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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『国見発:サッカーで人を育てる』 小嶺忠敏

2006年09月13日 | サッカー関連

ヘラクレスにいた平山選手が、帰国し、FC東京に入団しました。ヘラクレスともめているというような情報もあります。彼は、『学業を続ける』 と言って退団したらしいのですが、筑波大学は中退していたと報道されています。


平山選手は、あの国見高校の出身です。ご存知のように、国見は数多くのOBを日本代表クラスに送り出しているサッカーの強豪校です。アテネオリンピックでも、平山の他、大久保、徳永といずれも個性のあるその三選手が国見出身です。本書には、サッカーにうとい私でさえ、名前の知っている選手が他に何人か出てきました。

小嶺氏はかつて国見サッカー部の監督、現在は総監督であると同時に、国見の校長先生でもあります。本書は小嶺氏が、これまで培ってきたサッカー論、教育論を展開します。

長崎の小さな町の県立高校でしかない国見が、タレントの集まる都会の私立高校やJリーグのユースチームと互角以上に戦い、タイトルを総なめするような強豪校になっていく過程がよくわかります。すべては指導者、小嶺氏の意気込みからはじまります。  

小嶺先生は本当に厳しく緻密な指導をします。練習を見学に来るファンに、選手がいすを勧めたりするそうです。選手だけでなく、多くの指導者を育成することが氏の大きな目標で、そちらも成果が出ているようです。    

マスコミから批判されることの多かった“時代遅れの国見サッカー”は、実は、今いるだけの選手を最大限に活かす指導の結果でした。戦術に選手を合わせるのではなく、選手の力を生かせる戦術を考えた結果らしいのですが、それで勝ってしまうのですからすごいですね。

お正月やお盆休みもないという、ハードな練習だけではありません。服装の乱れや遅刻、あいさつの仕方にも厳しく注意します。そういえば国見の選手はいまだに丸坊主でしたっけ。

もちろん部活動だけでなく、自分の授業(社会)にも普段から全力を尽くし、普通の監督とは目指すべきところがいっそう高いというか、深いのだろうという印象を受けました。校長先生自ら、社会の授業にも全力投球するわけですから、他の先生にも刺激になるはずです。

とにかく書名からも察せられるように、サッカーを教えるというより、『人』 を育てるということが基本になっています。『 オシムの言葉 』 もすばらしい一冊でしたが、本書はサッカーファンならずとも、教育関係者にはぜひお読みいただきたい一冊です。



国見発 サッカーで「人」を育てる

日本放送出版協会

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『オシムの言葉』 木村元彦

2006年09月05日 | サッカー関連
 
困りました。いったいどうご紹介すれば、本書を手にとってもらえるのでしょうか。実にすばらしい一冊で、生徒たちにもぜひ読んで欲しいのですが。

これまで、元日本代表監督トルシエを痛烈に批判した『 山本昌邦備忘録 』、前監督ジーコの思いを伝えた『 ジーコ、セレソンに自由を 』 も取り上げ、サッカーはあまり詳しくないのですが、それでもいつの間にか、サッカー関連で、ブログにのせた本は、小説なども入れますと10冊近くになってしまいました。

それぞれみな面白かったのですが、本書が、群を抜いて、超おすすめの感動ドキュメンタリーです。(小学生の読書感想文みたいですみません) 実際、“読書感想文”の全国コンクールの課題図書にもなっているそうです。いろいろな、興味深いエピソードをご紹介しようと思いましたが、ほとんどすべて、Wikipedia に出てしまっています。もう本当に困ります(笑)。


とにかく、“イビチャ・オシム”のサッカー人生には、祖国ユーゴの分裂、民族間の戦争が大きな影を落とし、そのさなかの代表監督ですから、そもそもストーリーの大きさ、重さが違います。戦争、家族、祖国、そしてサッカー愛。


氏は、先にご紹介しました、『 戦争広告代理店 』 で、銃撃の標的にされた街、サラエボの出身です。自ら率いる、代表チームには祖国に銃を向けている国の選手もいます。必死にチームをまとめ、勝たせようとしますが、マスコミ、戦況など、まわりの状況は悪化の一途をたどります。

時に、インタビューで、マスコミにまともにとりあわないのは、彼がマスコミの醜さを痛切に感じているからでしょう。 “彼らは戦争だって始められる”、 当然、祖国を戦争に駆り立てたこと、代表チームをばらばらにしてしまったことへの不信感です。


