表に出ると
占師の彼は、ある場所へと向かう。
青空。
日差しが強い。
彼は、顔を覆う布を、さらに深くする。
表には、滅多に出ない。
慣れない日差しに、彼は顔をしかめる。
しばらく歩くと、鳥の鳴き声。
村はずれに止まり木が設置してあり、そこには、たくさんの鳥。
山一族が飼い慣らしている鳥だ。
主に、狩りの供としている。
が
占師家系の彼は、狩りをしない。
だから、鳥は苦手だ。
においに、彼は、ますます顔をしかめる。
「おい、いるのか!」
彼が声を出すと、すぐに、人が現れる。
鳥を世話していた、鳥師の彼、は、占師の彼を見る。
「何用ですか」
「今すぐ鳥を選べ」
鼻を押さえたまま、占師が云う。
「海に、鳥を送る」
「海に?」
鳥師は、目を細める。
「海一族になんか、鳥を送らない」
鳥師が云う。
「あいつら、鳥の扱いを知らないから」
「黙って従え、義弟」
占師は、折りたたまれた紙を取り出す。
「これを、海に」
おそらく、手紙。
しかも、占師がわざわざ持ってきたと云うことは、
重要な手紙、なのか。
鳥師は、しぶしぶ、手紙を受け取る。
「賢いやつを選んでおけ」
「鳥なら、みんな賢い」
「いちいちうるさいやつだ」
占師は、早くやれと、手を動かす。
「今すぐ飛ばせ」
鳥が出発するのを確認したいのだろう。
占師は、鳥師をにらむ。
鳥師は、鳥を選ぶ。
鳥の足に、先ほどの手紙を付ける。
「手紙を渡したら、すぐに戻るんだ」
鳥師は、鳥に云う。
鳥を飛ばす。
鳥は
青空へと、飛び立つ。
飛び立ち、
すぐに、その姿は見えなくなる。
それを見ると、占師は、すぐに方向を変え、歩き出す。
「今の手紙は何だ」
鳥師は、占師に訊く。
「何を、海一族に送ったんだ」
「お前が知ることじゃない」
「今の手紙は、」
「何度も訊くな」
占師は振り返らない。
鳥師は、その後ろ姿を見る。
息を吐く。
空を見る。
いつの間にか、雲が出ている。
――山の天気は変わりやすい。
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