカー,幸田 敦子
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『人間動物園』 連城三紀彦

2008年01月23日 | 小説

 

人間動物園.jpg


東京は私立高校の推薦入試だというのに、久しぶりの雪になってしまいました。雪は家の中やスキー場で見ているぶんにはきれいですが、雪に慣れていない都会の受験生にはやっかいですね。

ぼつぼつ合格の報も届いておりますが、今日も明日も大きな混乱や事故無く、生徒諸君が受験を終えてくれますように。


■■■

さて、そんな大雪の日に起こった誘拐事件を扱ったミステリーを紹介しましょう。

以前に取り上げた、同じ連城三紀彦氏の 『白光』 もすばらしい一作でしたが、この作品の構想力もすごいなぁと感心しきりです。この作者のイマジネーションはとどまるところを知らないかのようです。

交通が麻痺してしまった大雪の日に誘拐事件が起こります。行方不明になっていたのは収賄疑惑の真っ只中にいる大物政治家の孫でした。


ところが実際に誘拐されていたのは… 犯人の真の狙いは?

二転三転するストーリーの中で、人間をまるで檻に閉じ込められている動物のようにもてあそびます。

ちょっと大げさなようですが、“雪がどかっと降ると本書を思い出す” というくらい、私には印象的な一冊でした。お薦めします。



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人間動物園 (双葉文庫)
連城 三紀彦
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『初秋』 ロバート・B・パーカー / 菊池光=訳

2007年10月19日 | 小説


初秋.jpg


北方謙三氏の 『不良の木』 を昨年の秋にブログでご紹介しました。確かに大変おもしろかったのですが、“もう少し、主人公が、スーパーマン的ではないハードボイルドの作品でお薦めがありませんか” と言って、教えていただいた一冊です。(やまちゃんさん、ありがとうございました)


さっそく購入して、読んで、感動し、何としても昨秋の間に記事をUPしようと決めていたのに、ついつい今年の秋になってしまいました。別にいつご紹介しても良い、すばらしい作品だと思うのですが、結局、去年の秋と今年の秋、二度読みました(笑)。やっぱり良かったです。


主人公は私立探偵のスペンサーという男です。あるお金持ちの婦人から、夫が連れ去ってしまった15歳になる自分の息子を取り返して欲しいと依頼されるところから物語が始まります。

仕事を引き受け、難なく子どもをつれてもどりましたが、子どもの様子などから、どうも複雑な事情がありそうだとわかります。


しばらくして、同じ母親から、今度は父親が子どもを強引に連れ返そうとするので、住み込みで二人を守って欲しいと懇願され、その仕事も引き受けます。二人と同居してみて、その子どもは結局は、父親からも母親からもまったく愛されておらず、ただの取引の材料に使われていることがわかります。

すでにその時、その15歳の少年は、他人はもちろん、親や周囲の人間、そして自分の将来にすらまったく興味を示さず、めったに自分の部屋からも出てこないような生活を送っていました。

周囲の大人たちによってそんな風になってしまった少年を、スペンサーが立ち直らせようとする物語です。

裏の社会と通じつつ、悪事を働き金儲けに明け暮れる父親と、子どもを放っておいて自分の安易な欲望だけを満たそうとする母親。あることをきっかけに、まず、その二人から少年を引き離し、スペンサーは少年と二人で、自分の恋人の持っている別荘で生活を始めます。


そこから展開されるスペンサー流の教育が非常に興味深く、また少年が徐々に心を開き自立していこうとする姿がすがすがしいです。ハードボイルドらしく、その途中には、少年を連れて、殺し屋と戦ったり、盗みに入ったりするのですが、どれも印象的なできごとで、荒唐無稽なところはまったくなく、ドキドキしながら読めると思います。

多くの人にお薦めできる一冊だと思います。



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初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
ロバート・B. パーカー,菊池 光,ロバート・B.パーカー
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『炎と氷』 新堂冬樹

