本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『謎の哲学者ピュタゴラス』 左近司祥子

2007年08月11日 | 教養

 

謎の哲学メピュタゴラス.jpg


三平方の定理で知られる数学者 “ピタゴラス(本書ではピュタゴラス)” ですが、本当に三平方の定理を生み出したのが彼であるという文献は全く残っていません。自分では何も書物を残していないのです。

ピュタゴラスだけでなく、そもそも歴史上の偉人といわれる、同じギリシャのソクラテス、中国の孔子や孟子、さらにキリストや釈迦も弟子の書いたものしか残っていません。

書けなかったわけではありません。同時代やその前の時代の書物は残っていますから、謎です。 

とりわけピュタゴラスは紀元前6世紀という大昔であることと、謎の新興宗教のようなものを作って活動を続け、最後は焼き殺されてしまうという事態に追い込まれてしまったため、いっそう不可解な人物と言えます。『万物は数字である』という思想を持って活動をしたことはわかっています。   

筆者は乏しい文献にあたりながら、ピュタゴラスがその後の哲学者達に与えた影響などについて考察をします。ピュタゴラスはその後の思想の“地下水脈”とまで言っています。

他にもソクラテス、プラトンアリストテレスプロティノスの思想を紹介します。


目次は以下のとおりです。


第1章 ギリシャでいちばんユニークだった哲学者(古代ギリシャの哲学者群;エンペドクレスの活躍 ほか)

第2章
 同時代人の見たピュタゴラス(ピュタゴラスと「ピュタゴラスの定理」;同時代人の証言 ほか)

第3章
 ピュタゴラスをソクラテスに語らせるプラトン(プラトンの描くソクラテスの変節;ピュタゴラス的言葉を使って語るソクラテス ほか)

第4章
 アリストテレスが映した奇行と奇妙な戒律(アリストテレスとピュタゴラス;プラトン説に反論するアリストテレス ほか)

第5章
 思考の地下水脈となったピュタゴラス(プラトンからプロティノスへ;プロティノスの魂論 ほか)


数学と哲学と宗教が一つになっていた時代。学問はやはり命がけですね。受験生諸君!命がけの勉強、読んでみて下さい。



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謎の哲学者ピュタゴラス (講談社選書メチエ)
左近司 祥子
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『代表的日本人』  内村鑑三(著) 鈴木範久(訳)

2007年07月09日 | 教養


的日本人2-1.jpg



日本史の教科書にも登場する内村鑑三。1908年、今から100年前、英語で執筆され、その後各国で翻訳された氏の代表作が本書です。日本を代表する5人を外国に紹介したものです。

新渡戸稲造の 『武士道』、岡倉天心茶の本』 と同様、日本人が英語で自国の文化・思想を西欧社会に紹介した著作ですね。

そういえば新渡戸稲造も敬虔なキリスト教徒ですが、内村鑑三の場合はキリスト教徒であることがより重要です。二人とも札幌農学校で、“少年よ大志をいだけ” のクラーク博士などに教わっており、その影響力の強さが伺えます。


ところが内村はアメリカに行ってみて、あこがれのキリスト教国の拝金主義と人種差別を目の当たりにし大いに落胆したそうです。アマゾンの紹介文の一節にも


自分はイエスキリストに従う者である。と同時に金銭に対する執着や狡猾な駆け引きを嫌うサムライの子である。


とあります。日本におけるキリスト教というのは、『キリスト教と日本人(井上章一)』や『沈黙(遠藤周作)』 『塩狩峠(三浦綾子)』 のどれを読んでも、やはりすんなりと根をおろすまではいかないなぁと実感します。


内村も渡米後、二つの J (キリストのJ【Jesus】 と 日本のJ 【Japan】)を信じる独自のキリスト教観を持つに至るわけですね。本書で内村が紹介している5人にはキリスト教徒どころか、日蓮上人が入っています。

西洋的な宗教観とは異なる日本人の伝統文化や道徳観を示すために、5人の偉人たちを取り上げて、その生涯と実績を書き綴ったものです。

取り上げられている5人です。



1 西郷隆盛―新日本の創設者(一八六八年の日本の維新;誕生、教育、啓示 ほか)

2 上杉鷹山―封建領主(封建制;人と事業 ほか)

3 二宮尊徳―農民聖者(今世紀初頭の日本農業;少年時代 ほか)

4 中江藤樹―村の先生(昔の日本の教育;少年時代と自覚 ほか)

5 日蓮上人―仏僧(日本の仏教;生誕と出家 ほか)



翻訳も読み易くなっていますから中学生が読んでも大丈夫でしょう。簡単な伝記として読むこともできますから、興味を持ったらそれらの人物についてさらに深く調べたり本を読んだりしたら理想的ですね。


1の西郷隆盛は小学生でも知っていますね。2の上杉鷹山、実は故ケネディー大統領がもっとも尊敬する日本人だと語っています。その時、それを直接聞いた日本人記者の中の誰も上杉のことを知らなかったというエピソードが残っています。

ケネディーが上杉を知っていたのは本書を読んでいたからではないかと指摘されています。上杉のことを知らない人も

為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり

という言葉なら聞いたことがあるでしょう。それを残した米沢藩主です。


3の二宮尊徳(金次郎)は薪を背負って本を読みながら歩く銅像が、日本のあちらこちらにありましたが、今は撤去されているものも多いそうで、子供たちは見たことが無いかもしれませんね。


二宮尊徳.jpg


4の中江藤樹は難しいのですが、“陽明学” という学問を日本で広めた学者で、最後の日蓮上人は鎌倉時代の僧。知っていますよね。


新渡戸稲造の 『武士道』 もそうですが、こういう本を読みますと、きっと自分が当たり前に持っている日本人的なものを再確認できるのではないでしょうか。日本人で良かったと。

そして、それぞれが自分の考える “代表的日本人” を挙げられるようになったら言うことありません。私なら、聖徳太子、徳川家康がすぐに思い浮かんで、あとは誰にしようという感じ(笑)。多くの生徒に読んでもらいたい一冊です。


P.S. 本書はありませんが、内村鑑三の著作のいくつかは青空文庫で無料で読めます。

  ⇒ 青空文庫(内村鑑三リスト)




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代表的日本人

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『逆説の論理ー新時代に生きる日本の英知』 会田雄次

2007年07月03日 | 教養


逆説の論理.jpg


歴史家である会田雄次氏の数多い著作のなかでも本書は極めて優れた現代評論ではないでしょうか。

学問的見地からいえば、氏の代表作は何よりもまず、小林よしのり氏らも著作の中で紹介している 『アーロン収容所』 (昭和37年)ということになっていますが、そちらの方はいわば“古典的名著”としてひとまずおき、読みやすさと具体性の点で、本書の方をお薦めします。 

