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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「辰樹と天樹」27

2016年12月09日 | T.B.2017年

 砂一族は辰樹を見る。

「……さっきのやつか」

 砂一族は、傷を負っている。

 先ほどの補佐の話からするに、宗主にやられたのだろう。
 その傷を負ってでも逃げたとなれば、大したもの。

「おい。もう、投降しろ」
「何でだよ」

 砂一族が云う。

「あの女は置いてきたのか」

 辰樹は答えない。

「もう、死んだだろうな」
「お前、」
「それから、いつも砂漠にいるあいつは?」
「砂漠?」
「お前と一緒に行動しているやつだろ」
「……天樹」

 辰樹は訊く。

「お前、天樹に会ったのか」
「…………」
「天樹と交えたのか」

「大丈夫だったか?」

「大丈夫? 何が?」

「東の宗主の紋章術を受けて、倒れてたからなー」
「…………?」
「俺の特製の毒にも苦しんでたなー」

「お前、まさか天樹を、」

「致命傷は俺じゃない。宗主だろ」

「いったい何があった?」

 砂一族は鼻で笑う。

「ずいぶんと時間が過ぎてる」

 その言葉に、辰樹は空を見る。
 日の位置を確認する。

「そいつも死んだだろうな」

「なぜ、宗主様が東一族を攻撃する」

「知らん」

「なぜ、天樹がやられなければならない」

「避けようと思えば避けられるものを、あいつは避けなかった」

「…………」

「俺が伏線を張っているのにも気付いていた。避ければ宗主に当たると」

「…………」

「俺と宗主の攻撃を受ける形になった」

「天樹、……」

「宗主を守ったんだろ。立派なこった!」

 再度、砂一族は笑う。
 血を吐く。

「なあ、あいつらは親子か?」
「そんなわけないだろう!」
「どう見ても、似てるだろ」

「いいから、そこに坐れ」

 辰樹は、砂一族に武器を向ける。

「無理をするな」
「はっ、東は甘いな」

 砂一族がふらつく。

 おそらく、もう長くは保たない。
 そう、辰樹は思う。

「便宜を図ってやる。医師様が助けてくれる」
「何を云う、東が」
「おいおい。命を大切にしろよ」

「……判ったよ」

 砂一族は、地に手を付く。

「よし、そのまま、」
「…………」
「何だ?」

 辰樹は、砂一族に近付く。

 瞬間

 発光

「……っ!!?」



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