2007年09月27日 | 小説

 

炎と氷.jpg


しばらく前のことですが、ある新聞の書評欄で、本書に関して 「とうとう新堂氏がやってくれた!」のように絶賛されていたので読んでみました。新藤冬樹さんという方の作品ははじめて読みました。


何も知らずに読んだのですが、何とヤミ金融の世界でのし上がろうとする二人の男の物語でした…。炎と氷は二人の人間の比喩。

どんな相手であれ、金のためなら力ずくで、命知らずの戦いをいどんで屈服させようとする “炎” のような男、世羅。 一方 “氷” の方は、中学時代に世羅を、機転を利かせたしかけで暴走族から救ったことのある冷静な男、若瀬。

この親友二人が九州で作った金を元手に東京で別々にヤミ金を始めます。 

拙ブログでも、『武富士サラ金の帝王(溝口敦)』 を取り上げたことがありますが、本書も想像を絶する、めちゃくちゃな世界が描かれています。新藤氏はこれを丹念に取材をして書いたのか、想像上のことなのか…。

実際、随分前になりますが、ご記憶でしょうか、日栄というサラ金の会社が厳しい取立てで 「肝臓売れや!」 などという脅し文句の録音テープがテレビなどで流されました。本書ではそれはまだまだ序の口。

下世話な言葉で言えば、“サラ金ならまだしも、ヤミ金はまじでヤバい”。痛切に感じます。


自分達にとってじゃまな相手が女性であろうと、子どもや老人であろうと容赦せず、それぞれの “シマ” で順調に活動を続け、業績を伸ばしますが、やがて彼らよりずっと規模の大きいヤミの世界が黙っていられなくなります。

入り組んだ事件や闇の世界とのつながりから、とうとう親友であった二人の利害が衝突する事件が起こります。縄張り争いが衝突を招いた結果です。 


まぁ、あらん限りの乱暴な言葉遣いや、凄惨なシーンが数多くありますので、高校生以下にはとてもおすすめできませんが、読めばヤミ金にはどんなに困っても近付かないという教訓は得られるでしょう。

さまざまなトリックもあり、展開もおもしろく、500ページ近い大作ですが、飽きることなく読んでしまいました。後から知ったのですがファンからは 「新堂ワールド」 と呼ばれているそうですが、私も正直、どっぷりとつかってしまいました(笑)。


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『ラブリーボーン』 アリス・シーボルド 片山奈緒美 (訳)

2007年09月22日 | 小説

 

ラブリーボーン.jpg


山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の裁判のニュース、夫の本村洋氏の映像を見るたびに何ともいえない気分にさせられます。殺人という犯罪自体も許せないものですが、その後の被害者の家族とその生活を考えると本当に心が痛みます。

特にこの事件は残虐極まりなく、犯人は死刑に相当すると思うのですが、みなさんはどんな感想をお持ちなんでしょうか。オウムの事件も同様ですが、死刑に反対する弁護士の方々が多いということなんでしょうね。


光市の事件のことが報道されるたびに思い出すのが本書です。2002年にアメリカで最も読まれた小説で、書き出しは次のようなものです。


『わたしはスージー・サーモン。魚と同じ名前よ。一九七三年十二月六日に殺されたとき、まだ一四歳だった。』 



14歳で知り合いの男から暴行を受け、その場で殺されてしまった主人公スージーサーモンが、天国に行き、そこから自分の死後の世界を見つめ、家族、友人の幸福を祈りながら、みんなの成長や状況の進展を見守るというスタイルで進んでいきます。 

事件後、スージーの父親は犯人と思われる男の捜査に夢中になり、変人扱いされてしまいます。母親はやがて家庭の重苦しさに耐えられずに家を出てしまいます。

こうして、何も罪のなかった少女の家族がばらばらになりそうな中で、スージーの妹、弟や友人達が、スージーに様々な思いを抱きながら、それぞれ成長を遂げていく姿が感動的に描かれています。 

