本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『嫌韓流2』山野車輪

2006年04月30日 | 外国関連
 
本書を多くの方が読まれ、薦めてもいただきました。小林よしのり氏の戦争論を読んだ時、その博学ぶりに驚きました。漫画家じゃなく、大学教授レベルだと(大変失礼ですが)。もちろんご存知のように新しい歴史教科書の執筆者ですね。

で、同じ漫画家でも山野氏はどういう方なのでしょうか?正体を明かさないのは客観性を持たせるための戦略だとしたら見事です。また、勉強不足で晋遊舎という出版社も知りませんでした。ネットで調べて見ますと、資本金わずか1千万円(あれ、うちの塾より少ない)、本社は靖国神社の近くというのは偶然でしょうか。

それはさておき、本書の内容は『嫌韓流』と同様、渡部昇一氏や小林よしのり氏がずっと主張していた、韓国あるいは日本の一部の勢力による歴史改ざんなどを分かりやすい形で告発し、さらに情報が加わっています。

一つ一つの情報もすべて関係者に糾したくなるほど重要です。特にアマゾンと朝日新聞の書籍売上ランキングに関する疑惑、流行語大賞に関する不透明さには憤慨を禁じ得ません。もちろん嫌韓を『アジる』のは良くないのですが、『隠した』とすれば最低です。権力側の情報操作ですね。

ただ、正直これだけ事例がありますと、今となっては驚きというより、さもありなんという感じになってしまいました。慣れは恐ろしいです。

中国・韓国が常に持ち出す教科書問題にしても、靖国にしても、外交問題であると同時に半分以上は国内問題という気がします。そこで、もし続編が出るのであれば、新しい情報よりも、例えば仮に左翼と呼ばれる団体や朝日新聞などがなぜそういう行動に出るかという理由、その元の思想はどんなものかということをぜひ描いていただきたい。もちろん、一くくりに言えるものでもないでしょうが、筆者なりの考えで、マルクス思想のようなものなのか、単に日本のビューロクラシーなのか。

数年前、どこかの図書館で西部邁氏と渡部昇一氏の著作が意図的に処分されていたというニュースがありましたね。記憶が不正確で申し訳ないのですが、そういう扱いを受けたことについて、渡部氏は

『歴史的に見て、焚書というのは権力者が隠したい重要な真実が書かれているものがそうなる。だから、自分の本がそういう扱いを受けたことはむしろ名誉である』というような内容のことをコメントしていたと思います。

とりあえず、私の担当している少人数授業の生徒たち(高3・浪人)7名に『ケンカンリュウ(嫌韓流)』ということばを聞いたことがあるかどうか、尋ねましたが、誰一人知りませんでした。念のために申し上げれば、彼らは現代の“本を読まない子どもたち”ではなく、まったく逆で、ハリーポッターはもちろんダヴィンチコードなどまで読んでいるレベルの高い生徒たちです。

『韓流(ブーム)』は新語でもメディアのせいであっという間にひろがりましたが、“嫌韓”という言葉は、ネットをやっている人には常識でも、主に新聞・テレビからしか情報を得ていない人は知らないという現実はあります。韓国の存在感がこれほど増しているのですから、もし新聞や週刊誌のチラシ、電車の中刷り広告に出ていれば、彼らも知っていただろうなと思います。

『焚書』という表現は大げさにすぎるとしても、本書や嫌韓という言葉がこれからどうなるのか、さらに注目したいと思います。

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マンガ嫌韓流2

晋遊舎

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                           韓国嫌韓韓流竹島親日

『卵の緒』瀬尾まいこ

2006年04月29日 | 小説
 
書き出しはこうなっています。

【僕は捨て子だ。子供はみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。】

著者は1974年生まれの中学講師。本書は坊ちゃん文学賞の大賞を受賞した“卵の緒”と、もう一作“7's blood”という2作品が収められています。どちらも主人公は子供で、すがすがしい感動を与えてくれる作品です。