“逆説” ですから、普通、人は勧めないことが出てきます。 “バサラ(乱暴狼藉)のすすめ” “喧嘩決闘のすすめ” “ぜいたくのすすめ” “なまくら四つのすすめ” “日本的知的生活のすすめ”  などから構成されています。


会田氏はヨーロッパ史が専門で、本書は日本との “比較文化論” でしょうが、内容は決して学問的なものでも、難解なものでもありません。中学生以上であればストレスなく読めるはずです。“学校や塾にこんな社会の先生がいたらおもしろいだろうな~”というものです。 

読み手の年齢にかかわらず、問題意識を持ち前向きに生きようという人にとっては、非常に勇気付けられる一冊。なぜ、してはいけないと一般に言われていることをみなこっそりしてしまうのか。実はそれには大きな利益もあることが示され、日本社会はそれを許容しないためにダイナミズムが失われているというような内容です。

本書が最初に出版されたのは昭和54年ですが、そのどこまでも深い洞察力と歴史考察にもとづいた問題提起であるために、古いどころかとても新鮮な内容で、現在の日本の混乱振りを予見しているかのようです。


氏の日本に対する危機感はすでにその当時でもかなりのものでした。 司馬遼太郎氏も“もはやこの国を救う方法は無いに等しい”という旨のことを記していますし、会田氏にも同様の諦観が無いわけではないのです。


しかし心ある人々に何とか歴史的に見た現代の問題点を冷静に理解し、失われた矜持を取り戻してもらいたいという情熱が伝わってきます。

氏は平成9年に亡くなっていますが、時代が後になってから出版されるものほど危機感が強まり、使われている言葉も過激なものになっていきます。晩年の執筆活動は口述筆記の形になり、最後の著作 『歴史家の心眼』 には序文もあとがきもありません。

氏の著作をずっと読んできますと、体力の衰えと相俟ってますます世の中に対する焦燥感がつのっているのが手に取るようにわかります。

本書を含め、年々氏の著作が古書に頼らざるを得なくなり、入手しにくくなっているのが残念で仕方ありません。本書に限らず、会田氏の著作を読んで共感できる方がいればうれしいのですが…。


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逆説の論理.jpg 逆説の論理―新時代に生きる日本の英知

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『武士道解題 -ノーブレス・オブリージュとは』 李登輝

2007年06月04日 | 教養


武士道解題.jpg


台湾の元総統、李登輝氏が来日しています。テレビなどではあまり詳しく背景などが報道されていないように思いますが…。

数年前、森首相時代に病気治療という名目でさえ来日させないという大騒ぎ、慶応大学の三田祭で講演をするとしてまた大騒ぎしたことを覚えていますので、今回の来日がすんなり決まったことに意外な気がします。

氏はすでに80歳を越え、政界を引退していても、台湾独立のシンボルだそうですが、あれほど強硬に反対していた、中国の反応も今回は穏やかなものです。中国が変わったのか、日中関係が改善した結果なのでしょうか。


今回の訪日をアレンジしたのは、『中国暴発』 を古森義久氏と一緒に書いた、中嶋嶺雄氏だそうですが、その中で、“中国は北京オリンピックを放棄してでも台湾を取る” とあったのが、印象的です。数年前と、政治力学が明らかに変わったと実感します。ついでながら、中嶋氏は教育再生委員会のメンバーでもあります。

来日はしたものの、講演はおろか、母校、京都大学でキャンパスにすら入れずじまいだった時の対応から、今回は数回の講演だけでなく、李登輝氏の兄が祭られている靖国神社参拝まで話題になるというほどの変化です。


 閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声


誰もが知っている松尾芭蕉の句ですが、今回は芭蕉の足跡を訪ね歩くのが、主な目的だと言われていますね。台湾同様、日本が支配していた今の韓国で、親日派が相変わらず迫害されているのとは、際立った違いです。以前ご紹介した、渡部昇一、呉善花氏の 『日本の驕慢(おごり)韓国の傲慢(たかぶり)』 を読むと、それを強く感じます。一方、日本・台湾の複雑な関係は『還ってきた台湾人日本兵(河崎真澄)』に象徴的に表わされているように思います。


本書は、新渡戸稲造著の『 武士道 』 を李登輝氏が読み解くというものです。新渡戸氏が記した『武士道』に書かれた章に沿って、李登輝氏が氏の視点と豊富な知識、宗教、哲学的な考えも含め、分かりやすく解説しています。

目次はこのようになっています。



第1部
 日本的教育と私(世界に目を開いてくれた先哲の教え;新渡戸稲造との出会い;新渡戸稲造、国際人への旅立ち)

第2部
 『武士道』を読む(道徳体系としての武士道;武士道の淵源;義 ほか)

付 慶応大学三田祭・幻の講演原稿“日本人の精神”



花岡信昭氏のコラムによると、李登輝氏の自宅には、まるで図書館のような広い書庫が日本の書籍で埋まっているそうです。著名な作家や論客などの全集のたぐいは言うに及ばず、岩波文庫は全巻そろっていて、さらに新刊もダンボールに詰まっているほどだとか…。


“サムライ” にあこがれる外国人は多いようですが、武士道を理解し、それを日本の政治家や官僚にまで直言するする政治指導者は本当に稀有な存在だと思わされます。台湾総統時代の自らの体験を交えて、語っていて、より具体的な実践の術まで伝えようという意欲を感じます。

副題は 『ノーブレス・オブリージュとは』 。日本のリーダーに必要なものは武士道精神である、義務教育においても、日本を支える道徳教育が必要である、とも指摘しています。

本書に対して、石原慎太郎氏、櫻井よしこ氏、小林よしのり氏、金美齢氏などの識者が絶賛し推薦しているようです。この顔ぶれを見れば分かりますね。そうした人々を惹きつけるものは何か。しっかり知っておくことも重要だと思います。

 

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「武士道」解題―ノーブレス・オブリージュとは

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(すでに文庫化されていました)

『旧制中学入試問題集』 武藤康史

2007年06月01日 | 教養


旧制中学入試問題集.jpg


確か、かつてのベストセラー、当時の受験生のバイブルと言われた 『試験にでる英単語』 (今だにそこそこ売れていてびっくり) を書いた森一郎氏だったと思いますが、氏が英語の易しさに言及し、“明治時代の日本語など普通の高校生にはとても読めないが、英語なら読める” と何かの本で指摘しておられました。