喪失感をともなったまま生きてゆかねばならない人、時の経過とともに変わってしまう人の心が14歳スージーの優しい言葉で綴られています。

450ページほどにもなる長編ですが、中学生、高校生なら夢中で読んでしまうのではないでしょうか。

なんと、著者自身も大学生の時、性犯罪の被害者となり、心に大きな傷を負っているという事実。そこから生まれた美しくも重い物語です。



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ラブリー・ボーン
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『四万十川 第一部 -あつよしの夏-』 笹山久三

2007年08月28日 | 小説


川.jpg

 
この夏休み、生徒諸君はそれぞれ楽しい思い出を作ったことでしょう。そして、子供に思い出作りをさせてやりたいと、お父さん、お母さんもきっと酷暑の中、海・山で楽しい非日常を過ごされたに違いありません。

疲れ果てた子供の寝顔に満足して…、で、気が付いてみると、あと○○日で夏休みも終わり、“あっ、宿題はどうなってる?”(笑)。

夏休みの宿題の定番は何といっても読書感想文。思いっきり遊んだ後に待っている原稿用紙ですね。受験生なら海や山とはもちろん、読書とも無縁の夏休みになりがちですが、感想文はできましたか。


少年・少女の夏は事件いっぱい!ですから、自分が体験したイメージからも感想文にしやすい作品はたくさんあります。夏の読書ということで、これまでも 『カカシの夏休み(重松清)』 や 『夏の庭(湯本香樹実)』 『峰雲へ(阿部夏丸)』 などをご紹介しました。


夏の終わりにもう一冊。『峰雲へ』 と同じで舞台は川、あの四万十川です。私も、ずっと以前から、一度行ってみたいと思い続けている場所です。


四国の山の中。「コロバシ」というシカケを沈めて、四万十川のエビ・うなぎを獲ります。鮎を獲らせたら玄人はだしの名人級。そんな小学生、篤義(あつよし)は、口数少なく、おひとよしです。

クラスで 「ごはんに塩をかけただけの弁当」 と千代子がばかにされるのを見て、自分と比べてしまい、ちょっとほっとする情けない一面を持っています。しかし、教室でその千代子が泥棒に仕立て上げあられた時には、それをとっさにかばう篤義。

この弱さとまっすぐの強さを持ったこの小学生の純粋さに大きな魅力を感じるのは、私だけではないでしょう。情景・心情描写が細やかなのも魅力です。やはり映画にもなっているそうです。


生徒諸君に夏休み最後のおすすめ作品です!


P.S. 宿題の残っている人は世界陸上見てる場合じゃない! ま、でも陸上を見ていると “ラストスパート” の大切さも分かりますね(笑)。ガンバレ~!



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川.jpg 四万十川―あつよしの夏 (河出文庫―BUNGEI Collection)
笹山 久三
河出書房新社

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『最後の相場師』 津本陽

2007年08月17日 | 小説


最後の相場師2.jpg


アメリカのサブプライムローン、低所得者向けの融資だそうですが、その問題で、世界経済が不安定な方向へ行っているようですね。アメリカでも日本でも、株価が急落し、景気全体にも影響しかねないとなると大変心配です。

上海やアメリカの景気はバブルだという声は以前からありましたが、やはり調整の局面に入ったのでしょう。日本は依然としてデフレから抜け出していないと言われるだけに、今回うまく軟着陸できると良いのですが…。


以前ご紹介した 『黒字亡国ー対米黒字が日本経済を殺す(三國陽夫)』 も現在、景気が良いとされる日本の経済構造の問題点を指摘した非常に興味深い一冊ですが、だからといって一般国民はどう行動すれば良いのかまでは書いていませんでした。

まぁ、経済構造、特にマネーの世界は、ヘッジファンドなどに代表されるように複雑になりすぎて、専門家でも経済予測や市場の動きを堂々と間違えるくらいです(笑)。ですから、素人には完全にお手上げで、じっと見守るしかないのでしょう。


