本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『文科省が英語を壊す』 茂木弘道

2007年08月25日 | 受験関連書籍


文科省が英語を壊す.jpg


夏休みもいよいよ最後の週になりましたね。早いところでは30日くらいから学校が始まりますから、猛烈に宿題を片付けはじめているころでしょう(笑)。ただし、公立の特に小学校は以前よりずっと宿題も少なくなりましたので、それほど大変ではないかもしれませんが、どうでしょう。

私は大学生の頃から20年以上、当教室で、大学受験の英語教師をしておりますが、だいたい10年ほど前、その頃からずっと感じ続けているのは、生徒達の英語文法力の明らかな低下です。

グローバル化にともなった、英語に対する興味や関心、時代のニーズはむしろ高まっているにもかかわらず、なぜ英語の学力が下がるのか、最初は不思議な現象に当惑したというのが本音です。

当教室近くにあるトップレベルの進学校と呼ばれる高校に通っている生徒達を定点観測しながら、授業をしていますと、それまで難なくできた文法問題が年々できなくなっている。

一方、公立中学に通っている生徒に目を移しても、中一の生徒達の最初の難関、“3単現のS” に関する定着度がかなり落ちていました。逆に文法がこれまでのようにきちんと理解できている生徒が入塾してきた時に聞いてみますと、ほぼ例外なく、塾や予備校で勉強してきた経緯を持っていました。

素朴に “いったい学校で何が起こっているのだろう” という疑問から、それまでも英語学習に関する本はいろいろ読んでいましたが、その頃から “英語教育” に関する本を手にするようになりました。今となっては日本人の英語力低下は、TOEFLアジア最下位という結果でも明らかです。


結論として、私が学力低下を肌で感じはじめたよりさらにずっと前、1977年に当時の文部省の肝煎りでスタートした 「会話重視」 の英語教育がその元凶だとわかりました。本書の指摘通りです。それが世間に知れわたったのは、2002年に始まった “ゆとり教育” の論争があったおかげです。

“学力低下”問題は英語だけの話ではなかったわけです。講師仲間によく聞いてみると、数学の計算力や国語の漢字の定着度に同様の事態が起きており、当時出版された、『分数ができない大学生』 などの著作に大いに賛同したものです。


そうした学力低下に関する書籍の中で、本書はもっとも痛烈に英語の教育政策を批判した一冊です。刺激的なタイトルそのままに、会話重視、そして文法軽視の英語教育を鋭く糾弾し、同時にその背景にある「ゆとり教育」を「愚民化政策」とまで断罪します。

目次です。

第1章 英語力低下の実態と英語教育改革
第2章 英語に対する三つの錯覚
第3章 求められている英語力
第4章 使える英語への道
第5章 受験英語の意味と役立つ証明
第6章 ポスト受験英語


筆者は決して英会話が無価値であるとか、日本人には無理だなどと考えているわけではありません。発音やリスニングを日本人が本格的に身につけることは十分可能であるとし、その方法論もしっかりと提示しています。

ただしそのためには「運動部としての英会話トレーニング部」が必要だそうです。楽しく英語を身に付ける、という考えは甘いと。 『英語耳(松沢喜好)』 や 『英文快読術(生方昭夫)』 に通ずる指摘で、当然だと思います。学問ですからね。


オーラルコミュニケーションの重要性は理解できますが、どう考えても、週一回程度、学校に外国人を招いて英会話の授業をしてもらえば解決するという問題ではありません。

舌鋒鋭いので、本書には賛否両論あるかもしれませんが、現場の人間としては、「よく言ってくれた」 というところです。英語教育に関心のある方にお薦めします。



P.S. 実は、灘高キムタツこと、木村達哉先生の 『灘高キムタツの国立大学英語リーディング超難関大学編 』 に私が書かせていただいたコラムは、まさにこの問題意識からです。それに対して、木村先生のご著書の書評に、拙文に対するありがたい言及がアマゾンに載っていました。よろしれけばご覧下さい。




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文科省が英語を壊す (中公新書ラクレ)
茂木 弘道
中央公論新社

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『「勉強したくない!」を活用する ゆうき式 逆転発想勉強術』ゆうきゆう(精神科医)

2007年02月20日 | 受験関連書籍

 

逆転発想勉強術.jpg

 

この世の中に、勉強ほどつまらないものはありません』 というまえがきから始まっている本書。

捨ててやろうかと思いましたが(笑)、がまんして読んでいたら、かつて私が実行していたことがいくつか出てきてうれしくなりました。冷静に自分の高校時代を振り返ってみると、勉強が好きじゃなかったので、いろんな工夫をしていたのかもしれません。


筆者は精神科医で、セクシー心理学という人気サイトを運営している他、『モテモテ心理術』など、本書の他にも数多くの著作のある、ゆうきゆう氏です。ご存知の方もたくさんおられるでしょう。

勉強嫌いとは言いつつも、東大の理3(医学部)を現役合格しているという経歴が示すとおり、受験勉強には当然かなり打ち込んだようで、ご自分の体験をもとに、アレンジを加えた、非常に軽いタッチの文章で書かれています。