なるほどその通りで、夏目漱石の 『こころ』 ですら表記が難しいといって、教科書から姿を消してしまう日本語(国語教育)とは対照的で、明治時代の英文解釈の問題をその本に少し載せていたのですが、現在とまったく変わっていないことに感心した記憶があります。so ~ that 構文だったような気がしますが…。

そこで、私も明治時代のあたりの英語、特に英語の入試問題をネットや書籍で探したのですが、全く見つからず、残念に思っていたのですが、本書にありました。あっ、やっぱりあったんだと、わくわくしながら読みました。

本書は相互リンクの buckyさん が教えてくださいました。Thank you so much! です。


もちろん、これは旧制中学の入試問題集ですから、英語は後半に付録のように入っていて、国語、算数などが中心です。英語に限らず、入試問題というのはどうも資料的価値が低いようで、いわゆる “過去問” が見つからず、筆者も必死になって旧制中学の問題をかき集めたようです。


興味のある人間にとっては、ものすごくおもしろい一冊です。“昔の人は尋常小学校や中学しか出ていなくても、よく勉強した” と、父母や祖父母に聞かされたものですが(つまり、“君は足りない” の意ですが…)、なるほどこんな入試を受けていたのだということがわかります。


目次です。


国語―「婦人は庖厨を治むるを習ふべし」に読み仮名を付け解釈せよ

算術―軍艦松島ノ長サハ89・9米ナリト云フ、何間何尺ナルカ。

歴史・地理―よい日本人となるにはどんな心得を守つたらよいか。

理科―着物についたあぶらあかを取除くにはどうしたらよいか。

あの人が受けた入試問題―ゐもりトやもりハ如何ニシテ区別スルヤ。

宮澤賢治岸信介宇野千代宮本百合子草野心平神西清竹山道雄吉川幸次郎中野好夫井深大山村聰丸山眞男堀田善衛安岡章太郎鶴見俊輔瀬戸内寂聴中村稔



目次は以上のようになっていますが、要するに、国語、算数、社会、理科という科目別で、その中が年代順に並んでいます。明治時代から戦前まで、資料として入手できた問題を羅列してあるわけです。

まずは時代が違うとはいえ、入試問題のレベルの高さに驚きます。もちろん義務教育ではありませんから、誰もが旧制中学へ進むのではないのですが、それにしても当時のエリートたちがこんな問題に悪戦苦闘していたのだと、驚くやら、微笑むやら、いずれにしろ別世界でした。


また、厳しい受験があったといっても、やはり時代の影は色濃く出ていて、模範解答の信じられないほどの、(今でいう)手抜き(?)、などなど、およそ、現代の受験に携わるものからすれば、“これ、いいの?” というエピソードも満載です。

そして、各問題の解説の後には、それらを受験した有名人、作家や政治家や企業人や芸術家などなど、明らかにできる限りの合否の情報などを付けています。


“へぇ~” という言葉を連発しながら、一人ではしゃぎながら読んだという稀有な一冊でした(笑)。自分が、なんでこんなにおもしろがるのだろうと考えたら、大げさですが、“時代がつながった感” が起こった気がします。

本当に多くの著名人が受験に苦労し、失敗していた事実も、親近感がわいた一因でしょうかね(笑)。



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旧制中学入試問題集

筑摩書房

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『賃労働と資本』 カール・マルクス 長谷部文雄(訳)

2007年05月01日 | 教養


賃労働と資本.jpg



今日が本当の“メーデー” ですね(笑)。今日も代々木公園で集会があり、道路は大渋滞でした。メーデーの式典が4月と5月1日、別々の日にあるなんて、日本以外にあるんでしょうか。WIKIによると中国などのように、5月1日を祝日としている国もあるようですが、日本では労働運動が分裂している最も象徴的な現象ですね。


さて、マルクスです。本書は日本では昭和13年に発禁になり、戦後再刊されたものだそうです。もちろん私は、社会主義者でも共産主義者でもありません。


が、あえてご紹介するのは、経済学者であり、革命家でもあるマルクスが、思想史的にも非常に重大な影響を及ぼしたのは事実であっても、今の高校生はほとんどマルクスを知らないからです。20世紀最も影響力のあった思想家の一人だと言われているのにもかかわらず。

我々が高校で政治経済を習った頃は、ケインズ と マルクスが一番よく出てきたのですが、今はどうも違うようですね。資本主義VS社会(共産)主義の戦いはケリがついたということでしょうか、あるいはもっと経済が複雑化したということでしょうか。

いまや、あの中国までもが市場経済に移行しつつある中ですから、今さらマルクス経済や共産主義を学ぼうとする人が少なくなるのは当然ですが、世界を動かしたプロレタリア革命の根本的な考えとは何か、やはり知っておいた方が良いだろうと思って取り上げてみました。


マルクスといえば、『資本論』ですが、資本論はとても長く、難解なのだそうです。すみません。私も読んでいません。

本書はその入門書と位置付けられ、全くそういった、社会主義だの経済という学問的知識のない労働者相手にマルクスが演説をした時の内容が下敷きになった一冊で、読みやすくなっています。


わずか110ページほどで、平易な言葉で革命の必要性を説いています。100年以上も前、マルクスはこうして労働者たちに訴えたのかということがわかります。決して古くないなという印象で、勉強になりました。



P.S. ただ、それにしても… と思うのは、今、アメリカのブッシュ大統領は、イラク戦争の泥沼化が明確になってきて、日本でも、現在はどの国よりも嫌悪されて(北朝鮮は別格ですが) いるように感じます。しかしそのブッシュ政権を支えてきたのがネオコン。ユダヤ系資本と言われます。

で、本書の著者マルクスもそうですが…、まったく逆に、9.11直後から、ブッシュ大統領に批判的なチョムスキーもユダヤ人だそうですね。本当に世界は難しいと思います。正直、誰か答え教えて、と言いたくなりますが、自分で考えるほかなさそうですね。


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賃労働と資本

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資本論〈第1巻(上)〉

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『日本文明の真価 - 今、世界が注目する』 清水馨八郎 

2007年04月23日 | 教養


日本文明の真価.jpg


「日本人は決まって、遅かれ早かれ、日本にいる外国人に対し、必ず “Do you like Japanese food? (日本食は好きですか)” ときく」  と、ある大学の英語の入試問題にありました。

確かに!私もききます(笑)。他のことが話題になっていても、間が空くと、つい、“How about Japanese food?(じゃあ、日本食はどう?)” なんて。まぁ導入とか、間を埋めるには無難かなと思うわけですが…。