さて、本書は戦後最強の相場師と言われた是川銀蔵をモデルにして書かかれた小説です。現代の相場師が村上ファンドの村上世彰氏だとすれば、かなりおもむきの異なる人物像ですね。 『異形の将軍-田中角栄の生涯』 を書いて話題になった直木賞作家の津本陽氏の作品で、大変おもしろい一冊でした。


主人公はこれまで波乱の人生を送り、すでにはたから見れば、隠居生活に入っているのですが、79歳を迎えた時につぶやきます。「いよいよ、儂のこの世で仕残した勝負をはじめるか」 。 

妻と二人で質素な暮らしをし、もちろん大変な資産家となって、なに不自由なく暮らせるのですが、それを全部失ってしまうような無謀な勝負に出ます。株を通して大企業や証券会社、他の仕手筋との駆け引き、死闘が繰り広げられます。


相場師でありながら、金のためではなく、自分の存在証明をさがしているかのように戦い続けるのです。 株式相場というものにほとんど知識がない私でも、本書で描かれる戦いに引き込まれました。

ただし、あくまで小説ですから実話に基づいているとはいえ、投資に役立つというような類の本ではありません。スケールも違いすぎますし。

本書を読む前から、是川銀蔵という人物の名前は、どういうわけだか何度も聞いたことがあるのですが、読了してあらためて、Wikipedia を見て驚きました。波乱万丈というのは、まさにこの人の人生を言うのだと。

このプロフィール、小説家であれば書いてみたいと思うのではないでしょうか。私もその人柄と人生に関して詳しく読んでみたいと思いました。


津本氏の他の作品もまだまだ読んでみたいものがたくさんあります。何かお薦めのものがありましたら教えて下さいね。


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最後の相場師 新装版 (角川文庫 つ 4-1)
津本 陽
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『峰雲へ』 阿部夏丸

2007年08月14日 | 小説

 

峰雲へ.jpg


本書も夏休みに生徒たちに読んで欲しい感動物語です。読書感想文を書くのにもうってつけの一冊です。

重松清氏とは対照的に、あまり売れていないようですが(笑)、読みやすく、すばらしい一冊で、しかも中学入試や公立高校入試によく出題されます。2001~6年の集計では何と第3位でした。

    ⇒ 公立高校に出題される本・作家ランキング


これまでもいくつか子どもたちの成長を描いた感動物語を取り上げましたが、本書もそのもっとも典型的な内容です。『カカシの夏休み(重松清)』 や 『夏の庭(湯本香樹実)』 のように、“夏” という言葉こそ書名にありませんが、表紙には “Boys’ summer story” とあります。


舞台は愛知県に流れる矢作(やはぎ)川。実は愛知県は私の故郷で、私の卒業した学校の校歌にも “矢作川” が出てくるくらいですので、親近感をもたざるを得ません(笑)。


主人公は少年3人。彼らの住む町でただ一人残る、川漁師のおじいさん、源さんと、その孫を含む少年3人組みとの交流が物語のはじまりです。少年たちの目的は川にある小島に自分たちの基地を作ること。

友情と冒険物語というわけです。エピソードやストーリーはまったく異なりますが、”少年たちと川” という設定は、ミズーリ川を舞台にした、マークトウェインの “トムソーヤの冒険” を彷彿させます。

もちろん彼の国とは、自然のスケールやら、社会問題などの深刻さなどは比較になりませんが、どちらも少年達の持つ純粋さが素直に表現されていると感じます。


帯には “少年の心があると3回泣けます” とよくわからない宣伝文句がありますが、『夏の庭』 同様に、次々とさまざまなできごとがあり、まったく飽きません。学校や地域社会のあり方、障害者の存在や初恋まで…、一気に読んでしまった一冊です。

