本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『英文法その微妙な違いがわからない!?』 中川信雄

2008年02月26日 | 英語関連書籍


英文法 中川信雄.jpg


久しぶりに英語関連書籍の紹介です。自分が英文法を学んだり教えたりする上で、参考にしてきた本は数多くありますが、本書の著者、中川信雄氏の著作はすべて、中でも本書は今でも時々参考にするほど役立っています。


“英語の文法はおもしろい” という高校生が本書を読んでくれれば、学校の先生が説明してくれないようなことや、新しい知識がたくさん出ていて、刺激的な一冊になるのは間違えないでしょう。

ところが、“英文法好きな高校生” など、今や絶滅危惧種ですし、本書は非常にわかりやすく書かれているというものの、やはり基本文法が理解できた上のレベルですから、生徒向けというよりも、やはり学校の先生や塾講師の方にお薦めでしょうね。


時々、センスの良い生徒から、文法書に出ていないような、ドキッとさせられるような質問をされることがありませんか。本書にはそんな質問がたくさん出てきますし、逆にこちらから話題として投げかけるに適した内容も多く含まれ、授業で役立つ知識が得られます。


目次は以下の通りです。

 「こんなときどう言う?」―その微妙な言い方の違い(「すみませんが」の使い分け;きちんと謝るには ほか)

 「あるのか、ないのか」―その小さな違いが大違い(“A Happy New Year”は正しいか;「名詞」は取り扱い注意! ほか)

 「知ってるつもりで勘違い」―よく使うそのことばの微妙な違い(bigとlargeの微妙な違い;littleとsmallの微妙な違い ほか)

 「それって一体何の話?」―その文法の微妙な使い分け(be動詞の本当の意味は;受け身にできない文とは ほか)



残念ながら、この目次だけでは本書の魅力はとうてい伝わりません。要するに今まで何とも思わなかったこと、あるいは単に暗記するように言われた(指示していた)ことの裏には、やはりある程度の法則があることなどを教えてくれます。

私も自分の授業では、本書からの話題をいくつも借用しました。特に英語に関心のある生徒や英語が得意だと思っている生徒に提供する話題として最適ではないでしょうか。項目別になっているので使いやすいのも大きな利点です。

機会があればぜひ手にとっていただきたい、お薦めの一冊です。



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英文法 その微妙な違いがわからない!?―どこかおかしい、でもなぜかわからなかった101の疑問 (英文法がわからない!?)
中川 信雄
研究社出版

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『新 ほんとうの英語がわかる―ネイティヴに「こころ」を伝えたい』 ロジャー・パルバース 

2007年09月09日 | 英語関連書籍


新・本当の英語がわかる.jpg


本書の前作、『ほんとうの英語がわかる』 を少し前にご紹介しました。そちらもお薦めですが、続編の本書もなかなか興味深い一冊です。

筆者は英語の専門家でもありますが、同時に作家でもあります。本書では4人の登場人物の英会話を追い、その英語の解説と同時にあるストーリーができています。それを追いながら、英語の理解を深めようというねらいです。

実際の受験勉強や資格試験に役立つというような、勉強をするための本というより(もちろん勉強になりますが)、日本語と英語の奥深さを知る教養書と呼んだ方が良いかもしれません。

英語学習者の正しい考え方を豊富な例文で実に丁寧に示してくれています。不思議な魅力を持った本でした。生徒より先生向きと言えるかも知れません。日本人にはわかりにくいと思われる例を挙げ、なぜそういう意味になるのか、その背景、ニュアンスの違いなどの解説が親切です。


目次です。

 短い単語

 長い単語

 皮肉、嫌味、冷笑

 イントネーション、なまり、方言

 擬音語・擬態語、頭韻、英語の音色

 英語のていねい表現

 微妙な表現とニュアンス


いくつか本書から拾ってみます。以下のような表現が、日本人にはわかりにくいだろうということで、その意味などを解説してくれています。

He is a great little actor. (彼はすばらしい俳優だ)

Well, one way or another. (まぁ、一応)

You ain’t seen nothin’ yet. (お楽しみはこれからだぜ)

Get a life. (しっかりしろ、いい加減にしろ)


いかがでしょう。確かに、あまり教科書には出てこないような表現だと思います。ニュアンスで分かるものもありますが、知りたい!という方にはお薦めします。ただし、上で書きましたように、参考書というより教養書のおもむきです。



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新 ほんとうの英語がわかる―ネイティヴに「こころ」を伝えたい 新潮選書
ロジャー・パルバース,Roger Pulvers,上杉 隼人
新潮社

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『ほんとうの英語がわかる- 51の処方箋』 ロジャー・パルバース 上杉隼人(訳)

2007年06月25日 | 英語関連書籍


ほんとうの英語がわかる.jpg


講師や生徒のどちらにも薦められる英語の本というのは大変貴重だと思いますが、本書はそんな一冊です。

自分が英語を教える上で、参考になった本は数知れずあり、その中でもっとも印象深い一冊として、荒木博之氏の 『日本語が見えると英語も見える -新英語教育論』 をつい先日取り上げました。記事にしたばかりですから、繰り返しませんが、実にすばらしい観察、理論だと思います。


他にもどうご紹介したら読んでいただけるのだろうという本があるわけですが、荒木氏の本同様、やや専門的なので、英文科を目指すのならともかく、一般の受験生には薦められません。どうしても英語を学んでいる生徒より、教えている先生方にお読みいただきたいと思うものが多くなりますね。

このブログの左、にある “カテゴリ” というところ。その中にある “英語関連書籍” とは、そんな本のことです。つまり、生徒が目標にしている受験とは直結していないけど、より広い意味で英語学習に参考になるという書籍です。

教師だけでなく、生徒が読んでもすんなり楽しめたり、役に立つもの。本書のように筆者が日本をよく知っている外国人である場合、そんなおもしろい本が多いように思います。

以前、取り上げました、デイビット・セインの 『その英語、ネイティブにはこう聞こえます』 もそんな一冊です (How are you? はネイティブには 『ごきげんいかがでござる』 と聞こえるのだそうです(笑)。) で抜群におもしろいのですが、本書の方がより本格的というか、楽しむというより勉強しましょうよ、と優しく語りかけているような内容です。


外国語習得の目的はさまざまです。受験に向けてひたすら文法から勉強するのも大切ですが、そのことばを話す人たちの心の中に入り込み、その人たちの考え方を深く理解する、ということも欠かすことができません。


私が英語を教えるのは、大学受験生ですし、そのためには現在、公教育で軽視されがちな英文法はとても大切だと思っています。ですからよく耳にする…


 “ I am a boy.”  とか “This is a pen.”  などという例文に対し

“どこの世界に、「私は少年だ」 とか、「これはペンです」、とあらためて言うやつがいるか!”という批判には、与しません。これは先日取り上げた 『灘高キムタツの国立大学英語リーディング超難関大学編』 に掲載された私のコラムの中で、伝えたかったことです。

