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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『決戦前夜』 金子達仁

2006年05月31日 | サッカー関連

前回大会に関しては、『山本昌邦備忘録』 をご紹介しました。トルシエ率いる日本代表は、開催国でしたから、予選はありません。今回の予選も終わってみれば、もっとも早くワールドカップ出場を決めるなど、順調でした。大変だったのはやはり初出場のフランス大会。

もう8年も前のことです(ドーハの悲劇は12年も前!)。現在の小中学生はほとんど知らないできごとで、今でこそ、“出て当たり前”のワールドカップですが、当時の日本の力では本大会までの道のりは、非常に長く険しいものでした。その期間およそ一年。特に広いアジア地区では移動距離だけでも数万キロにも及ぶ過酷な戦いです。

ワールドカップに初出場できるかどうかは、当時、国民的関心事でしたね。本書はその過酷な試練を乗り越え、出場を果たしたフランス大会のアジア地区最終予選の模様を、金子達仁氏が試合と同時進行する形で描きだしています。

本書と、その前の“マイアミの奇跡(日本がオリンピックでブラジルに勝利)”とその後のチームの亀裂を描いた、同じ金子氏の『28年目のハーフタイム』。そちらも、お薦めですが、ワールドカップということであえて本書を紹介します。歴史の資料ですね。

国立競技場で行われた初戦のウズベキスタン戦を6対3と大勝しながらも加茂周監督(当時)の采配に不安を感じる筆者の予感は、続く対UAE戦での引き分け、対韓国戦での逆転負けで現実のものとなりました。自信を失ったままカザフスタンへ乗り込んだ日本チームは、ロスタイムでまさかの同点ゴールを決められ痛恨のドロー。

ついに加茂監督の電撃的更迭により日本チームの運命は監督未経験者のジャージ姿の岡田コーチ(現マリノス監督)へ。本大会出場の悲願は、また夢と消えるのか…。結果を知っている今読んでも、当時の緊迫感がそのまま伝わってくるのは、本書がサッカーを越えた人間ドラマを描いているからでしょう。

筆者が中田・川口という当時、年少ながら日本チームの核となる選手達と、取材者という立場を越えた人間関係を築いていたからこそ伝わる息づかいが、行間からひしひしと伝わります。

面子を優先してばかりの日本サッカー協会幹部、世界レベルの大会で勝った経験がないため、実力以上に相手を恐れるベテラン選手たち。彼らと若手との意識の違いは、単なる世代論を越えて、読者に何かを語ってくれます。

壁にぶつかり挫折しそうになったとき、その壁を乗り越えられるかどうかは、すなわち自分を信じ切れるかどうか。中田や川口は信じていました。決してあきらめないことが新たな力を生みだすことをこの作品は私たちに感じさせてくれます。

本書は、オフサイドのルールをよく知らないサッカーファン(笑)でも十分に楽しめる作品です。不安を抱えている受験生はもちろん、改革することを忘れてしまった訳知り顔の大人たちにも読んでほしい一作です。

さて、ジーコJAPANはどんなドラマを作り、金子氏がそれをどう描いてくれるか、本当に楽しみです。本書が出された当時、はたちそこそこだった中田、川口がいまやベテラン、世界を知り尽くしている彼らのリーダーシップに期待したいと思います。


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『決戦前夜』金子達仁
新潮文庫:199P:460円


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決戦前夜―Road to FRANCE

新潮社

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『ピッツァぼうや』ウィリアム・スタイグ

2006年05月30日 | 絵本
ふたりdeぶろぐ のカヲルさんから教えていただいた絵本です。ものすごい数の絵本をご紹介されており、この前、『あおくんときいろちゃん』 を記事にしたことがご縁で、ご無理を申し上げて、BESTな一冊を教えていただきました。

“まずは図書館で確認してから…” とアドバイスを頂きました(笑)。ごもっとも。

たまたま当塾は、毎月第5週(29・30・31日)がお休みですので、今日、最高のタイミングでアマゾンから本書が届き、息子と娘に読んでやり、大騒ぎして楽しみました。

雨の日に出かけられない、ごきげんななめの“ピート” を、お父さん、お母さんが、ピザにして遊んでやるお話です。絵本というのは、子どもが心から楽しみ、大人は楽しんで、そして何となく考えさせられる、そんな気がします。