水の事故が連日報道されますので、本書を読んで、冒険をマネされると困るのですが、この夏休みの間に川に行って泳いだり、釣りをしてみたいと強く感じるのではないでしょうか。




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『カカシの夏休み』 重松清

2007年08月12日 | 小説

 

カカシの夏休み.jpg



あっという間に夏休みも半分が過ぎましたね。東京も36度と、夏らしい日差しが照りつける昨日、今日です。


夏期講習期間中、私たちのような塾講師は海、山へ出かけられませんので、本音では、“冷夏大歓迎” ですが(笑)、暑くないと気分が出ないのも事実でして…。お盆に帰省している人はたっぷり夏のふるさとを満喫していることでしょうね。

当然、受験生は勉強一本!ですが、そうでない生徒にはたくさん、本当にたくさん本を読んで欲しい。

子どもが読んで感動できて、しかも中学入試にも、公立高校入試にも出る、そんな作家のナンバー1はやっぱり、重松清氏でしょうか。氏の作品は、小説では 『ナイフ』 と、教育論では 『みんなのなやみ』 をこのブログで取り上げました。


参考までに…

        公立高校で出される作家・作品ランキング



氏は私と同年代なので、きっと問題意識が似ているのでしょう、特に教育問題に関しては、本質を突いてくる、そんな印象の作品が多いと感じます。


なぜ入試に出るのか。また、なぜ入試に出る作品や作家が集中する傾向にあるのか。それは 『秘伝 中学入試読解法 (石原千秋 著)』 を読むとはっきりわかります。やはり、学校というものの求める生徒像、とその思考回路は案外一定です。


さて、その重松氏の夏らしい一冊です。本書は三編を収録しています。


まず表題作である、“カカシの夏休み”。故郷をダム建設のためになくした同級生が、一人の死によって再会し、家庭、仕事、人生を考える話です。主人公は37歳、職業は教師です。

そして、次の “ライオン先生” も高校の教員の話。ドラマになっていますので、ご存知の方も多いでしょう。ユーモアもあり、印象的です。

最後の “未来” はいじめと自殺に関する切ないストーリー。きっと重松氏がもっとも心を砕いて描いたのだと思います。自殺した生徒の遺書により、その加害者とされてしまった生徒の家庭、その葛藤について描いた内容です。


いずれも教育、家族、生きることをテーマにしたものですが、重苦しい感じではなく、むしろすがすがしさを感じます。日常から離れた夏休み、生徒たちに味わって読んでもらいたい一冊です。

読書感想文にもしやすいと思います。



P.S. 受験生諸君は先生たちと教室にこもって勉強!休み中のいろいろな体験が子どもを成長させますが、何年かに一度だけ、勉強漬けの夏、読書漬けの夏も、子どもを大きく、とっても大きく成長させます。



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カカシの夏休み (文春文庫)
重松 清
文藝春秋

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『半落ち』 横山秀夫

2007年08月07日 | 小説

 

半落ち.jpg


いまさらですが…、ミステリーついでに『半落ち』です。だいぶ前に読みました。

ミステリー作品に対して贈られる何か大きな2つの賞(名前を忘れました)を同一作品で独占したのは本書が初、とか何とか新聞に書いてあり、実際に長期にわたり、あまりにもよく売れているので読んでみました。

警官の妻殺し、そしてその後、自首するまでの空白の2日間のなぞをめぐり、事件にかかわる6人の男、警官、検察官、裁判官、弁護士、新聞記者、看守の視点が描かれています。各々の立場や、仕事などの微妙な関係がうまく描かれており、飽きさせませんね。

ほどよい緊張感を保ちながら、読者を最後まで引き付けておく力はすごいと思います。そういう良質なミステリーですが、あまりにも騒ぎが大きく期待しすぎたために正直、もうちょっと何かほしい気がしました。