つまり、そもそも我々は、ネイティブではないので、ある程度、英語も、さまざまな文をもっとも抽象化した数学のようなものとして理解していった方が、大学受験の英語学習には有利だということです。大学に入っても英字新聞を読みたいのならそれが効率的だと考えています。

ただし、もちろんそれも程度問題で、コミュニケーションのツールとして英語を使うには、やはり机上の数学とは異なる、“現場” を知らないと役立ちません。この本では、そのような 「ネイティヴの発想」 を理解することを主眼に置き、とくに大切な51の単語について解説が進められています。

授業で “ネタ” になりそうな話題が数多く、読んでおけば必ず、授業でも、外国人と接する現場でも役立ちそうです。


以下のような単語です。


 I
 you
 to mind
 to recognize
 to offer
 to afford 
 company
 to owe
 to miss
 to interrupt
  God 
〔ほか〕


どうでしょう。この単語群を見れば、大学受験の英語を教えている立場の人ならば、すぐに受験にも役立ちそうだと気付いていただけると思います。大学入試でさまざまなタイプの問題で頻出の単語が並んでいますね。

著者パルバース氏は劇作家や映画の仕事もされているそうで、例文、解説が面白く、しかも1冊で一つのストーリーという感じにまでなっています。もちろん辞書のように途中にある、気になる単語だけを読んでも勉強になります。


生徒も講師も、何回も読んでマスターしておきたい内容が詰まった本だと思いますので、多くの人に有益な一冊です。



P.S. パルバース氏が本書を執筆していた当時のコメントをネットで見つけました。よろしければご覧下さい。

   ⇒ 『ほんとうの英語がわかる

 

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ほんとうの英語がわかる―51の処方箋

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『日本語が見えると英語も見える-新英語教育論』 荒木博之

2007年06月21日 | 英語関連書籍


日本語が見えると英語も見える.jpg


『“くちびる” を英語で何という?』 とたずねれば、きっと中学生でも、“lip” と正しく答えるでしょうし、実際、教科書にも、顔のイラストに鼻には “nose” 、目には “eye” と示されているように、くちびるは lip としてあるでしょう。

それでは、次の英文はどう訳すか、“A bearded lips just open.” bearded は “ひげのはえた” ですから、直訳は、“ひげのはえたくちびる をちょっとあける。” でも “くちびる” にひげははえませんね(笑)。なぜこんな英文があるのか。


これは、鈴木孝夫氏が『言葉と文化』という本の中で、英語と日本語の文化の違いを明確に示したものです。英語の lip というのは、日本人が想定するような、口紅を塗るあの赤い部分だけではなく、鼻の下から口の周り全体、いわゆる“チュ~” と、くちびるを突き出してとんがる部分全体を指すということを示しています。そこならひげが生えるわけです。


本書はこういった例を紹介しながら、そもそもこういう基本的なところから、英語と日本語、西洋人と日本人のものに対するとらえ方、概念が違うということを念頭において英語の指導を始めるべきだと教えてくれる一冊です。

言葉が文化であるということに、どの教師も異論がないはずですが、ということは日本で英語を教えるということはすなわち、両方の文化の違いを認識していなければ始まりません。では、日本(語)文化の特徴はどのあたりにあるのかを、本書では上に挙げたような日英の違いのさまざまな例を出しながら考察します。


もう少し例を紹介しましょう。さらに単純に中学生に一番手っ取り早く日英の違いを説明するには、英語では、相手が大統領であれ、赤ん坊であれすべて、you しかなく、自分が I だけ。

一方、日本語で自分をさす言葉は、「僕」「わたし」「わたくし」「わし」「あたし」「俺」「自分」「こっち」「こちとら」「それがし」「拙者」 などなど。相手には 「あなた」「おまえ」「おまえさん」「きみ」「そっち」「そちら」「そちらさん」「貴様」「おのれ」「おぬし」「貴殿」「貴公」 とこちらも性別や地位、あるいは時代、状況などによって非常に多種多様です。しかも「自分」という言葉は、自分にも相手にも使いますね。

生徒たちに、君たちはお母さんや先生に、「あなた」 とか「きみ」 と呼んだことがありますかときくと、当然ありません。不適切だと判断しているわけで、すでにこの違いを認識して使いこなしているわけです。外国人がこれを学ぼうと思ったらとてつもない労力が必要でしょう。それに比べて英語のなんと簡単なことか(笑)。

逆に…。

例えば複数形。中学生は、名詞に複数形があることを、動詞の3単現のs同様、みな不思議に思います。本は何冊あっても本ですから、誰も、本“達”屋 とは言わないのに、英語では books。でも、外国人にとって、本屋さんの看板によくある book は気持ち悪くてしょうがないそうです。何で s が付いていないのだと。

そこで調べてみると、世界中の言語の中で複数形が無い方がかなり珍しいらしいのです。向こうがおかしいと思っていたら、どうやらこっちの方が例外らしいということが日本語にはいくつもあります。

なぜこんなことが起こるのか。なぜ日本人は、自分や相手の呼び方をいろいろ変えたりするのに、単数、複数を区別しないのか、そういうようなことを本書でいろいろ考察するわけです。


英語と日本語の単語が一対一であるわけではないということも、いろいろの例を出して説明しています。何となくわかるけど曖昧な日本語というのはたくさんあります。「けなげ」 「りりしい」 などという言葉や、「よぼよぼ」 「ふわふわ」 なども一語の英単語では感じが伝わりません。

例えば、「りりしい若者」 という時の 「りり(凛々しい)」 という日本語。まずこれをどういう日本語で説明するかということ自体が難しい。日頃何となく使っていても、意味を問われて、「りりしいとは○○なようす」 などと間髪入れずに答えられる人は少ないと思います。


そこで、国語辞典で「りり(凛々しい)」 を引きますと、「きりりと引き締まっていて勇ましい」 などとありますが、さらに「きりり」 と 「引き締まる」 も曖昧で、英語に直せません(笑)。

和英辞典では、りりしいに brave や valiant や それから manly などを当てています。「男らしい」 や 「勇敢な」 という訳を付けていますが、りりしいとはちょっと違うと思いませんか。

筆者がいろいろな辞書に当たって見ると、日葡辞書に、「気高く、非常に生気がある」 と書いてあり、なるほどと思ったというのです。「りりしい」というのは、noble でそして魂が高揚している。英語で言うと high-spirited という言葉がありますから、noble and high-spirited 「高貴で魂が高揚している」 という訳を付けると、これはかなり日本語の「りりしい」に近くなるのではないかと。確かに引き締まっている感じがしますね。