書名は、オシムの“言葉”となっていますが、彼の言葉が人を動かすのも当然でしょう。彼の国では、ユーモアは知性と同義だそうですが、彼は数ヶ国語を話し、数学の大学教授になれるほど、抜群の知性の持ち主です。

しかも最新のサッカーのスタイルを常に研究しています。注目選手であろうとなかろうと、自分がチームに必要だと信ずる選手を集め、すばらしい結果を出し続けている監督なのです。小野選手などを招集しない理由もわかったような気がします。選手に向ける目は非常に厳しく、かつ暖かい。


まことに失礼ながら、オシム氏が次期日本代表監督と聞いた時は、高齢だという点がひとつ。外国人ばかりだなというのがもうひとつの理由で、ジーコから格落ちだと、しろうとは考えていたのですが、とんでもない。


本書を読んでいれば、それこそ三顧の礼をもってしても、ぜひ日本に迎え入れたい大監督でした。たとえ、すぐに結果は出ずとも、彼が育てた、日本代表チームを絶対見てみたい。そんな気にさせる一冊でした。


http://tokkun.net/jump.htm 



オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える

集英社インターナショナル

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■■ オシムに乾杯! ■■
要するに、その思いを伝えたかったのですが、力が入って“読書感想文”になってしまいました。引き続き精進いたしますので、まぁ大目に見ようの  クリック、いただけるとうれしいです→ にほんブログ村 本ブログ   人気blogランキングへ 

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『ジーコ セレソンに自由を』 増島みどり

2006年06月28日 | サッカー関連
 
日本サッカー界では、すでに4年後に向けて、新監督“オシム”という名前があがっています。結果がすべての世界ですから、期待を裏切ったジーコ監督の評価が低いのは仕方ないですね。中田選手は、試合終了後寝転がっていたのが、かなり批判もされてしまいました。

ジーコが現鹿島アントラーズ、かつての住友金属に入団したのが1990年ですから、日本に来てもう16年。どれほどジーコが親日家かということは、こちらに出ています。⇒ジーコ(wikipedia)

本書はジーコの監督就任時から、筆者が節目節目におこなったジーコへのインタビューと、最後には、川渕キャプテン、中田選手のジーコに関するインタビューが収録されています。題にある 『セレソン』、これはポルトガル語で国の“代表選手”のことだそうです。

鹿島時代に手取り足取り選手を指導していたはずのジーコが、代表監督になると、細かい指示をせず、選手は戸惑ったそうです。ジーコにとって選ばれしセレソンとはそういうもの。自己管理を完璧にして、国のために戦うのだと。セレソンに対する敬意がそのまま、日本代表選手に対する指導方法に表れているのがわかります。

トルシエが選手に体をぶつけ、怒鳴り散らし、彼らを一人前扱いしなかったのとは対照的です。トルシエが海外のマスコミに流した、中田に対するコメントです。

『ジダンはサッカーを心から愛している。公園でもし出会ってサッカーをやろうと誘えば、すぐに何時間だって楽しむだろう。しかし中田は違う。もし中田に公園でサッカーをやろうと誘ったら、彼はまずマネージメント会社に電話するはずだ。いくらでやっていいですかと』

筆者はここらあたりが、中田に代表辞退を決意させた遠因ではないかと推察します。トルシエは、“リーダーはいらない”と、他の選手にも厳しい人格批判を浴びせました。以前『山本昌邦備忘録』でも紹介しました。

ジーコは選手を信じきっています。自分の選手を見る目にも自信を持っていますから、少しのミスでは選手を入れ替えません。見ていてイライラするほど、同じ選手にこだわりますよね。選手は自分を信頼してくれたジーコのために勝ちたいと思っているようですが…。

本書を読むまでは、ジーコと長島元巨人監督がダブりました。つまり名選手、必ずしも名監督にあらずのような。長島氏は圧倒的なファンの支持がありながら、なかなか結果が出せませんでしたが、采配に対して激しい批判は聞かれませんでしたね。マスコミも含めて。取り上げられるときも、監督としての能力よりもキャラクター。個人的に長島は大好きでしたが、監督としてはやはり…。彼の言葉はディフィカルトで、イージーにアンダスタンドできませんでした(笑)。