具体的な勉強方法や工夫も書かれていますが、例えば、ノートのとり方とかどの参考書がよいというようなことではなく、勉強に対するメンタル面のアドバイスが中心です。先生と生徒が一対一の会話をする形で進んでいきます。


例えば、朝4時に起きて勉強しようと薦めていますが、それも早朝に勉強するのが効率がいいということではなく、世の中が動き出す前に自分が起きている、そういう自信を植え付けるため。

人生の成功には、自信や優越感が不可欠で、4時がムリな人はいつもより30分早起きして動き出すだけで自信が得られるという指摘です。他にも、ネガティブな発言ばかりを繰り返す人と付き合っていると感染するから、近付いてはいけないなど、やはり精神科医らしいアドバイスが中心です。


目次は以下の通りです。

 

第1章 勉強嫌いのためのスーパーメソッド(ギャンブル勉強法;素直な気持ち;朝、起きるべき時間は?;勉強は、楽しくない!?)

第2章
 踏み出せない人のためのスーパーメソッド(勉強を、オモチャにしちゃえ!;あと、一歩だけ;ライバルを、ライバルと思うな;遊びは、罪じゃない)

第3章
 続かない人のためのスーパーメソッド(異性のあなたに伝えて;普段はアメ、本番はムチ;最初はただ、見つめるだけ)

第4章
 成績が上がらない人のためのスーパーメソッド(勉強は、浮気しながら;誰でも、ヒーローを持っている;記憶するには、ツッコムこと;プラス・ウィルス;電車の中の視線)

 

ゆうきゆう氏と同じように東大理3に現役合格し、やはり精神科医などとして、数多くの著作のある和田秀樹氏も、理解より先に暗記することの効用を説いていますね。特に数学は暗記だと強調しています。本書も暗記から理解につながるのであって、その逆では効率が悪いと主張しています。


私と同じことの一つに、毎日本屋さんへ行って参考書をながめ、欲しいと思ったら迷わず買う、というのがありましたね。もう一つ、家でやる気の出ないときは、参考書を(表紙だけ)ながめるというのも同じで驚きました(笑)。数学も国公立大学の二次試験で問われるレベルのものはわけもわからず暗記しました。

なぜそんなことをしたのか、自分ではよく理解できませんでしたが、本書には、そうしたことのもたらす心理学的な効用が書かれていました。私はこれらのことを生徒に薦めた記憶はありませんが、こういうアドバイスは結構役立つかもしれませんね。


例えば、あれこれ手を出さず、一つの参考書を完璧に仕上げるという “王道” を強調する先生が多いですが、私にはムリでしたし、生徒も “完璧”というのは難しいでしょう。


ビジネス書などでもよく、“逆転の発想” とか “自分を変える” いわゆる自己啓発的なものがありますよね。そういうテクニックを受験に応用しようという一冊で、そういうものに興味のある人には最適な本でしょう。また、どうもやる気が起きないなぁと感じる生徒は一読して損はないと思います。


そうではなく、“やる気はある” から効率的な勉強方法を知りたいという人には、以前取り上げました、『東大生が教える!超暗記術(徳田和嘉子)』 が良いと思います。

ゆうき式逆転発想勉強術―「勉強したくない!」を活用する

スリーエーネットワーク

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東大生が教える!超暗記術

ダイヤモンド社

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『「勉強したくない!」を活用する ゆうき式 逆転発想勉強術』ゆうきゆう(精神科医)
スリーエーネットワーク:248P:1260円

 

 

 


『頭は必ず良くなる』 日垣隆 (池谷裕二・岸本裕史・佐藤達哉・和田秀樹+有村美香)

2007年02月01日 | 受験関連書籍


頭は必ず良くなる『日垣隆』.jpg



東京・神奈川の私立中学受験生のみんな、一日目どうだったかな。緊張したと思うけど、終わってみればどうってことないでしょ。昨日も書いたけど、休みなく続くと思うから、今日の手ごたえが良くても、あまり良くなくても、もう終わったことは考えないで、明日、あさってと頑張っていこう!


さて、刺激的な本を出し続けている日垣氏ですが、本書は受験生や教育関係者に広く薦められる一冊で、4人の方との対談集です。日垣氏の著作は、以前に、『情報の「目利き」になる!メディアリテラシーを高めるQ&A』をご紹介しました。


そこで自らの仕事に対する姿勢などを余さず書いています。対談の時は相手のことを直前に猛勉強するらしいのですが、本書では日垣氏が教育や脳の専門家相手に、その勉強ぶりが発揮されているように感じます。


非常に分かりやすく、またテーマもきちんと整理されていますので、よくあるような、“寄せ集め” 的な読みにくさもありません。対談の相手とテーマは以下の通りです。



池谷裕二 “記憶力を高める方法” 

       “脳は使えば使うほど” 


岸本裕史 “見える学力、見えない学力”

       “基礎学力を伸ばすには”


佐藤達哉 “性格は変えられる?”

