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葉室麟著 「紫匂う」

2024年06月13日 16時38分55秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著「紫匂う(むらさきにおう)」(講談社)を、読み終えた。本書は、伊予来島水軍の勇将黒島興正を藩祖とする、九州豊後鶴ヶ江に六万石を領するという架空の小藩「黒島藩」を舞台にした長編時代小説「黒島藩シリーズ」の第2弾の作品である。さらに、第3弾、「山月庵茶会記」が有り、引き続き読んでみたいと思っているところだ。

▢目次
(一)~(十五)

▢主な登場人物
萩蔵太(黒島藩、郡方、五十石とり)・澪(みお、蔵太の妻、30歳、三浦佳右衛門・仁江の三女)、由喜、小一郎、萩安左衛門・登与、
三浦誠一郎(澪の長兄、勘定方)、
葛西笙平、
桑野清兵衛(大庄屋)・香(葛西笙平の母親)、
黒瀬宮内(くろせくない、黒島藩国家老)・志津(葛西笙平の妻)、
久野七郎兵衛、竹山巴山、
岡田五郎助(黒島藩江戸藩邸側用人)、
駿河屋利助(呉服商)・おくう、
芳光院(藩主の生母)、菱川源三郎(西の丸・芳光院付き近習)、
弥三(山の民

▢あらすじ等
紫のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに吾恋ひめやも、
「紫草(むらさき)が花をつけているようだな」
蔵太に不意に告げられて、澪は庭に目を落とした。庭の隅に小さな白い花が咲いている。
萩家の屋敷の門のそばにも、この白い花を澪に見せたくて、蔵太が紫草の種を蒔いていたが、
澪は知らずに雑草と勘違いして抜いてしまったことが有ったのだ。

紫草(ムラサキ)は古来から知られ、万葉集にも歌われている花。
澪は、蔵太が種を蒔いた紫草の花を、切に見たいと願うようになるのだった。
心極流の達人ながら、郡方として、凡庸な勤めに留まる蔵太は、妻澪(みお)、長女由喜(ゆき)、長男小一郎(こいちろう)と共に穏やかに暮らしていたが・・・。
澪が、17歳の折、一度だけ契りを交わした、隣家の幼馴染葛西笙平が、追われる立場となって、江戸から国許に戻ってきて、澪の前に現れた。助けたい一心、澪の心が乱れに乱れる。義か、情か、武士の妻の選ぶ道は?、二人の仲を、全ての経緯を承知している蔵太は、・・・・。
  「ひとの生き様はせつないものだな」
  という蔵太の淡々とした言葉を聞いて、
  澪は思わず口にする。
  「わたくしにも迷いがあったように思います。
  どうすればひとは迷わずに生きられるのでしょうか」。
  蔵太はぽつりと、
  「さようなことはわたしにもわからぬ。
  ただ、迷ったら、おのれの心に問うてみることだと私は思っている」。
  「おのれの心に問うてみる。。。。。。。」
  小声で繰りかえし、澪は思いをめぐらす。
  「知恵を働かせようとすれば、迷いは深まるばかりだ。
  しかし、おのれにとってもっとも大切だと思うものを
  心は寸分違わず知っている、とわたしは信じておる」。
  蔵太の答えが澪の胸にしみ、
  わからぬこと、迷ったことは、わが心に問えばいい。
  その通りだ、と澪は思った。
主人公は、萩蔵太の妻澪であり、蔵太、笙平との感情の交錯がテーマなのだと思われるが、元凶は、黒島藩藩内抗争、国家老黒瀬宮内の専横不正問題・・・・、
3人は共に追い詰められていき、あわや・・・、
藩主の生母芳光院の存在が、際立って大きく描かれている。


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