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【読売新聞コラム】 “クレーム対応上手は「文句をつける」のも上手い” 吉野秀

2007年10月22日 | コラム・備忘録


 
当教室の吉野秀先生のコラムが 読売新聞 に掲載されましたので、ご紹介しましょう。


“クレーム対応上手は「文句をつける」のも上手い” 



 世間では多かれ少なかれ、トラブルやアクシデントは起こりがち。ちょっとしたミスでも対応を一つ誤ると、たちまち火の手は大きくなる。最近は学校へ無理難題を吹っかけるモンスター・ペアレント、ネット上で特定人物を攻撃するビット・ヒッターなる輩も登場。いちゃもんや言いがかり、ケチつけの広がりで深刻なトラブル社会へ突入した感が強い。

 トラ(虎)とブルドッグ(犬)がぶつかった分には事故で済むが、トラックとブルドーザーの衝突ではまぎれもなく事件。世知辛いと言うのは簡単だが、こうした現実に回避・防衛策が不可欠になったのは間違いないだろう。

 ビジネス人にとって、問題解決能力の習得と向上は従来の課題。いちゃもん社会の進行で、さらにその必要性と意義は密度を濃くしている。危機管理の一環として、マネージャー・クラスに強く求められるもので、「平時の●●君より、緊急・非常時の▼▼君」と大手総合商社のトップは話す。

 普段そつなく仕事をこなす人材(もちろん悪いわけではないが)を傍目に、混乱した場面などのここぞという時に十分に能力を発揮し、会社へ貢献していくタイプを評価する点をこの発言は意味する。

トラブル対応・処理は重要な柱で、遅い・下手・逃げちまう族に一流と呼ばれる仕事人はまずいない。抗議や苦情、申し入れを的確で迅速に処理できる人は、大半のケースで「文句上手」である。腹が立っている時はつい感情が先走り、延々と怒りの声をぶつけたり、相手の言葉尻をつかまえて不毛なやりとりに陥りがち。

 ひどい場合、論点からずれた説教をかますツワモノさえいる。蒙った被害に対して、文句上手は少しでも早く回復・代替させることを決してぶらさずに、相手がどう出てこようと打ち返せるシナリオを持っている。配慮こそするが遠慮はしない毅然とした態度を貫く。相手にしてみれば、冷静に突き進んで来られるので納得せざるを得ないわけだ。

 文句上手はクレーム対応・処理にこのノウハウを最大限にいかす。抗議者が何を今求め、いつまでに・誰に・何を・どうして欲しいかを最短距離でつかみ、ここでも建設的なシナリオを編み上げる。

 前出の商社トップは「クレーム対応上手は相手の不満や不安、不便をすぐに引き出す術に長けている。ビジネスの基本も同じで、これらを解消するモノ・サービスを商材にすれば失敗はないはず」と分析する。

 クレームをてきぱきとかたづけ、それを仕事のヒントや糧に変える――、一見したたかだが、たくましさと創造性を持ち合わせてこそ一流への道が開ける。面倒くさい、やっかい、無理難題と端から決め付けた瞬間にクレーマーだけではなく、冷徹な上司など悪魔たちが再びささやき始める……。


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『初秋』 ロバート・B・パーカー / 菊池光=訳

2007年10月19日 | 小説


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北方謙三氏の 『不良の木』 を昨年の秋にブログでご紹介しました。確かに大変おもしろかったのですが、“もう少し、主人公が、スーパーマン的ではないハードボイルドの作品でお薦めがありませんか” と言って、教えていただいた一冊です。(やまちゃんさん、ありがとうございました)


さっそく購入して、読んで、感動し、何としても昨秋の間に記事をUPしようと決めていたのに、ついつい今年の秋になってしまいました。別にいつご紹介しても良い、すばらしい作品だと思うのですが、結局、去年の秋と今年の秋、二度読みました(笑)。やっぱり良かったです。