こうした話題や実例を挙げ、日本語と英語の違いを徐々に浮き彫りにしていきます。目次は以下のようになっています。


第1部 やまとことばと英語

第2部 モノローグ言語とダイアローグ言語

第3部 農耕稲作民と遊牧民

第4部 異文化対応と自己確認

第5部 音声訓練の方法

第6部 『中間日本語辞典』

第7部 英語苦手克服のセラピィ


何度も読み返しました。筆者は、いろいろの考察から、日本語および日本文化のキーワードは “自律” ならぬ 『他律』 であると結論付けます。従って主語がなかったり曖昧になったり、受身が多いなどなど…。

日本人らしさの構造(芳賀綏)』 という、日本語文化に焦点を当てたすばらしい一冊を以前ご紹介しましたが、そこで見えるキーワードとほぼ一致していました。


私は高校生に英語を教えるのが仕事ですから、もちろん英語を勉強します。入試問題を解き、新しい参考書や話題になった単語集などは、すべてとはいきませんが、相当程度チェックはします。

入試の英単語だけ覚えても、とても講師は務まりませんから、英語の新聞や雑誌も講読します。文化を知りたいと思っていろいろな本も読みます。常に受験英語を意識しながら、それをどう興味深く、効率的に生徒に伝えるかをさぐるために努力しますと、受験英語とは関係のなさそうなものから多くのヒントが得られます。


そして、いつも高いレベルで行き着く結論がまさに本書の題名 【 日本語が見えると英語も見える 】 というものです。英語を教える際の基本的心構えを教えてくれた本はたくさんありますが、本書はその中でも最も強い感銘を与えてくれた中の一冊です。


高校生でこれから英語関係の学部、学科に進もうと考えている人や、多くの英語の先生、塾講師の方々にお読みいただきたいと強く思います。お薦めです。


 
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日本語が見えると英語も見える.jpg 日本語が見えると英語も見える―新英語教育論

中央公論社

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ことばと文化

岩波書店

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『歴史をかえた誤訳』 鳥飼玖美子

2007年06月11日 | 英語関連書籍

 

歴史をかえた誤訳.jpg


鳥飼玖美子氏は昔から私の尊敬する英語の先生のお一人です。英語学習で多くの示唆を得られる方で、本書はその通訳論です。同時通訳の場で問題となるさまざま状況を紹介し、その解決策や異文化コミュニケーションの難しさなどを指摘します。

そして、実際に起こった歴史的誤訳のようなものを特集した一冊です。

副題は 「原爆投下を招いた誤訳とは!」 となっていて、まるで “通訳が訳を間違えたことによって、あの原爆が落とされたのだ。それが歴史の真相である!” とでも主張していますね。

この話、お聞きになったことがありますか。実は私はどこかで聞いた記憶があり、しかも鳥飼氏の著作ということで、興味を持って本書を手に取りましたが、まことに残念ながら、その問題にはほんの少ししか触れられていません。(もうこういう派手な宣伝文句が内容と異なっていることが少なからずあり、正直、不愉快ですね。もう鳥飼せんせい!)

しかも、本書のそのわずかなところを読んでややがっかり。それによると…


当時の首相、鈴木貫太郎ポツダム宣言を 「黙殺する」 と言ったのを、通訳が「ignore(無視する)」 と訳し、それが連合国側には “拒否する” という意味に取られてしまって、原爆投下を招いた。

もし黙殺を 「ignore」 ではなく “give it the silent treatment” (だまってやりすごす?) とでも訳しておけば、原爆投下も避けられたかも知れないというのです。 

う~ん、それはどうでしょうか?いくらなんでも…という気がしませんか。

まず “黙殺する” という言葉自体、そもそも強い言葉ですよね。国語辞典 (大辞泉)で、“黙殺” を引くと、“無視して取りあわないこと” となっています。 

一方 “ignore” を新オックフォード英英辞典で引くと、 “refuse to take notice of or acknowledge ;  disregard intentionally” (関心を持ったり、認めることを拒む ; 意図的に無視する )

ですから、黙殺する を ignore とすることは、全く誤訳じゃないと思うのですが…。ちなみに今度は手元にある数冊の和英辞典で 『黙殺する』 を調べてみると:

deliberately ignore  (故意に無視する) 

treat with silent contempt  (無言の侮蔑をもって処理する)  

pass with silence (黙ってやり過ごす) 

completely ignore (完全に無視する) 

ignore with contempt (軽蔑して無視する) 

take no notice of (注意を払わない) 

turn a deaf ear  (聞く耳を持たない) などなど、

やはり ignore よりむしろ強い言い方の方が多いようです。ですから、このことは通訳のせいなどではまったくなく、あえて言うなら、黙殺という強い言葉を使った、鈴木首相の発言に問題提起をする内容だと感じるわけです。何か問題がすりかわっている印象です。

ところが、私は、『聖断』 を読んで、鈴木貫太郎の卓越した政治力に畏敬の念さえ抱いておりますので、原爆投下の責任をとても鈴木首相の会見のせいにする気にもなれません(笑)。


以下が目次です。 

序章 誤訳はなぜ起きるのか

第1章
 歴史を変えた言葉

第2章
 外交交渉の舞台裏

第3章
 ねじ曲げられた事実

第4章
 まさかの誤訳、瀬戸際の翻訳

第5章
 文化はどこまで訳せるか

第6章
 通訳者の使命


つまり歴史上の誤訳というのは、もちろん取り上げようとすればあるのですが、ややあげ足取りの印象です。善意に解釈すれば、通訳という仕事は目立たないが、場合によっては国益さえ左右しかねないのだからがんばれ!という一冊かと思います。

実際、歴史的誤訳から離れ、英語や翻訳についてのエッセーはおもしろく読めました。これから通訳になろうという方、英文学部に進学しようという方なら参考になるところが多いでしょう。


同時通訳ではないのですが、“誤訳” を扱ったものでは、『誤訳をしないための翻訳英和辞典』 の方がおススメです。


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歴史をかえた誤訳

新潮社

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『聖書でわかる英語表現』 石黒マリーローズ

2007年05月26日 | 英語関連書籍


現.jpg

 
英字新聞(タイムズ)の見出しに “A Senile God?  Who would Adam and Eve It?”  とありました。 アダムとイヴ???  senile は “老衰した”という意味ですから、“老衰した神”、まではよいのですが、あとは何?と思って探したのが本書です。

筆者はレバノンのベイルート生まれ。クウェートの王室付きの教師までされたあとに、1972年に来日して日本人実業家の石黒道兼氏と結婚。レバノン文化教育センターなどを設立して国際交流などの活動や、いろいろな大学で講師をされているようです。↓がご夫妻です。