       “頭の良さは測れるのか”


和田秀樹 “試験勉強は役に立つ”

       “褒められて高い木に登ろう” 




池谷氏は話題の脳学者ですね。拙ブログでも『最新脳科学が教える高校生の勉強法』、また糸井重里氏との共著『海馬』を取り上げました。本書でも小学生の時の脳の発達の仕方、鍛え方、歳をとってからの脳の働きについて述べています。


以前、 『小3までに育てたい算数脳(高濱正伸)』をご紹介しましたが、なるほど脳に対する刺激をいうことを、教師や親も、もっと日頃から考えるべきだと改めて思いました。


岸本氏は残念ながら最近亡くなられましたが、教師を40年間勤めた後、学力コンサルタントとして知られています。テーマの『見える学力、見えない学力』は氏の大ベストセラーの書名と同じです。また百マス計算の生みの親とも言われています。


教育問題のエキスパートらしく、ゆとり教育の問題点や、学級崩壊や詰め込みに関して、あるいは家庭学習やしつけのポイントなどを教えてくれています。教育政策と現場の変化などもわかります。


佐藤氏は心理学者で、頭の良さや、性格などの研究をしています。著作も多数あります。いわゆる頭が良いとか、性格に関する誤解などを心理学的な側面から指摘します。本書ではIQについての誤解などを取り上げています。


和田氏は肩書きだらけですが(笑)、以前『受験に強い子をつくる!わが子を「勝ち組」にするための必勝受験術』 を取り上げました。本書でも、受験や教育問題に関して、精神科医として、また教育者として、さまざまな視点から示唆に富む指摘をいくつもしています。


ご自分のエピソードや外国の教育事情、また心理学的な側面からのいじめ、さらに効果的な学習についてのアドバイスなどです。



日垣氏は、はっきりものをいう性格ですから、読み手によっては反感を持たれることもあるようですが、私は、氏の手抜きをしない書き方が気に入っています(笑)。


対談というと、時に片方だけが中心となる意見を語ったり、かみあわなかったり、突っ込み不足だったりすることがよくありますが、本書は編集がうまいのか、どの対談もすんなりと頭に入ってきますし、要点がおさえてある印象です。


本書をメモを取りながら読むのが効果的かと思いますが、やはり4人それぞれのページ数に限りがありますので、お読みになって興味を持たれたら、その方の著作を読んでみたらよいのではないでしょうか。


もう一人、すべての対談に母親代表でしょうか、アシスタントでしょうか、インタビュアーとしてTBSのアナウンサー、有村美香さんが参加していますが、でしゃばりすぎず、かといってお飾りでもなく、うまくかみ合っていました。



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頭は必ず良くなる

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『頭は必ず良くなる』 日垣隆
ワック出版:288P:980円




『最新脳科学が教える高校生の勉強法 東進ブックス』 池谷裕二

2007年01月07日 | 受験関連書籍

 

最新脳科学が教える高校生の勉強法 池谷裕二.jpg


著者はこちらのブログで紹介した 『海馬』 を、糸井重里氏と一緒に書いた池谷裕二氏です。

新進気鋭の脳学者ですが、ご自身が現役東大合格、第一位の成績で薬学部に入り、主席で大学院に進学したそうですが、なんと小学校2年生で習う九九は覚えていないそうです。つまり九九を使わずとも、見方を変えれば、頭の使い方を変えれば、計算できるという考え方です。

実はその話は、池谷氏以外の本でも読んだことがありますので、きっとそういう頭の使い方があるのだろうなと思って読みました。実践するかどうかは意見の分かれるところでしょう。私は九九ですが…(笑)。


目次は以下のようになっています。


第1章 記憶の正体を見る

第2章 脳のうまいダマし方

第3章 海馬とLTP

第4章 ファジーな脳

第5章 天才を作る記憶のしくみ


まったく専門分野は異なりますが、つい先日UPした心の潜在力 プラシーボ効果 - 偽薬(プラセボ)は効くのか(広瀬弘忠)  の筆者の態度と同様、その考えは、脳のしくみや特性を知り、それを自分の生活(前者は健康に、本書では勉強)にいかそうというもので、その姿勢がすばらしいと思います。


高校生に向けて、わかりやすく脳のしくみを解説し、理にかなった勉強方法、暗記方法をアドバイスしています。興味深い指摘がいくつもありますが、とにかく復習の徹底を強調しているのが印象的です。


先にあげた九九の話と同じで、読んでいる間に、なるほどそうか、わかった、となるでしょうが、問題はそれを実践する気持ちを強く持てるかどうかです。ですから、この本さえあれば第一志望合格!とはいかないでしょうが、知っていて絶対に損はないでしょうし、自分の学習方法、他人がすすめる学習方法を点検してみたらどうでしょうか。


より実践的な方法を知りたい方は、これまた以前ご紹介した、東大生が教える!超暗記術 (徳田和嘉子)  を併読すれば、すぐに役立つと思いますし、徳田さんの方法は脳の特質を利用した効率化を図っていると気付くでしょう。



ただし、ぜひ注意して欲しいのは…


本書はとても読みやすい本で、自信を持って薦められますが、参考書やこういう学習に関連した本を読むときの注意は、


すべてを鵜呑みにして、欲張って実行しようとしない! 
ことです。


このことは本当に強調しておきたい。失敗例をどれほど見たか。とにかく前向きな生徒ほど、厳しすぎるスケジュールを自分に課したり、高度な参考書を使いたがるものです。

素直な受験生の心理はやはり、バイブルを手に入れたい、筆者が魅力的であればあるほど、よく売れていればいるほどまねしたくなるものだけど、自分にできそうなもの、あるいはやってみて、合っている、続けられそうなものだけを取り入れること。


勉強方法を変えることは、自分で考えているよりはるかに難しい
ことなのです。


本書なら、ひとつでも新しいことを知って、何かひとつでも実行できれば上出来。いいですね。受験生ならなおさら。冷静に的を絞る!あせらない!




