佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

サンソン・フランソワ考

2005年11月08日 01時14分37秒 | クラシック
 フリーズ&エラーと格闘し、こんな時間に。
何とかしてくれ、うちのパソコン。

 さて、今日はピアノ。
僕の好きなピアニスト、
サンソン・フランソワについて。

 1924年生まれ、1970年没の
若くして亡くなった、フランスのピアニストです。

 正統派のピアノが好きな人は、
この名前を聞いただけで背筋に悪寒が走るのでは。
そう、この人は、非常に型破りというか、
自由なピアノを弾いて、フランスで愛された
人なのです。

 エピソードを聞くと、それが頷けます。
某音楽雑誌によると、ジャズに傾倒していて、
コンサート直前までステージの曲は弾かず、
ジャズばっかり弾いていたらしい。
あと、僕の先輩が言うには、
薬物中毒のうわさもあったらしいとのこと。

 でも、これ、ピアノを聴くと納得します。
言葉を選びますが、非常にアウトロー。
形式や様式を重んじる人ではないです。

 僕が大学3年の頃、
若干精神的にまずかった頃、
ストレスからCDを5枚くらい衝動買いしたのですが、
その時の1枚が、
ショパンのバラード&スケルツォ集でした。


 衝撃。


 落ちていた自分にぴったりで、
とにかく何度も聴きました。
古い録音で、ピアノの打鍵や
ペダルの踏む音まで入っているのですが、
それがまたリアルで、臨場感があって、
まるでライブで弾いているよう。
心に迫るのです。

 僕は、ショパンの作品って、全部じゃないけど、
男性的な面と、女性的な面が交錯する
ところがあって(僕のイメージ。
特にバラードやスケルツォやソナタ)、
その落差というか、入れ替わりというか、
錯綜した感じが好きなのです。
フランソワは、それを見事なまでに表現していて、
速いパッセージなど、ミスタッチお構いなしに
どんどん速く弾く。
それが、ギリギリの綱渡りの演奏。
その危なさ、危うさが、僕のショパンのイメージと
マッチしていて、心打ちぬかれたわけです。

 彼のCD、東芝EMIから沢山出ています。
専門家に言わせると、彼の録音は、
出来不出来の差が激しいとのこと。
確かに、気の入ってないような演奏もある。
お薦めはやはり「バラード&スケルツォ集」。
ソナタのCDもいい。
そして極めつけはラヴェルのCD(2枚組)。
多分、今までのラヴェル像が壊れます(笑)。
自由自在、というか自分勝手!?、
こんな弾き方でいいのか?と思いますが、
くせになるとやめられなくなるのです。

 天才肌、異端児、アウトロー。
そんなピアノに触れてみたい人、
お薦めです。