ジーコは違います。サッカーや日本代表に対する考えは明確に述べられています。中田選手ははっきりジーコで無ければ代表辞退を明言していました。自分を殺して戦うトルシエ式のサッカーはできないと。セレソンを最大限尊重するジーコの考え方と、中田のサッカー観は似ているわけです。

中田はジーコを完全に信頼していますが、トルシエ式のディフェンスも、日本にあっていると高く評価していて、それをかえてしまったのは、残念だとも語っています。結果、残念なことにジーコの理想に近いパフォーマンスをするには、中田以外は、力も経験も足りなかったのだなという印象を受けます。

ワールドカップの結果がわかってしまった今、本書を読むのは何とも悲しいですね。とにかく、ジーコは金銭抜きでも日本のサッカーに貢献したかった。ジーコのためにも勝たせたかったなぁ、と強く思ったしだいです。


http://tokkun.net/jump.htm


ジーコ セレソンに自由を

講談社

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『ジーコ セレソンに自由を』 増島みどり
講談社:270P:1785円


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『銀河のワールドカップ』 川端裕人

2006年06月18日 | サッカー関連
 

先日ご紹介した『もう一度キックオフ(風野潮)』 も子どもを主人公にサッカーを扱った、すばらしい一冊でしたが、こちらも負けていません。というか、前者は子ども向け、絵も挿入されていますが、本書は子どもも読めますが、400ページ近い長編です。川端氏の本をはじめて読みました。

主人公は、元Jリーガーの花島勝、フリーターのような生活をしていた彼が、ひょんなことから、少年サッカーチームのコーチを引き受けます。花島の純粋なサッカー愛と、逆に、子どもたちの大人びた、そして豊かな個性がいつのまにかシンクロし、登場人物たちがみな成長する姿がすがすがしいです。

日本一、世界一、さらに…大きな夢を追う物語で、今からでもドイツの日本チームに届けたいくらいです。ブラジル人だって、足は二本しかないし、どこでやってもサッカーボールは丸いんだ!と。(笑)

私はサッカー自体、あまり詳しくないのですが、少年サッカーの実態、“親”応援団のすさまじさは知り尽くしております(笑)。お父さんコーチの情熱や知識欲のすごさも。 “銀河” といえば、レアルマドリードだとお気付きになるはずです。

作家というのは、もちろん観察眼が人並みはずれて鋭いのですね。少年サッカーの実態だけでなく、他のエピソードを見ても、筆者が、よく観察、研究、取材していることがうかがえます(プロだから当然か)。素人にも、サッカーファン(あるいはマニアまで)にも楽しめる一冊になっていると思います。

その上、『サッカーとは何か』 『自分はサッカーが好きなのか』 『強いとは』 などという哲学的な問いかけが出てくるのが大変気に入りました。それが気になって、略歴を見てみますと、ピンポーン!筆者は東大卒で“科学哲学”専攻だそうです。

最近は、仲正昌樹氏、小谷野敦氏、赤川学氏など、60年代生まれの東大卒の学者が、個性的な良い本を書いているなぁと、常々感じていましたが、作家のカテゴリーでもすばらしい人材を輩出するとは…。

ちょっと褒めすぎです(笑)から、難点を2つ。

1. あまり必然性があるとは思われない、性描写が、わずかながらところどころにあり、塾講師としては(親としても)子どもに勧めづらい。(こんなこと書くと逆に宣伝になる(笑))

2. “鳥肌が立つ”という表現は、誤用の代表格です。筆者は“感動する”という意味で何回か使っていると思います。“感動”の文学的表現として、許容範囲なのか、あえて承知で使っているのでしょうか。塾講師としてはお聞きしてみたいところです。(鳥肌という表現:新聞のサイトにも出ていました。http://blogs.yomiuri.co.jp/wcup06/2006/07/post_e93b.html

もちろん全体的には楽しめる良書であると思いますし、今後に期待を抱かせる作家という気がします。

ジーコジャパンがんばれ!

