新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

英語スピーキングテスト

2022年10月17日 | 日記

 英語教師として気になるのは、都立高校の英語入試にスピーキングテストが導入されることだ。英語の能力を見るテストに、スピーキングを入れること自体、悪いことではないが、問題は入試に入れることにある。入試となると中学生のほぼ全員が対象になるし、中学校の先生たちも保護者たちも子どもを合格させることに躍起になる。どうすればよい点数が獲得できるかを考え、その指導に精力を費やす。そこに問題がある。英語は使えてはじめて役立つ。英語でコミュニケーションができ、英語の文章を読み書きできてはじめて役立つ。テストの点数はその正確な評価であって欲しいのだが、はたしてそうなっているだろうか。
 英検の二次試験は面接形式でおこなわれる。「スマホを幼い子どもに使わせることをあなたはどう思いますか」のような質問がなされる。高校生の場合、反対意見を述べたいのだが、なかなかスムーズに応えられない人がいるいっぽう、「ゲームをしたり、他人とメールしたりして頭を柔軟にするのに効果的だ」と比較的ユニークな応えをする人がいる。ただ受験者のこのユニークさはほとんどの場合、得点面に反映されることがなく、応答する英語の正確さばかりに注意が注がれて採点される。採点法はこれでよいのだろうか。
 大学でポルトガル語を教わった教授は、当時のガイド通訳試験の試験官を務めていた。その教授がよく「大切なのは言語能力より人柄なんだよ」といっていた。外国人と接する仕事であるだけに、言語を聞き話す能力が少々拙くても、人柄が評価されれば日本の評判はぐんとよくなるという持論をもっていた。言語はコミュニケーションの手段であり、目的ではありえない。これは肝に銘じておくべきだろう。高校入試にスピーキングテストを導入しようとする都教委は、この肝心要のところを忘れないでほしいものだ。
 いま高校生の英語コミュニケーション力はむかしに比べてずいぶん向上している。身近に外国人がいるなどの環境変化があるうえ、英語教育法が改善された結果でもあるだろう。来年度入学してくる高校1年生を注視していこう。


ズーム・ミーティング

2022年10月02日 | 日記

 関西に住む友人二人と毎月1回をめどにズームで雑談会をしている。きょうがその日だった。
 Uくんは腎臓癌を患い、治療している。腎臓の片方を除去したのはもう5年前。ただ腎臓癌はしぶとく、肺に転移した。最先端の治療を受け、さいわいそれを気にならない程度にまで縮小させた。いまは背骨に症状が出ている。背中が痛む。ハイパーサーミアという温熱療法が効かず、背骨の癌を直接、除去する手術を名古屋市大病院で受ける。
 Uくんは自分の病状、治療法を深く科学的に理解し、最善の方法で治療し、生活してきた。つい最近まで毎週テニスをし、麻雀を楽しんできた。癌が治ったら、各種病気のいちばんの治療法、癌のいちばんの予防法である免疫力について勉強したいという。
 Sくんは股関節に問題を抱えている。歩くときに片足を引きずる。ただプールで毎日泳いだり、水中を歩いたりという運動療法で、いまのところ小康を保っている。肥満ゆえに他にもさまざまな問題を抱えているはずだが、おおらかに構え、CSRという自分の研究課題に一途にとり組んでいる。欧米の団体が主催する数多くのウェビナーに登録し、それらに参加するために夜遅くまで起きていることが多い。ニューヨークとの時差が13時間、ロンドンとの時差が8時間あるのだから、そのタイムラグはどうにもならない。
 Sくんは仏教にも詳しく、般若心経を原典に当たりながら理解を深めていき、同時に京都の東寺、和歌山の高野山を訪れ、空海についてもっと勉強したいと意気込む。
 勉強家の二人と年1回、京都で一泊旅行をしてきた。過去2年は新型コロナが流行したせいで見合わせたが、ことしは奈良で一泊した。その間にも月1回のズーム会で顔を合わせている。学生時代から続くこの親交をいつまでも続け、互いに刺激を与え合っていきたいと思っている。