P.S. もしご父母が良いと思われた勉強方法や、参考書をお子さんに薦められる時にも、上記のことを頭の片隅にいれておいていただければと思います。特に受験直前のこの時期はあせる気持ちはわかりますが、欲張るのは禁物です。復習の徹底を。
 


センター試験まであと約10日!



    

          ガンバレ・受験生!


最新脳科学が教える 高校生の勉強法 東進ブックス

ナガセ

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『最新脳科学が教える高校生の勉強法』 池谷裕二
ナガセ:189P:945円

 

 


『受験に強い子をつくる!わが子を「勝ち組」にするための必勝受験術』和田秀樹

2006年12月12日 | 受験関連書籍


受験に強い子を作る.jpg

 
先日、灘高キムタツこと木村達哉先生と、出版社アルクの編集長に渋谷でお会いしました。未履修問題など、他の進学校がだんまりを決め込んでいる中で、灘高が特に厳しい批判にさらされていることをどう思っていらっしゃるか、聞いてみました。


もちろんおもしろいはずはありませんが、制度の不備はわずか数ヶ月ではいかんともしがたいことがわかっており、すでに切り替えができていますね。灘が受けた “不公平な扱い”(詳しくは伊藤先生のブログ) を、逆にエネルギーにしているという印象を受けました。


灘という学校は、ノブレスオブリッジというか、有名税というか、ちょっと適切な言葉が見つかりませんが、全国から注目の的であるだけに、マスコミにも(今回は読売新聞)常に狙われる存在です。木村先生とお話しをしていると、灘というのは、普通の進学校を超えた、超進学校としての責任や、注目が増すことがわかります。


その灘中学に5番の成績で入学し、あの勝谷誠彦氏と同級生という、和田秀樹氏の著作です。木村先生と実際に生徒たちの勉強方法や、英語のテキストつくりに関してお話をさせていただいたり、和田氏の学習方法を読んだりして感じるのは、特別なことをやるというより、自分が良いと信じるものを、しっかりとやって基礎を作り、成績をあげているんだということです。常に勉強の目的が明確です。


和田秀樹氏の活躍は実に多方面に渡っており、その主張はリベラルというか、何でも良いものは良いという姿勢に好感を持ちます。常識や古めかしい受験の伝統にこだわりません。そういえば朝日新聞にも産経新聞にも登場しますね(笑)。


本書は、やがては受験をむかえる子をもつすべての親御さんに向けて書いた本です。ちょっと副題の “勝ち組云々” という表現はあまり好きではありませんが、ここでもそのわかりやすい主張は健在です。


ゆとり教育で学力が低下する一方で、社会における競争は確実に激しさを増しています。その中でいかに子どもを 「勝ち組」 に導いていくかという具体的アドバイスを、現代の入試事情を踏まえた上で指南しています。


灘中では劣等生で過ごしたものの、高2で最小限の努力で最大の効果を生む独自の学習術を編み出し、東大理科Ⅲ類や慶応医学部、経済学部に現役合格を果たしたと言われる和田氏の、その方法論は非常にわかりやすいです。


和田氏といえば、受験必勝法と連想されるくらいですが、個人的には、親や生徒がおちいりやすい受験に対する誤解を心理学的見地や社会情勢の判断から、警告し、昔からある勉強方法の中で、現代の受験事情にあった、もっとも効率が良いものを選んでいこうという主張だと思っておりますが、いかがでしょうか。


本当に著作がたくさんあり、どれを読んでも興味深い指摘があります。時には具体的過ぎると感じることもあります。例えば、参考書などを薦める時には、生徒の状況や学力次第という面が欠けています。鵜呑みは危険です。


本書においても、氏の主張は確かに刺激的ですが、すべてを素直にそのまま実践しようとせず、ご自分や、お子さんにあっているというものを取り入れるという姿勢で読まれれば、必ずためになるところがあると思います。受験生だけでなく、受験指導をしている方にもお薦めしたい一冊です。




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受験に強い子をつくる!―わが子を「勝ち組」にするための必勝受験術

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★入試に出題された本・No.3★

2006年10月10日 | 受験関連書籍


今回も、当塾メルマガで紹介されました、入試に出題された本シリーズの第3回です。よろしければ、第1回第2回 の記事もご覧下さい。いろいろな先生方が書いておられます。

今回は6冊です。バラエティーに富んだものが集まりました。


■ 『寝ながら学べる構造主義  内田樹  (文藝春秋 725円)