P.S. 作家、サッカーで思い出したのですが、以前、川柳を作りました。
 『作家らが、なれないサッカー、擦過(さっか)傷』  失礼しました。


http://tokkun.net/jump.htm
銀河のワールドカップ

集英社

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『銀河のワールドカップ』川端裕人
集英社:378P:1995円

昨日の記事で、にほんブログ村 本ブログへ の点数がぐっと上がりました。本当にありがたいものです。心よりお礼申し上げます。この記事にはあと2つ付けさせていただきます。夢は大きく3冠王!な~んて。あっ、調子に乗りすぎました(笑)。


すみません。今後とも、よろしくお願い申し上げます。



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『もう一度キックオフ』 風野潮・作 真咲ナオ・絵

2006年06月09日 | サッカー関連


4年に一度のワールドカップサッカー! 今日はやはりサッカーの本。ここまでご紹介した、サッカー関連の本は、

サッカー株式会社』 クレイグマクギル、 『決戦前夜』 金子達仁、 『山本昌邦備忘録』 山本昌邦、 『サッカーの国際政治学』 小倉純二 です。

もうストックがないだろうなぁと思っていたのに、すばらしい一冊が残っていてうれしくなりました。本書です。子ども向けですがぜひお読み下さい。

主人公のハルは、サッカーが大好き。ところが、“女はダメ”と中学のサッカー部で門前払いをくってしまいます。“あ~サッカーしたい、サッカーしたいー”と叫んでいた、ある日突然、彼女の身体に、事故で植物状態になった元Jリーガー、友也が乗り移ります。

一度は断られたサッカー部も、ハルのケタ違いのプレーを見て入部を許可します。サッカーをしている時は幸せですが、実はハルは兄を亡くしており、母子二人でくらしているのですが、母は兄のことが忘れられず、暗い私生活を余儀なくされていました。

しかし、自分に同居する友也のサッカースピリットに刺激され、少しずつ希望がよみがえります。試合に出始めたハルは、大活躍。ゲームシーンは、臨場感にあふれ、“パス!シュート”と心で叫びたくなります。

また、プレー場面とは対照的に、身体を共有するハルと友也の毎日はドタバタの連続ですが、徐々に心が和らいでいく過程がほほえましいのです。最後はお楽しみです。

二人の運命に最後までひきつけられ、切なく、楽しく、そんなストーリーでした。生徒に薦めて、読んでくれた人は『先生、こういうの他にもないですか?』 と言ってくれて好評でした。



http://tokkun.net/jump.htm


『もう一度キックオフ』風野潮作 真咲ナオ絵
岩崎書店:173P:1260円


p.s. そういえばサッカー好きな生徒が突然、『先生、この記事爆笑だよ』 と言って、朝鮮日報のこのコラムを教えてくれました。興味のある方はどうぞ。

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/06/02/20060602000055.html

もう一度キックオフ

岩崎書店

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 ワールドカップ サッカー  『もう一度キックオフ風野潮  真咲ナオ 


『サッカー株式会社』 クレイグマクギル 著 田邊雅之 訳

2006年06月06日 | サッカー関連
 
サッカー界がどれほど汚れているかを告発した、衝撃的な一冊です。

さて、ワールドカップが始まります。ジーコ監督率いる日本代表、初戦は12日の夜10時です。ところがです!当教室がある地域の中学、高校は、なんとその12日から中間テストですよ!何か、学校側の意図を感じますか(笑)?

塾講師としても、サッカーは応援してもらいたいけれど、試験勉強の手抜きは許さない。で、どうせサッカー見るなら、社会科で時事問題が出ますので知識を吸収。

ということで、生徒諸君!例えば『ドイツワールドカップ開幕、では、ドイツの首都は?』そうベルリンですね。簡単、簡単、では、ドイツ初の女性首相の名前は?

さらに『日本が対戦する、オーストラリア、クロアチア、ブラジルの首都を答えなさい』とか。これができるようなってはじめて、当教室では観戦資格あり!ですね(笑)。

(そこで、当教室の社会科の先生のブログ『 入試に出る!時事ネタ日記 』に、本当は塾外に出さない、次回中間テスト対策用の時事問題プリントを、無理を言って出してもらいました。この記事を読んでくれている生徒・学生さんがいたら、必ずチェックしておいてね)

さて、サッカーというものに関して、非常に勉強になった一冊です。世界のサッカー界で起こっていること、すさまじいビジネスの実態を暴露し、サッカーをもう一度純粋なファンの手に取り戻したいという意図で書かれています。

裏の世界を理解すれば、犠牲になっているのはサッカーファンだとわかり、ファンよ怒れ!という一冊です。私のような、にわかサッカーファンが、いかにナイーブかよく分かります。