岩波(石黒夫妻).jpg


さて、上の英文ですが、本書の “はじめに” にこの紹介がありました。 なんとアダムとイヴ Adam and Eve) の Eve が believe の最後の eve と韻を踏んでいるために、英語では believe it を Adam and Eve it ということがあるのだそうです。へぇ~、勉強不足でした。

ですから、Who would Adam and Eve It? は  Who would believe it? : いったい誰が信じるだろうか? という意味になるわけですね。ご存知でしたか? これが新聞の見出しに使われていたわけです。

日本なら 【社保庁改革?その手は桑名の焼き蛤(はまぐり)】 とか、“恐れ入谷の鬼子母神” みたいなもんでしょうか(笑)?新聞の見出しにはなりませんね。どう考えても…。 


まぁ、これだけ見ますと、クイズというか、だじゃれのような本かと思ったのですが、とんでもない。いたってまじめな本で、非常にレベルの高い内容です。確かに英語を教えていてどうしても辞書通りの意味にならない時、聖書の言葉がかかわっていることが多いのです。

ただし、英語の本というよりも、どちらかというと聖書に関する本という感じです。ですから、学習者が純粋に英語力を付けるために読むというより、キリスト教を知りたい、英語で聖書を読みたいという人に向いているのではないかと感じます。


目次は以下のようになっています。

 ニュース英語にみる聖書の表現(手を洗うピラト;神は私の助け;ダビデとゴリアト ほか)

 暮らしのなかのキリスト教英語―行事と慣習(天使祝詞;クリスマス;3人の博士と公現祭 ほか)

 聖書を読めば英語はもっと身近に―創世記から黙示録まで(創世記;過越の祭(出エジプト記)贖罪の山羊(レビ記) ほか)



本書も宮崎哲弥氏の 『新書365冊』 で取り上げられていた一冊です。評価はBest、Better の下で More に分類されていました。Moreに対する宮崎氏の書評は短いので、そのまま引用しておきましょう。


米英の新聞を読んでいると、時折宗教由来の慣用表現に出くわす。時事問題に聖書が引照されるのだ。本書は言葉そのものの解説よりも聖書的な言語センスの伝授に力点を置く。


巻末には、20ページ以上に渡って、キリスト教の主な祝祭日の解説が表になって出ています。またあまり数は多くないのですが、英語表現の索引もありますので、通読せずとも辞書のようにも使えるのではないでしょうか。


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聖書でわかる英語表現

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『だから、あなたも生きぬいて (So Can You) 』 大平光代 (英語版:ブレナンジョン訳)

2007年03月29日 | 英語関連書籍


だからあなたも生き抜いて.jpg      So Can You.jpg



今日は医師国家試験の合格発表だったのですね。突然、かつての教え子が “合格しました” と教室に報告に来てくれました。そのお兄さんも、弟も通塾していましたし、もう中学生時代から見ていた生徒ですから、『あいつがドクターかよ~』 と、しばし感慨にふけりました。

昔から、心優しい少年だったので、わたしの方から、『医学部はどうでしょう。医者にしましょう』 とお母さん、そして本人に勧めた経緯があるので、今日のにこにこした顔を見て、本当にうれしかった。よかった~。

その彼が出た、その国公立大学の医学部の中で、同時に合格した仲間で最年長は50歳!だそうです。私のその教え子は現役合格ですから24歳。年が倍以上の同級生がいるなんてすごいですね。いろんな人生があるもんです。


さて、こうして塾や学校から巣立っていく人たちがいれば、当然、新しく入ってくる人もいるわけです。新学年の新学期がいよいよ近付いてきましたが、子どもたちは、誰と一緒のクラスになって、どんな先生が担任になるのか、わくわく、ドキドキでしょう。

でも生徒諸君!もし、思い通りにならなくても気にしない、気にしない。先生たちもお父さんやお母さんたちも、み~んな経験していることだけど、必ず新しい知り合いの中からよい友達ができる。(年が倍の人はいないだろうけどね(笑)…)


それに楽しいことも、つまらないこともあるのが学校で、楽しいだけなら遊園地。人を見かけだけで判断しちゃダメ。生意気そうな態度をしていても気が小さいやつ、怖そうな顔をしていても優しい先生、そういう人はいっぱいいるんだからね。

新学期、気持ちよくスタートするためには、前向きに前向きに!


さぁ、子どもたちに感動と勇気を与えてくれる一冊です。

いじめに関する本はこのブログでも、


遺書』  『ナイフ(重松清)』  『信さん(辻内智貴)』 

『オレ様化する子どもたち(諏訪哲二)
』 『みんなのなやみ(重松清)』 

『教室の悪魔(山脇由紀子)』



などを取り上げました。それぞれに書き方はいろいろですが、みな良書で考えさせられるものばかりです。


今日ご紹介する、『だから、あなたも生きぬいて』 も、非常に心に残る一冊で、帯にあるように大ベストセラーですから、ご存知の方も多いでしょう。中学生以上にはぜひ読んでもらいたい一冊です。

そして、その英語版 『So Can You 』 (直訳すれば、“あなただってできる” という励ましになるでしょうか)、があることを高校生諸君にも知ってもらいたくて、一緒に取り上げました。読みやすい英語だと思いますから、ぜひチャレンジして下さい。英語で感動できたら大きな自信になる!


いじめが原因で自殺未遂、通りすがりの人に助けられ一命は取りとめるも、中卒のまま、やがて極道の妻となり刺青まで彫ってしまいますが、一念発起して猛勉強、最難関の司法試験に一発合格という経歴を持つ大平氏。

異色の弁護士、というだけでは表現が足りないほどの超異色。まさに “奇跡の弁護士” とでも呼びたいようなキャリアです。私はもう何年も前に、テレビのドキュメンタリー番組で大平氏を知ったのですが、番組の最後に、ぱっと服を脱いで背中の刺青を見せたのですが、今でもその姿を鮮明に覚えています。強烈でした。


本当に些細なことから強烈なイジメに遭い転落していった思春期。中学生が割腹自殺を図るなどとは、他では聞いたことがありません。非行に走り、完全な人間不信に陥り、どこまでも落ちていきながらも、それでも、“誰かに真剣に叱ってもらいたかった” と告白します。


そんな時、再会したある人物の懸命の説得で立ち直っていくわけですが、その姿が実に感動的です。一人の人間が併せ持つ弱さと強さを凄い迫力で伝えます。いじめに見られる人間の残酷さと同時に、他人のために尽くす愛情も。


そして、読んでいくと、大平氏に起こったことは、“奇跡” ではなく、あなたもできる(So Can You) というメッセージになっているわけです。

少々のつらいこと、きっと誰にでもあるでしょう。そんな時はこの本を思い出して、ふんばってくれたらいいな。そう思います。

 

だから、あなたも生きぬいて

講談社

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英文版 だから、あなたも生きぬいて

講談社インターナショナル

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So Can I! あきらめません。がんばります。がんばる.gif