その日本通のアメリカ人はさらに続けて、“日本には独特の文化が他にもたくさんあるのになんでみんながみんな、繰り返し繰り返し同じ質問をするのだろう、なぜいつも食べ物なんだ” と突然気付くのです。


なるほど。逆にアメリカ人から “Do you like American food?” と聞かれた記憶はありませんね。いかがでしょう。


さて、日本の文化を取り上げた有名な本といえば、ベネディクトの『菊と刀』、中根千枝の『タテ社会の人間関係』、土居健郎の『「甘え」の構造』、ペンダサン(山本七平)の『日本人とユダヤ人』、李御寧の『「縮み」志向の日本人』 などがあります。

筆者によれば、いずれもその指摘はユニークであるが、残念ながら、その独特な日本文化が生まれた背景や原因などが納得いくかたちで示されていない。

例えば、『日本人とユダヤ人』 での 「日本人は水と安全はただだと思っている」 という指摘は、的を射ているが、その理由は、ユダヤ民族の住むパレスチナの乾極と、日本の湿極で島国の風土を比較すれば容易に説明できるのに、というわけです。そのとおりでしょうね。


そこで本書は、まず、日本にあって外国に無いもの、逆に外国にあって日本に無いものを指摘し、それらがどうして日本に生まれてきたか、あるいは無いのかをさぐります。


以下が目次です。


第1章 世界の中の日本文明―中国ともまったく違うその特殊性と普遍性

第2章 「風土」で読みとく日本文明の特異性―太陽と水、日本を決定づけた気候と自然

第3章 なぜ日本が、平和で安全で清潔か―農耕民族と狩猟民族の比較からみた日本文明のルーツ

第4章 「手の文化」の国・日本―日本が最先端技術で、世界に頭抜けている理由

第5章 なぜ、日本人は時間に正確なのか―元号、節句、世界無比の「けじめ民族」の不思議

第6章 文化としての「日本語」―欧米語にも中国語にもない、その独自の世界

第7章 「大いなる和」の国・大和と日本―「神ながらの道」にみる日本人の信仰の形

第8章 なぜ日本文明が、二十一世紀をリードするのか




例えば象徴的なのは言葉ですが、英語のアルファベットが26文字しかないのに比べて、日本には、ひらがな・カタカナ・漢字と、途方もない数の文字があります。なぜそんなことになっているのかを考察します。

日本人は外国からどんどん言葉を取り入れるだけでなく、独自に作り出します。例えば明治時代にできた言葉に、「郵便」「科学」「銀行」「物理」「社会」「印象」などがあるそうです。当然そういった概念が(「概念」も当時の造語)、社会の近代化に貢献したはずです。

また、ソーシャリズム(socialism) を訳した「社会主義」、エコノミー(economy) を訳した「経済」 という言葉はそのまま中国に逆輸入されていて、今も中国で使われているということです。知りませんでした。

他に漢字の本家中国に逆流した言葉は、「文明」「交通」「手続」「哲学」「演説」「会話」「計画」「信用」などだそうです。結構たくさんあるもんですね。


そして、いよいよ日本語に訳せなくなれば、テレビとか、ラジオ、エレベーターとカタカナで書くのですが、中国は漢字だけですから、テレビは「電影」、アイスクリームは「氷菓」となりますが、例えば固有名詞のマルクスは「馬克思」と音で表わすのだそうです。

なるほど大きな違いですが、どうしてこういうことになったのかを日本固有の風土からはぐくまれた国民性、宗教などから解き明かすという一冊です。日本にあって外国に無いものは、食べ物や言葉だけでなく、実にいろいろあるのだとあらためて感じました。

生徒には、アイデンティティーの確認に役立ちそうですし、大人には雑学としても楽しめる一冊ではないでしょうか。


“なんで日本の電車は外国と違って時間に正確なの?”ってきかれたら、どう答えましょうか。電車が時間に正確なのが、珍しいことだと知らない人には、刺激になるでしょうし、知っている人もその理由を自信を持って答えられそうです(笑)。

以前ご紹介した日本人らしさの構造(芳賀綏)』 も、同様の手法で、非常にすばらしい一冊でした。ただ、その文化が生まれた原因までは考察していません。本書は学術的なものではなく、エッセー風の書き方で、そのあたりを高校生でも充分読めるように書かれています。



P.S. 本書は、ご夫婦そろって図書館司書という、HIRO。さん (ブログ名:少林寺と図書館と病気と) に教えていただきました。師匠!ありがとうございます。



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日本文明の真価.jpg 「日本文明」の真価―今、世界が注目する

祥伝社

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『犬と鬼 知られざる日本の肖像』アレックス・カー

2007年02月17日 | 教養

 

犬と鬼.jpg


受験生にとっては、特に都会の生徒たちは雪に弱いので、暖冬はラッキーだと思っておりましたが、どうも度を越しているようで、東京・神奈川では花粉がすでに飛んでしまっているようです。先日取り上げました、ゴアの『不都合な真実』の記述がますます真実味を帯びて感じられます。


それにしても本当に増えましたね、花粉症の生徒。ひどい人になると薬がなければ集中できない状態になってしまいますから、花粉症の生徒には、こちらの方が雪よりもずっとやっかい。いや生徒だけでなく大人も。私はたまたま大丈夫なのですが、私の家族もそうですし、講師にもたくさんおります。


私が最初に、花粉症は日本人の“体質” の問題ではなく、“人災”、つまり官僚の誤った政策の結果であると知ったのは、ベンジャミンフルフォードの『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』 を読んだ時だったと思います。

林野庁だか国土交通省だかの政策で次々に杉を植え続けたが、結局輸入杉を使うために伐採しないまま放置した結果、こんなに多くの国民が花粉症に苦しんでいる。しかしマスコミは指摘しないし、国民は怒らないし、役人は責任を取らないまま、依然として杉を植え続けている、というような指摘だったと思います。

ゆとり教育も同様ですが、何であれ、いったん実施した政策を過ちだったと認めて転換することは官僚は絶対にいやなんですね。さっさと杉を切り倒せば、あるいは他の木に代えれば良いだけだと思うのですが…。


本書もそれと似た観点から日本を批判します。カー氏は父親が海軍の弁護士で、12歳の時に来日し、その後アメリカの大学で日本学を専攻。再び来日して30年以上日本に住んでいるようです。

美しき日本の残像』 という本を日本語で書き、ある文学賞を受賞するほどの日本通ですが、なぜこんな国になってしまったのかと強い怒りと悲しみを持って書いています。

もとは外国人向けに英文で書かれた 『Dogs and Demons』、日本の現状分析の本で、それを翻訳したのが本書です。

外国には「ジャパノロジスト」と呼ばれる日本大好き外国人記者が相当数いるらしいのです。それらの人は自発的に、また中にはいろいろな日系の組織などに雇われて記事を書いているのですが、日本人から見ても、あるいは筆者のような、日本は好きだが非常に問題ありという意見を持つ人から見ても誤解を招くだけとしか思えない記述がたくさんあるようです。


