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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「(父親と涼)」2

2015年02月06日 | T.B.2012年

 この一族は

 白色系の髪でいて、当然だった。

 黒髪は、ありえない。

 それなのに、なぜだろう。
 彼は、生まれつき、黒髪で生まれてきた。

 黒髪は、敵対する一族の髪色。
 その印象が、一族には深く根付いている。

 狩りの上手かった父親も、狩りの班から外され
 一家は、村のはずれへと追いやられた。

 一家は、黒髪の息子を、隠して育てるしかなかった。

 隠して、と云っても
 黒髪の彼の存在は、村人に知れ渡っており

 ――一家と付き合う者は、やがて、いなくなった。

 一家は、食べるものに困る日々を送る。
 食糧は、父親が獲ってくる獲物と、小さな畑で穫れる野菜だけ。

「大きくなったら、狩りに参加しろ」

 父親の言葉に、彼は首を振る。

「狩りで功績を出せば、一族としての立場が出来る。練習をするんだ」

 彼は、再度首を振る。

 外に出るだけで、石を投げられるのだ。
 狩りに参加出来るはずがない。

「何を怖がる」
 父親が云う。
「大きな獲物を獲れば、村のまとめ役にだってなれるんだぞ」

 彼は、何も云わない。

「なんだ。これからも、部屋の隅で生きるのか」

 父親は大きく息を吐く。

「せめて、水を汲め! 隣に行って何かもらってこい!」

 父親は、彼を立ち上がらせ、家の外へと出す。
 大きな音を立てて、扉が閉まる。

 彼は慌てて、あたりを見る。
 村人に、自分の姿を見られたくはない。

 と

 石が降ってくる。

 彼は驚いて、走りだす。

 石は降り続ける。

 一緒に、罵声も飛んでくる。

 彼は走る。

 どこまでも、
 どこまでも、

 それらは、追ってくる。

 きっと

 これからも、逃げられない。

 彼は、草むらに入り込む。
 隠れる。
 日が暮れるまで、彼は動かない。

 ふと、

 彼は顔を上げる。

 いつまでも、こうしているわけにはいかない。
 父親に云われたことを、やらなければならない。

 ずいぶんと遠回りをして、隣人宅へとたどり着く。

 けれども、

「お前たちにあげるものなんてないよ」

 それだけ云うと、隣人は扉を閉める。
 彼は、再度、扉を叩く。

 返事はない。

 しばらく、待つ。
 誰も、出てこない。

 仕方なく、彼は家へと引き返す。

「何ももらってこなかっただと!」

 父親は、何も持たない彼を見て、怒鳴る。
「どうやって空腹を満たせと!」

 彼は、何も云わない。
 どうすることも出来ない。

 父親は、激怒したまま、明かりを消す。

 彼は空腹のまま、その場に坐る。
 仕方なく、眠りにつく。



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