ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

保住、世界ミドル級王座に挑む

2002年09月22日 | その他
今から約7年前、竹原慎二が日本人として初めて世界ミドル級王座に就いた。
しかしそれでもなお、世界のミドル級は日本人にとって、とてつもなく高い
壁であり、ほとんど縁のない世界とすら思っていた。

だから最初に保住直孝の世界挑戦が決まったという話を聞いた時にも、どうせ
噂だけだろうと思った。まるで現実味のある話に思えなかったのだ。

確かに保住は東洋太平洋チャンピオンで、世界ランクにも入っている。
軽量級なら「東洋から世界へ」という図式はイメージしやすいが、ミドル級と
なればそうはいかない。「ミドル」という呼び名の通り、これはボクシングの
本場である欧米の選手たちの平均的な体格を意識して作られた階級であり、
つまりそれだけ選手層が厚いのだ。

それに比べて、アジア人は体が小さい。日本でも、ミドル級と言えばもう
重量級とされ、選手の数も極端に少ない。よってミドル級以上の
日本ランキングは作成されていないという有様だ。

選手数が少ないということは、必然的に全体のレベルが低いということだ。
例え日本に実力のあるミドル級の選手が現れたとしても、まともな練習相手は
ほとんどおらず、当然対戦相手のレベルも低い。これではとても世界に太刀打ち
できない。一般的には理解されていないが、竹原が世界を獲ったのはまさに
「奇跡」に近い。テニスやサッカーの世界大会で日本人が優勝するのに匹敵する
偉業なのである。

それだけに「保住が世界に挑む」、この事実を考えるだけでもワクワクする。
はっきり言って、勝つ確立は非常に低いと言わざるを得ない。しかも相手は、
あの竹原を破って王座を獲得して以来、ずっと世界のトップクラスで戦っている
ウィリアム・ジョッピーなのである。実力、経験の差は否めない。
しかし勝敗以前に、日本人が世界ミドル級王座を争う舞台に立つ、これだけでも
充分に見る価値があると思う。

もちろんこれは勝負だから、絶対に保住が負けるとは言い切れない。
ジョッピー(32歳)の年齢による衰え、あるいは世界的には全く無名の
保住に対する油断などがもしあれば・・・。加えて、ジョッピーには11か月の
ブランクがある。ジョッピーの試合勘が戻らない内に保住が序盤を押さえることが
できたら、俄然面白くなるだろう。保住もどちらかと言うと序盤は様子見をする
タイプだが、今回に限っては1ラウンドからガンガン行く、と公言しているのだ。
もしかしてもしかしたら・・・などと、つい夢を見てしまう。

保住は間違いなく、東洋ではトップクラスのミドル級選手である。果たして東洋の
トップが、どこまで世界のトップと戦えるのか。その答えが10月10日に出る。