ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本Sライト級TM 木村登勇vs松宮一久

2005年12月17日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
過去に日本ライト級のタイトルも獲得している2階級制覇王者の
木村だが、ライト級時はあまり印象に残る選手ではなかった。
リック吉村、湯場忠志への挑戦に失敗し、3度目でようやく王座を
手にしたことや、初防衛戦で嶋田雄大に負けていることなどが
その原因だろう。

ところが、スーパー・ライト級に上がってからは連戦連勝。江口慎吾を
判定に下して2つ目のベルトを獲得すると、ここまでトントン拍子で
4度の防衛に成功してきた。

今回の5度目の防衛戦の相手である松宮は、ランク1位ながら際立った
実績や武器というものがなく、充実の時を迎えている木村には歯が立たない
だろうというのが戦前の予想だった。しかし、「番狂わせ」というのは
得てしてこういう時に起こるものだ。

先に入場してきた松宮。山口県からはるばる東京に乗り込んできたにも
かかわらず、応援の声は決して小さくない。何でも、地元から100人ほどの
応援団が駆けつけているという。表情も体つきも見事に引き締まっていて、
何かやってくれそうな予感も漂う。

対する木村は、余裕を感じさせる入場。リラックスしているとも取れるし、
もしかしたら緊張感を欠いているのかも、とも取れる表情だ。ただし体つきは
決して悪くない。

ゴングが鳴った。チャンピオンの表情が急に引き締まる。松宮は積極的に
仕掛けたいのだが、どう攻めていったらいいのか躊躇しているようにも見える。
まだ1ラウンドだが、木村のパンチが徐々に当たり始めた。右ジャブ、軽い
左ストレート。早くも距離を掴んだのだろうか。

第2ラウンド、迷いを振り払うように松宮が打って出るがヒットはなし。
クリンチに逃れた木村はあっさり攻守を交替させ、またパンチを当てていく。
この後も、松宮が突っ込み、木村がクリンチするという展開が再度見られたが、
王者はまるで慌てたところがない。そして、両者が中間距離で見合った直後、
木村の速い左フックがカウンター気味にヒット、ダウンを奪う。ヒットした
瞬間にはそれほどのダメージとは思わなかったが、立ち上がった松宮は
フラついており、ここでレフェリーが試合を止めた。絵に描いたような
鮮やかなワンパンチKOだった。

まさかここまで木村が強いとは思わなかった。前回の防衛戦で、大嶋宏成を
一方的に打ちまくってKOした木村だが、それは大嶋の方に挑戦者としての
技量が不足していたせいだと思っていた。確かに今回の松宮も、終わってみれば
木村を脅かすような力は持っていないことが分かったわけだが、そうは言っても
ランキング1位である。1位でさえこれなのだがら、国内でこのチャンピオンに
対抗できる相手が極めて少ないことだけは間違いないだろう。

これで、5度の防衛戦のうち3度をKOで終わらせたことになった木村。
どういうわけかこれまで人気という点では今ひとつの選手だったが、これで
注目度も増すのではないだろうか。相手にとってやりにくいスタイルに加え、
攻撃力もアップしてきた。

世界ランクにも入っている木村だが、この階級は現在最も層の厚いクラスで、
挑戦することさえ難しい状況だ。上を狙うなら、まずは東洋太平洋の王座に
挑むか、他の世界ランカーとの対戦などが最低限必要になってくるだろう。
3月に木村が3度目の防衛戦で戦い判定勝ちを収めた佐々木基樹が、先日
インドネシアの世界ランカーを見事に下した。恐らくこれで佐々木も世界ランク
入りするはずだ。身近なところでは、この両者の再戦というのも面白いかもしれない。



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