TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

東一族の村にて

2015年05月15日 | イラスト





花の咲く時期
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「タロウとマジダ」湖編 1

2015年05月12日 | T.B.2001年

「湖の中心には、小さな島があるらしいわ」

唐突にマジダが言う。

「……初めて聞くなぁ、そんな話」
「おばあちゃんが言っていたのよ」

タロウ達の村は湖に面している。
とても大きな湖で、
それを囲んで四つの一族が暮らしている。

彼らは湖の南に暮らす、南一族。そのままだ。

生活に必要な水は全てそこからという彼らにとって
湖は生活に無くてはならない大切な物。

「でも、見渡す限り見えないよね」
「舟でずっと、
 ずーっと漕いでいかないと見つけられないんだって」
「ふーん」

タロウは作業を続けながら
話半分でその会話を続ける。

「ねぇ、魚を捕るときに使う舟があるでしょう」
「そうだね、俺は持っていないけど」
「ウチにあるのよ」
「うんうん。
 でも、危ないからマジダ1人で乗ってはいけないよ」
「分かっているわよ。そんなことは」

「……へぇ、それで」

その辺りで、何だかイヤな予感がして
タロウはマジダに背を向け始める。

「一緒に行くのよ、タロウ!!!」
「イヤだよ!!」

ふふーん、と
マジダは余裕の表情だ。

「甘い!!甘いわよ、タロウ!!」
「……くっ、マジダは力を溜めている!!」

どうやらマジダにはタロウを動かす
最終奥義があるらしい。

「この前、我が家にご招待した時に
 村を盛大に横断したのは覚えているわよね」
「……??」

確かに、直線で行けば早い道を通らず
村の中心を通って行った。
あれも策略だったというのか。

「沢山の人が私と一緒に歩くタロウを見ていてよ!!」
「はっ!!?」
「ここで私が、実はあれは連れ回されてました、と
 一言叫ぶだけで」
「やめてー!!!!!
 この話から読んだ人にも
 誤解を与える様な発言はやめてー!!!」

タロウは観念した。

「大丈夫よ、
 このネタでお願いするのは今回だけだから」

んんんん。

「ねぇ、マジダ。
 このネタでってどういう事。
 他にあるの?ねえ?!」
「気にしない、気にしないー♪」

それより、とマジダは言う。

「タロウ、泳げるのでしょう?」
「泳げる…けど…湖で泳いだ事は無いな。
 マジダは?」
「それなら大丈夫よ。
 私はいつも泳いでいるもの」

地元の子、たくましい。

外は良い天気だ。
相変わらず、仕事はもてあます時間の方が多い。
お茶とおやつを持って、少し出かけてみるのも良いのかもしれない。
湖に出るのならば、ちょっとした冒険だ。

それじゃあ。

「出発しますか」



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山一族と

2015年05月08日 | イラスト




山一族と、鳥
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「山一族と海一族」2

2015年05月08日 | T.B.1998年

 表に出ると

 占師の彼は、ある場所へと向かう。

 青空。
 日差しが強い。

 彼は、顔を覆う布を、さらに深くする。
 表には、滅多に出ない。
 慣れない日差しに、彼は顔をしかめる。

 しばらく歩くと、鳥の鳴き声。

 村はずれに止まり木が設置してあり、そこには、たくさんの鳥。

 山一族が飼い慣らしている鳥だ。
 主に、狩りの供としている。

 が

 占師家系の彼は、狩りをしない。
 だから、鳥は苦手だ。

 においに、彼は、ますます顔をしかめる。

「おい、いるのか!」

 彼が声を出すと、すぐに、人が現れる。

 鳥を世話していた、鳥師の彼、は、占師の彼を見る。

「何用ですか」
「今すぐ鳥を選べ」

 鼻を押さえたまま、占師が云う。

「海に、鳥を送る」
「海に?」
 鳥師は、目を細める。
「海一族になんか、鳥を送らない」
 鳥師が云う。
「あいつら、鳥の扱いを知らないから」

「黙って従え、義弟」

 占師は、折りたたまれた紙を取り出す。

「これを、海に」

 おそらく、手紙。

 しかも、占師がわざわざ持ってきたと云うことは、

 重要な手紙、なのか。

 鳥師は、しぶしぶ、手紙を受け取る。

「賢いやつを選んでおけ」
「鳥なら、みんな賢い」
「いちいちうるさいやつだ」

 占師は、早くやれと、手を動かす。

「今すぐ飛ばせ」

 鳥が出発するのを確認したいのだろう。
 占師は、鳥師をにらむ。

 鳥師は、鳥を選ぶ。

 鳥の足に、先ほどの手紙を付ける。

「手紙を渡したら、すぐに戻るんだ」
 鳥師は、鳥に云う。

 鳥を飛ばす。

 鳥は

 青空へと、飛び立つ。

 飛び立ち、

 すぐに、その姿は見えなくなる。

 それを見ると、占師は、すぐに方向を変え、歩き出す。

「今の手紙は何だ」

 鳥師は、占師に訊く。

「何を、海一族に送ったんだ」
「お前が知ることじゃない」
「今の手紙は、」
「何度も訊くな」

 占師は振り返らない。

 鳥師は、その後ろ姿を見る。

 息を吐く。

 空を見る。

 いつの間にか、雲が出ている。

 ――山の天気は変わりやすい。



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「海一族と山一族」1

2015年05月05日 | T.B.1998年

海には舟が数隻浮かんでいる。
全て海辺に住む一族が漁のため出した舟だ。

彼らは漁を生業として過ごしている。

「今日は良い天気だな」

一つの舟の上、
青年が呟く。

晴れて、凪いだ海。
今日は漁の日ではないが
そうでない日も彼らは沖に出ている。

もう習慣になって居るのだろう。

「……ミナトはいつもそうだな」

舟の上には2人。
1人は釣りをしていたが
もう1人横になり寝ていた青年が起き上がる。

「今日も凪で良かった。
 晴れて良かった」

彼の言葉をもう一度繰り返す様に
そうして、それをとがめる様に言う。

「同じ事の繰り返し、
 いつもと同じ毎日、それが良いという」

退屈じゃないか、と
そう言う彼に、ミナトと呼ばれた青年はため息をつく。

「お前はそういう所があるなトーマ」

年の頃は同じだが、
僅かに年上のミナトは複雑な表情を浮かべながら答える。

「凪いでいる時の漁が一番安全だ。
 なのにそれがつまらないという」

言われたトーマの方は気まずそうに目をそらす。

「確かに時化た後や、
 少し風があった方が良い成果が上がる時もある」

ミナトは釣りの手を止めて
トーマに向き直る。

「でも、お前は違うだろう。
 時化や荒れた天気の時の方が
 楽しそうだ」

「―――誰かがケガしたらいいとか
 そんなことを思っているわけじゃなくて」

「変化を求めるのは良いけれど」

ミナトは遠くに視線を向ける。
それは海ではなく、山の方。

「無くしてからじゃ遅いんだからな」


「―――俺は」


「なーんてな」

ぶはっと耐えきれずにミナトが吹き出す。
「え?」
「まぁ、確かに少しいつもと違うことがあった方が
 メリハリがあるよな」
あーおかしい、と笑うミナトに
やっと、からかわれたとトーマは気付く。

ばしゃーん、と大きな水音が沖に響く、

岸辺で作業をしていた少女は
立ち上がってそちらの方向を見る。

「あぁ、トーマとミナトは
 今日も遊んでるわね」



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