主人公は私立探偵のスペンサーという男です。あるお金持ちの婦人から、夫が連れ去ってしまった15歳になる自分の息子を取り返して欲しいと依頼されるところから物語が始まります。

仕事を引き受け、難なく子どもをつれてもどりましたが、子どもの様子などから、どうも複雑な事情がありそうだとわかります。


しばらくして、同じ母親から、今度は父親が子どもを強引に連れ返そうとするので、住み込みで二人を守って欲しいと懇願され、その仕事も引き受けます。二人と同居してみて、その子どもは結局は、父親からも母親からもまったく愛されておらず、ただの取引の材料に使われていることがわかります。

すでにその時、その15歳の少年は、他人はもちろん、親や周囲の人間、そして自分の将来にすらまったく興味を示さず、めったに自分の部屋からも出てこないような生活を送っていました。

周囲の大人たちによってそんな風になってしまった少年を、スペンサーが立ち直らせようとする物語です。

裏の社会と通じつつ、悪事を働き金儲けに明け暮れる父親と、子どもを放っておいて自分の安易な欲望だけを満たそうとする母親。あることをきっかけに、まず、その二人から少年を引き離し、スペンサーは少年と二人で、自分の恋人の持っている別荘で生活を始めます。


そこから展開されるスペンサー流の教育が非常に興味深く、また少年が徐々に心を開き自立していこうとする姿がすがすがしいです。ハードボイルドらしく、その途中には、少年を連れて、殺し屋と戦ったり、盗みに入ったりするのですが、どれも印象的なできごとで、荒唐無稽なところはまったくなく、ドキドキしながら読めると思います。

多くの人にお薦めできる一冊だと思います。



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初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
ロバート・B. パーカー,菊池 光,ロバート・B.パーカー
早川書房

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『悪の対話術』 福田和也

2007年10月11日 | 新書教養


悪の対話術.jpg


さまざまな場面での会話、言葉遣いなど、自分はいつもどのくらい気を配っているでしょうか。あらためて聞かれるとどう答えたら良いのでしょうか。一応、言葉には気を使っているつもりでもあるようで、気軽に話すことも始終ありますから。

もちろん面接試験や何かのスピーチをしたり、原稿を書いたりする時などは、誰でも最大限に言葉遣いに慎重になるでしょうが、本書では常にその気持ちを維持すべきだと主張します。

私も言葉の大切さはどれだけ強調してもし過ぎることはないと信じておりますが、筆者のように、普段の会話から、それを意識的に、友人はもちろん夫婦や家族であっても相手の気持ちを推し測り、言葉を選んで話すということは、そう簡単に実践できるものではないでしょう。


言葉や会話が生き方そのものだというレベルにまで意識を高めているとでも申し上げれば良いのでしょうか。

ただし、単に “人の気分を害さないために” 言葉に気を付けようとか、口は災いの元だからね、というような生やさしいことではありません。


題名が示すとおり、意図的に “悪” であっても、すべての会話を意識して行うべきであるという意見です。ですからお世辞の使い方から、悪口の言い方、挨拶の意味、うわさの流し方などなど、すべて会話には常に意識を集中し緊張して当たれと説いています。こういう主張は初めて耳にしました。


目次をご紹介しましょう。


対話とその悪

お世辞について

悪口について

虚偽と韜晦

礼儀と挨拶

敬語について

社交と立場

紹介と自己

多弁と無言

観察と刺激

焦りと緊張

話題について

結び―言葉の快と悪と



人と真正面から向き合えない、携帯電話を手放せない若者たちに対しても対話の意味、そして人生における対話の意味を説きます。悪口、お世辞などの実例が載っていて楽しく読めますが、賛同できるかどうか、読者によってかなり意見が分かれるかもしれません。

私も言葉は大切だと思っていても、いつも長電話をするとか、おしゃべりが大好きという性質ではないので、正直、会話がついつい面倒くさいと思うことがあります。が、それを筆者はたしなめます。みなさんはどうなんでしょう。