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P.S. 本書とは関係ありませんが、大平氏、最近まで、大阪市の助役をされていましたが、よく事情は知りませんが、また議員らに“いじめ”られていた印象で辞任。何かに利用され、都合が悪くなって放り出された感じがして、非常に苦々しく思いました。

まだ40台前半の大平氏、弁護士の方と再婚されたそうですが、人生後半に向けてさらなる活躍を祈らざるを得ません。

 



『だから、あなたも生きぬいて (So Can You) 』大平光代著 英語版:ブレナンジョン訳
講談社: 291P(英語版229P):579円(英語版756円)

 

 


『NEWS DIGEST The Japan Times(ニュースダイジェスト ジャパンタイムズ)』

2007年03月21日 | 英語関連書籍


News Digest The Japan Times.jpg


時事英語学習用の雑誌で、現在創刊から第4号まで出ています。

時事英語の教材として英字新聞、ジャパンタイムズを取ったことのある人なら分かると思いますが、隅々まで読みたいのですが、やはり英語力以前の問題としてボリュームが多すぎて難しいですね。デイリーヨミウリの方ならまだ何とかなるのですが、それでも何ヶ月にも渡って継続するのは相当な努力が必要です。

大学入試でも英字新聞から出題されることが多いので、私もよく見るのですが、長さと話題の点で、なかなか適するものを見つけられません。


新聞を取らずとも、ネット上に時事英語の教材になりそうな素材はあふれていますが、ネットの利用方法は知っていても、ネットで英語力を高めたという話は私の身辺では、まだ少ないですね。ipod などの普及でいずれ変わるかもしれませんが…。やはりできればこうしてCD付きの書籍の形の方が慣れていて使いやすいと思います。


本書はそういう方には最適でしょう。ジャパンタイムズに掲載された記事の中から20本が選ばれています。CDにその記事と簡単な聞き取りテストが入っています。作り方というか編集は非常にわかりやすい方法を採用していますから、使い手の工夫次第でいろいろ応用できると思います。


まずCDに録音された英文記事が左ページに書かれています。右ページにはそれに対して、読んで答える Reading Comprehension と、CDを聞いて答える Listening Comprehension の小テストが3題ずつ付いています。同じページ下にVocabulary があって、全部で7~8の語句解説が載っています。

ページをめくると、左に全訳と事件の背景説明、右側に小テストの解説と Keywordが一つ取り上げられています。一つの記事に対して4ページずつで構成しているわけです。


英字新聞の記事ですから、簡単ではありませんが、早稲田・慶応・上智レベルの私立上位校で、時事の話題が扱われる大学の受験生は夏休みくらいに一つチャレンジしてみると良いでしょう。

ただし語句解説は的を射ているので、学習者には助かるのですが、中レベルの学力の受験生にとっては、その数が少ないので、聞き取ることが難しい上に、そのあとスクリプトを見て、さらに自分で辞書を引く覚悟が必要です。

ですから、そのレベルなら、リスニングはさておき、リーディングのテキストになります。が、すべての話題が時事ですから、ある程度の知識がない場合は、使用は控えた方が良さそうです。他にもたくさん良い教材はありますから。


リスニング教材として使うのか、リーディングとして使うのかを考えて購入されることをお薦めします。また、生徒よりも、塾や学校の先生がさらに内容を厳選して生徒に読ませるには非常に使いやすいと思います。長さが一定で、話題が豊富ですから。私はまずリーディングのテキストとして読ませようと思っています。


CDは繰り返しがまったくありませんが、70分というボリュームです。TOEICで700点以上を目指す方の練習用というのがピッタリでしょうか。


どんな記事が載っているのか、以下に、目次を紹介しておきます。

1. 太陽系の定義を変更

2. 麻原四女が新たな後見人を希望

3. 誘拐された少女、両親になじめず

4. 盗まれたムンクの名画、発見か

5. 差別に苦しむアメリカのイスラム教徒

6. コカ・コーラの工場、カブールで稼動

7. 最後のネアンデルタール人は予想以上に新しかった

8. 次期首相は靖国に行くなと、米議員らが警告

9. レバノンにおけるイスラエルのクラスター爆弾は言語道断

10. 政変の舞台から姿を消すクーデター

11. カリフォルニア州、地球温暖化に関与したとして有力自動車会社を提訴

12. 馬の死にニューヨーク市民が講義

13. 米国の「対テロ戦争」での戦死者、9・11の犠牲者を上回る

14. 小児性愛者、奈良女児殺害で絞首刑

15. モナ・リザは二児の母だった

16. 「マイクロクレジット」のユヌスにノーベル平和賞

17. 国連安保理、北朝鮮制裁を決議

18. アメリカの人口、静かに3億を突破

19. 死刑判決で宗派間の亀裂深まる

20. 中絶をめぐる住民投票の敗北で、宗教右派は失望




興味のある方はジャパンタイムズのHPでCDを試聴できます。

 ⇒ http://bookclub.japantimes.co.jp/act/Detail.do?id=1235

The Japan Times NEWS DIGEST〈3〉

ジャパンタイムズ

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  太郎さんのブログ ⇒ 福禄太郎の書評と時事評論 



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『NEWS DIGEST The Japan Times(ニュースダイジェスト ジャパンタイムズ)』
ジャパンタイムズ:96P:1050円

 

 


『英文法をこわす - 感覚による再構築』 大西泰斗

2007年03月20日 | 英語関連書籍


英文法をこわす.jpg


大西先生の英語の授業は、私も大好きでいつもNHKのテレビ番組を録画して、繰り返し見たものです。一貫して、学校文法に頼らず、感覚で (あてずっぽうというのではなく) ネイティブのハートにせまるためのヒントを探っている印象です。


おそらくその道はとほうもなく険しいはずです。

たとえば、本書の帯に “theは「一つに決まる」 ときに使われる” と書いてありますね。ネイティブの the の感覚はそれだというのですが、今、辞書で the を引けば定冠詞(形容詞)として、あるいは副詞として合計20ほどの意味、用法に分類されています。中には30以上になる辞書もあります。


もちろんネイティブはその用法を分類暗記して使っているのではなく、自然に出てくるわけですが、その感覚を何とか学習者に伝えたいという熱意ですね。もちろん「一つに決まる」というだけでは、伝わりませんので、図を使ったり、さまざまな説明を加えます。

読んでいて英語講師である私は非常に勉強になり、授業で活かせそうなところも多々あるのですが、さらにそれを生徒に伝えるのはかなり厳しいですね。

一つ例をあげますと、固有名詞に the が付く特殊なものとして、新聞や、~一家、川、などがどの文法書にも載っています。通常、“覚えなさい” と用例を分類して教えるのですが、それを批判します。