日本の文化を知ったつもりで書いているのですが、何を見てもほめてしまうのだそうです。例えば何の役にも立たないような美術館やダムなどです。

本当の日本の姿を外国人に知ってもらうのが英文出版の意義で、同時に日本人に問題の本質を提示したいというのが日本語版の意義です。日本人にとってはかなり耳の痛い話が続きます。

痛烈な批判が含まれているためか、本書に対する書評は非常に厳しいものも多いですね。“日本に二度と来て欲しくない” とか “外国人の意見だとすぐにありがたがって聞く日本人がおかしい” などなど。


目次を紹介しておきます。

国土―土建国家
治山・治水―災害列島
環境―ステロイド漬けの開発
バブル―よき日々の追憶
情報―現実の異なる見方
官僚制―特別扱い
モニュメント―大根空港
古都―京都と観光業
新しい都市―電線と屋上看板
鬼―モニュメントの哲学
「マンガ」と「巨大」―モニュメントの美学
総決算の日―借金
国の富―お金の法則
教育―規則に従う
教育のつけ―生け花と映画
国際化―亡命者と在日外国人
革命は可能か―ゆでガエル


処方箋を示してはいますが、それがうまくいく可能性はわずかしか残されていないという意見です。自然破壊だけでなく、京都など景観すなわち伝統の破壊、何も言わない国民の幼稚性、官僚の傲慢さ、政治の無力さなどなどを指摘しています。


最後の “ゆでガエル” ゴアの本でご紹介した理論ですね。確かにこんなもの海外で出されたら日本の恥だと憤慨する気持ちもわからなくはないですね。でもそんなカー氏も、35年住んできた日本を離れ、とうとうバンコクへ行ってしまったと聞くと、ちょっとさびしくないですか(笑)。


カー氏の本書に関するインタビューがネットにありますので、よろしければご覧下さい。
 
 → 『アレックス・カー:インタビュー(月刊プレイボーイ)』
 

挑発的ではないのですが、読者を怒らせるほど、刺激的な本ですから、興味のある方はそれを承知の上でどうぞ。

 

 

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犬と鬼―知られざる日本の肖像

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『大相撲の経済学』 中島隆信

2007年01月25日 | 教養



それにしても、プライドなどに代表される格闘技の世界や、相撲の世界は、どうしても闇の世界とのつながりの噂が消えませんね。実際に 溝口敦氏の 『食肉の帝王』 にも、山口組の話しが頻繁に出てくるし、有名力士や親方も登場しています。


その 溝口氏の長男がヤクザに襲われた事件 を見ても、それが的外れではないことの証明でしょう。


今回の 朝青龍らに八百長疑惑 との報道には本当に驚きました。日本中が騒ぎになる大スキャンダルだと思って、注意して見ておりましたが、テレビのニュースでは扱いませんでした。好きな力士ですので、まったくのデマなら良いのですが…。


今までも、この種の報道は何回かあったと記憶していますが、告発しようとしたもと力士が、記者会見の直前に突然、亡くなるという事件までありました。恐ろしい…。


相撲界から格闘技界へ移るのもめずらしくありませんね。元横綱曙が相撲協会を脱退して、K1に行き、何年か前にボブサップと対戦して話題になりました。弱いですが(笑)…。


億単位のお金が動いただの何だのうわさされました。

本書は、相撲界のお金に関わるしくみを解説したもので、大変興味深く読めました。ただし、八百長などの話ではありません。


私は熱烈な相撲ファンではありませんが、以前から、「年寄株の譲渡で3億円」が云々というような記事が出た時、また「この取り組みの懸賞が~本」とかいうのを聞くと、一体相撲の世界のお金はどうなっているんだろうと不思議に思っていました。 


タニマチというのも、巡業とか、桝(ます)席とか、横綱審議会とかいうのもよくわからない。他のプロスポーツの世界では年俸~億円などとよく言われますが、相撲に関してはあまり報道されていませんから…。 


本書を読んでよく分かりました。相撲というのは確かに、横綱(強者)に絶対的な権威を置く格闘技であることには間違いありませんが、相撲社会全体のしくみは、実に独特の文化で経済も運営されているということが。 


一定レベル以上の力士には、実に日本的な終身雇用、年功序列賃金制度が用意されています。


給料や年寄株のお金の話だけでなく、力士の体脂肪率や、さまざまな歴史などわかりやすく、興味深く読めると思います。曙の協会脱退も納得いきました。朝青龍は引退後のことまで考えてしまいました。 


裏社会との関係を扱った本ではありませんが、相撲社会が村社会であること。別々の部屋の集合体ではあっても、全体が一つの大きな伝統に支えられた経済システムを持っていることを教えてくれます。


P.S.そういえば、つい最近もイタリアのサッカー界で八百長が報道されましたね。今回の相撲の八百長報道の経緯などが早く明らかにされることを願います。以前に一度取り上げましたが、今回の事件で再度書き直しました。






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大相撲の経済学

東洋経済新報社

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『ラッセル幸福論』 バートランド・ラッセル・著 安藤貞雄・訳

2007年01月18日 | 教養


ラッセル幸福論.jpg



いよいよ大学入試センター試験が二日後にせまりました。そういえば、キムタツ先生の灘中学も同じ日でしたね。関東では、千葉県の私立中学入試がいっせいに始まります。


昨日、当教室中川校(横浜)の生徒の一人、M君がはるばる北海道の名門中学を受験、見事合格の報が届きました!ご両親とも大いに悩まれた上での、北海道での受験、いやホント良かった。すごいなぁ~、おめでとう!本当に、おめでとう!