最後の謎も “すごい!” というような驚きではなく、“な~るほど” という感じだと私は思いましたが、どうでしょう。

登場する6人も各々魅力的ではありますが、同タイプですね。家庭や職場に問題を抱えながらも、この事件には自分の信念なり夢をかけて取り組むというスタイルです。

それが物語全体に広がりを持たせるようにはあまりなっていないと思うのですが…。それにしても、なぜこんなに売れるんだろう、とず~っと思っていたのですが急に、『あっ、プロジェクトXに雰囲気が似てる』 なんて勝手に思いつきました(笑)。


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半落ち
横山 秀夫
講談社

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『記憶を埋める女』ベトラ・ハメスファール 畔上司(訳)

2007年08月06日 | 小説

 

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夏の夜の怪談ではありませんが、ミステリー好きの高校生が夏休みにいどむ長編というにはぴったりの本をご紹介しましょう。ドイツのミステリー小説です。女性作家ベトラ・ハメスファールの最高傑作と評されている一冊です。


ある夏の日の午後に事件が起こります。

主人公である二十代の主婦コーラ・ベンダーは、夫と幼い息子とともに湖畔に遊びに出かけます。隣では二組のカップルがラジカセで音楽を聴いています。

その時、ラジカセの音楽が変わると、突然コーラは二組のカップルのうち、女と抱き合っていた男に向かって絶叫し、もっていた果物ナイフで男をめった刺しにしてしまうのです。

男性は即死、コーラはその場で逮捕、連行され取調べを受けるのですが、その中で自分の記憶の中に閉じ込めておいたものが噴出します。その供述は妄想と虚偽だらけ、ときおり錯乱状態に陥り意味不明の話を始める有様で殺人の動機はまったく見えてきません。

おそろしく残酷な話ですが、結婚、家族、宗教、暴力、児童虐待、性、、身障者の問題を投げかけてきます。狂信的な母、臆病な父、いつ死んでもおかしくない重病の妹、児童虐待、麻薬、近親相姦、売春、キリスト教、地下室…。


何が真実で何が虚偽?殺意の真相とは…。主人公の家族、恋人、警部、弁護士、精神鑑定医、隣人などがさまざまな思惑を持って登場してきますが、取調べや精神鑑定、夢の中で次々と前の証言と矛盾する出来事が飛び出します。


実はヒントはいろんなところにばらまかれているのに、知らずに読み進めて通り過ぎていることをあとから気付かされます。(というか普通気付かないよなと思いますが、どうでしょう(笑)。)


600ページを超える長編ですが、きっとミステリー好きなら、夢中になって読み進められる作品でしょう。いったい真相がどうなっているのか、読者の頭をぐらぐらゆすっておいて、最後には一つの見事なストーリーとなっています。


と、偉そうに書きましたが、正直に申し上げると、私の場合も、一度読んだ時にはどうもすっきりしなかったので、しばらくたって、二度目を読むと上述したことに気付いた次第です。

読む側にも訓練の覚悟が必要な一冊でしょうか(笑)。それにしても、こういうストーリーをよく思いつくものだと感心させられた一冊です。



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記憶を埋める女
ペトラ ハメスファール,Petra Hammesfahr,畔上 司
学習研究社

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『雨鱒の川』 川上健一

2007年06月28日 | 小説


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本来は中高生以上にすすめしたい本なのですが、最近は中学入試でも従来の教育的、道徳的内容ばかりではなく、本書のように恋愛を扱ったものが出されますね。

女の子はともかく、男子生徒の中にはよく分からない子もいると思うのですが…、がんばってもらいたい(笑)!