大西氏は、分類して暗記するのではなく、ネイティブの心の大元にあるその the の感覚を何とか説明しようとするわけです。その考え自体はすばらしいと思います。


例えば新聞のタイムズ紙は 「The Times」 と the が付きますが、雑誌であるタイムは 「Time」 と言います。

ややこしいですね。大西氏の説明を抜粋してみましょう。なぜ新聞に the が付くのかという点です。


この疑問については、雑誌名には the が採用されることはあまりないという事実を考慮すればカタがつくだろう。 the は雑誌には荷が重いのだ。「1つに決まる」 には 「誰もがそれとわかる」 「際立っている」 という語感が付随する。日々創刊され、読者層も限られている雑誌にとって、そうした光り輝く王冠は大仰に過ぎるのだ。名称につく the はこうした実体と名称の間の微妙な駆け引きの上に成り立っている。


カタがつきましたか(笑)?私はこの主張に大変興味があって、実は賛成なのですが、この説明を生徒が納得してくれるとはとても思えないのです。まぁ、わかりにくいところで、しかも一部の抜粋ですから余計複雑に思えるでしょうが…。他はいくつも良い説明があるのですが、やはりイメージを伝えるというのは大変です。


目次は以下の通りですが、難しそうでしょ(笑)。

序章 回帰―機械から感覚へ、規則からイメージへ

第1章
 遍在―感覚は英語を覆う

第2章
 無機質―感覚の通わぬ世界

第3章
 虚構―日本語訳・規則・用法分類の絶望

第4章
 イメージの構築


という訳で、私にとっては、非常に勉強になる尊敬すべき大西氏で、著作もいくつも読んでいますが、生徒には薦められないでいます。大西氏もご自分がやろうとしていることが非常な難題であることを承知していますが、学校文法からの脱却を何としてもやり遂げるという強い覚悟がうかがえます。


第4章序文

あらゆる現象に血の通った感覚は介在する。それをイメージとして汲み取り、手渡す。その単純な動作はあらゆる作業に優先されなければならない。ここに至るまで私の主張してきたことは、ただそれだけのことだ。


とあります。圧巻なのは、その感覚で読み取った英文解釈の例として、最後に、バートランドラッセルの著作から、ある一節を引用し、解説しています。すばらしいです。


というわけで、生徒より英語の先生や、時間的に余裕のある方にお薦めしたい一冊です。つまり学校文法の批判を理解するためには、学校文法を熟知していなければならないわけです。そのレベルに達している生徒は少ないと思いますので、講師が読んで活かせる部分を活かしていくのが最良の本書の利用法だと考えます。

 

英文法をこわす―感覚による再構築

日本放送出版協会

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『英文法をこわす- 感覚による再構築』大西泰斗
日本放送出版協会:231P:966円

 

 


『できる人の勉強法 -短時間で成果をあげる 』 安河内哲也

2007年03月16日 | 英語関連書籍


できる人の勉強法.jpg


本当のことを申し上げると、以前ブログで取り上げましたが、同じ著者の 『安河内の英語魂』 が、残念ながら期待はずれでしたので、彼の本を読むのはためらわれたのですが、アマゾンの教育関連書籍のずっと1位になっており、気になって読んでみました。


もう一冊、『決める、センター英語リスニングトレーニング』はその題名の通りの内容で、まずまず使える一冊だと思います。よろしければレビューをご覧下さい。


そういうわけで、安河内先生の英語本に関しては “一勝一敗” のように考えておりますが、今回は英語に限らず “どんな試験も合格する!” という宣伝文句です(笑)。そうですね、結論を先に申し上げれば、英語魂より良い本だと思います。



目次をご紹介しておきましょう。 


第1章
 「最初の一歩」をどうやって踏み出すか

第2章
 短時間の勉強で実力UPする人が毎日考えていること、やっていること

第3章
 覚えたことを忘れない!超効率的な「暗記法」を教えます

第4章
 時間がない毎日だからこの「学習ツール&方法」で勉強する

第5章
 勉強をはじめたもののうまくいかない…。それはココに原因があります!

第6章
 どうしても「やる気」が起きないときの処方箋とは

第7章
 私が勉強しつづけてわかったこと、「学んだことはいずれ『お金』に変わる」



全体を通して、“不可能はないと信じて、あらゆる空き時間と小道具を利用し、徹底的に工夫をし、常にポジティブにあきらめずに行動しよう” そんな姿勢ですかね。


最初の方に具体的な勉強の工夫がいくつか出てきます。ノート、問題集や参考書の使いかたなどです。他にもコミックや映画、パソコンやDVDやビデオ、ipod の学習への利用方法なども紹介してくれます。“オレはここまでやっている。読者もここまで徹底してやるんだぞ” と鼓舞しているかのようです。


同じ英語のカリスマ教師と呼ばれる、灘高キムタツ先生の『頑張ってるから悩むねん。』 はより大きく人生を語るような感じの一冊ですが、本書は同じポジティブシンキングでも、それを勉強やビジネスに直接活かすということに主眼が置かれています。


先日ご紹介した、ゆうきゆう氏の 『勉強したくない!」を活用する ゆうき式 逆転発想勉強術』 の考え方にも非常に似ています。正直、ゆうきゆう氏は心理学、精神科医という専門家ですから、心理に関する部分を比べると、やはりそちらに軍配を上げざるを得ません。

しかし、本書は安河内先生の個人的なエピソードや、大学受験を越えた資格試験とか社会という話題がありますので、読者によっては、あるいは安河内ファンにはこちらのがアピールするものが多いでしょう。


ビジネス書的な内容ですが、同時にエッセイ風の書き方ですので、非常に読みやすくなっていることは確かです。できれば勉強のコツなどをまとめたりしていただけるとより実用的になったと思います。

できる人の勉強法

中経出版

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P.S.ホリエモン実刑判決でしたね。東大卒で勉強もできるし、発想もポジティブだったと思うのですが…。 

 

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『できる人の勉強法 - 短時間で成果をあげる』 安河内哲也
中経出版:223P:1365円

 

 


『ポール・オースターが朗読する ナショナル・ストーリー・プロジェクト』 (CDブック)

2006年12月10日 | 英語関連書籍


ポールオースターが朗読するナショナルストーリープロジェクト.jpg


ポール・オースターは以前取り上げた、『英語達人読本(斎藤兆史・上岡伸雄)』の中で、現在日本で最も人気のあるアメリカ人作家として紹介されています。

達人読本は “音読で味わう最高の英文” と銘打った英語名文集です。 そのことからも分かるように、ポール・オースター自身の小説もすばらしく、私も好きなのですが、今回はその彼が選んだアメリカの物語を集めた一冊を紹介します。


ナショナル・ストーリー・プロジェクトというのは、彼がホストを務めるラジオ番組で、リスナーに、“自分自身の物語を書いてくれ”と呼びかけ、現実にあったことで、短いストーリー(ラジオで朗読できるように)という条件で募集したものです。