私は文学の知識がまったくありませんので、その坊ちゃん文学賞の重みがわかりません。受賞作品も良いのですが、むしろ後者の方が感動的でした。

世間から見れば“不完全な形の家庭”の中にいる主人公ですが、彼らや周囲の人々が実に魅力的です。読めばきっとファンになる、と宣伝文句に書かれていましたが、ちょっと宣伝文句とおりでくやしいのですが、その通り、本書を読んだあと、すぐに数冊注文しました(笑)。人に優しくなれるような作品でした。

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卵の緒

マガジンハウス

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『卵の緒』瀬尾まいこ
マガジンハウス:193P:1470円

小田原城

2006年04月29日 | Pictures
 
本日、家族と行き、北条早雲、秀吉を偲んでまいりました。どういうわけか、ちょっとした動物園が城のすぐ隣にあり、一頭の象が城の門番のようにおりました。東京近郊の穴場ですかね。

『聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎』 半藤一利

2006年04月28日 | 歴史

言うまでもなく“4月29日”はかつて『天皇誕生日』で、今の『みどりの日』は来年から『昭和の日』。すでに平成も18年を数え、高校生以下から昭和生まれが消えつつあると思うと、当然とはいえ、感慨深いものがあります。

そこで、昭和天皇と鈴木貫太郎首相、この二人に焦点を当てた感動の一冊をご紹介します。どのように国として太平洋戦争を戦い、終戦に導いたかを描きます。

昭和天皇は立憲君主制度のもとで国民の安寧と平和を愛する優しき国家元首という側面と、ヒトラーと並び称されるほどの非道な戦う大元帥という矛盾したとらえ方があります。もちろん後者は明らかな誤りですが、中韓の政治家だけでなく、『日はまた昇る』の著者、知日家であろうビルエモット氏さえ勘違いしているふしがあります。世界で一番有名な日本人といえば、イチローでもコイズミでもなく、何といっても『ヒロヒト』、ですが理解のされ方が問題ですね。

一方、鈴木貫太郎も海軍の英雄でありながら、日米開戦反対の大演説をぶち上げました。2.26事件の標的となったことからもわかるように侍従長としてひたすら平和を望んでいた姿と、一方で、終戦間際には首相として、沖縄陥落後も本土決戦辞さずの固い意志を持つ徹底抗戦派。一見相容れない二つの人格が存在します。本書はその実像に迫ります。 

天皇と鈴木の二人が日露戦争後から第二次大戦後まで、天皇を利用しようとする陸軍や右翼の強硬派、国民の好戦的雰囲気、欧米列強の圧力の中で、命がけで国を守ろうとする姿に感動します。特に鈴木は2.26だけでなく何度も生命の危機を潜り抜け、見事な手腕で終戦へ向けてのレールをひきました。 

海軍大将になり、連合艦隊指令長官にまで登りつめたあと、すでに引退していた鈴木は、天皇のたってのご要望で侍従長となります。そこでお仕えしている間に『現人神』天皇の人間性、苦悩を知り、国家のために誠心誠意、戦線拡大を防ぐよう努めますが、2.26事件で銃弾に倒れます。一命は取りとめたものの、ついに歴史の表舞台から完全に姿を消したかに見えました。

ところが歳70を超え、耳も遠くなり、戦局必敗の情勢になってから総理に担ぎ出されてしまいます。その後、この老宰相の命がけの活躍は特に心を打ちます。しかし原爆投下、直後のロシア参戦、そしてついに8月15日の玉音放送。涙が出そうになりました。私にとっての不朽の名作です。

『殉死』をご紹介した折に、司馬遼太郎氏に昭和史を書いて欲しかったと述べたのですが、それを司馬氏の跡を継ぐかのように活躍されているのが、半藤一利氏ですね。実際にお二人はかなり交流があったようです。


聖断―昭和天皇と鈴木貫太郎

PHP研究所

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『聖断』半藤一利
PHP研究所:397p:1785円

『アメリカの世界戦略を知らない日本人―』日高義樹

2006年04月28日 | 外国関連
 
横田めぐみさんのお母さんが訪米され、下院公聴会で証言をし、ついにブッシュ大統領との会談を実現するところまでこぎつけました。先日サンデープロジェクトで『ウルトラダラー』の著者、手嶋龍一氏は“日米外交のパイプは詰まっている”というような旨の発言をしていましたが、久々、外務省の面目躍如!何度も訪米を繰り返した、拉致家族の方々のご苦労がやっと実った、そういう見方も正しいでしょう。

