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「山一族と海一族」25

2017年08月25日 | T.B.1998年

「兄様」

 カオリはアキラを見る。

「どうしよう、このままじゃ」
「大丈夫」

 アキラは、山から上がる煙を見たまま云う。

「ハラ家が何とかしているはずだ」

 あの煙の上がり方なら、
 一族の村の火は、相当燃え上がっているはずだ。

 アキラひとりが急いで戻ったところで
 出来ることは、何もない。

「みんな大丈夫かしら」

 カオリは呟く。

 アキラは、海一族の村の喧噪に気付く。
 おそらく
 山一族の火に、驚いているのだろう。

 アキラは窓を閉める。

 山一族の様子を見に、山へ戻りたい。
 カオリも連れて帰らねばならない。

 けれども
 この様子では、しばらく海一族の村を出ることは難しそうだ。

 扉が開く。

 トーマが姿を現す。

「知っているか」

 アキラは頷く。

「火事だぞ」
「判っている」
「いったい何が……」

 アキラは首を傾げる。

「どうした?」
「判らない」
「何が」
「ここまで、火が大きくなることだ」

 アキラとトーマは目を合わせる。

 確かに、つい先日も雨が降っていた、と、
 トーマは頷く。

「何かがおかしい」
「ここまで、いろんなことが偶然に?」

 カオリも不安げな表情をする。

「とりあえず、ここにいろ」

 トーマは、扉に手を掛ける。

「俺は、一族の長から招集がかかっているから行ってくる」
「招集?」
「あれだけの火だ。うちの一族も見過ごせない」
「招集とは、海一族みんなか」
「まあ、上の方の者、と云うか」

「いや、待て」

 アキラははっとする。

「気を付けろ」
「気を付ける? 何を?」

「海一族の中に、外部者がいるかもしれない」

「外部……?」

「諜報員か、もしくは……」

 その言葉に、トーマも息をのむ。

 何か

 今回の災いの、大本。

 アキラは窓を開け、空を見る。
 鳥に合図する。

「何をした?」
「よくは思わないかもしれないが、うちの鳥に上空で見張らせる」

 外へ行こうとするトーマに
 アキラは再度、云う。

「気を付けろ」

 トーマは頷く。



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