なんと5000を越えるノンフィクションが集まったそうですが、その内容はありとあらゆる年齢、人種、階層のありとあらゆる物語が詰まっており、本当にアメリカを象徴する物語集になりました。


その中から選ばれた優秀な作品180を集め『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』として、新潮社から出されております。(556P:2730円)↓

ナショナル・ストーリー・プロジェクト.jpg


これも良いのですが、556Pというボリュームがあり、さすがにアメリカ、メルティングポットというか、サラダボールというか、本当にいろいろ混入されており、それぞれが人生を語るわけですから、ヘビー過ぎるのです。

正直、ちょっと読むのがつらくなってきます。ポール・オースター自身が似たような感想を漏らしています。原稿を読んでいると、自分のリビングルームにアメリカ中の人々が押し寄せたようだと…。

アメリカ大好きとか研究家には絶好の資料といえるほど楽しいでしょうから、興味のある方はそちらを。


そこで、その中からさらに厳選した作品18を選び、何とポール・オースター自身が朗読した英文集である本書の方を紹介しました。このような経緯ですから、当然、素人の書いた文ということになりますが、忘れられない話ばかりです。

ページ数は多いのですが、字が大きく、英日対訳になっているためです。 しかもこのうちいくつかは、大学入試で出されたものが入っています。こんなところからも大学は英文を取るんですね。

笑い話もあるのですが、人生を変えるということになると、やはり肉親の死や、戦争などを語ったものが多く、さらに厳選されただけあって、どれもこれも印象的です。


当然のことながら、大学入試を意識した本ではありませんが、英語の受験指導にも使ってみたいと感じますし、リスニングの練習にもなります。そして最近特に評判の悪いアメリカですが、その現代アメリカの生の良心の部分に触れることができます(笑)。




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ナショナル・ストーリー・プロジェクト

新潮社

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ポール・オースターが朗読する ナショナル・ストーリー・プロジェクト

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『ポール・オースターが朗読する ナショナル・ストーリー・プロジェクト』ポールオースター
アルク:229P:2730円


『英語達人読本』斎藤兆史 上岡信雄

2006年06月23日 | 英語関連書籍
   
サムライブルー、本当に日本中をブルーにしてしまいましたね。残念です。茫然自失、応援疲れを癒したいところですが、受験生はそうもいっておられません。さぁ気分を変えて勉強!ということで、とびきり楽しく、ただし難し~い一冊を紹介します。

斎藤先生の著書は以前 『 英語達人列伝 』 をご紹介しました。他にも何冊か読んでいますが、どれも受験参考書ではありません。本書も“英語学習用”ではありますが、受験英語以上に高級なものです。

ただ、英文科志望の生徒、早慶上智などの英語難関校や外国語大学などを目指す生徒であれば、ぜひ読んでもらいたい一冊ですし、社会人でも、英文学に興味のある方には、その格好のガイドブックとも言えます。

副題は『音読で味わう最高の英文』となっており、編者のお二人が厳選した“名文集”です。著作権なども問題があり、なかなかこの種の本の出版は難しいそうです。英語教育が『実用』 の名の下にどんどん軽いもの、口語表現中心へと進む中で、非常に貴重な一冊です。

28の英文学の作品から、名文と思われるところの一節を抜粋しています。どれも大体200語前後の短いものですが、その小説(家)の時代背景や、文学的意義、もちろん訳と語・文法解説がついていますので、やる気があれば、何とかなるでしょう。

取り上げている作品をいくつか紹介します。

スコット・フィッツジェラルド 『グレートジャツビー』
ウォルド・エマソン『自然』
アーネスト・ヘミングウェイ『二つの心臓をもつ川』
アガサクリスティー『自伝』
チャールズ・ディケンズ『オリヴァー・トゥイスト』
フレデリック・ダグラス『フレデリック・ダグラスの生涯の物語』
マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』
オスカー・ワイルド『まじめが肝心』
岡倉覚三『茶の本』
ポール・オースター『シティ・オヴ・グラス』

他にも、このブログで取り上げた、新渡戸稲造『 武士道 』、カズオイシグロ『 日の名残り 』、ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドンどん底生活』(本ブログで取り上げたのは『 ビルマの日々 』と『 動物農場 』) や、一昔前の受験の定番、最近復活の気配を感じる バートランドラッセル『幸福論』 などの一節もあります。

残念なのは、CDです。上記の名作を朗読しているのが、ピーター・バラカン氏とクリスティーナ・ラフィン氏。バラカン氏はご存知の方も多いと思いますが、声は暗いですよね。 

ラフィン氏(女性)はそれ以上に暗く、震えているようにも聞こえます。プロのアナウンサーの方がずっと良かったと思うんですが…、何度も繰り返し聞いていると、不思議なもので、その暗さが“名作の重み”かな~と、感じ始めてしまうからおそろしい(笑)。

一応どのレベルか、参考までに、1番最初の作品(年代順に並んでいます)ウォルド・エマソン『自然』の半分だけ、書き出しておきます。

【 Ralph Waldo Emerson , Nature(1836) 】

In the woods, we return to reason and faith. There I feel that nothing can befall me in life, -- no disgrace, no calamity (leaving me my eyes), which nature cannot repair. Standing on the bare ground, -- my head bathed by the blithe air and uplifted into infinite space, -- all mean egotism vanishes. I become a transparent eyeball; I am nothing; I see all; the currents of the Universal Being circulate through me; I am part or parcel of God.

高校生であれば、最強軍団ブラジルを倒すんだ!というくらいの意気込みで、この最高峰の英文と知的格闘をして下さい。

CD付き 英語達人読本

中央公論新社

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『英語達人読本』斎藤兆史 上岡信雄
中央公論新社:156P:1575円 


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わたくしはこちらで、俗世間の格闘(笑)をしております。
にほんブログ村 本ブログへ おや、後ろからお知り合いが。つらいなぁ。
 300点くらいが260点の差に。まだ、はるかかなたです。
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『ぼくの翻訳人生』 工藤幸雄

2006年06月04日 | 英語関連書籍

語学に通じるには人生は短すぎる、としみじみ語っている筆者は大正生まれで、今年80歳。ポーランド語翻訳の第一人者ですが、フランス語、ロシア語、英語などでも翻訳をしているそうです。

とにかく他人の訳が気になってしまい、翻訳物は読めないとまで語っています。確かに私も全くレベルは低いのですが、英語の『 I 』を、あえて『おいら』とか『うち』 とか『あっし』 とか『自分』 などと訳してあるだけで、いったん読むのを中断して、訳者あとがきや、翻訳者の経歴を見たりすることがあります。