私がそのニュースを聞いて思い浮かんだのは本書でした。読んだ当時(イラク戦争前)はそれほど、気に留めなかったというより、あまりに予想が荒唐無稽に思えたのですが、その後、イラク戦争開戦、さらにその進め方などが本書の予想にピッタリ一致していました。出版当時の評判は、賛否両論という記憶があります。

当時(2002年)の氏の予測、見解は次のようなものです。
◎ 北朝鮮はミサイルなどを使って日本、韓国を脅し、アメリカとの分断を狙う。
◎ ドイツは国内世論のためイラク攻撃に反対するが、旧東ドイツ国民勢力を押えきれず、早晩国力は一気に衰える。
◎ 中国政府はアメリカに心底恐怖を感じているので逆らえないが、国民は反米になり、将来の衝突は避けられない。
◎ 冷戦で敗れたはずのロシアは力を回復し、国際舞台に再登場する。
◎ アメリカは日本の郵貯をはじめとする金をねらっている。
◎ 日本の平和主義は完全に敗れた。北朝鮮や中国と戦うしかない。

などなどです。いかがでしょう、2006年の今になって振り返ると、多くのものをかなり正確に当てている印象を持ちます。そしてもう一つ。こういう予想がありました。
◎ アメリカはイラク戦争後、ブッシュ再選を果たし、2005年に北朝鮮をたたく。

この予想に関しては、北朝鮮攻撃はもうスケジュールに入っているというような書き方だったのですが、今まで、六カ国協議などを続けており、はっきり『はずれた』と思っていました。

が、横田さんのニュースです。まさかアメリカが純粋に正義感や同情から横田さんをあそこまで厚遇するとは思えません。拉致問題を利用して何かのアクションを起こそうとしているのではないかと…。

もちろん拉致問題だけに関していえば、こう着状態を脱する絶好のチャンスで、事態の好転を本当に心から期待しています。70歳になられるめぐみさんの母、早紀江さんも緊張の連続でしょうし、お体も心配です。ただ、あまりのアメリカの盛り上げぶりに、そういう複雑な思いを起こさせるニュースでした。

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アメリカの世界戦略を知らない日本人―「イラク戦」後、時代はこう動く

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『殉死』 司馬遼太郎

2006年04月27日 | 歴史

司馬遼太郎氏の作品は『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』など、数多くの長編歴史小説がありますが、本書はわずか170ページほどの作品です。しかし人物評伝としてはきわめて優れた作品だと思います。

乃木希典-日露戦争の英雄、『軍神』とされた将軍で、学習院院長、明治天皇の崩御に殉じ妻とともに自殺。当時、日本人の鏡とされ、本書は日本中の国民が涙したといわれるその英雄の死を描いているのですが、そこに至る一人の人間の歪んだ美意識、将軍としての無能ぶりを痛烈に暴いた評伝です。

『坂の上の雲』の秋山兄弟が、主人公であるにもかかわらず、小説の後半で非常に影が薄くなるのは、その戦争ではどうしても乃木を描かなければならず、更にその勝利へとあらすじを展開するためには、軍神・乃木の影に実は真の英雄、別の天才(児玉源太郎など)の活躍があったことを描写しなければつじつまが合わなくなってしまう、その結果ともいえないでしょうか。

そこでもまだ書ききれていない乃木に関する部分を書き直したのが本書です。司馬氏は一冊の小説を書くのにトラック一台分の資料を調べ上げるといわれます。読み進めるにつれて、その膨大な研究量に裏打ちされた壮大なる想像、構想力に引き込まれていかざるをえません。

本書においては極力虚構を廃し、与えられた事実の範囲内で思考を確かめていくという手法をとっています。氏も本書の中で“小説というより筆者のおぼえがき”と述べています。歴史小説家が素材を入念に調べ上げ、作品にしていく過程が読者にも分かるような気にさせてくれる非常に興味深い一作です。

乃木将軍に対しては日本人ばかりか従軍記者も含む海外からも多くの賞賛が集まっているにもかかわらず、また司馬氏は本書の中で自分は中立といっているにもかかわらず、ところどころに辛らつな表現があります。それは、その後司馬氏自身がその愚かな軍部、政府によって戦争にかり出された経験があるためなのか、また幼少のころ乃木将軍の賛歌を歌わされていた氏の教育界に対する批判、警告なのか?

