新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

映画「南太平洋」の原作

2018年02月18日 | 日記

 1958年に製作されたハリウッド映画「南太平洋」の原作、ジェームズ・ミッチェナー「Tales of the South Pacific」を読み終えた。南太平洋上に浮かび、風光明媚な小島で繰り広げられるアメリカ軍人と現地人のロマンス、それが「南太平洋」だと思っていた。まったく違った。原作は南太平洋の島々を舞台にした太平洋戦争の話だった。全19章のうち女性が登場するのはわずかに2章しかない。あとはJapに奪われそうになっている島を奪還する作戦を練ったり、上官や下士官たちの戦場での葛藤や思いやりを描いたりした作品だった。
 日本軍をかなり手強い相手として描いている。18章では日本軍がすでに入り込んでいるKonora島に米海軍が反対側から侵入し、日本軍の反撃を受けながらもかろうじて島を奪還する話になっている。日本軍にKenjiro Hyaichiという戦術に長けた中佐がいたために、かなりてこずった。
 それでもクリスマスが近づくと、ウィスキーをほしがる隊員たちがあちこちを探し回る。小さな島ではウィスキーを手に入れることができない。ニューカレドニアのヌメアでなら入手可能だ。隊員たちは戦闘機を借りてひとっ走りする。首尾よくウィスキー何十本かを現金購入する。戦争中であるにもかかわらず、クリスマスにはウィスキー瓶を開けてどんちゃん騒ぎしようとする。それだけ気持ちのゆとりがあったし、戦争用具以外の日常品があるところには豊富に揃っていた。日本がしていた戦争を敵側からのぞき見るよい機会になった。

 Tales of the South Pacificは、ジェームズ・ミッチェナーの処女作であり、ミッチェナーが書いた本のなかではめずらしい短編でもある。これまで読んできた彼の歴史小説はすべてペーパーバックにして1000ページを超えていた。これはわずか350ページしかない。その小説が取り扱っている時代にも際立った特徴がある。おなじ太平洋の島を舞台にして人間模様を描いたHawaiiは、地球ができはじめたときから筆を起こし、島々が生成される過程さえ描き込んだ。他の多くの作品にもその傾向が見られる。ところがこれは1942年から43年という短い期間の、戦争を背景にした人びとの生活の諸相を描いているし、現地人というよりも現地へ赴任しているアメリカ人兵士たちの話になっている。
 読む順序がまるで逆になってしまった。興味の赴くままに読んでいるのだからしかたがない。むかし購入し、なかなか手がつかずに書棚にならべてあったミッチェナー本のほとんどを読み終え、最後にメモワール「The World is my Home」を残すのみになった。