寝ながら学べる構造主義

文藝春秋

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哲学的な文章は、中学生に留まらず高校生でも日常生活や普段の読書からかけ離れた近付き難い印象を与えるかもしれませんが、あらかじめ専門的な知識や考え方を身に付けていなければ手に負えないという訳では必ずしもなく、与えられた文章をきちんと追えるか、そのなかで考えられるかということに課題は集約されるようです。2004年度、都立新宿高校の入試問題になった本書も、何となしに用いている「ものの名前」がもつ構造を一歩踏み込んで考えてみようというものであり、決して突飛な事柄を扱ったものではありません。流行りの哲学をものにしようなどと大上段に構えることなく、気安いタイトルがついた本書は、私達の身の回りの出来事について考えるきっかけを与えてくれると言えるでしょう。



■ 『夏の庭』 湯本香樹実 (新潮文庫 420円)

夏の庭―The Friends

新潮社

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過去5年間で16回も出題された作品。城北埼玉や世田谷学園で出題されました。近所の老人が死ぬところを目撃するために、見張りを続ける少年達。その無邪気な好奇心や冒険心、そして子どもから大人への成長というテーマは、懐かしさを感じさせます。映画にもなった作品で、ストーリー的にはスティーブン=キングの『スタンド=バイ=ミー』に似ていて、少年期の底抜けの明るさ、奇妙によぎる不安などを絶妙に描いていると思いました。



■ 『読書力』 齋藤孝 (岩波書店 735円)

読書力

岩波書店

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声に出して読みたい日本語」「理想の国語教科書」「三色ボールペンで読む日本語」など次々とヒットしている著者の読書に関する考えをまとめたものです。なぜ本を読まなければならないのか、ということから始まって、読書力の鍛える基準を“3~4年間で文庫100冊、新書50冊”としています。人々が新聞や本を読まなくなったといわれて久しいのですが、かつての日本の強みは読書力によって支えられてきたとまで言い切っています。また、せっかく読むのだから、なるべく本の内容が自分のプラスになるように活かす方法をいろいろと紹介しています。



■『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 森絵都 (角川文庫 460円)
 

アーモンド入りチョコレートのワルツ

角川書店

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クラシックのピアノ曲を背景にした3作品が収められています。入試で出題されたのは『少年は眠る』という作品です。夏休みに年齢の違う親戚の子供たちが別荘に集まり、2週間をともに過ごします。そこでの出来事を綴った物語です。リーダー格の少年は、日々の日課を強引に決め、その他の子供たちはそれに従うしかありません。しかし、その強引さに主人公やその他の子供たちは疑問や不満を持ち始め、ついに…。その他の2作品に関しても中学生を主人公にした、素晴らしい作品です。来年も出題される可能性は大きいのではないでしょうか。



■ 『海の物語』 灰谷健次郎 (角川文庫 599円)

海の物語

角川書店

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主人公は漁師の父親と二人で暮らす少年健太。健太は将来父のような漁師になることを夢見ており、船に乗り込み父親の手伝いをしています。そんな健太と交流があるのは都会からの転校生可南子と担任の紀子先生。これらの設定は一歩間違えば陳腐な設定になりがちにも思えますが、彼女らの存在が非常に効果的に個性的に描かれていますので、全く陳腐さは感じられません。むしろ必要不可欠で当然の存在のように思えます。登場する大人達は生活していく上での現実的な問題をきれい事ではなく大人の視点で考えていきます。子どもはそんな大人達の考えをそのまま受け入れることはできず、それに対抗し子どもたちの正義を貫こうとします。考えの異なる大人と子どもが同じ体験をしていく中でお互いの理解を深めるというのが灰谷健次郎の作品の指針であり、本作品では漁船に乗りこみ、漁業を通じてその理解を深めていきます。また漁業問題や海洋汚染問題が大人と子どもの共通テーマとして分かりやすく提示されています。質の良い邦画を見た後のようなほのぼのとした気持ちになり、きれいな海を守ろうという気持ちにさせられる非常に上質な小説です。(横浜隼人高校平成16年度入試出題)



■『この本が世界に存在することに』 角田光代 (メディアファクトリー1470円)

この本が、世界に存在することに

メディアファクトリー

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 泣きたくなるほどいとおしいと紹介されていた一冊で読んでみようと思いました。“本”をテーマとした9つの短編物語集です。その中の“さがしもの”は、余命があと少しの祖母から、本を探すように言われた主人公の話。“彼と私の本棚”では、恋人と一緒に住むことで、同じ本を読み、それによって互いに共有していた同じ光景。それが別れにより無理やり切り離される・・・。どの小説も本への愛情がこもった一冊でした。(東京都立日比谷高等学校出題)



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『東大生が教える!超暗記術』 徳田和嘉子 

2006年09月27日 | 受験関連書籍


 本番の入試が近付いています。夏の間にしっかり勉強した人は、ここから知識を増やせば、ぐっと成績が上がるはずです。

今も昔も受験生を苦しめる暗記ですが、人によって暗記方法はさまざまです。語呂合わせもその一つですね。当教室 の授業でも使いますが、それがツボにはまって、受験後何年かたっても、忘れない人と、“なにそれ?”とこちらに軽蔑のまなざしを向ける人もいます(笑)。

私の授業で、定着率の良い英単語の代表的な語呂合わせを紹介しますと …

deaf  (デフ):耳が聞こえない   『な・何“でふ(deaf)”か?

salute
 (サルート):あいさつする  『去る~と(salute)き、あいさつする

kennel
  (ケンネル):犬小屋    『犬(ケン)寝る(kennel)

deny
   (デナァイ):否定する    『~でな~い(deny)と否定する


まだまだ、たっくさんありますが、こんな完璧な名作・傑作でも(笑)、覚えないヤツがいるんです!