さて、もちろん受験生でこの時期に読書をする余裕のある人は少ないと思いますが、入試前に生徒たちにおくる一冊として紹介するのは “ラッセル幸福論” にしました。

私が大学の受験勉強をしている高校時代、ラッセルの英語にずいぶんてこずりました。当時は、ラッセルやエドウィンライシャワー氏の格調高い、複雑な構造を持った英文がよく出題されたものです。

読解から、会話重視の英語教育が叫ばれるようになってから、姿を消した印象を持っていましたが、ここ数年学力低下、英語力低下批判を受けたのか、いくつかの大学でラッセルが出題され、ちょっと驚き、うれしくなりました。


そして、私が大学生になってから、いまだにずっと愛読している一冊がこの幸福論です。


表紙にもあるように、受験生に限らず、日本のすべての子どもたちに、


 【 たくましく、しなやかに 】 
生きてもらいたい。



ラッセルは偉大な数学者であり、哲学者、なおかつノーベル文学賞まで取っているという大天才。しかもおじいさんが英国首相を務めるなど、代表的なエスタブリッシュメント(今なら、セレブ?)ですが、何といっても日本人が注目したのでは、アインシュタインなどと核兵器廃絶運動、ベトナム戦争反対運動に熱心に取り組んだことと、その時なんと89歳で座り込みをし、警察に拘留されたという事件でした。


そういえば、80歳で4度目の結婚をしています。幸福すぎる?たくましすぎる(笑)?


本書は難解な哲学書ではありません。宗教的なものでもなく、日々の生活の中で人々が「意識的に、無意識に働きかけること」によって誰でも幸福になれるはずだということを説き、不幸だと悩んでいる人を勇気づけます。



例えば、戦場におもむく兵士は、敵や死を恐れぬためにさまざまなテクニックを使って、戦闘のための勇気を身に付けます。これは太古の昔から研究され、実行し成果をあげていますが、精神的、理知的な勇気を身に付ける訓練はまだまだ遅れている。しかし、戦闘の勇気と同じように、毎日無意識に働きかけることで、そういう生きる勇気が身に付けられるのだと指摘します。


“考え方を変える“努力”次第で人生というのは様変わりする” 
ということを訴えているわけです。何も不幸な人だけが読むのではありませんよ、もちろん(笑)。教育論など参考になりますから、幸福な方もぜひどうぞ。何度も繰り返し読む価値のある名著だと思っています。


ラッセルは、『英語達人読本(斉藤兆史・上岡伸雄)』の中でとりあげられているように名文家です。世界中に研究家がおりますから、夏目漱石の作品が青空文庫で読めるのと同様、本書も原書はネットでも読むことができます(訳もどこかにあったような…)。英語が得意な生徒はチャレンジしてください。 

 


→ 幸福論 『 The Conquesut of Hapiness 』(英語・フルテキスト)


ラッセル幸福論

岩波書店

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『うカレ!うどん』 だそうです(笑)。

こんなのと一緒に…

ラッセル許して!

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『ラッセル幸福論』バートランド・ラッセル著 安藤貞雄訳
岩波書店:294P:735円





『美人論』 井上章一

2007年01月17日 | 教養


美人論.JPG


ジェンダーフリーフェミニスト運動はやや下火とはいえ、男女差別に対し、かなりの力や正当性を持つ時代に、美人論とは何ごとか。このような題名の本をご紹介すると、眉をひそめる方もいらっしゃるでしょうが、お許し下さい。


これは、確か、小谷野敦氏が薦めていた本で、とてもおもしろく、学問的な一冊です。“美人とは” という顔の美醜や振る舞いの良し悪しの定義などを論ずるのではありません。ましてジェンダーフリーなどを攻撃するようなものでもありません。

実際、本書の解説は、フェミニスト運動のチャンピオンである、上野千鶴子氏がなさっているのです。(しかも出版は朝日新聞社(笑))。実は上野氏と井上氏はかなり親しい様子で、解説も抜群におもしろかったです。


歴史的にどのように美人が扱われてきたか、その政策や世相などを研究、考察したまじめな一冊です。誰も手を付けなかった分野の研究ではないでしょうか。 


本書を読みますと、“美人” というカテゴリーを表社会から消したことによって救われたのは、そうでない人々ではなく、美人たちだとわかります。歴史を見ると、アメリカの黒人は差別が少なくなって社会的地位が上がりましたが、美人はカテゴリーがなくなって救われた側です。

つまりそれまで、美人とされていた人々は、もてはやされていたどころか、差別を受けていたとすら言える事実がたくさんあり、驚きました。


アメリカの学校の現場では、黒人というカテゴリーがないように、日本でも現代では、教育上、建前上、顔の美醜は存在しません。個性があるのだということになっています。今となっては当たり前の話です。


私が高校生の頃、国語の先生が授業中に 『松坂慶子さんを美人だと思う人?そうではないと思う人?』 と我々生徒に挙手を求めました。美人ではないと手を挙げた数人の生徒がおり、先生は、『あんな美人はめったにいないと思うが、実際にはそうでないと言う人もこうしているだろう。このように美人がどうかは、人によって異なる、主観的なものなので、他人にそれを押し付けてはいけない』 と言われました。なるほど、その通りだと思ったものです。


しかし現実の社会では、テレビのアナウンサー、モデル、レースクイーンでもやはり、多くの人から見て美人のカテゴリーに入りそうな女性がほとんどですね。


本書は美人の存在そのものが否定されている今日までの、美人の歴史などを紹介しておりますが、上野氏は、美人とは何かが出てこないので、“中途半端”だと批評し、上野氏らを井上氏の側に巻き込もうとしても、“その手は桑名の焼きハマグリ” とおどけていました(笑)。


目次だけを書きます。


1・受難の美人

2・美貌と悪徳

3・自由恋愛の誕生

4・容貌における民主主義

5・資本と美貌

6・管理される審美眼

7・拡散される美貌感

8・努力する美人たち

9・禁忌と沈黙

10・美「人」論の近未来


以上です。


決して試験には出ないでしょうが、読んでいて昔の日本の、知られざる世相が興味深いです。よろしければどうぞ。


以前、ご紹介した、『なぜ美人ばかりが得をするのか(ナンシーエトコフ)』。書名はダメですが、こちらもハーバード大学の心理学博士が書いた、非常におもしろい一冊で、“美”や“美人” というものを扱います。本書と同様、お薦めできます。




美人論

朝日新聞社

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『美人論』井上章一
朝日新聞社:314P:861円


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『はじめて考えるときのように-「わかる」ための哲学的道案内』 野矢茂樹(文) 植田真(絵) 

2007年01月15日 | 教養

 

はじめて考えるときのように.jpg




大人の “絵本” であり “哲学書” です。 


“考える” とはどういうことかを、正面から問いかけるような意欲的な一冊で、一人の哲学者と一人の絵描きが、大人向きの絵本のように組み立てました。



野矢氏は数学者で、専門的な著作も多々ありますが、最も “一般的” なものとして、『論理トレーニング101題』 が私の好きな一冊で、このブログでも紹介しました。非常におもしろい本です。

本書も、おもむきはそれとはまったく異なりますが、一般読者向けの興味深い一冊です。


どういうわけか、日本の学問体系では、理系・文系と明確に分けられ、数学は理系の代表格、一方、哲学は文学部、つまりもっとも “文系的なところ” にたいてい入っています。とすると、生徒にとっては、数学と哲学は両極端のように感じますが、不思議なことに実は両者はとても似ています。