ひとつ、挨拶に関して、私がいつも生徒たちに言っているのと同じような一節があってびっくりしました。この部分は思わずひざを打ちました。

『男の子であれば、挨拶がきちんとできて、時間を守ればそれだけで何とか生きてゆける』

というものですが、どうでしょう(笑)。


P.S. このブログでは以前に、福田氏の 『魂の昭和史』 と 『総理の値打ち』 を取り上げました。よろしければご覧下さい。それにしても氏の著作はどれも刺激的です。



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悪の対話術 (講談社現代新書)
福田 和也
講談社

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『北朝鮮を知りすぎた医者:脱北難民支援記』 ノルベルトフォラツェン

2007年10月08日 | 外国関連


フォラツェン.jpg


韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領と北朝鮮の金正日総書記が首脳会談を行いましたね。金大中前大統領の訪朝時のような、“歴史的” というほどのインパクトはありませんが、それでも気になります。

どうも、報道を見ていますと、相変わらず外交交渉は北朝鮮ペースで進んだ印象で、韓国は大規模な経済援助などを約束したようです。日本から見ているとなかなか理解できないのですが、韓国人拉致については話題にもならないそうですね。


本書はそうした日本人にはわかりにくい韓国の政治状況を含め、朝鮮半島全体を知る参考になると思います。

北朝鮮国民の窮状を訴えた前著に続き、それを支援する命がけの活動などを紹介し、いっそう国際世論を盛り上げ、中国、韓国、日本の政府にプレッシャーをかけたいという意図で書かれています。

氏がどのように北朝鮮内の最新情報を得ているかということなども詳らかにされています。 

フォラツェン氏らの活動が徐々に実を結び効果を上げたため、新しい問題が出てきているというのです。それはNGOなどの援助がない脱北者たちが、簡単に中国、韓国に行けると思い込み、周到な準備もせずに大使館などに抗議をし、次々と捕らえられているというのです。

また、規模が大きくなったために脱北者に北の諜報員が紛れ込んでいるケースも増えてきた。その上脱北に関する情報提供に対する賞金を中国が大幅に吊り上げてしまって、一般人からの通報が激増し、警官に捕らえられる脱北者が急増しているのだそうです。

捕まったら最後、送り返され処刑を覚悟しなければならないことは言うまでもありません。 

また、太陽政策をとってきた金大中前韓国大統領を厳しく批判しています。太陽政策は単純な人道主義ではなく、金でノーベル平和賞を買い、北に途方もない額の資金を提供して独裁国家を援助したという見方です。

もしそうしたことが真相だとすれば、フォラツェン氏は、韓国政府にとっては邪魔な存在そのものですね。氏は中国にはすでに入国できず、韓国では始終様々な組織につけまわされ、警官と殴り合いになったり、家族まで危険にさらしながら活動しています。

それにもかかわらず、本書では、中国に北朝鮮との国境を開かせ、金正日体制を倒すまで戦うことを何度も言明しています。この本の印税もきっと活動に使われるはずです。

前著は、以前取り上げました。よろしければご覧下さい。

 ⇒ 『北朝鮮を知りすぎた医者




P.S. 以前にも書きましたが、実は、北朝鮮から帰国された5人の拉致被害者の中のお一人と、私の教え子のお母さんは幼なじみでした。

そのお母さんは、北朝鮮が拉致を認め、ご自分の友人の名がテレビで告げられた時、震えていたそうです。5人の帰国後、すぐに連絡を取り、何度かお会いになり、頻繁に電話もされていたそうですが、私の教え子も『受験勉強頑張って』と励まされ、プレゼントまでいただいたそうです。

ご自分の筆舌に尽くしがたい多難を嘆くどころか、何不自由ない友人の子どもにまで気配りをするということに深く感動しました。そういう善良な市民の拉致をあいまいにしようとする勢力が北朝鮮以外にもありそうで、とても許せません。



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北朝鮮を知りすぎた医者 脱北難民支援記
ノルベルト・フォラツェン,平野 卿子
草思社