ところがですよ、これ

distribute (ディストリビュート):分配する 『 This 鳥、 びゅ~~ん、と(distribute)“分配する” 』  


これ、この↑の文、まったく無意味なんですよ。でも、実験の結果、非常に良く覚えます。やはり人によっても違いますが、とにかく頭に残るのです。鳥の絵も必ず描きますよ。インパクトがあるだけなんですけど、印象付けるのが重要なんです。


また、最近記録が破られてしまいましたが、それまで円周率の暗記世界一だった後藤さんという方も、語呂合わせを使って、円周率をなんと42195桁!も覚えたのですが、「映像」を加えることが氏のポイントです。

円周率は3.1415926535と続きますが、これではたったの10桁です。これを

「産医師(314)、異国に(1592)向かう(65)、産後(35)」


と覚え、お医者さんが赤ちゃんを取り上げたあと異国へ飛んでいく姿を頭に焼き付けます。イラストを描いてでもイメージを定着させなければなりません。くどいですが、それがポイントです。

11桁目からは8979323846・2643383279(30桁)となりますが、(覚え方「爆竹ゾーン(89793)兄さん走る(23846)、二浪し(264)さんざん(33)破産に泣く(83279)」(走ったり、泣いたりしている姿をイメージして下さい)これをえんえん4万以上も覚えられるというのですから、この方法の威力はすごい。10ずつで区切るのもコツで、言い忘れに気付きやすくなります。


で、やっと本書の紹介です。こうした暗記のポイントは、ゴロが良いことというより、『印象に残すための工夫』 があるかどうかなのです。印象に残すためなら何でもありという一冊で、非常に参考になります。

古文の受験生なら知っているであろう、古文単語暗記で有名な 『ゴロで覚える古文単語ゴロ565』。あれが大成功したのも、その作戦です。必ず強烈な(時にエッチな)絵が入っていますし、CDが付いています。頭に残ってしまうんです。

逆にそれ以外、ほとんどの語呂合わせの暗記用参考書がことごとくダメなのは、徹底していない。どんなにうまいゴロでも、頭に残るような工夫がなければ、忘れてしまいます。

そして、さらに重要な点は、教えてもらうより、自分で作る、自分で工夫すること!なんです。

と言っても、それほど難しいことではなく、きれいなゴロを作ろうとするのではなく、とにかく何かに関連付けさえすれば良いのです。本書にはその関連付け方の例がふんだんに出てきます。きっと、どこかで誰かが言っていたことですが、それをしっかり集めてあります。

ただ、勘違いしてはいけないのは、すべてのやり方が、自分に合うとは限らないということです。人によって印象の残り方はまったく違います。ゴロ合わせも一つの手段に過ぎません。

いくつもの方法を試して、徐々に自分の暗記スタイルを作っていくことが大切です。

題名も本文も、実は、一見すると “軽い、安っぽい本” に見えます(失礼!)が、あなどれませんよ。暗記の本質を突いていると思いますので、暗記に悩んでいる人、または教える立場の方にはご一読されることを勧めます。

 

http://tokkun.net/jump.htm 

東大生が教える!超暗記術

ダイヤモンド社

詳細

『東大生が教える!超暗記術』 徳田和嘉子 
ダイヤモンド社:232P:1500円


■■ 達人の域  ■■

↑でご紹介した後藤さん。とにかく彼はイメージ(映像)を大切にしますから、彼によれば 「いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府」 という覚え方は“甘い”のだそうです。イメージが無いので、いい国作ろう、う~ん室町幕府だったっけ?となる可能性があるからだそうです(笑)。ではどういうイメージを作るかというと…、

冬の寒い朝に源頼朝が 「みんな、もっと雪のかまくらたてていい国作ろうぜ!」 と発破をかけている様子 をイメージします。 実は「みんな、もっと」は源(みなもと)にかけているために足利尊氏とも間違えませんし、寒い「朝」で頼朝です。恐れ入りました。 少しでも参考になれば幸いです。よろしければ応援のクリック、お願いします。
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   う~ん、1位が強すぎるので、新しいバナーで挑戦(笑)。せめて近付く方法はないものか??? 離れた2位です。

できればこちらも→ にほんブログ村 本ブログ ありがとうございます。1位です。  


★入試に出題された本・No.2 ★

2006年06月29日 | 受験関連書籍

前回の 『入試に出題された本』 また、『教育に関する本』 の特集に関しまして、さまざまなご意見、ご質問などをいただきました。もっと紹介して欲しいとのご要望がありましたので、とりあえず当教室の講師陣が注目した書籍、5冊を追加いたします。



その日のまえに』 重松清著 (文藝春秋 1500円)
★芝中学・筑波大附属中学など出題★

その日のまえに



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重松氏の本は中学入試に毎年のように出題されている。しかし本書が出題されるとは・・・というのが率直な感想である。その内容は生と死をテーマにした、短編から成っており主人公も大人が中心なのである。泣けるという評判の本書であるが、意図的に泣かせようとする感じはなく、淡々と死をテーマに日常を書き綴ったもので、それだけに好感が持てる。また短編それぞれが独立しているように思われるが、実はカラクリがあり、凝っている。親子で読んで、感想を語り合うには最高の一冊だと思う。


