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山一族と

2015年05月08日 | イラスト




山一族と、鳥
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「山一族と海一族」2

2015年05月08日 | T.B.1998年

 表に出ると

 占師の彼は、ある場所へと向かう。

 青空。
 日差しが強い。

 彼は、顔を覆う布を、さらに深くする。
 表には、滅多に出ない。
 慣れない日差しに、彼は顔をしかめる。

 しばらく歩くと、鳥の鳴き声。

 村はずれに止まり木が設置してあり、そこには、たくさんの鳥。

 山一族が飼い慣らしている鳥だ。
 主に、狩りの供としている。

 が

 占師家系の彼は、狩りをしない。
 だから、鳥は苦手だ。

 においに、彼は、ますます顔をしかめる。

「おい、いるのか!」

 彼が声を出すと、すぐに、人が現れる。

 鳥を世話していた、鳥師の彼、は、占師の彼を見る。

「何用ですか」
「今すぐ鳥を選べ」

 鼻を押さえたまま、占師が云う。

「海に、鳥を送る」
「海に?」
 鳥師は、目を細める。
「海一族になんか、鳥を送らない」
 鳥師が云う。
「あいつら、鳥の扱いを知らないから」

「黙って従え、義弟」

 占師は、折りたたまれた紙を取り出す。

「これを、海に」

 おそらく、手紙。

 しかも、占師がわざわざ持ってきたと云うことは、

 重要な手紙、なのか。

 鳥師は、しぶしぶ、手紙を受け取る。

「賢いやつを選んでおけ」
「鳥なら、みんな賢い」
「いちいちうるさいやつだ」

 占師は、早くやれと、手を動かす。

「今すぐ飛ばせ」

 鳥が出発するのを確認したいのだろう。
 占師は、鳥師をにらむ。

 鳥師は、鳥を選ぶ。

 鳥の足に、先ほどの手紙を付ける。

「手紙を渡したら、すぐに戻るんだ」
 鳥師は、鳥に云う。

 鳥を飛ばす。

 鳥は

 青空へと、飛び立つ。

 飛び立ち、

 すぐに、その姿は見えなくなる。

 それを見ると、占師は、すぐに方向を変え、歩き出す。

「今の手紙は何だ」

 鳥師は、占師に訊く。

「何を、海一族に送ったんだ」
「お前が知ることじゃない」
「今の手紙は、」
「何度も訊くな」

 占師は振り返らない。

 鳥師は、その後ろ姿を見る。

 息を吐く。

 空を見る。

 いつの間にか、雲が出ている。

 ――山の天気は変わりやすい。



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