世界のサッカービジネスは、一口で言えば汚い、というのが率直な感想ですが、それが言い過ぎであれば、“金のために命がけ”、です。ピッチの外の戦いは試合以上に熾烈です。日本と本場の国々では、あまりにもサッカー文化が違いすぎるんじゃないでしょうか。

それが、日本の選手が海外で活躍できない理由の一つと思えるほどです。著者にとって身近なイングランドのクラブを中心に、世界中のサッカーシーンについても実に丁寧に説明してくれます。

選手、監督、審判、クラブ、オーナー、FIFAなどサッカー界の全体像が何となく見えました。本当に際限のないビジネスワールドであり、サッカーを見る目が変わってしまいました。

大物選手の移籍問題も、裏はクラブのオーナー選挙のためだろうと予想ができるようになりました。私は前回のワールドカップでやっと相手チームの選手のユニホームを引っ張るのを見ることに慣れた程度でした(笑)ので、非常に衝撃的でした。お薦めです。

http://tokkun.net/jump.htm


『サッカー株式会社』クレイグマクギル著 田邊雅之訳
文藝春秋:295P:2050円

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サッカー株式会社

文藝春秋

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サッカーワールドカップ  ジーコ監督日本代表  ドイツ  ブログ

『決戦前夜』 金子達仁

2006年05月31日 | サッカー関連

前回大会に関しては、『山本昌邦備忘録』 をご紹介しました。トルシエ率いる日本代表は、開催国でしたから、予選はありません。今回の予選も終わってみれば、もっとも早くワールドカップ出場を決めるなど、順調でした。大変だったのはやはり初出場のフランス大会。

もう8年も前のことです(ドーハの悲劇は12年も前!)。現在の小中学生はほとんど知らないできごとで、今でこそ、“出て当たり前”のワールドカップですが、当時の日本の力では本大会までの道のりは、非常に長く険しいものでした。その期間およそ一年。特に広いアジア地区では移動距離だけでも数万キロにも及ぶ過酷な戦いです。

ワールドカップに初出場できるかどうかは、当時、国民的関心事でしたね。本書はその過酷な試練を乗り越え、出場を果たしたフランス大会のアジア地区最終予選の模様を、金子達仁氏が試合と同時進行する形で描きだしています。

本書と、その前の“マイアミの奇跡(日本がオリンピックでブラジルに勝利)”とその後のチームの亀裂を描いた、同じ金子氏の『28年目のハーフタイム』。そちらも、お薦めですが、ワールドカップということであえて本書を紹介します。歴史の資料ですね。

国立競技場で行われた初戦のウズベキスタン戦を6対3と大勝しながらも加茂周監督(当時)の采配に不安を感じる筆者の予感は、続く対UAE戦での引き分け、対韓国戦での逆転負けで現実のものとなりました。自信を失ったままカザフスタンへ乗り込んだ日本チームは、ロスタイムでまさかの同点ゴールを決められ痛恨のドロー。

ついに加茂監督の電撃的更迭により日本チームの運命は監督未経験者のジャージ姿の岡田コーチ(現マリノス監督)へ。本大会出場の悲願は、また夢と消えるのか…。結果を知っている今読んでも、当時の緊迫感がそのまま伝わってくるのは、本書がサッカーを越えた人間ドラマを描いているからでしょう。

筆者が中田・川口という当時、年少ながら日本チームの核となる選手達と、取材者という立場を越えた人間関係を築いていたからこそ伝わる息づかいが、行間からひしひしと伝わります。

面子を優先してばかりの日本サッカー協会幹部、世界レベルの大会で勝った経験がないため、実力以上に相手を恐れるベテラン選手たち。彼らと若手との意識の違いは、単なる世代論を越えて、読者に何かを語ってくれます。

壁にぶつかり挫折しそうになったとき、その壁を乗り越えられるかどうかは、すなわち自分を信じ切れるかどうか。中田や川口は信じていました。決してあきらめないことが新たな力を生みだすことをこの作品は私たちに感じさせてくれます。

本書は、オフサイドのルールをよく知らないサッカーファン(笑)でも十分に楽しめる作品です。不安を抱えている受験生はもちろん、改革することを忘れてしまった訳知り顔の大人たちにも読んでほしい一作です。

さて、ジーコJAPANはどんなドラマを作り、金子氏がそれをどう描いてくれるか、本当に楽しみです。本書が出された当時、はたちそこそこだった中田、川口がいまやベテラン、世界を知り尽くしている彼らのリーダーシップに期待したいと思います。


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『決戦前夜』金子達仁
新潮文庫:199P:460円


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決戦前夜―Road to FRANCE

新潮社

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『山本昌邦備忘録』 山本昌邦

2006年05月15日 | サッカー関連

いよいよサッカーワールドカップ日本代表メンバーが発表されました。がんばっていただきたい!