希望格差社会』 山田昌弘著 (筑摩書房 1945円)
★北海道大学法学部出題★ 
  
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く



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日々の勉強、仕事、暮らしに追われていると、社会を俯瞰するということがなおざりになってしまいます。親の所得格差が子どもの教育に重大な影響を与えることをデータで示した苅谷剛氏、ベストセラー『下流社会』を著した三浦展氏などのおかげで格差というものにかなり注目が集まるようになって来ました。山田氏はより広範にデータを収集し、格差の正体は『お金』ではなく『希望』であること、さらにその対処法を提言します。気鋭の社会学者が、ニューエコノミーの時代に何が起こっているのかを鋭く分析した一冊です。来年もこのテーマは必ずどこかで出題されます。


取材学』 加藤秀俊著 (中公新書 660円)
★慶応大学法学部出題★ 
 
 取材学.jpg 取材学―探求の技法



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  本書は1975年に初版が出ていますが、内容は極めて新しく、情報教育=メディア・リテラシーを意図して書かれています。慶応大学法学部で出題されたものの、一部小学生対象の教材に使われるなど、どの年齢の方が読まれても参考になると思います。特に大学生がレポートを書く際には入門書として使えるでしょう。大学の授業はつまらないなどとぼやく前に本書を読めば、「先生の使い方」が一発で分かります。


女子マラソン』 宇佐美彰朗著 (ちくまプリマーブックス1155円)
★鴎友学園女子中学出題★ 
   
女子マラソン―どうして強くなったのか



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女子マラソンの世界記録は2時間15分25秒です。日本人では野口みずき選手、高橋尚子選手が2時間19分台の記録をもっています。一昔前まではそれほど強くなかった女子マラソンが、最近は選手層が厚くオリンピック選考レースはどの大会も本番並みの激戦です。この本ではこれだけ記録が伸びた理由を中心に、マラソン選手が走っている間、いったいどういうことを考えながら走っているかということも書かれています。マラソン選手には小柄な選手が多く、どこに42.195kmも走るパワーがあるのかと思わされますが、本書を読めばわかります。


Jポップとは何か』 烏賀陽弘道著 (岩波新書 780円)
★中央大学経済学部出題★ 
 
Jポップとは何か―巨大化する音楽産業



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  バブル景気の最盛期である88年末から89年当時、邦楽を一切かけることが無かったFMラジオのJ-waveにおいて、邦楽をかける際に「Jポップ」という名前が生まれました。そもそも「Jポップ」とは単純な音楽ムーブメントではなく、レコード会社が販売促進を目的とするキャッチコピーとしての「ジャンル名」、あるいは購買動機となる価値を持たせた「ブランド名」として生み出されたものでした。このJポップの成長に絡むレコード会社、放送局、一般企業の戦略や、メディア、再生装置などの技術革新による音楽の視聴方法の変化など、ただ、音楽文化の変化を紹介するのではなく、その時代の社会や経済の動向が記されています。ポピュラーな固有名詞が多く出てくるため、社会、経済には疎い生徒でも非常に興味深く読み進めることができます。


http://tokkun.net/jump.htm



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『東大へ行こう!(“ドラゴン桜”公式ガイドブック)』 三田紀房&モーニング編集部

2006年05月26日 | 受験関連書籍

『ドラゴン桜』お読みになったでしょうか?あの本からは、実にさまざまなメッセージが読みとれます。公式ガイドブックとは意味不明(笑)ですが、本書は、そのメッセージや勉強方法をまとめて紹介し、さらに実際に東大生にそれらについてどう思うかを調べている一冊です。

以前にやはり、ドラゴン桜をもとに書かれた、『「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』親野智可等著を、ご紹介しましたが、それはおもに、小学年に対する家庭のしつけに関するものでした。

本書では、巻頭に筆者、三田氏のインタビューがあり、ドラゴン桜を書いたいきさつなどが語られます。さらに、東大卒の気鋭の脳学者、池谷裕二氏と『ドラゴンイングリッシュ』 の竹岡広信先生が東大について語ります。

ドラゴン桜には、各教科の“達人教師” が登場し、底辺校の生徒たちに、受験の極意を伝授します。それだけでなく精神論つまり受験生としての心構えも説きます。模試会場でのこころがけまで含め、すべて具体的に。

そこで、『寝る前に英語で日記を書け』とか『数学は自分で問題を作れ』 などという数多くのアドバイスについて、東大生に、自分の経験と照らし合わせてコメントをもらうのです。賛成・反対があり、なかなかおもしろいです。

私は、常々、勉強方法というのは、万人に共通して“効果がある” と言い切れるのは、ごく当たり前のことしかなく、あとは個人の好みや向き不向きが大きく作用すると思っております。大体どの参考書もそこらあたりの配慮が欠けていて、“こうすれば絶対大丈夫!” のように書いてありますね。