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『ゆとり教育から個性浪費社会へ』 岩木秀夫

2007年10月01日 | 教育関連書籍


ゆとり教育から個性消費ミ会へ.jpg


文部科学大臣をころころ代えてしまった小泉元首相から、教育問題にやたら熱心な安倍前首相、そして、現在、福田首相の誕生となりましたね。いったいどういう教育観をお持ちなのでしょうか。

昨日、所信表明演説をしたそうですが…、今日にでも原稿をチェックしてみましょう。


いずれにしろ、新聞報道などを追っていますと、ここのところずっと 「ゆとり教育」 と決別する方向性は確かですね。ただし教育予算が増えるのは不明ですね。

さて、本書は、易しい内容とは申し上げられませんが、教育問題に関心のある方には、大変示唆に富む一冊だと思います。

文部科学省が打ち出す指導要領をはじめとするさまざまな施策、それらが現実の社会の流れの中でどう生まれてきたか、本当にこれからの社会は今の教育政策でよいのかなどを検討しています。

正直、“個性浪費” という抽象的な言葉に魅力を感じ、気軽に手にとってみたものの、ポストモダンなどの現代思想というか、社会学とのかかわりで教育や世間が論じられており、意表をつかれました。ところどころ整理するために読み返さなければなりませんでしたが、こういう論点は私には非常に新鮮に感じられ、おもしろかったです。


個性浪費社会という言葉を説明するのはとても難しいのですが、社会のマクドナルド化(アメリカの社会学者の造語)が進み、皆が感情を抑えて、マニュアル通りの対応をするようになり、顧客の側の対応までも計算され尽くしています。


そういう社会では、人をかつてのように地位や所得で判断するのではなく、表層的な個性に囚われて判断するようになるわけです。つまり、本来豊かな人間性を表すはずだった 『個性』 が今や、競争に残るための道具と化し、アイドルの低年齢化などはその顕著な例である。 そんな感じでしょうか。

そういう次々と新しい個性を生み出しては、消えていく社会のことを個性浪費社会といっているのだと思います。その変貌し続ける社会と教育行政を論じています。

目次を紹介しておきます。


第1章 世紀末学力論争の構図(日本教育史の流れからみた「ゆとり改革」;これまでの能力主義を回復すべきなのか―近代能力主義派の議論 ほか)

第2章
 近代能力主義(モダン・メリットクラシー)の歴史としくみ(学校と社会の接続のしかた;初めから全国標準化された日本の学校系統 ほか)

第3章
 バブルと「新たなこころの発見」―ゆとり(脱近代カリキュラム)改革の経過(臨教審(一九八四~八七年)の逆ベクトル改革
教育的価値のコペルニクス的転換 ほか)

第4章
 文部行政の宮廷革命―ゆとり改革と脱近代能力主義の政治力学(すべてのはじまりの臨教審(一九八四~八七年)
バブル教育政策を支えたポストモダニズム官僚・学者たち ほか)

第5章
 脱近代能力主義(ポストモダン・メリットクラシー)の近未来(資本主義のフロンティア―地理的外延から「こころ」へ;国際能力主義(グローバル・メリットクラシー)の成長 ほか)


 “ゆとり教育” なるものに私も反対ですし、多くの論者がさまざまな観点から分析を加えて、教育行政の転換を求めてきました。拙ブログでもいくつもそういう書籍を取り上げました。

本書の筆者は、さらにもう一歩引いた視点から、なぜみなが反対するような文部行政がまかり通ってしまうのかというところまで掘り下げています。

私は教育学部の出身ではありませんから、教育史的な流れ、社会学的分析がよけいに新鮮で、何回か読み返しました。読みやすい本ではないので、生徒などに薦めるかどうかはさておき、個人としてはさらに岩木氏の著作を読んでみたいと思いました。



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ゆとり教育から個性浪費社会へ
岩木 秀夫
筑摩書房

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