憂国の士である司馬氏にとって“乃木希典=英雄”という歴史的清算だけは許せない。調べていけばいくほど、どれほど彼のために犠牲になった命が多いことか明らかになる。戦争史上最悪の犠牲者を出しながら、世界中から、強国ロシアを破った将軍ということで賞賛を浴びていたことに我慢ならなかったのでしょうか。

私の祖母はもう二十年ほど前に亡くなっておりますが、実際にいつも乃木将軍を崇めていたのを記憶しております。本書を読んだら悲しむでしょう。また、今は逆に、映画『203高地』や、司馬氏の影響力が強すぎて乃木=無能という考え方が定着しつつあり、そのことに対する反論もありますね。

いずれにせよ、このように丹念で鋭敏な観察眼で第二次世界大戦や昭和天皇についても考察して欲しかったと思います。

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殉死

文藝春秋

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『灘高キムタツの東大英語リスニング』木村達哉

2006年04月27日 | 英語リスニング
 
東大の二次試験に的を絞ったテキストです。東大のリスニングテストの特徴を徹底的に分析し、その対策を立てたもので、かなりのボリュームがあります。本試験10年分(30の英文)に相当する模擬テストを収録、と書いてあります。至れり尽くせりの分析ができていますから、東大といえばドラゴンイングリッシュ、の図式が変わるかもしれないほど、徹底されています。

東大リスニングの特徴は、とにかく英文が長いということ。スクリプトだけ見ているぶんには、長いとは感じないでしょうが、赤本のCDを聞いてみればすぐにわかりますが(音質が悪い)、それを本番の緊張の中でずっと集中して聴くには訓練が必要で、その要望に応えるだけの構成になっています。

当然のことながら、センター試験のリスニングをはるかに越えた集中力が要求されるだけでなく、英文のレベル自体もぐっと上がります。その点においても本書は良く研究されており、政治、経済、環境、言語、歴史、科学などに関して、新旧の話題をまぜ、いかにも出題されそうな英文を、出題形式も考慮しながら易から難へ配列してあります。

英語講師ならみなご存知だと思いますが、言い古された日本論や西洋文化論を排除した、新しい話題を含むテキストというのは極めて少なく、仕方なくネットや原書を当たってみても、難易度、長さなどの問題などから、めったに演習に最適の英文を見つけることはできません。そういう意味でも高く評価できます。高2や東大よりやや下のレベルの生徒たちには、読解テキストとして用いても良いでしょう。

もう一つ、見逃せない利点は、ネイティブがおそらく5・6人?正確にはわかりませんが、いろいろな発音が聴けるということです。男性の低いこもった英語と女性のハスキーな英語はまったく違うだけでなく、個人のレベルで、どうしても発音にクセがあります。よく1人だけまたは男女1人ずつというリスニングテキストがありますが、不十分だとかねてから思っておりましたから、その点をもっと宣伝すれば良いのに、と余計なことも考えてしまいます(笑)。

注文を付けるとすれば、センター試験対策編で用いていた、3sメソッドをぜひ本書でも踏襲して欲しかった。語彙・文法の説明が丁寧であれば、あるいは単語集などが付いていれば、先に述べた読解のテキストとしても、極めてユニークになるし、当然受験生の時間節約にもなるでしょうから。もう一点、トイック、トフル対策にもと書いてありますが、本書はあくまで東大、あるいは難関私立向けです。