こんなお父さんになりたいなぁ~と(笑)。“忙しいお父さんたち、必読!”は言い過ぎかな(笑)。こんなお話の絵本もあるんですね。新鮮な発見でした。ご紹介ありがとうございました。


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ピッツァぼうや

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『ピッツァぼうや』ウィリアム・スタイグ
セーラー出版:32P:1575円

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『ハーバードで語られる世界戦略』 田中宇、大門小百合

2006年05月30日 | 政治・経済・外交


著者のお二人は夫婦です。田中氏はジャーナリストでMSNジャーナルを立ち上げたこと、またアメリカのテロ事件のおり、いち早く『タリバン』 を出版したことでも知られています。国際ニュース解説が専門で、あらゆる事件に対し、興味深い分析を丹念におこなっています。

日本の中で、“9.11のテロをアメリカは知っていて止めなかった可能性”を指摘していたのは、田中氏が最初ではないでしょうか。一見、荒唐無稽なことを、豊富なデータと説得力をもって分析してあり、私も氏のメールマガジンを読んでいます。
 
本書は、氏の妻であり、英字新聞ジャパンタイムズの記者、大門小百合氏の留学に、夫の田中氏が同行した際のレポートです。大門氏がハーバード大学に奨学金をもらいながら留学する機会を得たのです。

そもそも世界各国から来る留学生の家族までまとめて面倒を見てしまう、ニーマンフェローというその留学の制度の違いから愕然とさせられます。夢のような待遇で世界中から一流のジャーナリストや研究者をごっそり集めてしまうわけですね。

読み進めると、それ以外の点でもハーバードでは、すべてが日本の大学の概念とは、まったく違う、桁外れの発想をし、比較することすら無意味ではないかとさえ思わされます。

そんなハーバードですが、田中氏はそれを礼賛しようというのではありません。スケールの違いに、一目置きながらも、かなり批判的です。“アメリカの陰謀を練っているこんな大学はクソ食らえ” ともあります。
 
いずれにしろ日本の大学を考える上で刺激になり、多くの示唆を与えてくれています。田中氏の著作は本書だけでなく、上記の『タリバン』 や、その他、どれもとても読みやすく、お薦めします。新聞、テレビなどではめったに見られない視点でニュースを解説しており好奇心をそそられます。

ただし、最近の田中氏のメルマガは、正直申し上げて、反米色が強く出過ぎているように感じています。もともとアメリカ嫌いはあるのでしょうが、中立といえるのかどうか。

まぁ、本書は、田中氏のそのポジションとは関係なく、純粋にアメリカ、世界に影響力を持つ知の最前線、ハーバード大学のレポートとして充分楽しめます。
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ハーバードで語られる世界戦略

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『ユダヤ人とローマ帝国』大沢武男

2006年05月29日 | 歴史


先日、ある生徒が、『昭和天皇とヒトラーてさぁ、どうして~』と話し始めました。相変わらず、学校で、天皇とヒトラーを同列に教えているかと思うとぞっとします。

確かに、欧米の知識人と呼ばれる人々にも、そういう捕らえ方をする人がいます。親日派と呼ばれる人たちでさえそうです。『日はまた昇る』のビルエモット氏もその一人でしょう。外国人のご愛嬌といえばそれまでですが、明らかに昭和史に関しては理解不足と申し上げなければなりません。(『聖断』 を参考にしてください)

さて、ではヒトラーの方です。私が、なにかにつけ、生徒たちによくいうのは『“良い”とか“悪い”とかで思考を止めてはダメ!なぜそうなったのかを良く考えたり、調べたりする』 ということです。

“戦争は悪い”。では、“なぜ世界中から無くならないのか”
“自殺は悪い”。では、“なぜ日本では年に3万人も自殺をするのか”
“塾は悪い”。では、“なぜこの先生は存在しているのか”(笑)などなどです。哲学ですね!

ホロコーストを肯定する人はいないでしょうが、ではなぜユダヤ人がそこまで迫害されたのか。生徒の頭の中では、ヒトラー一人が大悪人になっていますが、たった一人でできるわけがない。もちろん国中が賛成し、協力したはずです。

ユダヤ人はこれまで太古の昔から数え切れないほど、さまざまな差別や虐殺を受けてきた民族です。また、一方では、世界の人口の1%未満しかいないのに、ノーベル賞の20%をユダヤ人といわれる人々が受賞していて、飛びぬけて優秀な民族とも言われます。

