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「辰樹と媛さん」18

2020年08月07日 | T.B.2020年


「ぶえっっっっくちゅっ!!」

「うっ、うるさっ!!」

「は、は、は」

「もう一発ですか、兄さん!?」

「は、はっ、…………」

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

「でないのかい!!」

 緊張の砂漠陣地で、声がでかいふたり。

「噂なのか何なのか」
「噂……」
「そして、いい天気だな!!」
「そこ!?」
「花が咲く時期になったばかりだというのに、何だか暑いな!」
「そう云うの、云わなくていいから……」

 辰樹の相方は息を吐く。

「早く進もうよ、兄さん」
「いや待て、そろそろ休憩だ」

 ふたりは、砂漠に坐り込む。

 携帯していた水と食糧を取り出す。

「はあ、暑いな」
 武樹(むつき)は呟く。
「早く帰って、浴場に行きたい」
「確かに」
 辰樹は頷く。
「お前の髪、いつもつるっつるだもんな!」
「なっ!! これは準備してある整髪剤の問題だ!」

 声がでかい。

 しばらく休んだあと、ふたりは歩き出す。

 武樹はあたりを見る。
 ただ、一面の砂漠。

「最近の砂の動きはどうかな?」
「え~、真面目な話?」
「……っ!!」

 何で、もう本当にこの人、
 わりかしいい立場にいるのに、こんな適当加減っっ!!
 もっと真面目で、武術が出来るやついるだろう
 大将っっ!!

 武樹は、きりっと辰樹を見る。

「いったい大将にどんな袖の下をっ!!」
「袖の下!!?」

 え~照れるなぁ、と云うけれど
 何も照れるところはない。

「昔組んでいた相方が、さ」

 辰樹が云う。

「結構、強いやつでさ」
「ふぅん、誰?」
「宗主様にでも勝てるんじゃないかってぐらい強くて」
「うん」
「そいつと特訓して強くなったからかなぁ」

 だから、こんなに適当でわいわいしていても、
 実力はある。
 仲間を思いやる気持ちもある。

 だから、辰樹は戦術師でも上の位置付けにいる。

「すごいな、大将……」

「おうとも!!」

「辰樹兄さん、哉樹と父親が逆なんじゃないかって思うわ……」
「えっ、何だ!! 従弟が何だ!?」
「こっちの話!!」

 それで

「最近の砂の動きはどうかな、兄さん!?」
「そうだな」

 辰樹は腕を組む。

「俺が思うに、近々大きな動きがあるとみた」
「えっ!? まじで!?」

 結構な大問題。

「大きな動きって、どんな!? どんな!?」

 武樹は目を見開く。

「戦術師が総動員するくらいか?」
「やべぇ!」
「そう。方向的にはこっち!」
「こっち!?」

 辰樹の指差す方向。

 砂漠

 ではなく、

 東一族の村。

「えぇええ、兄さん!」
「大将は信じたような信じてないような」
「信じないと思うよ!」
「でも、宗主様は無表情で肯定していたな」
「その場にいたの宗主様っ! そしてそれ肯定なの!?」
「信じていたな、宗主様は……(たぶん)」
「やだ、もう! 信じないで宗主様っ!」

 当たるか、辰樹の勘。





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