以上、見てきたように、東大リスニング特化というテキストですから、このブログで紹介してきた他のものとは同列に比較できませんが、本書の目的は充分達せられているものとして非常に高く評価できます。アドバイスも的確です。

p.s. このブログを継続的に読んでいる生徒は、私が時々キムタツ先生ご本人からコメントをもらっているので、お世辞、つまり“知り合いだから褒めてるんだろう”と勘ぐってしまう人がいるかも知れませんが、心配ご無用。本書が売れても(実際、よく売れていますが)私には何も利益はありませんから(笑)。トップクラスを目指す生徒は利用したら良いと思います。そのかわり値段もトップクラス。(あっ、余計なことを…)

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灘高キムタツの東大英語リスニング

アルク

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『灘高キムタツの東大英語リスニング』木村達哉
アルク:252p:2310円


『転機の教育』朝日新聞教育取材班

2006年04月27日 | 教育関連書籍

産経が変えた風をご紹介し、朝日新聞の猛烈な批判のされぶりを述べ、朝日の反論本のご紹介をお願いしましたが、教育に関してはお薦めの本がありますので(バランスを取る意味でも(笑))一冊挙げておきます。

本書は朝日新聞での連載をまとめたものです。「ゆとり教育」導入の背景説明から、この間の論争、そして実際にその方針に対応した自治体や、学校の新しい取り組みを紹介するものです。

すばらしくうまくいく実例などが載っていますが、それを成功させるためには、学校単独の力だけでは難しく、数多くの地域ボランティアや、多額の予算などが必要で、どこでもすぐに導入できるものではないことがわかります。『これうちの子の学校にできるかなぁ』などと考えてしまいます。

また自治体や学校に自由度を与えたのは良いのですが、指導要領は最低基準だから、それ以上やっても良いと言いながら、授業時間は削られてしまうのですから、これまでと同じ水準の教科学習をすることさえ難しくなっていくのは当然です。

ある程度予想された事態だとはいえ、ここまで各自治体、学校間で格差が広がれば、同じ税金を負担していて、低いサービスしか受けられない人々にどう対応するのかが大きなテーマになってくると思われます。満足しているのは自分の選んだ私立校に通える裕福な層だけで、私立校はおろか、公立校の選択さえままならないような、多くの地方都市に住む人は単に行政からの教育サービスが低下しただけです。

本書にはそういう状況にもめげず一念発起した首長や、校長の力で克服している例がありますが、やはり予算を付けないままの改革ですから、相当な苦労がともないます。文科省は、いろいろとモデル校を選び予算をつけましたが、まだまだ目が向けられていない多くの公立校が存在していることは想像に難くありません。 

ゆとり導入当時の話題性がなくなって、教育に関する報道量は、新聞もテレビも大変減ってしまいましたが、まだ問題は何も解決していない状況です。小泉自民党政権でも文部科学大臣のポストは考えの違う人が就任しています。教育問題、教育格差を重視していない証拠だと思っております。一方、民主党の小沢一郎党首も、教育について『日本改造計画』で簡単に触れている以外、その主張を聞いた記憶はありません。

読み終えると日本の教育界は本当にがらっと変わってしまい、混乱の時期に入ったという印象を持ってしまうのですが、とてもよくまとめてあり、特定の制度や組織を批判するものではありません。(読者の声ということで批判の声は紹介していますが)バランスの取れた構成になっています。

転機の教育

朝日新聞社

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『転機の教育』朝日新聞教育取材班
朝日新聞社:252p: 525円

『産経が変えた風』 ウェーブ産経事務局

2006年04月26日 | ビジネス書・マスコミ関連
 
先日、当教室の卒業生が遊びに来て、一緒に食事をした折に、ストレートに『先生、新聞ってどこが一番良いんですか?』と聞かれて困りました。この地域は朝日新聞が圧倒的に強いし、学校の先生方なら朝日を薦める方が多数でしょう。実際、大学入試ではいまだに朝日から出題されているのは事実です。

しかし、彼女達はすでに受験を終えていますし、一流大学のエリートです。新聞の不祥事や争いもあり、だいぶメディアに“うそ”と言って悪ければ“意図”が隠されているというのをわかってきて、活字を鵜呑みにするレベルではないので、『複数読むしかない』『ネットで主要な記事は見られる』と答えました。

大学の先生は『東京新聞』とお答えになったとか言っておりましたが、それでは安売りの折込チラシが少ないかなと…(笑)。みなさまならどうお答えになりますか?