【超有名、ユダヤ人】 は、ちょっと考えただけでも、キリスト、アインシュタイン、チャップリン、マルクス、フロイト、シャガール、カフカ、チョムスキー、まだまだいくらでもいます。

日露戦争で日本を援助してくれたのは、ユダヤ人だとか、現アメリカ政権には7人ものユダヤ系大臣が入っているとか、世界の金融、メディアはすべてユダヤ人が握っているとか、にわかには信じられないようなこともよく言われます。

その歴史的な背景を、本書は極めて分かりやすく解説しています。ユダヤ人とローマ帝国との関係を中心に書かれているのですが、やはり預言者キリストの誕生、そしてその死によって、大きく運命が動かされる様が中心に描かれています。

ローマ皇帝によって保護されたり、敵視されたりし、破壊や虐殺を受けながらも、時に妥協し、時に最後まで戦いながら、信仰を守ろうというユダヤ人勢力はたくさんいました。彼らとキリスト教との関係や、なぜ迫害を受けるのか、丁寧に説明してくれます。興味のある方にはぜひお薦めしたい一冊です。


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ユダヤ人とローマ帝国

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『歴史の方程式』 マークブキャナン

2006年05月29日 | 科学



大地震や大災害というのは予知できるのでしょうか。

次々と注目すべき若手研究者を輩出している物理学界ですが、筆者もその一人です。“物理”の問題は“歴史”を抜きに扱えないと、まずはびっくりするようなことを指摘します。

歴史に残るような大地震や大火災、または戦争なども、あとになってみると、歴史研究者も物理学者もたいてい、『起こるべくして起こった』 とか、『歴史は繰り返す』『百年に一度の割合で』などと説明したりします。

地震予知に関しては、地震のしくみは解明されていますし、プレートの位置も分かっていますが、『震度○○以上の地震が○○年以内に○○で起こる』 というような、過去のデータをもとにした地震予知は不可能だと言い切ります。

“30年以内に関東地方で大地震” というのは予知でも何でもなく、単なる平均値を述べただけです。

そう主張する根拠を与えるのが物理の単純なモデル実験から得られた知見です。非常に分かりやすいのですが、砂場で子どもが作るような、単純な砂山を想像して下さい。その山に一粒ずつ砂を落としていきます。砂山にはどう影響するかという実験が大きなヒントになります。おもしろいです。

そして、歴史の方程式はあるのかという大きな問いかけに対して、その鍵が『べき乗』にあることを明かします。xが2倍になればyは4倍(3倍なら9倍)のような法則です。

地震では逆に震度が大きくなれば、回数は極端に減少していくという法則です。人が感じないような小さな地震は無数に起こっていて、規模が大きくなるほど回数が大幅に減少します。“典型的な地震や火事の大きさ”は存在せず、単に大きければ大きいほど回数が少ない。

驚くべきことは、自然界のこの単純な法則がつい最近分かったということ。さらに、人為的な戦争や他のものにも多く当てはまるということです。物理学の仕事はもうなくなったと思われた時代があったそうですが、まさか、歴史学者も物理学の中に、歴史の答えがあるかもしれないとは思ってもみなかったでしょう。

以前ご紹介した、『つながりの科学(小田垣孝著)』 はその一部でもあります。カオス理論や複雑系の話とかいうものに関連しており、最近では、株価の動きや、ネットワーク(道路網やインターネット)にまで、こういった研究が成果を挙げており、非常にエキサイティングな分野になっています。ぜひお読み下さい。

p.s. 地震を元に記事を書いてしまいました。被災者の方々にお見舞い申し上げます。



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歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか

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『ジョッキー』松樹剛史

2006年05月28日 | 小説
■再掲■

石橋騎手・メイショウサムソンがとうとう頂点を極めました。石橋さん、おめでとうございます。ダービーを取ったら、本書をもう一度、ご紹介したいなと思っておりました。本当にやりましたね。苦労人の面目躍如です。

再掲させていただき、お祝い申し上げます。



以下の記事は皐月賞当時のものです。

********************************************************************
 
石橋守騎手が、メイショウサムソンでとうとう皐月賞GⅠを取りましたね。本当におめでとうございます。雰囲気としてはフサイチ2頭の勢いに押され気味でしたし、馬の輝きも(素人ですが)人気馬と比べて見劣りがしていました。が、武でもアンカツでもなく、勝ったのは石橋さんで、ジョッキーという仕事の厳しさと夢がかいま見えるようなレースでした。

