砂一族は辰樹を見る。
「……さっきのやつか」
砂一族は、傷を負っている。
先ほどの補佐の話からするに、宗主にやられたのだろう。
その傷を負ってでも逃げたとなれば、大したもの。
「おい。もう、投降しろ」
「何でだよ」
砂一族が云う。
「あの女は置いてきたのか」
辰樹は答えない。
「もう、死んだだろうな」
「お前、」
「それから、いつも砂漠にいるあいつは?」
「砂漠?」
「お前と一緒に行動しているやつだろ」
「……天樹」
辰樹は訊く。
「お前、天樹に会ったのか」
「…………」
「天樹と交えたのか」
「大丈夫だったか?」
「大丈夫? 何が?」
「東の宗主の紋章術を受けて、倒れてたからなー」
「…………?」
「俺の特製の毒にも苦しんでたなー」
「お前、まさか天樹を、」
「致命傷は俺じゃない。宗主だろ」
「いったい何があった?」
砂一族は鼻で笑う。
「ずいぶんと時間が過ぎてる」
その言葉に、辰樹は空を見る。
日の位置を確認する。
「そいつも死んだだろうな」
「なぜ、宗主様が東一族を攻撃する」
「知らん」
「なぜ、天樹がやられなければならない」
「避けようと思えば避けられるものを、あいつは避けなかった」
「…………」
「俺が伏線を張っているのにも気付いていた。避ければ宗主に当たると」
「…………」
「俺と宗主の攻撃を受ける形になった」
「天樹、……」
「宗主を守ったんだろ。立派なこった!」
再度、砂一族は笑う。
血を吐く。
「なあ、あいつらは親子か?」
「そんなわけないだろう!」
「どう見ても、似てるだろ」
「いいから、そこに坐れ」
辰樹は、砂一族に武器を向ける。
「無理をするな」
「はっ、東は甘いな」
砂一族がふらつく。
おそらく、もう長くは保たない。
そう、辰樹は思う。
「便宜を図ってやる。医師様が助けてくれる」
「何を云う、東が」
「おいおい。命を大切にしろよ」
「……判ったよ」
砂一族は、地に手を付く。
「よし、そのまま、」
「…………」
「何だ?」
辰樹は、砂一族に近付く。
瞬間
発光
「……っ!!?」
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