本書は体系的な翻訳論ではなく、いわば筆者の自分史で、愚痴を含めて、思うままに“翻訳人生”を語ります。満州での外国語との出会いや、占領下での検閲の思い出、A級戦犯の裁判や記者時代のエピソードも語られます。出版社への小言や若者の語学力に関する苦言もあって、おもしろく読めました。

私の知人にも、塾の英語講師にも、“翻訳” で食っていきたいという人が何人かいますが、そういう人が読むとがっかりするかも知れません。全編通じて、『大変だからやめときなさい』と諭されているような気がするからです。その前に日本語を鍛えなさいと…。

やはり、英語に限らず、外国語に精通しているといえるような人ほど、日本語の重要性を強調しますね。受験参考書などには、“○○で完成!”とよく書いてありますが、範囲の決まった定期テストならともかく、どこまでやっても語学は極められない、というのが真理なのでしょうか。

翻訳家になりたい人だけではなく、翻訳家とはどういう人かということに興味がある方にお薦めです。

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『ぼくの翻訳人生』工藤幸雄 中央公論社:267P:861円
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『誤訳をしないための翻訳英和辞典』 河野一郎

2006年05月23日 | 英語関連書籍

本書は私にとっては貴重な一冊です。これまで英語に関して、何冊もそういう本があったのですが、楽しく読めて、勉強にもなると思います。

私のレベルで申し上げれば、本書を読んで、もう1ランク上の英語を知ることができました。本来はプロの翻訳家を目指すような人のために書かれた本ですが、我々、英語教師にも非常に役立つと思います。実力のある高校生なら、楽しめるとも思います。

珍しい構成で、“辞典”と書いてあり、アルファベット順に、a、an から始まり、you know で終わるのですが、書かれている内容は、辞書のような紋切り型ではなく、すべて普通の言葉であり、参考書以上に読みやすく、“辞典を引く” のではなく “本を読む” 感覚でOKです。

少し前にご紹介した、『英語快読術(行方昭夫著)』 にも、誤訳について、ある章で詳しくふれており、ひどい例をあげながら、なぜ誤訳が生じるかの分析をしていました。本書は “翻訳家” 養成用に書かれていますので、それ以上に徹底して、誤訳について語ります。Tシャツなどにデタラメな英語が書かれているのは、よく笑って見ていたのですが、他にこれほど世の中の翻訳に、ひどい間違いがあふれているとはちっとも知りませんでした。

私にも、自分自身の誤訳というか、カン違いを発見しました。恥を忍んで書きます。

Children should be seen but not heard. 】 

というのは、どういう意味だかご存知でしたか? 私はこの英文は、ずっと 「(大人は)子供から目を離してはいけないが、子どもの言うこと(わがまま) は聞かなくてよい」 つまり「甘やかすな」 という意味だと思っていました。が、筆者によれば、正しくは 『子供は大人の席に出てもよいが、よけいな口を利いてはならず、お行儀よくしているべきだ』 という意味だそうです。

詳しくは書きませんが、やはり外国語の理解には、その背景となる文化もしっかり認識しておく必要があると痛感した次第です。ひょっとしたら、この英文をどこかで間違えて教えてしまった生徒がいるかも知れませんね、ごめんなさい。(古い表現で今ではあまり使われないそうですが…ホッ)

本書には、誤訳の例は山ほど載っているのですが、その中で、生徒たちがもっとも目にする機会が多いのが、CDなどの歌詞カードでしょう。一般的なあやまちの中から、一つご紹介すると、あるCDに付いていたものだそうですが、この英文をどう訳しますか?生徒でも、先生でも、チャレンジしてください。(簡単すぎるという方にはごめんなさい。)

【 If you know what I mean, I don’t ever wanna hear that song again. 】

CDに付いていた誤訳「私の気持ちをわかってちょうだい、その唄を二度と聞きたくないのよ」 

さて、正しい訳は何でしょうか? 何日かしたら、答えを書いておきますね。


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『誤訳をしないための翻訳英和辞典』河野一郎
DHC:335P:1680円



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誤訳をしないための翻訳英和辞典

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『英文快読術』 行方昭夫

2006年05月10日 | 英語関連書籍
 
筆者自身が『快読』などという名前を付けるのは、気恥ずかしいそうです(笑)が、『眼光紙背に徹するまで英文を解読すれば、この上なく大きな喜びを得られると信じ』ていらっしゃるとのことです。どのようにしたら英語を楽しく読めるようになるのか、最後は原書を味わうレベルにまで導こうという一冊です。

英語学習が中途半端になってしまったと感じている、大学生や社会人には最適な一冊ではないでしょうか。私は、小谷野敦氏の著作の中で(書名は失念)本書を薦めていたので、読みました。

まずは、『日本人と英語』という章ではじまり、英語の現状分析をします。例えば大学受験の英語などを改善するように提言しています。一言で申し上げれば、難しすぎるし、どうでも良いことにこだわるため、敬遠する人が多いというものです。

次に快読に向けての『対応策を考える』です。ではどんな読み物や、参考書などを用いれば良いのかを説明します。基礎力アップあるいは、勉強の方向性に関して、具体的に提案をします。易しいものの多読を薦めています。

次は、レベルアップを図ります。『正しい読解のために12のヒント』として、辞書の使い方、イディオムや自動詞他動詞、時制、仮定法など、もっとも注意を払うべきなのに、盲点になりそうなものをあげます。受験勉強と重なる部分がこの章でしょうか。

『英文解釈から翻訳へ』が次に来ます。ここではさらにレベルを上げて、どの程度までの意訳が最適なのかなどを検討します。一つの作品に対し例えば3人の翻訳家の日本語訳を比較します。さらに悪訳、誤訳などを紹介し、なぜそうなるのか、学習が足りないのか、手を抜いたのか、読みが浅いのかなどということも述べられます。

そして最後が『長文を味わう』として、英文が4編出てきます。

非常にためになる本ですが、決して易しくはありませんし、そもそも大学受験から離れても、英語を楽しんでもらいたいというお考えですから、受験生には薦められません。参考書などもたくさん挙げておられますので、英語の先生方の方が良いでしょう。

言語などに関する本を読んでいて、最近感じるのは、新進気鋭の学者の本も悪くないのですが、戦前派の書かれた著作の方に魅力を感じます。何となく歴史を踏まえている重みを感じてしまうのでしょうか。筆者の行方氏は1931年生まれだそうです。

そして、高校時代にしっかり解釈や作文、文法をやっておけば、発信型の英語、会話などになった時、大きく貢献すると主張され、その例として、クラスメートの国連の“明石康”氏と外務省の“小和田恒”氏を挙げています。二人とも地方の高校出身のため、大学入学時はそれほど英会話ができなかったが、またたく間に達人になったと。

日本を代表する国際人お二人の“できなかった”時代をご存知だなんて、歴史、感じますよね(笑)。

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英文快読術

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