本書は小説すばる新人賞受賞作であると同時に、NHKの番組で取り上げられていたので読みました。勝てないジョッキーの話です。かなり昔、宮本輝の「優駿」というすばらしい作品が思い出される話です。宮本氏も確か馬主でしたね。

優駿に勝るとも劣らぬ感動をくれました。『武+ディープインパクト』『岡部+シンボリルドルフ』のようなスター物語も何年かに一度ぜひ欲しいと思います。また『フジテレビ+フサイチ』もおもしろいです。でも今回の『石橋+サムソン』のようなものの方が、感動の仕方がワンランク上です。

優駿も本書もそういう感覚の読者に共感を与えてくれると思います。私は競馬にそれほど詳しくない程度の読者ですが、たまたま知り合いにジョッキーの妻という立場の方がおり、お話をうかがって、ジョッキーという職業の厳しさを教えてもらいました。本書の通りでした。石橋さんおめでとうございます!

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ジョッキー

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『ジョッキー』松樹剛史
集英社:284p:1575円




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灘高・キムタツこと木村達哉先生:リスニング3部作

2006年05月27日 | コラム・備忘録


“灘高キムタツ” こと、木村達哉先生とは、このブログで、私が木村先生のご著書を取り上げたのがご縁で、それ以降、こちらだけでなく、『灘高キムタツのリスニング日記』 という先生のブログでも意見交換させていただき、私は勉強させていただいております。


木村先生はマスコミにも頻繁に登場される、ビッグネームです。本を書き、インタビューを受け、もちろん灘中、灘高での授業や学校行事もあるという、超多忙なお方です。


そんな中でも、私のブログに注目いただき、小学校英語に対する、私のコラムにまで、ご自分のブログで、言及して下さいました。お礼の申し上げようもございません。


ちなみに木村先生の 『灘高キムタツのリスニング日記』 は、大規模なブログランキングの教育・学校部門でダントツの1位という、とても影響力の大きいブログです。
(私のブログは読書部門の30位くらい、ハハ…)。


木村先生は茶髪で、私は、茶髪よりはスポーツ刈りの方が好きなタイプの人間ですが(笑and失礼)…、(茶髪とは関係ありませんが)、木村先生のフェアプレー精神には頭が下がります。

ご自分の著書に対する、私の批判めいた指摘にも、灘高の授業の進め方などを参考に、真摯な態度でご回答をいただきました。使い方や出版事情などを含めた説明までも。

私の、木村先生のテキストに対する詳しい書評は、以下のリンクでご覧いただければさいわいです。木村先生のコメントも合わせてお読みになれば、木村先生のお人柄が、お分かりになると思います。


今日はお礼もこめて、もう一度、木村先生のリスニングテキスト、3冊をご紹介させていただきます。



灘高キムタツのセンター試験英語リスニング合格の法則 (基礎編)

アルク


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灘高では、高2の夏休みくらいから始め、2学期いっぱい、徹底したディクテーションを繰り返すそうです。決して短期間でやるわけではないのです。 

灘高キムタツのセンター試験英語リスニング合格の法則 (実践編)

アルク

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 こちらは、2年生の冬休みから3年生のはじめまで。基礎編と併用すれば、センター対策としては、充分おつりがきます。気合の入った一冊です。


灘高キムタツの東大英語リスニング

アルク

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東大受験生なら、ぜひやってもらいたいのですね。当教室の生徒たちにも薦めております。私は、topic の新鮮さから、読解用としても使いたいとコメントしたら、木村先生は“?”という反応でした(笑)。

以上です。


木村先生ありがとうございました。ますますのご活躍、そして、リスニングだけでなく、気合の入った読解や文法のテキストが出版されること、心から望んでおります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

VIVA


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英語リスニング東大 灘高キムタツ


『東大へ行こう!(“ドラゴン桜”公式ガイドブック)』 三田紀房&モーニング編集部

2006年05月26日 | 受験関連書籍

『ドラゴン桜』お読みになったでしょうか?あの本からは、実にさまざまなメッセージが読みとれます。公式ガイドブックとは意味不明(笑)ですが、本書は、そのメッセージや勉強方法をまとめて紹介し、さらに実際に東大生にそれらについてどう思うかを調べている一冊です。

以前にやはり、ドラゴン桜をもとに書かれた、『「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』親野智可等著を、ご紹介しましたが、それはおもに、小学年に対する家庭のしつけに関するものでした。

