今年,11年のこれまでの、海外M&Aの特徴は大企業から中期業まで規模に関係なく拡大していること、サービス業を含め業種の拡大が顕著なことで、国内市場の縮小に対応することは規模に関係が無い、という状況になっている、また,M&Aの仲介業務はしたがって圧倒的に海外金融機関が獲得、トップは,GS、2位は野村HD,3位以下、7位に三井住友フィナンシャルがついたレベル、
海外のM&A
調査会社ディーロジックによると、今年.1~10月の日本企業による外国企業の買収は601件、金額にして782億3000万米$で、昨年1年間の倍以上になっている。円が戦後の最高値をつけたことで企業の合併・買収(M&A)はエレクトロニクスから薬品まで各分野を通じて活発で、米国、英国に次ぐ第3位となっている。
10月14日(ブルームバーグ):米ゴールドマン・サックス・グループは2011年の日本でのM&A(企業の合併・買収)助言業務で、野村ホールディングスを抜き、5年ぶりに首位を獲得する見込みだ。世界を舞台に活躍しようとする日本企業が外資系投資銀行をアドバイザーに起用するケースが増えている。
ブルームバーグのデータによれば、ゴールドマンは13日現在で、541億ドル(約4兆1600億円)の日本企業が関連する買収案件で助言業務を手掛けている。野村は472億ドル。昨年は通年で野村が476億ドルで首位。米JPモルガン・チェースが270億ドルで2位、ゴールドマンは100億ドルで7位だった。
今年のアドバイザリー・ランキングでは、上位4社中3社を外国銀行が占める見込みだ。3月の東日本大震災の影響や円高に伴い事業基盤が弱まる中、日本企業同士が合併を模索する動きが広がり、日本のM&Aは過去最高規模となる見通しだ。ゴールドマンは3大案件のうち2件でフィナンシャル・アドバイザー(FA)を務めトップに立っている。 日本でM&Aアドバイザリーのブティックを営むカチタスの平井宏治社長は、「日本企業が今後海外に出ていくための言わばスプリングボードとして国内事業の統合を模索する動きが顕著だ」と分析。「そのため世界でM&Aをやってきた歴史と実績のあるゴールドマンにお願いすれば間違いないと思うのだろう。ゴールドマンは名前からくる安心感があり、いわばブランドだ」と述べた。
外国銀行の活躍目立つ ゴールドマンは、少なくとも過去5年で最大規模となった新日本製鉄と住友金属工業の経営統合で住友金属側のFAを務めたほか、武田薬品工業が買収したスイスのナイコメッドの助言業務を行った。また、日立製作所が米国のウエスタンデジタルにハードディスクドライブ事業を譲渡した際には日立のアドバイスを担当した。
ドイツ銀行は武田薬品など470億ドル相当の案件を手掛け3位に上昇している。4位はJPモルガンで、5位はモルガン・スタンレーと三菱UFJフィナンシャル・グループの合弁である三菱UFJモルガン・スタンレー証券。一方で国内勢は三井住友フィナンシャルグループが7位、みずほフィナンシャルグループが8位、大和証券グループ本社は9位にとどまっている。 ブルームバーグ・データによれば、10月13日までで今年の日本企業絡みの案件総数は1663件、金額は1412億ドルで、同期間としては過去最高。日本企業同士の合併が主に牽引した。
「ALL JAPAN」
カチタスの平井氏は今年の日本のM&Aの特徴をワールドカップのサッカーに例える。「日本企業はオール・ジャパンを作ろうとしている。これまでは国内のチーム同士で戦ってきたが、これからの敵はALL KOREAであり、ALL USAだ」。
ゴールドマンの矢野佳彦M&A統括責任者は、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、「震災の影響により、取引が滞るかとも思われたが、むしろ経営者の国内市場の将来性に対する懸念や閉塞感がクローズアップされ、それが取引の増加に現れている」と述べた。また「グローバル競争で勝ち残るためのM&A」は12年も増加するとみている。
ニューヨークに本社を置くゴールドマンは1974年に東京で業務を開始した。M&Aで首位になるのは06年以来で、その間は野村が首位を独占してきた。野村は現在日本企業による海外企業の買収におけるFAランキングで首位についている。
野村の角田慎介企業情報部長は、「日本企業が新たなビジネスチャンスを求めてグローバル展開する動きは、大震災以降さらに加速している」と指摘。その上で「日本でこれまで培ってきた見識や経験とグローバルの広いネットワークを活用してこれからそうした顧客ニーズにこたえていく」と述べた。
ゴールドマン・サックス
ゴールドマン・サックス証券の持田昌典社長によれば、同社の経営陣を含め9割以上の従業員が日本人であることが、日本企業を相手にビジネスをする上で強みになっているという。持田氏は2年前の慶応義塾大学の学生向けイベントで「皆さんはゴールドマンを外国企業だと思っているかもしれないが、完全に日本に溶け込んだ日本企業でもある」と強調した。
日本では約1000人の従業員のうち約100人がM&Aなどの投資銀行業務に携わっている。大震災から3カ月経た6月には小泉純一郎元首相や銀行首脳ら政治・経済界のリーダーを招へいし、「ジャパン・ライジング」と称して震災後の日本経済や企業戦略について議論した。 ゴールドマンの矢野氏は、「日本企業は震災の影響からも概ね回復し、潤沢なキャッシュとレバレッジの低さを考えるとグローバルな競合相手より相対的に好位置にある」と分析。「経営者はM&Aを常に最重要課題として位置づけるようになり、よりダイナミックでスピーディーな決断をしている。10年前に比べると隔世の感がある」と語った。
「ターゲット・リスト」
来年10月の経営統合で合意した新日鉄と住友金属は、「総合力世界ナンバー1の鉄鋼メーカー」を目指すとしている。住友金属はゴールドマンのほか大和証G、ドイツ銀、三井住友をFAに起用。一方、新日鉄はバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、みずほ、三菱UFJモルガン・スタンレーから助言を受けた。
新日鉄の広報センター鈴木聖人マネジャーは、「合併比率の公正性をより担保するため複数のアドバイザーを起用した」と述べ、グローバルに事業展開している外資系をその中に選んだ理由についてはコメントを控えた。住友金属の広報担当者も言及を避けた。ゴールドマンはこのほか、三井住友FGによる消費者金融大手プロミスの完全子会社化と第三者割当増資引き受け(約2000億円)や、みずほFGによるベトコンバンクの株式15%(約435億円)取得案件でもアドバイザーを務めた。 三菱UFJモルガン・Sでアドバイザリー業務を統括する藤田健二氏は日本企業について「グローバルに出ていかない限り成長できない」と述べた。その上で経営陣は、「買収意欲が高く、ディスカッションをもつことに積極的で頻繁にターゲット・リストの提供を求めてくる」という。