共通するのは、“考える” 学問。


ちょっと偉そうに言わせてもうと、受験勉強でも仕事でも人生でも、一番のポイントは、他人より、ほんの少しゆっくり “考える” 余裕があるかどうか、これが大きい。




まるで世界地図の右端と左端が、実際は “うしろ” でつながっているように、数学と哲学も見えないところでしっかりつながっています。



偉大な哲学者であるのと同時に数学者でもあるというのは、アリストテレスピタゴラスパスカルデカルトラッセルヴィトゲンシュタイン などたくさんいますね。


生徒によっては(大人も)、数学や哲学は、もっとも現実の社会と遠く、実践的ではなく、役立たないものとされてしまいますが、むしろ生きていくうえで、もっとも根本的な学問だとも言えます。


本書はその “考える” とはどういうことなのかを、中学生や高校生にも理解できる言葉と、シンプルな風景画で綴った本です。


ただし、手軽な本ではありません。何回も読んでいるうちに腑に落ちる、そんな感じです。


パスカルは「人間は考える葦である」と言い、考え抜いていたアルキメデスは「ヘウレーカ(わかった)」と叫んで風呂を飛び出した。“考えて、わかる” とは何か…身近な話題、単純な例をふんだんに用いてその意味を読者に問いかけます。


あふれるような情報の中で我々は一生懸命考えているつもりでも、実際は立ち止まっているだけのこと方が多く、考えて行動しているように見えても実は情報に踊らされていることがあるように思います。


要するに、へんな言い方ですが

【“考える”とは何かということを、じっくり考える絵本】 です。


文学部とりわけ哲学科などは不人気だと言われます。直接的に職業や資格に結びつかないものは敬遠されてしまうようですが、本当におもしろい学問はこういうものかもしれませんよ。


 あまり流行っていない“考えること”、その重要性がじわりと伝わってきます。受験生は受験が終わってから読んでくださいね。

 

 

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『はじめて考えるときのように』 野矢茂樹/文 植田真/絵
PHP研究所:167P:1628円 (文庫本も同じ表紙で出ています。650円)

 

はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内

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『声の残り 私の文壇交遊録』ドナルド・キーン 金関寿夫:訳

2007年01月12日 | 教養

 

声の残り ドナルキーン.JPG



 “職業:作家” というと、どんな人をイメージするでしょうか。むろん作家といってもいろいろですが、少なくともどんな作家にも人並外れた感受性と表現力は最低条件でしょうし、まぁごく控えめに平たく言っても、普通ではない人々ですよね。

それを “視点が常人と異なり、つきあっていておもしろい” と前向きに感じるか、“変人で付き合いにくい” と敬遠するか、付き合う距離によって意見が分かれそうです。少なくとも家族にいたら大変だろうなという気は正直します(笑)。


さらに、私の場合、作家と聞いて特徴的だと思うのは、自殺者が多いということです。本当に多いかどうか、割合を計算したことはありませんが、自殺した有名作家だけあげても、江藤淳川端康成三島由紀夫火野葦平太宰治金子みすゞ芥川龍之介有島武郎 …でしょうか。多そうだと思いませんか。


本書はドナルド・キーン氏が若かりし頃、交流を深めた作家たちの素顔を描いたものです。どうもキーンさんは日本の作家を “つきあいにくい人” ではなく、“好奇心をくすぐる人” と感ずるようです。

登場する作家は上で挙げた火野葦平、川端康成、三島由紀夫の三氏の他、谷崎潤一郎永井荷風有吉佐和子大岡昇平開高健司馬遼太郎大江健三郎安部公房 などなどです。


キーンさんは以前取り上げた、『仕事の流儀(高任和夫)』にも紹介されていますが、1922年生まれ。18歳のときに偶然読んだ、“源氏物語” に感動して以来、日本文学研究の道に入り、以降は日米両国で翻訳家として、また評論家としてここには書ききれないほどの活躍をしました。

2002年には文化功労者他、数多くの賞を受賞してもいます。川端康成の『雪国』の記事で取り上げました、エドワード・サイデンステッカーと並び、日本文学を海外へ紹介した日本文学の恩人とも呼べる人物です。

コロンビア大学にはドナルド・キーン日本文化センターがありますし、ニューヨークにはドナルド・キーン日本文化財団まで設立しています。


大変楽しく読める一冊で、上で述べたようなセンシティブな作家たちとのフランクな付き合いは、精神的にも肉体的にも大変だと思うのですが、日本文学好きのキーンさんには苦にならないどころか、大きな喜びとしているのでしょう。

むしろ外国人だということが、作家たちの内輪向けの余計な見栄を捨てさせ、緊張を和らげているのでしょうし、その交流振りから、作家たちに、この知性と教養の豊かな外国人に認められれば自分も本物だという意識もあったのではないかという印象まで持ちました。

まぁ、どの作家先生も個性豊かで、思考や行動は実に大胆でエピソードには事欠きません。実によく酒を飲み、大騒ぎしたりふざけたりもする。豪放磊落かと思えば、自著の評判や感想には異常に過敏になったり、賞の選考結果に対して執念を燃やしたりします。

それに付き合うキーンさんの行動や、本書で明かされる感想はともかく非常におもしろいものです。時になだめすかし、衝突し、賞に推薦したり、作家たちの間を取り持ったりと八面六臂の活躍ぶりです。


どの話も非常に人間くさいものです。本書では特に三島由紀夫にページを割いていますが、大岡昇平の言葉として、川端康成ではなく、三島由紀夫がノーベル賞をとっていたら、二人とも自殺せずに済んだという意味の発言をしたことを知り、またまた作家の底知れぬ感性を垣間見た思いがしました。




P.S.
 本書は、相互リンクの tani 大先輩 が紹介してくださったものです。かつては物書きを志したお方ですから、とってもつきあいに…、あっ、いえ、いえ、その~、私が大尊敬する、楽しい大先輩でございます! お~こわ。


 tani先輩の名文 『心に残る思い出や本について』 もぜひぜひご覧下さい。

(三島由紀夫の『若きサムライのために』の記事でも紹介させていただきました)



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『声の残り 私の文壇交遊録』ドナルド・キーン 金関寿夫:訳
朝日新聞社:202P:1250円

 

 

声の残り―私の文壇交遊録

朝日新聞社

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『谷川俊太郎詩集』谷川俊太郎(著) ねじめ正一(編) 中島みゆき(エッセイ)