本書では、巻頭に筆者、三田氏のインタビューがあり、ドラゴン桜を書いたいきさつなどが語られます。さらに、東大卒の気鋭の脳学者、池谷裕二氏と『ドラゴンイングリッシュ』 の竹岡広信先生が東大について語ります。

ドラゴン桜には、各教科の“達人教師” が登場し、底辺校の生徒たちに、受験の極意を伝授します。それだけでなく精神論つまり受験生としての心構えも説きます。模試会場でのこころがけまで含め、すべて具体的に。

そこで、『寝る前に英語で日記を書け』とか『数学は自分で問題を作れ』 などという数多くのアドバイスについて、東大生に、自分の経験と照らし合わせてコメントをもらうのです。賛成・反対があり、なかなかおもしろいです。

私は、常々、勉強方法というのは、万人に共通して“効果がある” と言い切れるのは、ごく当たり前のことしかなく、あとは個人の好みや向き不向きが大きく作用すると思っております。大体どの参考書もそこらあたりの配慮が欠けていて、“こうすれば絶対大丈夫!” のように書いてありますね。

先輩の意見や本に書いてあることを鵜呑みにせず、自分自身で試して身に付けることが重要で、その点、東大生たちで検証しようという、本書の試みは賛成です。全体的なアドバイスの印象も、受験勉強や受験指導の盲点を突いており、好感が持てます。ただ、マンガに比べると地味ですね。ドラゴン桜を知っている生徒には受けないかも(笑)。

英語に関しても同様でしょう。ただ東大リスニングについて、『リスニングが合格を左右する』 と言い切っている割には、アドバイスは11の英語アドバイスのうちの1つだけ『音読せよ』です(笑)。もう少し詳しければ、『 東大英語リスニング 』の著書がある灘高のキムタツ先生にコメントを求めるところですが…。

ちなみに、龍山高校と同様、各教科の一流プロをそろえている当塾(笑)ですから、各科目の講師にこれらの勉強方法について聞いたところ、やはり上記のように答えておりました。生徒にやらせるために、絶対大丈夫!という言い方は、みんなしているのですが…(笑)。

東大へ行こう!―ドラゴン桜公式ガイドブック

講談社

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ドラゴン桜 東大竹岡広信





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『中国が「反日」を捨てる日』清水美和

2006年05月25日 | 外国関連
 

かなり前、5月25日の新聞の社説は、朝日、毎日、読売、産経、日経5大紙ともすべて、中国と韓国が日本の麻生外務大臣とカタールのドーハで会談したことを論評していました。

確かに歓迎すべきことですが、どの新聞も、この会談が実現した経緯を明らかにしていません。分析がほとんどなく、論調自体も、どこか歯切れが悪く“日中関係を改善しよう!”で終わっています(笑)。

これまでかたくなに、首脳会談だけでなく、最近は外相会談も避けてきた、中国と韓国が、なぜ会談に応じたかのか興味のあるところですが…。

私ももちろん自信はまったくありませんが、ひょっとしたら、中国から、関係改善のシグナルかもしれないと思ったのは、本書を読んでいたからです。

筆者は東京新聞の編集委員で、中国関係の専門家です。日中外交の解決に関して、氏の結論は、結局 “日本が譲るべき” となっていますので、本書の評判はあまり良くないようです(笑)。が、本書の中国国内の政治勢力に関する分析は、冷静に緻密に書かれていて、私は実におもしろく読めました。

同じ親中派(勝手に決め付けてごめんなさい) の中国分析の 『「反日」解剖(水谷尚子著)』 とは対照的です。

韓国の盧武鉉政権もそうですが、そもそも中国の胡錦濤主席誕生当時は、日本にとって新時代を連想させる指導者世代の出現に思えたはずです。

それを示すような発言は主席自身やその周辺からいくらでも出ていますし、以前ご紹介した、馬立誠氏の『反日からの脱却』 や『日本はもう中国に謝罪しなくていい』 が代表的なもので、それが中国の新政策になる可能性があったことは確かだと思います。

中国では『対日新思考』 とか『平和的台頭論』 というのだそうです。簡単に言えば、“日本外交から、歴史問題をはずす” ということです。『富国強兵』 のスローガンはもう古いということですね。

前国家主席の江沢民が小泉首相との初めての首脳会談で、3回も靖国を含めた歴史問題に言及したのに対して、胡錦濤主席は、初会談はもちろん、就任後ずっと歴史問題に触れず、中国にとっても重荷になってきた“歴史”という荷物を下ろしたがっていたというのです。

