ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本フライ級TM 内藤大助vs中広大悟

2006年02月13日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
毎年、国内の実力者同士が拳を交える「チャンピオン・カーニバル」。
その中で今回最も注目を集めたこの試合だが、期待通りの熱戦とまでは行かず、
両者ベストパフォーマンスを見せ切れないまま判定で内藤が辛くも勝利を
収めた。内藤はこれで日本タイトル3度目の防衛。

前半の攻防はなかなか見応えがあった。話題の新鋭・中広は確かにいいものを
持った選手で、ガードがルーズになる内藤の打ち終わりに、右クロスがよく当たる。
ただいかんせん単発で、一発のパンチ力に欠ける中広としては、やはり連打で
崩したかったところだ。逆に言えば、もし中広にもう少しパンチ力があれば
内藤がぐらつくシーンもあったのではないかと思わせた。

一方の内藤も、顔面へのパンチがなかなか当たらないと見るやボディを中心に
攻め立て、キャリアの豊かさを印象づける。また、打ち終わりのガードこそ
低いものの、中広に連打を許さないだけのディフェンスの巧みさも見せた。

ところが、終盤に入って両者は失速する。それが特に目立つのは内藤の方だ。
前半で強烈なボディを再三もらった中広の失速は理解できるが、内藤のこの
疲れ具合はどういうことなのだろう。もともとスタミナに難があると言われて
きた内藤だが、それだけでは説明がつかないような気がする。疲れというより、
この終盤の戦いぶりにはどうも覇気が感じられないのだ。

とにかく、相対的には中広の方がまだ元気に見える。やはり攻めは雑になって
きているものの、細かいパンチを当てていく。しかし内藤も時折反撃し、決して
相手に完全にペースを渡してしまうわけではない。この辺りはベテランらしい
したたかさと言えるだろう。

判定は2対1。ジャッジ3者のうち1人は中広を4ポイント優勢とし、
残る2人は僅差で内藤の勝ちと見ていた。中広の勢いを取るか、内藤の巧さを
取るかで見方が分かれたようだ。確かにどちらを優勢とするか迷うような
微妙なラウンドも多く、決して内藤が王者の風格を示したとは言いがたいが、
結局、苦しい展開でもどうにか凌ぎ切ったチャンピオン内藤が、経験値の面で
一枚上手だったということだろう。

試合前も試合後も、内藤は「モチベーションが上がらない」というようなことを
語っていたが、それがそのまま試合に出てしまったのかもしれない。世界戦での
敗北がまだ尾を引いているのか、それとも、内藤にとって世界戦はあまりにも
刺激的で、もう日本タイトルマッチくらいでは燃えることが出来なくなって
しまっているのか。いずれにせよ、本調子でなかったことだけは確かだ。

しかし、世界戦のチャンスなどはそう簡単に巡ってくるものではない。
試合後、内藤は東洋太平洋チャンピオンの小松則幸との対戦に意欲を示していたが、
それも、今の内藤がどうにかして高いモチベーションを得ようと苦心している
ことの表れではないだろうか。

惜しくも敗れた中広に関してだが、正直に言って期待したほどではなかった。
身体能力の高さが評判の選手だったので、もっと見る者を驚かせるような
パフォーマンスを期待してしまったが、あくまで普通の好選手という印象だった。

攻防ともそれなりに高い能力を持っているが、挑戦者としてジャッジに充分アピール
するだけの攻勢をかけることは出来なかった。内藤に疲れが見えた後半はいい
ペースを掴みかけたのだから、そこでもう少し大胆に攻めるべきだったと思う。
こういったタイプの選手は、それこそ小さくまとまってしまう可能性もあるが、
何かのきっかけで大きく成長することもある。今後の中広にも注目したいところだ。

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