実際に、本書は川上健一氏の作品の中では、『翼はいつまでも』 と並んで、ほぼ毎年のように、どこかの中学校で出題されています。


小学生でも読めるということですが、大人が読んでも素晴らしい内容で、思わず涙が出そうになってしまいます。つい先日ご紹介した 『夏の庭 The Friends (湯本香樹実)』 も同様ですが、児童文学に分類されていても、名作というのは大人も感動させる力を持っているものです。

本書も映画化もされていますし、ご存知の方も多いでしょう。いわゆる純愛物です。二部に分かれていて、前半が主人公が小学生の時代で、後半は18歳に成長しています。


ストーリー■~■ 



東北のとある村。母親と二人暮らしの小学校三年生の心平は、川で魚を捕ることと絵を描くことにしか興味がありません。学校の授業もそっちのけで絵を描いていますから、成績が良いわけはありません。

学校が終わると今度はすぐに川へと走って魚を捕ります。母親に捕った魚を食べさせるため。そしてまた絵を描いて寝る。そんな普通の小学生とは違った毎日を過ごす心平といつも一緒にいるのが幼なじみの小百合。

小百合は耳に障害がありましたが、心平とは心が通じ、心平の話す言葉だけは理解ができたのです。どちらも “普通” の子どもではないのですが、二人でいるときは暖かい交流、楽しい時間を過ごします。

そこに登場するのが小百合に思いを寄せるライバル、上級生の英蔵で、心平にはかないませんが、第二部でも重要な役を演じます。

ある日、心平の絵が国際的な児童画展に入選するのですが、その祝賀会の夜、なんと心平の母ヒデが雪の中で死亡してしまい、心平は幼くして、天涯孤独になってしまいます。

それから十年後、18歳となった心平は学業も仕事も大してできず昔のままですが、何とか小百合の父親の会社で面倒をみてもらいます。一方の英蔵は大学を出て、仕事もできる。小百合の父親にも認められ、とうとう二人に縁談の話まで出てきてしまいます。

絵を描くことしかできない心平は、本格的に絵の修行に出るように、村の人々にすすめられますが、彼らからすれば、村の厄介者払いに過ぎません。心平にとっても絵を描くことで自立できれば理想ですが、しかしどうしても小百合と離れて暮らすことができません。小百合の気持ちも同じです。

心平さえいなくなれば、英蔵と小百合の縁談話が現実を帯びてくるのですが、結局は、心平と小百合のきずなの深さを知った英蔵が覚悟を決めます。二人を船に乗って駆け落ちを助けてしまいます。





これ以上ないくらいの純愛物語ですから、やはり小学生男子には苦手な人もいるかもしれませんね。また自然描写もふんだんにありますから、先を急ぎたい人にはまどろっこしく感じるかもしれません。

しかし、逆にそれが非常に豊かな自然とけがれのない純粋な子どもの心を描いており、すがすがしい読後感を味わう人が圧倒的に多いでしょう。前半は特におすすめですね。

なまりのある方言で話しているのですが、慣れてくるとそれが切なく響きます。特に心平と小百合の言葉のやり取りの部分など、不自由な言語を通して相手の意図を汲んでやる場面は心動かされます。




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『夏の庭 The Friends 』 湯本香樹実

2007年06月09日 | 小説


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さぁ、すばらしい一冊 『夏の庭』 を取り上げましょう。以前、『入試に出された本3』 でご紹介した際にもコメントが集中していた作品で、ご存知の方も多いでしょう。

そう、確かに中学入試、高校入試に非常によく出される本なのですが、勉強に関係なく、ぜひお読みいただきたいと思わせる作品です。

国語の入試問題で扱われる小説というのは、子どもの成長を描いたものが圧倒的に多く、本書もその例にもれませんが、悲しくて、楽しくて、見事なエピソードの展開を見せます。

主人公の“ぼく” ことキュウリの木山、肉屋の息子でデブの山下、エキセントリックな性格で父親がいないメガネの河辺。この小6、3人組が、“人が死ぬところを見よう” と話し合い、あるボロ屋に住む、一人暮らしの老人の見張りを始めるところから物語が始まります。

子ども向けに、「老い」 や 「死」 を扱ったもので、これほどさわやかな読後感を残せる作品は意外に少ないのかもしれません。また、副題に 「The Friends」 とあるように、友情の物語でもあるわけです。その老人まで含めて…。