私も個人的にも、ある時期から突然、中国が明確に反日へと変化した印象を持っていましたが、実は筆者がよく観察したところ、反日に転向せざるを得なかった契機がはっきしている。

2003年10月、温家宝首相とインドネシアで会談した小泉首相の談話です。靖国問題について、日本なら何でもないコメント、『中国側も理解している。日中友好の阻害とはならない』という発言です。つまり、中国首相と会った直後に、これからも“靖国行くよ” と宣言してしまった、と取られたのでしょう。

中国では、本人のメンツがつぶれるということは、国内の権力闘争が激しいため、政治家としての死、つまり失脚を意味するということです。そこから変わったという分析です。中国政権内の人脈、権力構造などにも詳しく言及しており、説得力があります。

つまり、小泉首相だけでなく、日本の外務省はのんきに中国のシグナルを見逃していたし、その上、取るに足らないコメントが予想外に受け止められたというわけです。

中国がこんな調子だとしたら、確かに、胡錦濤主席も、橋本元首相とは会えても、小泉首相と会うのはこわいだろうなと納得したわけです。会いたくても会えないまるで恋人(笑)。

これから始まる自民党総裁選で、日本の首相が決まるわけですが、もしダークホースだった福田さんが選ばれるということになれば、明らかにそれは外交姿勢が他の候補と違う、はっきりいえば親中だということでしょうから、靖国問題を次の総裁選と結びつければ、中国・韓国は堂々と内政干渉をし、それが功を奏したというかたちになります。

今の雰囲気で日本がそれを容認するとは思えませんので、たとえ中国が望むであろう福田政権ができても、日本ではますます、反中が広がりそうです。そうなってしまっては、元も子もありません。

実際、サッカーのアジアカップは非常に大きなインパクトを子供たちにも与えました。“あんなことをしておいて、謝らない国なんだ”と。生徒たちには信じられないんですね。

破壊行為を謝罪して、日本と関係改善をしたくても、そうさせてもらえない政権基盤、押さえきれないナショナリズム。日本でさらに反中国感情が高まり、それに呼応して中国国民をさらにあおるという事態になれば、オリンピックなどこれから本格的に国際イベントが、無事にはむかえられない、という危機感の表れで、中国が対日関係を改善したがっているというのは、かなり信憑性があると感じました。

中国が「反日」を捨てる日

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中国反日  サッカー 



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『パブロを殺せ』マークボウデン

2006年05月24日 | ノンフィクション


昨晩、NHKのBSニュースで、コロンビアで爆破テロのような事件を伝えていたはずなのですが、今日、ブログに本書を書こうと、そのニュースを検索しましたが、どこにもありません。どなたかうまい検索の仕方を教えて下さい。

コロンビアで検索して出てくるのは、松井の退院が 『コロンビア病院』、映画、ダヴィンチコードの配給会社が 『コロンビア・ピクチャーズ』 ばかり(笑)。やけになって、“楽天トラベルで行くコロンビア”という宣伝が出てきたので、航空券予約を検索してみると、【該当なし】。

そうなんです。コロンビアの治安状況は、とても、一般人が観光で行けるような状況ではありません。ついでにニュースでは、確か、世界の麻薬の8割を生産していると…。

その麻薬カルテルの中心にいた人物が、本書で扱う “パブロ・エスコバル”です。世界で10本の指に入る大富豪で、世界最悪の指名手配者でもありました。金と麻薬と暴力で、国全体を支配してしまったような人物です。先日、『食肉の帝王』の浅田満氏を、“想像を絶する大物” と紹介しましたが、パブロには形容する言葉が見つかりません。

本書は、“パブロ率いる麻薬組織”VS“コロンビア・アメリカ特殊部隊”の戦いを描きます。治安の悪さを示すエピソードはいくらでもあります。何年か前、日本テニス協会も、国別対抗のフェドカップを、不戦敗承知で、コロンビアでの試合を棄権したほどです。

1986年のFIFAワールドカップはコロンビアで開催予定でしたが、経済の悪化を理由にコロンビアが開催を返上。というのは表向きの理由で、実はコロンビアのサッカー界で殺人などの凶悪事件が発生したため、FIFAが開催の中止を決定しました。

実際94年W杯アメリカ戦で自殺点をしたDFエスコバルが射殺されたのが有名な事件で、2001年にも元代表のDFがまた射殺される事件が起こっています。コロンビアというのはいまだに、いつ血の雨が降っても不思議ではないんです。