以前「読売VS朝日 社説対決50年」という名の本だったのですが、読んでみると体裁は平等な対決となっていましたが、内容は読売側の朝日新聞大批判でした。迂闊にも、そもそも読売新聞編集部が書いたものだったのですね。

「朝日新聞大研究」という本を読もうかなとも思いましたが、朝日・読売以外の新聞のことを知りたくてこの本書を読んだのですが、「読売VS朝日」以上の激しい朝日新聞批判でした(笑)。

本書も完全な産経の手前ミソではありますが、報道に携わるものとして誇るべきものは誇るという態度でした。同時に朝日新聞に対する“憎悪”ともいえる感覚は読売、産経に共通していることを実感しました。以前ご紹介した『新聞力(青木彰)』の方がもちろん客観的ですが、いやみというほどではありませんでした。

朝日新聞も、報道姿勢をこれだけ具体的に非難しながらコテンパンににたたかれたら、ぜひ自社の名誉にかけて堂々と論争を受けて立って欲しいものです。というかそういう本を探しましたが見つかりませんでした。もし、そういう本をご存知の方がいらっしゃいましたらぜひ教えて下さい。お願いします。

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産経が変えた風―正論を貫いて

産経新聞ニュースサービス

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『産経が変えた風』ウェーブ産経事務局
産経新聞ニュースサービス:214p:1300円

『食品の裏側』安部司

2006年04月25日 | 教養

                       

『痛烈な内部告発書である。食品添加物の専門商社の敏腕セールスマンだった著者が、食品メーカーの“手口”を次々に暴露していく。』というのが日経ビジネスの書評の書き出しです。衝撃的で、私も『う~ん』とうならざるを得ませんでした。

廃棄寸前のとても食べられないクズ肉も30種類の食品添加物で、『激安!人気ミートボール』に化け、色の悪い低級タラコが添加物に一晩漬けるだけで、赤ちゃんの肌のようなつやつやの高級明太子に変身!サボテンに寄生する虫をすりつぶして染めた「健康飲料」!?そんな例がたくさん紹介され、具体的に何が安全かどうかは疑わしいというのです。その根拠は役所の行うラットの実験の仕方、食品衛生法の不備だと指摘します。

私もミートボールや明太子が好きなだけでなく、胃を手術したことがあるため、医者に勧められ、コーヒーにミルクを入れて飲みますが、いわゆる“コーヒーフレッシュ”、ファミリーレストランやコーヒーショップでなどで、ただで出てくるあれです。何とその正体は、植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、長持ちし、ミルク風にするため、さらにたくさんの添加物を入れたシロモノ。本書を読んでしまったらとても飲めません。牛乳を使うよりずっと安上がりで長持ちするんだそうです。容器が小さいためにそれを表示する義務はないし、大きなケースの方にも一言も“牛乳”とは書かれていないからもちろん、合法。

と、こんな話を他の先生としていると、タイミングよく(悪くかな?)、今日の彼のお昼はコンビニのおにぎり。そこで、記念撮影です。すると

          

ホントだ、本書に書いてあった通り。長くなりますので、説明しませんが、食品添加物の表示は9種類くらいだけれど、実際は…。かなりの問題が表示にあるということです。

『食育』という言葉ができ、子どもの食、すなわち家庭でも食がおかしい、“切れる子ども”との関連や、学力との関連などにまで言及されています。そして食品添加物はアレルギーやアトピーなどの関連も取りざたされていますね。

実際、うちの教室で生徒たちに食事について聞いてみますと、しっかり気を配っている家庭もありますが、朝ごはん抜きや、インスタント食品ばかりという生徒が信じられないほどいます。また近くの食品スーパーの安売りには長蛇の列ができます。お母さんのおにぎりより、コンビニのおにぎりの方がおいしいという生徒も多いです。

筆者はメーカーや行政だけでなく、消費者が安いもの、便利な食事を求めることも戒めます。が、食品を作っている人が『自分なら絶対食べないけど…』などというセリフがどこにでもあるそうで、『ちょっと待ってよ~』と言いたくなる一冊でした。