前々回フランス大会では、カズと北沢が、前回の大会では中村俊輔が選ばれず、驚きました。今回は松井、久保選手などが一生忘れられない悔しい一日を迎えてしまいました。

浪人生なら来年すぐありますが(笑)、サッカー選手はあと4年…。選出されなかった選手はもちろん、誰かを落とすという決断をせざるを得ないジーコ監督にも同情します。

今日はぜひサッカーに関した一冊をということで探したのが本書です。トルシエジャパンのコーチであった山本氏が日本代表チームやトルシエ監督について語っている一冊です。日本のために残しておきたい…とあります。

私はサッカーはあまり詳しくなく、監督という立場がどれほど選手やチームに影響を与えるか、想像もつかなかったのですが、本書を読んで良くわかりました。プロ野球では成績不振でシーズン途中に監督が交代することはまれですが、サッカーでは国内、海外とも日常茶飯事ですよね。

そしてその解任された監督が、すぐに別のチームからオファーをもらい、指揮をとったりしていますよね。つまり解任されたから“無能”というわけではなく、やはり“チームとの相性”というのがかなりの部分を占めるのでしょう。そういう点から考えると、トルシエと、日本代表チームとの相性はどうだったのでしょうか。

“かなり悪かった”というのが読後の感想です。どうしてこんな人を監督にしたの、と問いかけたくなる内容です。

トルシエ体制が出来上がってから、ワールドカップでトルコに敗れるまで、順を追って、エピソード、舞台裏が語られています。選手やチームの視点で進言する山本氏と、ビジネスとして取り組んでいる監督の違いでしょうか、常にぶつかり合っています。

すべてが具体的です。備忘録とされているように、客観性を保とうとしているのが伝わってきますが、やはり感情は隠しようがないです。トルシエジャパンの試合の記憶が残っている方にはとても面白く読めるはずです。

笑ってしまったのは以下の部分です。
トルシエは「私の教則本は500ページある。今はまだ2,3ページの段階だ」と就任以来内外に語っていましたが、その2,3ページ目の練習は最後の最後まで変わることはなかった。全部で500ページではなく、5ページの間違いではなかったか。

率直に言って、監督も監督ですが、こんな風に考えているコーチが内部にいては、最強チームなんてありえないですね。必死で選手や日本のことを考えたのでしょうが…。協会や監督、コーチ、選手がまとまるというのは口で言うほど簡単ではないのでしょう。その点で、WBCの王ジャパンはすばらしかったわけですね。

王監督とイチローをアドバイザーで入れ、目の前に、韓国か中国チームでもいれば、一瞬にして一致団結できそうですが(笑)。いずれにせよ、ジーコ率いる日本代表に大いに期待しています。

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山本昌邦備忘録

講談社

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講談社:350P:1785円(文庫本も出ております)

サッカー日本代表  トルシエジーコ

サッカーの国際政治学

2006年02月15日 | サッカー関連
Jリーグの副会長で、
FIFAの理事である小倉氏が、
Jリーグ創設から、
フランス・日本のワールドカップ開催
に至る経緯や裏話を紹介します。

オリンピック同様
ワールドカップほどの規模の大会になると、
これは国家間の武器なき戦争だそうです。

とんでもない額のお金が動き、
様々な利権が発生するわけですから、
どこも必死です。

小倉氏が日本人として
FIFAの理事になったのも、
33年ぶりの快挙だったそうですが、
アジア理事選挙に辛勝しての上、
やっと2002年の8月に実現しました。

どこの国もしたたかで、
国家プロジェクト並みの意気込みですから、
日本も政治がもっと積極的に関わらなければ、
今後も厳しい状況で
活動するのではと思わされました。

そんな中でリーダーシップを発揮する
小倉氏や川口キャプテンは
日本のサッカー界には
絶対欠かせない存在だった
ということがわかりました。


サッカーの国際政治学

講談社

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http://tokkun.net/msgbrd/msgbrd.cgi?cmd=listview&id=1139452173

http://tokkun.net/bbs/book-bbs.htm