実は現在も大統領選の真っ最中ですが、選挙になると、麻薬組織がからみ、あちらこちらでテロや誘拐が頻発します。2002年に現政権ができ、犯罪は減っているといいますが、2003年、日本人が、誘拐されたあとに、遺体で見つかるという悲惨な事件があったことをご記憶でしょうか。

パブロは、自分でもプロサッカーチームや新聞社などを持つまで至る影の実力者です。その生まれから、どのように勢力を伸ばしたか。またアメリカが、自国への麻薬流入防止や、共産党ゲリラ撲滅のために、特殊部隊を投入してまで、パブロを捕まえにかかります。そこで繰り広げた血みどろの戦いを詳しく書いた迫力あるノンフィクションです。

外国の特殊部隊にまで頼らざるを得ない、という事実が、コロンビアの危機的状況を説明しているというものです。パブロは、表向きは犯罪者ですが、一筋縄ではいきません。逮捕されたとしても、国際社会に向け、“逮捕” という形をとるだけで、警察、軍人、政治家を買収したり、おどしたりして (家族の誘拐、爆破テロなど) 何と、自分専用の建物で豪華な“ムショ暮らし” をしていて、むしろそれまでより安全に、麻薬の売買をしていたというから信じられません。

とうとうクライマックスで逃げ出したパブロを撃ち殺した後、なんと、まるで大カジキを釣り上げたかのように、パブロの遺体を前にして、幹部が記念撮影した写真が載っています。そして、現在もそうですが、残念ながら、第2・第3のパブロが、その遺した利権をねらい、戦いを繰り広げているのです。


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パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊

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『誤訳をしないための翻訳英和辞典』 河野一郎

2006年05月23日 | 英語関連書籍

本書は私にとっては貴重な一冊です。これまで英語に関して、何冊もそういう本があったのですが、楽しく読めて、勉強にもなると思います。

私のレベルで申し上げれば、本書を読んで、もう1ランク上の英語を知ることができました。本来はプロの翻訳家を目指すような人のために書かれた本ですが、我々、英語教師にも非常に役立つと思います。実力のある高校生なら、楽しめるとも思います。

珍しい構成で、“辞典”と書いてあり、アルファベット順に、a、an から始まり、you know で終わるのですが、書かれている内容は、辞書のような紋切り型ではなく、すべて普通の言葉であり、参考書以上に読みやすく、“辞典を引く” のではなく “本を読む” 感覚でOKです。

少し前にご紹介した、『英語快読術(行方昭夫著)』 にも、誤訳について、ある章で詳しくふれており、ひどい例をあげながら、なぜ誤訳が生じるかの分析をしていました。本書は “翻訳家” 養成用に書かれていますので、それ以上に徹底して、誤訳について語ります。Tシャツなどにデタラメな英語が書かれているのは、よく笑って見ていたのですが、他にこれほど世の中の翻訳に、ひどい間違いがあふれているとはちっとも知りませんでした。

私にも、自分自身の誤訳というか、カン違いを発見しました。恥を忍んで書きます。

Children should be seen but not heard. 】 

というのは、どういう意味だかご存知でしたか? 私はこの英文は、ずっと 「(大人は)子供から目を離してはいけないが、子どもの言うこと(わがまま) は聞かなくてよい」 つまり「甘やかすな」 という意味だと思っていました。が、筆者によれば、正しくは 『子供は大人の席に出てもよいが、よけいな口を利いてはならず、お行儀よくしているべきだ』 という意味だそうです。

詳しくは書きませんが、やはり外国語の理解には、その背景となる文化もしっかり認識しておく必要があると痛感した次第です。ひょっとしたら、この英文をどこかで間違えて教えてしまった生徒がいるかも知れませんね、ごめんなさい。(古い表現で今ではあまり使われないそうですが…ホッ)

本書には、誤訳の例は山ほど載っているのですが、その中で、生徒たちがもっとも目にする機会が多いのが、CDなどの歌詞カードでしょう。一般的なあやまちの中から、一つご紹介すると、あるCDに付いていたものだそうですが、この英文をどう訳しますか?生徒でも、先生でも、チャレンジしてください。(簡単すぎるという方にはごめんなさい。)