食品の裏側―みんな大好きな食品添加物

東洋経済新報社

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『食品の裏側』安部司
 東洋経済新報社:244p:1470円


『日韓禁断の歴史』金完燮(キムワンソプ)

2006年04月25日 | 外国関連

せっかく竹島の問題で、何とか折り合いが付いたと思っていたら、韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が、対日政策に関する特別談話を発表して、竹島の領有権を改めて主張したうえで、今回の件を植民地支配の歴史と絡めて強く批判、強硬手段も辞さず、と述べたと新聞に出ていました。ふぅ~。本当にそうなりそうな雲行きで、心配です。


金完燮(キムワンソプ)氏は『親日派のための弁明』の著者で、私が読むのは本書で3作目です。『親日派~』は非常に刺激的でした。その次に読んだ『日韓大討論』ではおもしろいものの、西尾幹二氏との対談は、どこか議論がかみ合わないような印象も持ちましたが、本書はそれを補ってあまりある読みやすい内容でした。

歴史を振り返れば日本と韓国(朝鮮)はどういう関係であったか、いつから、どういう理由で韓国は反日運動が盛んになったか、今、反日から反米にも向いた韓国世論とはいったいどういうものか、歴代韓国大統領の政策の評価、そして韓国人とは何かというアイデンティティーの問題までを論じます。

北朝鮮と韓国の関係はどのように変化しているのか、中国の覇権主義を警戒し、米国の政権の狙いなどを推測し、どうしても東アジアで日韓そして台湾はしっかり手をつなげと提言します。本書の最後には石原都知事との対談もあります。

金完燮氏は本書出版後、日韓関係について、韓国の国会の委員会で自身の主張を述べたところ、かなり他の議員の逆鱗に触れてしまい、告訴される可能性があるため、出国禁止の処分が下されたそうです。確か、氏のご家族は安全のために出国されていると聞きました。先進国になったように見えても、いまだ我々の考える言論の自由はないようですね。

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日韓「禁断の歴史」

小学館

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韓国嫌韓韓流竹島親日

『からすのゆうびんきょく』いなつぐかつら

2006年04月23日 | 絵本

このブログをはじめて少したった頃、思いがけず、ある方から絵本のTBをいただき、『そうだ月に1冊か2冊、絵本のことも備忘録としてこのブログに載せてみたい』と思いました。もちろん他人に自信をもって薦められるほど絵本の知識はありませんが、記憶をたどりながら探してみると良い絵本はたくさんありますね。

本書の著者、もうかなりのご高齢のはずですが“いなつぐ かつら”さんの絵本をご存知の方が多ければ多いほどうれしいのですが…。

私の教える生徒の中には、(DMやメールはたくさん来ても)、自分宛の手紙をもらったことがないという子どもが多くいます。ラブレターはもちろん(笑)、年賀状ですら0枚というのも珍しくありません。

『元気に暮らしています。そちらはどうですか』という普通の手紙、ふるさとからの野菜を詰めたダンボール、それを受け取った時の気持ちが伝わる絵本です。

短いお話なので、子どもはすぐにこの絵本を全部覚えてしまうのですが、私も『暗唱』できるくらい読まされました(笑)。とても良い本だと思います。

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からすのゆうびんきょく

金の星社

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『からすのゆうびんきょく』いなつぐかつら
金の星社:25p:1155円


『地域間交流が外交を変える鳥取-朝鮮半島の「ある試み」 』片山善博、剱持佳苗

2006年04月23日 | 外国関連

ここ数日の日韓関係は竹島をめぐり、“一触即発”と報じられました。何とか最悪の事態は回避できたようでホッといたしました。横断幕を派手に並べ、国旗を燃やしたりして、怒りもあらわに相手を非難するのは簡単ですが、やはり具体的解決策に知恵を絞る必要があります。

テレビで流される韓国の人々の映像を見ていると絶望感を抱くし、かなりのマイナス効果しかないと思います。最後には“許せない”という感情が日本に蔓延し、日本政府もあとに引けなくなってしまうではないかと。