都民の日

2022年10月01日 | 日記

 10月1日は都民の日。私立学校を含めて小中高校はすべてこの日を休みにしている。そのうえ上野動物園や都立美術館などの都立の施設が無料で利用できる。
 私はこの日を休養日にしてきた。おっと私は神奈川県民だ。だが東京都とずっと関わってきた。神奈川は住んでいるだけ。東京都のニュースに関心があるし、いまも毎日のように東京都へ通っている。いっそ都民になりたい。交通機関が充実しているし、バス乗り放題の敬老パスが安く手に入るのも魅力だ。路線バスだけを乗り継いで東京を一周してみたい。
 神奈川県民の日は存在しない。私が生まれ育った兵庫県にも県民の日はなかったし、いまもない。東京都は1952年に都民の日を制定した。ほかにいくつかの県が都に追随しているようだ。
 
 9月27日夜、月下美人が2輪咲いた。ことしはこれでもう合計10輪ほど咲いている。去年まで年に2輪か3輪しか咲かなかったが、ことしは一気に増えた。プランターにEM菌を撒いたおかげだろう。EM菌はミニトマトの収穫も増やしてくれた。


OEDの陰の功労者

2022年09月27日 | 日記

 オクスフォード英語辞典(OED)の代表編者はジェームズ・マレーだ。だが一人ですべてをできるわけではない。とりわけ各語の用例を集めるのにリーダーと呼ばれるボランティアの協力者を使った。本を読み、単語の用例を収集して編者のもとに送ってもらう。こうして送られてきた数多くの用例を編者は整理し、辞書の資料として用いる。全国に散らばるリーダーのなかに、質量ともに群を抜いて多くの用例を送ってくるリーダーがいた。名前をウィリアム・マイナーといった。
 マイナーはなんと精神病院に収監されている囚人だった。いったいどのような人か。
 セイロン(現スリランカ)で生まれ育ったマイナーは14歳で米イェール大学医学部に入学し、卒業して医師になる。そして南北戦争中のアメリカで北軍の軍医になった。そのころ北軍は多くのアイルランド兵を雇い、一般のアメリカ兵がしたがらない、きつい仕事をさせていた。そのため脱走兵が続出した。軍はそれを取り締まるため、脱走兵を捕まえ、頬に焼き鏝でdeserterのDの文字を焼き付けることにし、それを軍医の仕事にした。鋭い悲鳴と肉が焦げるいやな臭いがする。上官の命令でその仕事をした20歳そこそこのマイナーは自己嫌悪に陥り、売春宿に入りびたった。自堕落な生活をしたあげく、逃げるようにロンドンへ渡る。だがロンドンでもアイルランド人が自分の命を狙っていると思い込むようになる。銃が手放せなくなる。ある日、部屋に入ってきた人をアイルランド人だと思い込み、射殺してしまった。逮捕され、裁判され、精神病院へ収監される。病院でも夜になるとアイルランド人の亡霊に悩まされたが、辞書のリーダーの仕事が性に合った。もともと高い頭脳をもち、大量の本を読んだ。暇はもてあますほどある。まるで自分が一冊の小辞典を編んでいるかのような仕事ぶりだったという。
 こうして精神病院に収監されていた人物がOED編纂の陰の功労者になった。
 OED編者ジェームズ・マレーの伝記を読み始めたが、「優等生」の伝記はどうも面白みがなく、途中で投げ出してしまった。それに比べ、中公新書「〈辞書屋〉列伝」は焦点のあてかたがユニークで、楽しく興味をもって読めるおすすめ本だ。


アメリア・イアハート

2022年09月25日 | 日記

 アメリア・イアハート。知る人ぞ知る女性初のパイロットだ。この人にあやかってアメリアと名づけられた雑誌、商品は数多い。
 原田マハがこの人を採りあげて「翼をください」を書いている。いま夢中になって読んでいる。事実とフィクションが織りまぜてあってサスペンスを感じさせる。
 アメリアはカンザス州アチソンの裕福な家庭で生まれ育つ。幼いころから空を飛ぶことに憧れ、ついには地球の赤道上を西から東へ一周することを試みる。だが太平洋上で機体とともに姿を消す。どこかの島で生きているという噂が絶えなかった。原田マハはアメリアが日本で生きており、日本の世界一周飛行の飛行機に乗せるというプロットを思いつく。山本五十六の密命により、世界一周を試みる民間機にアメリアを乗せる。新聞社所属のカメラマン山田順平とのあわいラブロマンスを絡めて話が展開していくようだ。
 事実に基づいたフィクションで、どこまでが事実でどこからがフィクションかは定かでない。それにしても原田マハという作家は絵画をモチーフにした作品ばかりを書く人かと思っていたが、絵画とは無縁のテーマで、ここまで書けるのかと感心しながら読んでいる。
 角川文庫「翼をください」上下巻。