先輩の意見や本に書いてあることを鵜呑みにせず、自分自身で試して身に付けることが重要で、その点、東大生たちで検証しようという、本書の試みは賛成です。全体的なアドバイスの印象も、受験勉強や受験指導の盲点を突いており、好感が持てます。ただ、マンガに比べると地味ですね。ドラゴン桜を知っている生徒には受けないかも(笑)。

英語に関しても同様でしょう。ただ東大リスニングについて、『リスニングが合格を左右する』 と言い切っている割には、アドバイスは11の英語アドバイスのうちの1つだけ『音読せよ』です(笑)。もう少し詳しければ、『 東大英語リスニング 』の著書がある灘高のキムタツ先生にコメントを求めるところですが…。

ちなみに、龍山高校と同様、各教科の一流プロをそろえている当塾(笑)ですから、各科目の講師にこれらの勉強方法について聞いたところ、やはり上記のように答えておりました。生徒にやらせるために、絶対大丈夫!という言い方は、みんなしているのですが…(笑)。

東大へ行こう!―ドラゴン桜公式ガイドブック

講談社

詳  細



http://tokkun.net/jump.htm

ドラゴン桜 東大竹岡広信





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★入試に出題された本★

2006年05月11日 | 受験関連書籍


今回は、これまでと変えて、当教室で発行しているメルマガの記事から、『入試に出された本』をご紹介します。私以外にも、いろいろな先生が書評を書いてくださったのですが、お名前は勝手に出せませんので、無記名です。いつもと違いますが、一冊ずつ、ご紹介するより、こちらの方が見やすいと思います。今回は中学入試編です。

 14歳からの哲学】 池田晶子著 (トランスビュー 1260円)
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本書は2004年~6年の中学入試出典数第1位です。私が読んだのは2003年で、第一のお薦め!としましたが、小学生ではなく、書名のように中学生に薦めていました(笑)。『生きていることはすばらしいと思いますか』という問いかけから始まり、『すばらしい』『つまらない』『どちらでもない』の答えに対して、さらに問いかけ、どこまでも考えてみようと呼びかけます。考え抜いていくと今まで自分が思っていたことと全く逆の結論になったりします。哲学ですから、軽いノリではありませんが、アリストテレスだのカントだの、難しい人の名前や専門用語は出てきません。イチローなどを例にとり、幅広く、わかりやすく人生を語ります。考えて考えて考え抜いた上で『自分』を確認できれば、何も恐れることはないんだと教えてくれます。大人やご父兄にもお読みいただきたい一冊です。

  【ぼくらのサイテーの夏】 笹生陽子著 (講談社 381円)
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大人が読んでも十分に楽しめるというか、もしかしたら大人の方が楽しめる作品なのかもしれません。「階段落ち」なんていう無謀な遊びも、思わず昔を思い出して懐かしくなってしまいました。主人公は引きこもりの兄をもつクールな桃井(自称ハードボイルドな小学6年生)。斜に構えていた彼も、複雑な家庭環境の栗田と接することで人を思いやるようになっていきます。ひと夏の「サイテー」な体験が人を成長させるものなんですね。本書は著者のデビュー作で、日本児童文学者協会新人賞を受賞しています。東邦大学付属東邦中、豊島岡中などで出題されました。

 【キッドナップ・ツアー】 角田光代著 (新潮文庫 420円)
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5年生の夏休みに、主人公ハルがユウカイ(=キッドナップ)される。ユウカイしたのはだらしなくてどうしようもない父親。その父親がハルを無理矢理連れまわす。デパートに行ったり、夜の海に行ったり、肝試しをしたり。その連れまわしている間の細かい話一つ一つ、女の子の感じることが伝わってきます。時間を置いてもう一回読んでみたい本です。

  【わが子に伝える「絶対語感」】 外山滋比古著 (飛鳥新社 1260円
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「問題な日本語」に似た、誰もが陥りやすい日本語の間違いを指摘するような作品ではないかと思っていました。確かに巻末に一覧があったりもしますが、それが主題ではありません。子どもが幼少期の音楽教育において絶対音感を身につけていくように、幼い頃に母親が子どもに繰り返し読み聞かせていく事により正しい日本語をかぎ分ける感覚を身につけさせることが重要であると記しています。なるほどと思われる反面、言葉の変化を積極的には承認しないこと、少々具体性にかける部分が気にはなりますが、幼少期の日本語教育の重要性を知らせてくれる作品です。また、外山氏は国文学者ではなく、英文学者であることも興味深いところです。

 【先生はえらい】 内田樹著 (ちくまプリマ―新書 798円)
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今までに出会った先生の中で、えらいと思われた先生は何人ほどいらしたでしょうか?しかし、簡単にえらいと言っても具体的に何がどうして、えらいのでしょう。では先生の中にはえらくない方もいらっしゃるということでしょうか?そうした半ば抽象的な問いに対する回答を中高生に向けて解説したのが本書です。先生はえらい、という意味や先生に対する思いもきっと変わると思います。また、学ぶことやコミュニケーションについての解説もあり、とても有意義な1冊だと思います。いい先生に恵まれないと嘆いている生徒諸君には特にお薦めです。

以上とりあえず5冊にしておきました。いかがでしょう。

http://tokkun.net/jump.htm
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