【 If you know what I mean, I don’t ever wanna hear that song again. 】

CDに付いていた誤訳「私の気持ちをわかってちょうだい、その唄を二度と聞きたくないのよ」 

さて、正しい訳は何でしょうか? 何日かしたら、答えを書いておきますね。


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『誤訳をしないための翻訳英和辞典』河野一郎
DHC:335P:1680円



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誤訳をしないための翻訳英和辞典

DHC

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ブログランキング参加に関して…

2006年05月22日 | Weblog

以前から当ブログをご覧になっていただいている方は、お気付きかと思いますが、ここ数日でブログランキングにリンクしたバナーを設置いたしました。

当ブログはあくまで、当塾のメルマガなどで続けてきました、生徒やご父母に対する書籍のご紹介が目的で、アクセスアップを図って、アフィリエイトなどで収入を得ようというものではありません。

ただ、ブログをはじめた当初に思っておりましたより、かなり多くの方に訪問していただいておりまして、グーのランキングでは、だいたい50万ブログの中の、300~500位くらい、IPアドレスは日に約300で、閲覧数は1日でおよそ1000件です。(先週は442位)

これほどの数の方が見ていただいているのだからということで、仕事仲間がグー以外のブログランキングに参加するように、強く勧めてくれ、この数日ほどで、多くのランキングに登録をしました(というより、全部仲間がやってくれました)。

上位に行けば、もっとたくさんの方に本を紹介できるというわけです。参加されている方は必死でしょうから、そう簡単だとは思いませんが、まぁ参加する以上は、上位をねらいたいところです。ただ、毎回、“クリックを、クリックを”とお願いするのは、気が引けますので、こういう形で、ごあいさつさせていただきます。

今後、目障りでしょうが、記事の下にバナーを貼っておきますので、記事をお読みになり、良かったと思われましたら、クリックしていただけるとありがたいです。また、もしおもしろくないと思われましたら、ぜひ抗議のクリックをお願いします(笑)。うそです。さっさと読み飛ばしてください。

ランキングの結果などに関しましては、またいずれか記事の中で触れさせていただくかも知れません。いずれにしろ、これからも地道に良い本をさがし、ご紹介してまいりますので、よろしくお付き合い下さい。では失礼します。


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『「電池が切れるまで」の仲間たち』宮本雅史

2006年05月22日 | 絵本


下の詩をまずご覧下さい。ある小学生が書いた詩です。

「命」

命はとても大切だ
人間が生きるための電池みたいだ
でも電池はいつか切れる
命もいつかはなくなる
電池はすぐにとりかえられるけど
命はそう簡単にはとりかえられない
何年も何年も
月日がたってやっと
神様から与えられるものだ
命がないと人間は生きられない
でも
「命なんかいらない。」
と言って
命をむだにする人もいる
まだたくさん命がつかえるのに
そんな人を見ると悲しくなる
命は休むことなく働いているのに
だから、私は命が疲れたと言うまで
せいいっぱい生きよう


これを書いたのは宮越由貴奈ちゃん、当時小学校4年生。病院の中の勉強会で、電池の実験をしたことをもとに、退院後、学校の授業で書いたものだそうです。亡くなる4ヶ月前のことでした。

本書の副題は「子ども病院物語」 です。長野県立こども病院が舞台です。小さな子どもたちの闘病生活や、病院関係者の姿を描きます。子どものけなげな姿、親が、わが子の運命を受け入れていく心理描写、病院関係者の必死の治療の様子、すべてに心動かされます。

著者、宮本雅史氏の『真実無罪』 を読み、その丁寧な取材と真実に迫ろうとする意気込みに共感をし、他の宮本氏の著作をと探して読んだのが本書です。『真実無罪』 とはまったく分野は違うものの、やはり、しっかりしたドキュメンタリーで、大きな感動までもらいました。

つい先日も、現在、小児科医をしている私の教え子が、病院勤務の過酷さを話してくれました。医師として、責任の重さを自覚し、やる気も充分であるのに、医療体制はおそろしくみすぼらしいと…。そこからくる誤診の可能性まで、言及するものですから、「おいおい、がんばれよ」 と本書を紹介し励ましたのでした。

本書には、すべてふりがなも付いており、小学生でも読めます。いろいろなことを考えさせられる一冊です。お薦めします。


http://tokkun.net/jump.htm

「電池が切れるまで」の仲間たち―子ども病院物語

角川書店

詳  細



『「電池が切れるまで」の仲間たち』宮本雅史
講談社:152P:1260円




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