2005年に“竹島の日条例”を鳥取県が制定していっそう注目が集まりましたが、本書はその鳥取県知事の片山氏が、鳥取と韓国の交流を紹介した一冊です。片山氏は少し前、ホテル税で石原東京都知事と論争したり、東芝の不買運動を言い出したりするなど、官僚出身者の中でも元気がいい方ですね。

竹島の領有をめぐる論争は今から100ほど前、日清戦争、日露、日韓併合の時代の手続きの話が出てきますが、本書はさらにその80年前、江戸時代にさかのぼります。朝鮮の船が遭難し、鳥取に漂着し鳥取の民衆に手厚くもてなされ、なんと三か月間の滞在を経た後、無事朝鮮に帰りました。この様子を描写した掛軸を、1993年、当時鳥取県の総務部長だった片山氏が目にしたことから、漂流朝鮮人の子孫探しをしようということになります。

片山氏は韓国人子孫を探し出すことで、両国の友好に役立てようと先頭に立っているわけです。そこまでは良いのですが、本書の半分は剱持氏が書いていて、韓国などへ調査、取材に出かけているのですが、江戸時代、日本が(韓国も)鎖国をしていた時の謎の日韓交流について、ほとんど新事実が見つかっていないので期待していた分ちょっと拍子抜けでした。

ではありますが、地方レベルの国際交流は国どうしでなされる外交を力強くサポートする可能性があることが、本書を読むと分かります。ただ、成果がなければマスコミにも取り上げてもらえませんね。

靖国問題や教科書問題でつまずきながらも着実に交流の実績を積み重ね、また、珍しいことに北朝鮮との街とも交流を続けているのです。残念ながら、そちらははかどっておらず、一緒に酒を飲む機会があるだけだそうです。でも何かの時にこのようなチャンネルが生かされるようなことになると良いのですが。

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『地域間交流が外交を変える鳥取-朝鮮半島の「ある試み」 』片山善博、剱持佳苗
光文社:159P:714円



地域間交流が外交を変える 鳥取-朝鮮半島の「ある試み」

光文社

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『算数オリンピック問題集』算数オリンピック委員会

2006年04月22日 | 中学受験関連【算数・国語参考書など】

                       
 
最近特に注目が集まるようになってきた、『算数オリンピック』。学校の勉強で忙しい生徒には、参加する余裕がないかもしれませんが、たとえ、出場しなくてもここで出題される問題は思考力を問う良問ばかりで、知っておいて決して損はないと思いますので、紹介します。

少し前話題になった、宮本哲也先生の『強育論』や『合格パズル』などとも方向性は似ているのではないでしょうか。というのも本書のコンセプトは宮本先生と同じ 【大切なのは、『考える』こと】 と書いてあります。そして【学校の学習内容に関わらず、特別な訓練や予備知識の有無によって有利不利が生じない、本来の思考力を養う、教科書の一歩上の「算数力」「数学力」が試されます。】 と解説にあり、さらに 【じっくり考えればだれでも解ける!】 ともあります。

算数オリンピックは小学校6年生以下、ジュニア算数オリンピックは5年生以下、ジュニア広中杯が中学1・2年で、広中杯は中3が対象です。本書はそのすべての過去問、解答解説が収録されており、かなりのボリュームです。日本だけでなく、アジアを中心に世界から子どもたちが参加しています。個人特訓教室でも参加を促していますが、年に1度だけですし、本書は書店で購入できないのでなかなかうまく行きません。(直接申し込む)

さらに、本の値段を云々言うことは避けたいのですが、さすがに本書の3000円(プラス送料500円)、大会参加費4000円は少し高いのでは。専門書ならまだしも、算数、数学の普及、国民の思考力アップという明確なビジョンがあり、文部科学省が認定する『学びんピック』に登録されているのですから、無料とは言いませんが、気前よく、英検や漢検のテキストくらいの負担で本書を配布できないかと思うのです。

http://tokkun.net/jump.htm

『算数オリンピック問題集』算数オリンピック委員会 (03-3371-2655)
295p:3千円(送料5百円)




違う本ですが

 ↓ 
算数オリンピックに挑戦 00~03年度版

講談社

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