ストーリー ■~■



3人は学校や塾に通う途中で、まるで自分たちが探偵にでもなったかのように、めぼしを付けた、その弱々しい老人の家を見張ったり、尾行をしたりしながら老人が死ぬのを今か今かと待ちます。

初夏だというのに、こたつに入ってテレビを見ているだけの老人で、単調な日々を送っているのですが、いざ毎日張り込みを続けていても、なかなかすぐに死んでくれるようには見えません。

辛抱しきれずに、ついついちょっとしたさぐりを入れたり、おせっかいなどをしているうちに老人に見つかってしまいます。とても気難しいおじいさんでした。

おじいさんの方は、自分がイタズラ坊主どもに見られていることが分かると、彼らをおどしたり、時にはからかったりするようになります。

それまでは、何をするでもなくテレビを見てコンビニ弁当を食べているだけの老人だったのですが、死ぬどころか、逆に少年たちからの刺激がかえっておじいさんを若返らせてしまったようなのです。

なんだかんだとやりとりをしているうちに、少年らはおじいさんになついていきます。書名にある「庭」 というのはおじいさんの家の庭ですが、はじめは山積みのゴミで悪臭を放ち、草も伸び放題だったものが、やがて少年たちが植えた花で埋められ、美しい交流の場へと変化してゆきます。

ミイラ取りがミイラになるといった様相なのですが、時には塾や習い事を忘れてしまうほど、3人はその庭で楽しい時を過ごすようになります。

ある日、昔話をねだられたおじいさんは、とうとう昔、自分が戦争で罪のない人を殺したこと、そして戦争が終わっても妻であった人のもとへ帰らず、結局こうして一人暮らしをしているということまでも語ります。

一度だけ、おじいさんに連れられて外出したのは、川のほとり。日が暮れる頃、おじいさんは子どもたちから身を隠し、彼らが探している時に、突然大きな花火をあげて見せます。若い頃、花火職人であったおじいさんが、少年たちに忘れられない夏の夜をプレゼントします。

この夏休み、おじいさんと関わったために、少年たちは他にもいろいろな経験をします。結局、毎日のように遊びに行くようになったおじいさんの家ですが、数日間のサッカーの合宿から帰って訪ねてみると、おじいさんは眠るように亡くなっていました。

テーブルの上には、一緒に食べようと準備していたぶどうが…。

少年たちは、最初のもくろみ通り、人の死体を見、お骨を拾うことになるわけです。もちろん今となっては、まったく死を望まない人、皮肉にも自分たちの最大の理解者となったおじいさんの突然の死、さらにその庭がアスファルトで埋められてしまうというところまで経験します。

受験も終わり、卒業式のあと、その思い出を胸にそれぞれ別の道を歩み始めます。





とまぁ、こんな感じですが、本書を読まれた方だと、あれ、あの話は?などと思われるかもしれませんね。この本には、これ以外にもまだおもしろいエピソードがいくつもあります。

正直、ちょっと詰め込みすぎという気もします(笑)。まぁ、うまく収まっているので、違和感はまったくありませんが。

友情、成長の物語ですが、そこには老人と少年たちのふれあいや死だけでなく、ケンカがあり、受験や塾があり、女の子あり、大人の男女や家庭の不和があり、戦争があり、過疎と開発まであります。映画化されているようですが、原作に忠実にやったら10時間でも足らないのではないかと思わせるほどですね。

次から次に印象深いエピソードが出てきますから、飽きません。心にぐっとくる場面、緊迫する場面がいくつもあり、小学生でも、本好きならどきどきしながら一気に読んでしまうかもしれません。様々な賞を受賞し、英訳も出され、世界十数カ国で読まれているそうです。


読めばきっと夏が来るたびに思い出すような、出色の一作ですし、読書感想文にもしやすい内容だと思います。多くの方にお薦めします。

 

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