2006年12月13日 | 教養

 

谷川俊太郎詩集.jpg


詩集を人に薦めるのはなんとなく、“ロマンチスト”ぶっているようで、しかも、詩の感性は人それぞれですから、自分で気に入ったものでも、“読みなよ” というのは遠慮してしまいます。したがって、今まで人に薦めたことはないのですが、本書はぜひ知ってもらいたいなぁと感じた一冊です。


小学生が声に出して読むもよし、中高生が悩んで開くもよし、大人が寝る前に読んで心休めるのも良いのかなと思います。


谷川俊太郎氏は1931年生まれで、本書はその50年に及ぶ氏の活動の50冊を超える詩集から選び抜かれた作品を集めています。 『二十億光年の孤独』や『朝のリレー』など、詩集や教科書の作品だけでなく、絵本や作詞、翻訳なども含め、まさに八面六臂の活躍ぶりです。


最近では、よりみちパン!セのシリーズでも最後に作者に質問をするなど、おっ、こんなところにも谷川俊太郎発見!と思いました。このシリーズにどこまで谷川氏がかかわっておられるのか知りませんが、このブログでとりあげたのは

バカな大人にならない脳(養老孟司)

みんなのなやみ(重松清)

神さまがくれた漢字たち(白川静)

いのちの食べかた(森達也)』 で、いずれも良書だと思います。



本当は、谷川氏の作品すべてがお気に入りというわけではないのですが、本書はねじめ正一さんの選んだセンスが、私には向いていたということでしょうか、どの作品もすばらしいと感じるものでした。


含まれている詞は以下のようなものです。

白から黒へ

かなしみ

はる

二十億光年の孤独

ネロ

僕は創る



午の食事

帰郷


中島みゆきさんがエッセイを書いているのは、彼女は大学の卒論で、谷川氏を取り上げたそうなんです。Wikipediaによると、日本で1970年代(わかれうた)、80年代(悪女)、90年代(空と君の間に、旅人のうた)、2000年代(地上の星)と4つの年代でオリコンチャート1位を記録している日本唯一のソロシンガーだそうです。これらの歌も心に残りますが、本書でのエッセイもなかなかのものです。


さて、せっかくのロマンチックな詩集を駄文で汚してしまっては元も子もありませんので、アマゾンにある紹介文を付しておきます。


人はどこから来て、どこに行くのか。

この世界に生きることの不思議を、古びることのない比類なき言葉と、曇りなき眼差しで捉え、生と死、男と女、愛と憎しみ、幼児から老年までの心の位相を、読む者一人一人の胸深く届かせる。

初めて発表した詩、時代の詩、言葉遊びの詩、近作の未刊詩篇など、五十冊余の詩集からその精華を選んだ、五十年にわたる詩人・谷川俊太郎のエッセンス。






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谷川俊太郎詩集

角川春樹事務所

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『谷川俊太郎詩集』谷川俊太郎(著) ねじめ正一(編) 中島みゆき(エッセイ)
角川春樹事務所:250P:714円


『若者はなぜ「繋がり」たがるのか - ケータイ世代の行方』武田徹

2006年12月06日 | 教養


若メはなぜ「繋がり」たがるのか 武田徹.jpg


「最近の若者は…!」というお叱りは、古代エジプトのピラミッドにも書き記された歴史の古いものだそうです。今また、少し前の新成人たちの「愚行」から、フリーターやニートの問題、そして携帯電話のマナーに至るまで、若者に対する時代の風当たりは強いものがあります。

本書は少し前に出されましたが、その若者論、特に携帯電話に代表される、コミュニケーションの仕方や人間関係の変化について論じています。


高校の英語の先生はご存知でしょうが、大学入試でも携帯電話に対するマナーについて述べた英文が相当数出題されています。ちょっと驚くほどです。ですから… 

cell (cellular) phone / mobile phone / portable phone  などは今や、大学受験生の必須単語です。(大丈夫かな、これらが載っていない単語帳はダメだよ) 


大学の先生方がかなり授業中の携帯電話のマナーに怒っていらっしゃるということが想像できますね。そういえば、『ケータイを持ったサル』を書いた、正高信男氏も京都大学の先生でしたね。“サル” とまで呼ぶのですから(笑)。


(公立高校や中学ではひどいと聞きますが、私は当教室で生徒を見ておりますと、携帯電話のマナーはかなり改善されてきたというか、正しい使い方が周知徹底されてきたと感じます。授業中に携帯電話がなることも皆無になりました。むしろ大人の方が…)


本書は、著者が若者文化について『日経トレンディ』、『読売新聞』、そして『女性セブン』 など様々なメディアに寄稿した記事の「寄せ集め」の形をとっています。従って内容も「宇多田ヒカル」から「ユニクロ」まで多彩なものとなっており、現代若者文化を取り上げたものとしては読み応え満載です。一つ難を言えば、文体に統一性がないため、やや読みづらくもあるのですが。


各章は以下のようなものです。

第1章 ケータイとともに来たもの

第2章 散らかった部屋から見える景色

第3章 そしてすべてキャラになった

第4章 音楽を聴かずに眠る日はない

第5章 「いま」の演出家列伝

第6章 ケータイの先に来るもの



さて、若者文化を語るときには、個人の感受性や自分の世代との比較がモノを言うのですが、感情論に走ってしまうと建設的な議論を逸してしまうおそれがあります。ですが、社会学をバックボーンにした著者の分析は、単純な若者批判を超えた、時代への警鐘と新しい世代への信頼を導き出しています。


例えば、若者でにぎわうフリーマーケット会場では、「要らなくなったもの」が売られ(従って使用価値が交換され)るため、ひとたびマーケットが終了すると、売れ残ってしまったものは一瞬にして「商品」から「ごみ」へと姿を変え、会場にそれを捨てていく心無い人がいるそうです。

しかし、一方で手作りの品を並べ露天商のようなことをしている若者もおり、そこでは作り手と客とのコミュニケーションがあり、「創造性を共有する」形で売買が成立しているというのです。若者たちがモノを売ること一つとっても、そこには消費社会の行き詰まりと新たな可能性が見えるというわけです。

若者は時代を映す鏡のようなものなのでしょう。本書は若者文化論でありながら、より大きな時代状況を読み解くカギになるのかもしれません。


また、昨今のいじめや自殺、リストカットの問題などを見てみますと、本書のように、学校や教育界という枠を越えて、さまざまな分野からの分析がなされてほしいと思います。



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若者はなぜ「繋がり」たがるのか―ケータイ世代の行方

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『若者はなぜ「繋がり」たがるのか - ケータイ世代の行方』武田徹
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