いつもならすでに寝入っている時間帯に、たまたま起きてテレビを見ていました。男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が、事前練習中に負傷したにもかかわらず、4分半の演技を演じきったのでした。4回転ジャンプには何回か失敗したものの体の線をいかした華麗な動きはいつもと変わりません。演技を終えて倒れこむようにコーチのもとへ、自身の得点を見てからは、そのまま担架に乗せられていました。ふつうに歩くのもままならない状態なのに、スケートリンクに立ったときにはその弱さを微塵も見せない精神力の強さに、私は圧倒されてしまいました。テレビで解説していた松岡修造さんも織田信成さんも適切なことばを探すのに苦労するほどの圧倒的な精神力でした。
直前の練習時に中国のエンカン(イェンハン)選手とぶつかって転倒したのでした。お互い後ろ向きに滑ってきてリンク中央部で振り向きざま頭部を鉢合わせしたようです。その映像はなんども映し出されていました。エンカン選手は欠場、羽生選手は頭部に包帯を巻き、あごに絆創膏をあてながらも出場するとの報道がなされています。羽生選手の負傷を気づかうアナウンサー、解説者の声がテレビから流れてきます。負傷をおして出場することが羽生選手の選手生命を縮める結果になるのではないか、という心配の声でした。しかし羽生選手は欠場など考えもしなかったようです。けがの程度が軽く見えたエンカン選手も、結局は舞台裏で羽生選手と握手を交わしたのちに出場しました。演技の順番としては羽生選手の直前にはいっていましたから、羽生選手のけがからの回復のためにわずかながらも時間かせぎをするつもりだったのかもしれません。エンカン選手の演技もりっぱなものでした。
フィギュアスケート史のレジェンドになる一幕でした。